沖縄博打旅

(1)プロローグ
石垣空港,10時5分着。今回座った座席は2Aで,一番先頭の左側で出入口にもっとも近くて,しかも通路側二つが空いていたもので,初めて一番で降機する。いつもはもうちょっと遠いところで降りて,バスで50m程度ほど移動していたと思うが,今回はそのまま歩いてターミナルに入ることになった。空はほどよい青空が広がっていて暖かい。これぞ,沖縄って感じのマイルドな暖かさ。昨年の今ごろの沖縄とは大違いである(「沖縄はじっこ旅V」参照)。スタスタと建物の中を通り抜けて,プレートを持ったホテルやレンタカー屋の何人もの従業員の脇を通り抜けて,出待ちのタクシーに乗る。
タクシーは淡々と空港の脇を抜けていく。ものすごく順調である。とても“博打旅”のようには思えないくらいに順調である。とはいえ,もしかしたら波乱の前の静けさになるのか。はたまたこのまま静かに旅は進んでいくのか……そんなこんなしているうちに,国道390号線のバイパスに入って,少し車が多くなってきたと思ったら,たくさんの車が駐車されているスペースが現われた。次第に港湾施設っぽい雰囲気が辺りに漂ってくる。
そして,白い瀟洒な高い建物のところで左折すると,一気に“庶民人口密度”と“タクシー密度”が増した桟橋に入り込む。10時12分,いくつもある乗り場の真ん中あたりで降車することに。ほとんど信号待ちにひっかからずにあっという間に着いたから,それほど金がかからない……というわけではなく,しっかりとデジタルメーターは「810」の文字を点滅させていた。
降車してから最初にすべきは……緑の公衆電話を見つけることである。無論,ケータイは電波が3本しっかり立っていて,使おうと思えば使えるのだが,3軒ほど立て続けに電話を入れたりするものだから,時間は大してかかっていないくせに料金だけは劇的に上昇するを起こすケータイは,何となく使うのがためらわれたのだ。それでも,右手に並ぶ各観光会社の中に緑色の公衆電話を見つけることができた。運良く財布には10円玉が4枚あった。早速,電話をかけ始めることにしようか。

さて,ここで話題がズレるが,今回の旅の予定から,なにゆえ“博打=ギャンブル”になるのかを説明していきたい。もちろん,上記の電話とも関連してくるのだが,まず結論から言えば,今回行きたい島とは鳩間(はとまじま)と新城(あらぐすくじま)の二つである――まず,前者でピンと来るとしたら,それは昨年の春に日テレで放映されたドラマ『瑠璃の島』の舞台になったことでだろうか。島内では,このドラマの影響がよくも悪くも出たという話である(このドラマの原作になった,森口豁氏の著書『子乞い〜沖縄 孤島の歳月』は「参考文献一覧」に紹介している)。
私はそれ以前からもちろんこの島を知ってはいた。しかし,アクセスといえば,定期船が1日1便のフェリーしかなく,しかも日曜日は休航。でもって,その“1日1便”も“1往復”ではなくって,石垣港から鳩間島経由で西表島の上原港に行き,上原港からは石垣島に直行というルートなのだ(ただし,水曜日の便だけは石垣港から先に上原港に行き,帰りに鳩間島を経由して石垣港に戻る)。すなわち,私が沖縄でよくやってきた「次の便が来るまで3時間滞在」とか「終点からここにまた戻ってくるまでの間に滞在」とかいう“技”が使えない島なのだ。それもあって,いまだ未踏の島なのである。
一方,後者は別名“パナリ”とも呼ばれる島。北側の上地(しもじ)島と南側の下地島から成っている。でもって,二つが離れていることから“パナリ”と呼ばれている島だが,こちらは,八重山諸島の中でもっとも観光地化されていない有人島と言えよう。人口もわずか7人(『やえやまGUIDE BOOK』より→「参考文献一覧」参照,以下『やえやま』とする)。あとは,今は作る人間自体もいなくなってしまったため,すっかり幻になってしまったという“パナリ焼”の産地ともなっている(以下,便宜的に新城島を「パナリ」と呼ぶ)。
でもって,これまた何よりも大きいのが,こちらパナリには定期船すらないのである。住んでいる人間は,あるいは自分の船舶を所有しているだろうが,観光には当然だが使用はされないのだ。1年に1回の豊年祭が行われる季節になると,石垣島から臨時船が出るそうだが,それもあくまでそのときだけのもの。よって,パナリには石垣島または西表島からのダイビングツアーかシュノーケリングツアーなんかで行くか,はたまた個人で行きたければ船舶をチャーターすることになる。無論,チャーターというからにはそれなりに高額になることは想像できる。もちろん,こちらもまた未踏の島だ。
そんな中で,いろいろとインターネットで情報を求めていたら,西表島は大原港そばにある「あずま旅館」という旅館のホームページに辿りついた。そこに書いてあったのも含めて内容は,パナリにこの旅館の別荘があって,泊まり客には宿の船でもって“客の時間に合わせて”島へ上陸できるというものだ。1人8000円,2人以上6000円という金額は決して安くはないが,ダイビングとかシュノーケリングとかをやらないにもかかわらず,機材代なんかを不毛に取られるのに比べたらマシかもしれない。ま,それ以前にやらないのならば参加もできないかもしれないし,夏季限定で催行されないだろう。
ということで,今回の旅の宿はこのパナリ行きも兼ねて,あずま旅館に決めることにした。これで,2日のスケジュールとしては,@石垣空港―石垣港―大原港へと移動。A宿に荷物を置いて午後からはパナリツアーに参加,Bそのままあずま旅館へ投宿――という形ができた。そして,12月に入ってからまず宿へ電話を入れたところ,OKだという(無論,それ以前に飛行機のチケットをキッチリ取ったのではあるが)。そして,ある意味では宿のことよりも肝心なパナリ行きについてもOKという。でもって,「何時からというのは決まっているのでしょうか?」と聞いたところ,応対してくれた中年オバちゃんらしき女性いわく「…ま,天気によります」という返事だった。
こう聞いたのは,ホームページに特に時間が書かれていなかったから聞いたのであるが,他の観光ホームページを見ていると,既述のように“客の時間に合わせて”とあった。こちらも特に何時に着くとは言っていなかったが,案外その辺りは何とかなる……かは正直分からないが,年末に何やかやと忙しかったり,生来の小心者気質とがもあいまって,詳細を聞かないまま当日を迎えることとなってしまったのが,実は正直なところであると言っておこうか。
そして,話題は長らく外れていた鳩間島のほうに移るが,こちらは定期船では日帰りができないとなると,これまた主に西表島の西部地区から出ているダイビングツアーかシュノーケリングツアーなんかで行くのが通例だ。とはいえ,既述のようにそれらをやらないとなれば,あとは……ということで,こちらもインターネットで調べていたら,ヤシガニNET「鳩間島の総合案内」というホームページに辿りついた。それによれば,上原地区にある「デンサー食堂」が郵便船を出しているそうである。いわば“委託業務”なわけであるが,名前は「ふさきや丸」。これに便乗することができるというのだ。片道1000円。さらには上原港発が10時半と14時,鳩間港発が11時と14時半とあった。鳩間島は周囲が4kmという小ささなので,10時半の船で渡り,14時半の船で帰れば十分見学時間は取れる。
ということで,3日のスケジュールとしては,@まず朝のうちに大原から上原に移動。これは西表島交通のホームページで路線バスの時刻を確認したら,8時半に大原を出発するバスが9時半ぐらいに上原付近を通過するので大丈夫だ。A上原港で朝1便のふさきや丸に乗船して鳩間島へ。そしてB帰りは昼のふさきや丸の帰り便で上原港に帰るC上原港から石垣港へ直接高速船で戻る,あるいは大原港までバスで戻ってから石垣島へ戻る――という形ができた。ちなみに,Cは上原・船浦などの西部地区行きの船が,冬場に欠航する可能性が高いことから来ている。年中催行している各観光会社の西表島内ツアーも,冬場はわざわざ西表島の玄関口を大原港に変更していることからも,石垣島への帰りのルートは二つ考えておいたほうがいいだろう。
こちらは,まず「ふさきや丸」の予約電話をクリスマス過ぎにかけてみた。ま,フツーの客船とは違うものだし,あんまり前に予約したってしょうがない。天気云々以前に,個人を前もって縛りつけるのもナンである。そんなに大勢訪れる島でもないだろうし,1人だったらば何とかなるだろう……そんなことを思って,12月25日の昼休み――もちろん,会社のである――に電話をかけてみたが,なかなか電話に出ない。デンサー食堂自体の営業時間は11〜14時・不定休ということで,営業時間中にかけてみたのであるが,あるいは不定休のほうになったか。はたまた忙しくて出られなかったか。もう一つ,個人宛てのケータイ番号も出ていて,こちらもかけてみたがつながらなかった。
そこで,改めて翌日,今度はちょっと早めの11時半ごろ,会社の外の公衆電話から食堂のほうにかけてみたのだが,すると今度は5〜6回のコールの後でオバアらしき女性が「はい…」と出てきた。思わず,こちらも慎重になって「…デンサー食堂さんですか?」と尋ねると,「いまさら何を?」とでも言わんばかりな感じで「はい」というレス。何だか拍子抜けしそうになってくる。
「あのー……鳩間島に出ている“ふさきや丸”って,
ありますよね?(ここで「はい」というレス)その件で
お尋ねしたいのですが」
「はい,どうぞ」
「これは予約とか必要なんでしょうか?」
「いや,時間に間に合って来れば大丈夫ですよ。あ
るいはチャーターされるんですか?」
「いや,チャーターはしません」
「じゃあ,(予約は)要らないですね」
「あの,時間は10時と14時ってヤツ,1日2便でOK
ですか?」
「あー……10時半だけなんですよね。ま,10時から
11時の間に来てくれれば乗せますよ」
なにー!? それじゃあ,ホームページに出ていたのはウソってことか。ま,あるいは時点が古くって更新がされていなかったのかもしれない。いずれにせよ,それでは予定が狂ってしまう。
「向こう(鳩間島)では,どのくらいいるんですか?」
「あー……30分くらいですかね」
うーん,30分はさすがに見学としてはキツいだろう。ましてや,好意が悪意に変わる可能性……なんてことを考えるのこの際やめとくとして,あんまりこちらのワガママを押し通すけにもいかない。郵便配達までするのか分からないが,“やるべき仕事”が終われば,あとは帰るだけというのが当然の流れだ。メインはあくまで郵便委託であり,人を載せるのはサブなのだ――ここは一旦作戦を練り直す必要が出てきた。「分かりました。その確認でした」と言って電話を切ることになった。
その後,改めて鳩間島経由の定期貨客船が出る八重山観光フェリーとか安栄観光などのホームページなどを確認したところ,火曜日は上原港行きのフェリーが鳩間島に到着するのが11時40分,出発は11時55分となっている――うーん,さすがに3時間くらいの余裕はなかったか。でも,仮に上記Aが10時半発と仮定して,鳩間島までは15分ほどの距離なので,フェリーまで1時間の余裕ができる。あるいは,もっと早めにふさきや丸が出ることになれば,それだけ鳩間島での見学時間が増えてくるだろう。ということで,上記C鳩間島・11時55分発の上原港行きフェリーの乗船へ変更する。
とはいえ,これについては例えば「当日の天候にもよる…」なんてのとは別次元で,かなり重要な問題がもたげてきた。すなわち郵便の委託業務で,言ってみれば請け負っている人の好意によるもの。そんなノリの中で,はたして1月3日の正月真っ只中のところで,一観光客のために船をわざわざ出すのだろうか,ということである。大きな観光地だったら正月も盆も関係ないかもしれないが,いくらドラマで有名になったといっても,鳩間島はまだまだそこまでメジャーな観光地ではあるまい。ましてや,しつこいくらいだが,これは個人の船舶なのである。
もっとも,正月の郵便というと年賀状がある。東京では1月2日は届かないが,3日には届いてくる。そのことは全国共通なのではないか。とすれば,この3日は鳩間島の住民に年賀状を届けるために,ふさきや丸が動いてくれる……かは正直分からないが,年末に何やかやと忙しかったり,生来の小心者気質とがもあいまって,詳細を聞かないまま当日を迎えることとなってしまったのが,実は正直なところであると言っておこうか――と,さっきパナリのときに使った文章をコピーしておく。

――で,ここでようやく電話のところに戻ることになる。ふぅ…いつもいっつも前書きが長くなるが,今回もまた長くなった。でも,それはこの長文学の特性だと思ってどうかご容赦いただきたい……ということで,今回電話で確認すべきことは,@ふさきや丸が明日動くかどうか(できれば予約も),Aパナリのツアーが今日の午後に出るのかどうか(ついでに宿に入る旨も)。これらは必須である。
さらにはB西表島交通の8時半・大原発のバスが明日出るのかどうかも聞いておこう。これは既出の『やえやま』にはこの便が書かれていなかったから。昨年2月現在というから,あるいは改定があったのかもしれないが,これが出ないとなれば,あるいはタクシーで上原まで行くしかないのだ。多分,これでも5000円はかかるだろうし,かといって単なる往復のためにレンタカーを使うのは不経済である。仮に上原で“乗り捨て”するにしても余計な金がかかってしまうだけである。
まずはBから確認する。出たのは若い男性で「通年で出ていますよ」という返答だった。これで明日の上原までのルートは見通しが立った。そして,次は@。数回のコールで上手いことつながった。向こうは前回と同じオバア。こちらのほうが実は心配だったが,
「ふさきや丸の件ですけど,明日って出ますか?」
「あー……出ますよ」
「予約とかは……?」
「いいですよ。時間に間に合って来てくれれば」
「じゃあ,予約はいらないですね」
「はい」
おお,これで完全に明日の予定が立った。そう思っていた。ところが,問題はAである。
「すいません。これからそちらに向かおうと思って
るのですが,パナリ行きのツアーってのは午後に
出てもらえるのですか?」
「あー……いや…明日ではダメですか?」
「明日ですか?」
「ええ,大体は前日に泊まってもらって,翌日の朝
から夕方までかあるいはお昼ごろまでって感じな
んですよ」
おいおい,これじゃあ“客の時間に合わせて”いないだろ…という気持ちは抑えてはおこう。そもそも,確認を前もってしていないこちらにも責任は一応はあるのだ。
「明日は何時に出られるのですか?」
「ええ,明日は8時半に出ようかと思ってたんです。
ちょっと別のところに行きますので」
「はあ……」
「分かりました。検討します」
やれやれ,これでは今日は何も観られずに,あずま旅館泊まりになるのか。さらに悪いことには,すぐそばにあった安栄観光の店頭に掲示されてある各離島行きの運航案内ボードによると,船浦行きの高速船が朝1便以外はすべて欠航になっているのだ。ということは,船浦に近い上原方面もまた欠航になるかもしれない。
そうとなれば,@パナリをあきらめて明日鳩間島の行きを優先させるか,はたまたA今日の上原港行きのフェリーにもし乗れるようであればそれに乗っかって,わずか30分ではあるが,鳩間島に降りられれば降りるか――今日の上原港行きは13時発。14時20分に鳩間港着,14時50分に鳩間港出港。それに乗ろうというわけだが,その前に船が出るかを安栄観光に確認しなくてはならない。ちなみに,曜日で運航会社が違っており,月・水・金が安栄観光,火・木・土が八重山観光フェリーである。
安栄観光のカウンターに入ると,同世代くらいの女性が対応。早速,今日のフェリーが出るのかを聞くと,「多分出ると思うんですけど,ここではなくて,向こうの案内所になっているんです」というと,彼女は地図を提示してボールペンで丸をする。いくつもある乗り場の向こうにある案内所のようだ。ホントは明日の分もついでに聞きたいところだったが,それは「明日にならないと分からない」と返ってくることぐらいは,容易に想像できる。
その案内所は,プレハブでできた“小屋”という言葉がピッタリなくらいに“小屋している”雰囲気だ。しかし,その中に入るまでもなく外に掲げられていたプレートに「鳩間・上原 欠航」とあった。これで,今日の鳩間島行きは不可能となった。ということは明日……とは思ったが,この調子だと明日も欠航の可能性が否めない。片やパナリは大原航路に近い場所にあるから,こちらのほうが確実に行けるかもしれない。鳩間行きのふさきや丸が仮に出るにしても,30分で戻ってこなくてはならないのだ。それよりは,ある程度じっくり時間の取れるパナリをメインにしたほうが,ましてや定期船が通っていない島なのだし,行くメリットは大きいであろう。
これにて,スケジュールは明日パナリに行くことで確定。今日ははて,竹富島にでも行こうか。最近2度行っていても(「沖縄標準旅」第6回「沖縄はじっこ旅U」第8回参照),まだ行っていないアイヤル浜にでも行こうか。観光客も少ないというし……あるいは西表島は仲間川のマングローブを見に行くという手もある。こちらは12年前の初沖縄旅行で一度行っているのだが,あるいは何か変わっているかもしれないし,何気に12年前に行ったところって,ここ3年ほどの旅で再度周っているのだ。そして,仲間川を見れば,12年前見たものをすべて見たことにもなるのである。できれば二つとも観てみたいところであるが,仲間川の時間がはてどうなっていたか。たしか,9〜15時で4便出ていたようなおぼろげな記憶はあるが,パナリの件もあったし,確認はちゃんとしておかなくちゃいけない。
そうとなれば,確認の電話を…と思ったが,あいにく仲間川のマングローブツアーの運営会社が分からない。はて,117でいちいち確認すべきか……しばし思案していると,何気に振り返った先に「西表島観光センター」の看板が見えた。その下には「仲間川」の文字もある。早速中に入って,運航時間を確認すると,11時と13時5分の2便だけだという。予約は不要で,現地でチケットを買えば事足りるという。竹富島はあるいは明日のパナリの帰り次第で寄るというのも手だ。
なので,今日はこのまま西表島に渡って,仲間川ツアーに参加することにする。残った時間は大原集落と古見集落をぶらついてつぶそう。二つの集落とも,昨年7月に通って軽く見てはいるが,レンタカーだったものであまり細かくは見ていないのだ(「西表リベンジ紀行」第2回参照)。今回徒歩で周ることで,前回見ていなかったところを見るのもいいだろう。とりあえずは,11時発の大原港行きに乗るべく,運航会社の安栄観光にて往復の「石垣―大原」のチケットを買うことにする。2930円。「船浦方面へのバスの乗り継ぎはよろしいですか?」と聞かれたので「いいえ,大丈夫です」と答える。そうだ,船浦港行きが欠航するときは大原港行きに乗船して,大原港からバスに乗せられるのである。

うーん,これでようやく“ギャンブル”だった予定が,確実なものになった。時間はすでに10時40分。そろそろ乗船できる時刻だが,まだやっておくことがある。明日着るTシャツの調達だ。実は行きに乗ってきたJTAで,2000円のオリジナルTシャツが気になってはいた。表面がシンプルに「TRADITIONAL ISLANDS」という文字のみ。裏面がシーサーの絵柄になっているものだ。地は白で,なかなかよかったのだが,残念ながら買いそびれてしまった。
なもので,半年ぶりにまたTシャツショップ「SABO石垣島」(「西表リベンジ紀行」第1回参照)に行くことにする。港周辺の土産物屋には大したものがないかもしれない……店の場所を知っているのは大きい。スッスと信号無視なんかもしたりして(…),1分で店に到着。若いカップルがいろいろと物色している中,こちらは時間があまりないのでインスピレーションでスパッと選ぶしかない。これまた1分で,オリーブ地に島草履がかわいらしくデザインされたものを購入することに。2500円。
再び港に戻り,安栄観光の高速船に乗り込んだときには,すでに後方デッキの座席は人がビッシリ。ステップを降りて前方の座席に行くと,これも後方がすでに満席。運良く前から2列目に3人席が丸々空いていたので,その窓側に座ることに。すると,座るやいなやそばにいた中年の係員が「揺れるから気をつけてね」と一言。そうだ,前方は後方よりも揺れるのだ。もっとも,ジェットコースターのようにはならないだろうが,軽くジャブを浴びた気分にはなった。大原航路がそうならば,船浦・上原航路が欠航なのはやむを得ないところだろう。
船内はやがて,前方までギッシリ人が埋まった。3人席は,例えば真ん中だけ共有の空きスペースができているってこともなく,私がいたところはすべて3人埋まった。後から来た観光客は,哀しくも座席はバラバラになってしまったようだ。うーん,船浦航路が欠航になった影響がこうしてモロに出ているのだろう。単純に“倍の客”が入り込んでいるのだから。
11時ちょい過ぎ出航。何だか11時なったのに,誰かのケータイがやたら鳴りまくっていたが,係員のものだったようだ。業務連絡だったのか。それで少し遅れたのは明らかだろう……あ,そういや,あずま旅館へのパナリ行きの件の電話はどうしようか。…ま,いいか。これから宿に入って話をしても,多分間に合うだろう。そんなに多く行くんじゃないんだろうし。
出航と同時にマイクでのアナウンス。「港を出て3分間ほど大きく揺れます。前方の方はどうぞご注意ください」――そして,その言葉通り,港の防波堤を越えたところで,大きく“バンバンバン!”と音を立てて船体が海面に叩きつけられ,波しぶきをそのたびに大きくかぶった。船内からは軽く「ヒャー!」なんて悲鳴も出た。私からも思わず「オオ!」という低い声が漏れる。当初の気象予報では波の高さは2.5mとあったと思う。過去の沖縄での船旅からして,そのくらいならば欠航なんてあり得ない感じもしてくるが,それは“海なし県”で育った人間の哀しい無知だったりするのだろうか。(第2回につづく)

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