沖縄卒業旅(第4回)

(4)“リベンジ”は那覇から始まる
@リベンジ宿泊,リベンジ晩さん 
古宇利島からは予定通り,17時にフェリーが出航。サトウキビを満載した10tトラックも無事乗り込んでいた。行くときと比べると,心なしか乗客は減っていたと思う。淡々と来た道を戻って,17時12分に運天港に到着。10tトラックがまず,サトウキビの切れっぱしを数本落としつつも,無事下船。その後で乗客が下船する。空はすっかり暗くなり,ポツポツと雨が落ち始めていた。
さあ,急いで那覇へ戻らなくてはならない。ジャパレンには19時返却ということで契約している。契約時こそかなりいい加減な感じだったが(第1回参照),そういう会社に限って時間に遅れるととやかく言ったりするものである。あるいは「塩川」で電話をかけて第八古宇利丸の時間を調べたとき(第1回参照),ついでに1時間延長の連絡でもしようかと思ったのだが,もしかして19時に着いたりしたら,それはそれでまた「延長して延長料金をもらおうとしたのに,ピッタシに帰ってきた…」となってややこしくなりかねないので,ここはできるだけ早めに着くことを目的に出発する。
とはいえ,早速立ちはだかったのが10tトラック。思いっきり私と同じルートで,国道505号線から県道71号線を通って名護方面に向かおうとする。結局,名護市内の途中でおもむろに右折。私はそのまま真っ直ぐ行ったので,これにて10tトラックとはお別れになったわけだが,結局,トラックが入って停まったのは車しか停まっていない空地だった。はて,何のために停まったのだろうか。もしかしたら,ホントはコンビニあたりに行きたかっただけなのかもしれない。かといって,あのサトウキビを積んだままじゃ店からは絶対嫌がられそうだし,そもそも駐車場に入れるかどうかも分からないし。
そして,次は名護市中心部から入った国道58号線。日本ハムのキャンプ見学からの帰りなのか(第1回参照),はたまた他に原因があったのか,やたら混んでいた。ホントは「許田インターまで30分,高速道路30分,那覇市内30分」とかいう勝手な計画を立てていたのだが,許田インターに着いたのは,17時53分。ここまでで10分の“ロス”。高速道路も,時間こそ30分で予定通り那覇まで行けたが,車がとにかく多かった。でもって,高速を降りた那覇市内でも渋滞に巻き込まれ……結局,ジャパレンには10分遅れで到着。でも,延滞料金は取られず。ま,10分くらいなら大丈夫か。
係員に送迎バスに乗るように言われたが,無視してそのまま小禄駅まで歩くことにした。今日は那覇で宿泊予定だから,那覇空港に行っては当然ながら遠回りになるからだ。ハードスケジュールに加えて,朝は寝不足。そのせいか後頭部がズンズンと痛かったので,ホントはタクろうかとも思ったが,何とか雨に耐えつつ駅に到着。たしかタクシーが1〜2台,私を拾おうとする動きを見せていたと思うが,“プロ”にはやっぱり私の姿が「ホントはタクシーに乗りたい」という風に見えたのか。
ゆいレールに乗って美栄橋駅へ。またも美栄橋にて下車。多分,10回は乗っていると思うが,いまだ美栄橋から先は未乗車区間である……国際通りに出ると,交差点のすぐ角にあるステーキ店には外で待つ客の列が。そして,そのほとんどが外国人。明らかに日本人とは骨格も筋肉も違う人種だ。やっぱり,週末の晩飯は豪勢にガッツリということだろうか。
今夜の宿泊先は「ホテルシーサーイン那覇」だ。チェックイン予定は20時だったが,10分前に到着。宿泊は昨年7月以来2回目(「サニーサイド・ダークサイドU」第3回参照)。12月に一度泊まり損ねているので,今回はその“リベンジ”でもある。もっとも,1カ月前には同じ建物内にある料理店「結」で“チャンポン”を食しているから(「沖縄はじっこ旅V」第9回参照),全然“久しぶり感”はないのだが。
取り急ぎチェックインを済ませ,荷物を少し置いて再び外出する。後頭部がズンズン痛かったときは,2カ月連続で「結」でいいと思ったのだが,やっぱり“あそこ”があきらめきれず外出することにしたのだ。その「結」はといえば,ほとんど客がおらずガラガラだった。もっとも,明日はこの「結」で朝食を取ることになる。2回連続で同じ場所というのは,やっぱり不毛だろう。

その“あそこ”とは,2カ月前に寄った「花笠食堂」である(「前線と台風のあいだ」後編参照)。そのときに入って気に入り,ここを那覇に来たらいつも入る食堂にしようかと思ったのもつかの間,先月は満席のために入れず,上記「結」での食事となったのだ(「沖縄はじっこ旅V」第9回参照)。今回これまた,そのときの“リベンジ”である。
フツーの食堂だから,もしかしたら閉まっちゃうかと思ったが,まだ営業していた。ちなみに,21時までの営業のようである。直前に私の前をバイクツーリングらしき若者5人組が通り過ぎた。そして彼らもまた,私と同じことを考えていた。食堂のある路地に一足早く入られたときは「やばい」と思ったが,彼らがバイクを所定の位置に停めている間に,私が先にスッと入り込んだ。やっぱり,5人の後に注文するのでは,それなりに時間がかかるかもしれないではないか。
時間は20時になっていたが,店内はあいも変わらず賑やかで人が多い。居酒屋とは“形態”が違うから,時間的にはそろそろ静かになってもいい時間だが,これからが“本格的な時間”といわんばかりの賑やかさである。一瞬,入るのをためらってしまったが,女性店員から「どうぞ空いてますよ,入ってください」と声をかけられたので,ホッとして入ることにした。混んでいる中をズンズンと入って,なおかつ自分が入ったことをアピールできるほど,私は気が大きくないのだ。
今回座ったのは座敷の2人席だった。壁に隠れて分かりづらかったが,座敷も奥のほうはかなり空いていた。そして出る客も結構いるから,なんだかんだでも入れてしまったのだ。店員の女性が来るとともに注文。頼んだのは「スペシャルランチ」というやつ。750円。前回同様,お茶代わりに出てきたのは“午後ティー”…じゃなくて,甘くした紅茶である。
注文後にしばし待っていると,件のツーリング5人組がドヤドヤと座敷に入ってきた。そして,ウダウダと何だか細かい注文を出していた。見た感じは大学の先輩・後輩の間柄。ケータイがどうのこうのと,会話の“レベル”がいかにもバカ者…いや若者らしい。後で彼らが食事を持ってきた店員と会話をしているのを聞いていたのだが,その5人のうちの1人がどうやら沖縄県出身で,彼の故郷である沖縄をみんなでツーリングという感じになったようだ。
さて,10分ほどして出てきた「スペシャルランチ」。直径25cmほど,昔実家で使っていたヤツにそっくりな食器にのっていたのは@直径10cmほどのトンカツA同5〜6cmほどの白身魚のフライB豚の生姜焼CスパゲティミートソースD生野菜というラインナップだ。あれもこれも欲張りたい。とにかく腹ペコだからいっぱい食いたいという,いかにも若者向きのディッシュである。私がこれを食べてもいろんな意味で“大丈夫”と言えるには,ちょっと年齢が過ぎているかもしれない。
ふむ,なるほど「スペシャル」ではあるが,それは「量のわりに“スペシャル”と言えるほど安い」という意味で間違いあるまい。味はきわめて「オーディナリー」である。Cのミートソースは,間違いなく業務用の缶詰だろう。Dはサウザンアイランドドレッシングがかかったキャベツだった。これに白米ワカメのお吸い物,そして“ぜんざい”という名のおしるこがつく。締めは当然ぜんざいになるわけだが,こやつがとても甘くって紅茶が進む進む。昼が小さめの沖縄そばとパック詰めのジューシーだったから(第1回参照),結構腹も空いていたのだろう。ガツガツと勢いよく食っていき,10分ほどで店を出る。
宿への帰路。時間からか,だいぶ店が閉まっているアーケード街を歩いていたら,青いシートがかかった店舗。昨年末に不審火で店舗閉鎖したと看板に書かれてあった。そうそう,昨年末にこの辺りで放火事件があったのだ。伊平屋島に泊まっていて,そんなニュースを観た記憶があるのをふと思い出した。「ちぐさ物産」という健康食品を販売する店舗があったようだ。
こうして,20時半に宿へ帰る。テレビを観てくつろぎながら,室内に置いてあった体重計が気になったので乗ってみる。すると,針は残酷にも“70”をピッタリと指した。うう,やっぱり「スペシャルランチ」はカロリーも「スペシャル」だったのだ。まあ,年末に月に2回もピザのMサイズを昼食で一気に食ったし,年末年始も伊平屋島で結構食ったから(「沖縄はじっこ旅V」参照),このくらいになっても当然か。でも,これじゃいよいよダイエットしないとマズイなぁ。そもそも,昨年10月の肝機能の再検査で,肝臓に少し脂肪がたまっているから痩せろって言われていることだし(「管理人のひとりごと」Part23参照)。

Aリベンジ座間味島
翌朝,7時半ピッタシに「結」へ行く。前回宿泊時は「那覇第一ホテル」で,豪勢ながらヘルシーな朝食を食べたのであるが(「サニーサイド・ダークサイドU」第4回参照),今回は9時には那覇を出なくてはならないから,手っ取り早くホテル内で済ませようと思った次第である。メガネのオバちゃんがトイレにでも行こうとしたのか,外に出ようとしたところをつかまえる。
店内はまだ,客は誰もいない。そして,なぜだか某宗教家の説法のCDか何かがかかっている。氏の著作が400冊を突破したとか言っていた。そして“無償の愛”をテープの女性の声が説いていた。店内に誰か信者がいるのか。はたまたこのホテルが氏の定宿だったりするのか……ま,いいや。誰もいないことだし,国際通りを見下ろす座席に座ることにしよう。
朝食には洋食と和食があるとのことで,前日のチェックイン時に言うわけだが,今回は和食を食べることにする。出来合いのものがすぐに出てくるわけではなくて,5分ほど待った。その間にフリードリンクでアイスコーヒーをいただく。寒くもなく暑くもない店内。ちょっぴり優雅なレストランでの日曜の朝食。うーむ,これも説法の影響か。いや,ひょっとして女性の穏やかな声がよほど“魔性”なのだろうか。
プレートに乗って出てきたのは,@スクランブルエッグ(ケチャップつき),A4分の1スパムとウインナー2本Bめざし2匹とインゲンのソテーCポテトサラダD野沢菜と大根の漬物E味付け海苔Fごはんとかき玉味噌汁Gフルーツ(いちご・キウイ・オレンジ)というラインナップ。もっとチャちいのかと思ったが,思いのほか豪勢だった。これらを粛々と食す。一番美味かったのはCだろうか。もっとも,醤油をかけてしまったので,本来の味なんて分かりやしないのだが。
メシを食うと,とっととチェックアウト。「お疲れ様でした」なんて言われた。価格は何とかキャンペーンとやらで6995円(うち朝食が800円)。ただし,現金で前払いである。外に出ると,タクシーが1台待っていた。これから向かおうと思っているのは泊港。今日は座間味島に行くのである。シーサーイン沖縄から泊港までは,てくてく歩いてみても20分ほどであるのだが,昨日の疲れも少しあることだし,ムリをせずにここはタクることにする。
タクシーは,国際通りから沖映通りを経由して国道58号線をかっとばしていく。朝8時だと,さすがに車も少ない。一言二言くらいは世間話をしたのだろうか,5分ほどで泊港に到着してしまった。停めてもらったのは,座間味行きの高速船「クイーン座間味」の待合室の真ん前である。ちなみに,その隣は7月に行った渡嘉敷島行きの乗り場(「サニーサイド・ダークサイドU」第5回参照)。ここまで510円。初乗りが450円だから,言い方が正しいか分からないが,“ツーメーター”である。運ちゃんにも言われたが,時間はまだ8時10分と早い到着。まあ,時間が余ったならば,待合室で持ってきた文庫本を読むなり,周囲をプラプラすればいいや。
私が1000円札と10円玉を出すと,運ちゃんが「すいません。初乗りなので釣銭がなくて……ちょっと待っててください」という。そして,建物の壁のところにあった自販機でさんぴん茶を1000円札で買って,その釣銭の中から500円玉を私に渡してくれた。どのくらいホテルの前で待っていたかは分からないが,待ち伏せする余裕があったわりには,随分用意が悪いものである。

「クイーン座間味」の待合室は,これまた古ぼけたコンクリートの平屋建て。失礼な喩えだが,この建物よりもキレイな公衆トイレをいくつも知っていると思うくらいに古ぼけている。中では,まだ数人だが待っている客がいた。そして,港にはすでに白亜のクルーザーみたいな船が停泊している。乗り場にはチェーンがかかっていて,30分前にならないと乗船させないようだ。
待合室の一角にある窓口には,“ホリエモン”みたいな雰囲気の男性が1人座っている。彼のそばには,古ぼけた建物にはおよそ似つかわしくない,最新のスタンド式液晶モニターがついたパソコンがある。これでチケットを出力したり,名前を入力したりするのだろうが,何とも建物の古さとアンバランスというか……おそらく,建物は昭和の何十年代に建ったものだろう。そして,パソコンは昨年とか一昨年あたりの購入だろう。一つのスペースで“昭和”と“平成”…はたまた“20世紀”と“21世紀”を行ったり来たりしているのは,何とも不思議な空間である。
早速,高速船のチケットを購入すべく申込書を書こうと思うが,実は座間味島に行く前に阿嘉(あか)島という島にも行こうと思っているのだ。クイーン座間味は9時に泊港を出航すると,まず50分で座間味島に到着。10分の待ち合わせの後で阿嘉島に行くことになるのだ。ということで,行きは阿嘉島まで購入することになるのだ。ちなみに,座間味島・阿嘉島とも運賃は同じである。
その後は,阿嘉島で1時間半程度上陸。そして「フェリー座間味」という,高速船より1時間遅く10時に泊港を出るフェリーが,11時45分に阿嘉島に先に寄るのでそれに乗って座間味に渡り,座間味島を見学後,16時20分の座間味発のクイーン座間味で泊港に戻る。これが今日のルートである――ということは「泊―(クイーン座間味)―阿嘉―(フェリー座間味)―座間味―(クイーン座間味)―泊」というルートのチケットを,最終的には買わなくてはならないのである。
早速,“ホリエモンもどき”にその旨を伝え,どう申込書に書くべきか指示を仰ぐと,ここで買えるのは高速船のみだという。すなわち「泊―阿嘉」「座間味―泊」の2区間である。そのように書いて提出して,一応は往復料金ということで5230円を払う。では「阿嘉―座間味」のフェリーのチケットはどうするのかと聞いたところ,「島からの出発分は島で買ってください」と言われた。ということは,阿嘉島で直接買ってくれということだ。なるほど。
港側の出入口脇には売店があり,道路側の出入口そばにはコインロッカーがあった。今朝の気温はおそらく20℃近くはある。これから気温は上がっていくだろうし,となればジャンパーはまず邪魔だ。プラス持ってきたMDカセットも,おそらくは座間味島ではサイクリングをすることになるから,必要以上は邪魔になる。これらの荷物は預けておいても,どっちみち戻ってくるから差し障りはあるまい。バカでかいスペースがあってかつ300円かかるのは,少しもったいない気もするが,今後暑くなるかもしれない中を,荷物を抱えてヒーヒー言うことを考えれば安い出費である。
ところが,ロッカーに貼られた表示シールをよく見ると,コインロッカーを開けられる時間は7〜17時とあるではないか。クイーン座間味が泊港に戻ってくるのは17時10分。うーん,この10分でコインロッカーが開けられなくなって,そのまま東京にも下手をしたら帰れなくなる……ってことはまずないかもしれないが,そーゆーときに限って“何かがある”のが,世の中ってもんである。こりゃ,あるいは別のコインロッカーを探したほうがよさそうである。
ということで,入江状になった泊港の一番奥に位置する巨大な建物「とまりん」に向かうことにする。間違いなく,ここならばコインロッカーの一つや二つはあるはずだ。距離にして200〜300mほどか。この距離は決して歩けない距離ではないが,やっぱりどこか「損をしている」感覚になるのは,ダイレクトに乗り場に行ってもらったからだろうか。
その「とまりん」には,フェリーの窓口が集まっている。高速船のそれとは上述のようにかなり離れている。そして当然だが,フェリーと高速船とでは繋留される場所も違う。実際「とまりん」の前には,渡嘉敷島・座間味島双方の島へ行くフェリーが泊まっていた。船舶の種類で統一する感覚は分かるし,混在していると事故が起こりやすいとかいうのもあるのだろう。とはいえ,同じ行き先なのに船舶の種類で乗り場が違うのは,素人考えかもしれないが,かなり不便な気がする。ただでさえ,「近い島同士なのに,行政区が違えばお互いの島を結ぶ“公”の船舶がない」という不便さがあるというのに。
5分ほどで「とまりん」に到着。早速,中に入るとコインロッカーがあった。値段は同じく300円。だが,ここの“開けられる時間”は7〜19時までとある。ってことは,今日中に帰ってくる分には間違いなく大丈夫だろう。もしも,座間味から帰りの高速船が出なくても,座間味発の午前の便は10時発だから……って,そういう問題ではないか。ひとまず,ここに邪魔になりそうな荷物を入れる。
この「とまりん」は,楽器のアコーディオンみたいな形をした建物で,地上は10階以上あるだろう。ほとんどは,たしかホテルになっているのではなかったか。その1階が船舶用のターミナルとなっているのだが,“基本中の基本”である売店はもちろんあり,“オプション中のオプション”であるキャッシュサービスのATMもある。後者はでも,使う人間がいたりするのだろうか。離島からやってきた人が那覇の街に繰り出すのに,まずはここでお金を下ろす……そんな構図しか思い浮かばない。
いくつかある窓口を見てみる。今回行く予定である座間味島行きの窓口のそばでは,ホエールウォッチングのツアーの勧誘をやっている男女がいた。そう,この季節は慶良間諸島ではクジラがよく見られるのだ。中でも,座間味島にはホエールウォッチングの本格的団体があって,ツアーの内容もかなりしっかりしている。あるいは,彼らはその一つのメンバーだったのかもしれない。でも,こちらはわざわざそこまでしてクジラさんは見たいと思わない。第一,見に行くったって,100%見られる保証はないのだ。それでいて,払った金が返ってくるわけでもないだろう。あわよくば,船に乗っている最中に偶然に見られれば万々歳って感じである。
その代わりといってはヘンだが,よほど座間味村の地図みたいなものが欲しい。渡嘉敷村のそれは,ラックにもたくさん入っていて便利なのだが,座間味島のヤツはどこにもない。観光案内みたいなスペースが一角にあったが,そこでも渡嘉敷村のは「ご自由にお持ちください」で,座間味村のは「ご自由に閲覧ください」なのだ。仕方がないので,ダメ元で座間味島行きフェリーの窓口で地図があるか尋ねたところ,しっかりした写真つきの大判の地図をくれた。もちろん,カラーである。うーん,言ってみるものだ……って,いやいやちゃんとラックにも補充しろって。
――再び「クイーン座間味」の乗り場に戻ると,ボチボチと乗船を開始していた。早速,私も乗船する。中は100人くらいは入れる大きさだ。前方と後方で半々ずつ座席は分かれているが,とりあえずは前方に座ることにする。もちろん,取るべき座席は窓側である……とはいえ,夏場こそビッシリと埋まるのであろうが,この時期は間違いなくオフシーズンだろう。乗船率は20%程度しかなかった。「おい,冬はクジラさんがいるではないか」――そうアピールして食いついてくるほど,残念ながらクジラさんには魅力はないのだろう……いや,クジラさんの“名誉”のために言えば,彼らの生きる姿に感動できる心の持ち主が,こちら側に少ないだけなのかもしれない。

9時,予定通り出航。上述の“ホリエモンもどき”が,最後に繋留用のロープをほどいていた。彼の役目は,いかにもキャラに合いそうなパソコン操縦だけではなかったようだ……上空の天気はというと,晴れたり曇ったりといった感じだ。波は,外洋に出るときに少し揺れたような気がしたが,もしかして単なる思い過ごしだったのか。そのくらい,今日の海上は穏やかである。こんな日は,この時期にしては珍しいかもしれない。ひょっとして「卒業旅」を銘打っているから,神様がささやかな穏やかさを“プレゼント”でもしてくれたのだろうか。(第5回につづく)

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