沖縄標準旅(全9回)

A国際通りpart2
松尾にてバスを下車。目の前にはインポートものの洋服店。中に入ってみると,米軍の,中古品だか新品だか分からない洋服だとかバッグだとか雑貨類の店のよう。値段は,まあ渋谷・池袋の安い洋服店と同じくらいか。特別安い感じはしない。第1回でも触れた沖縄市でもそうだった。要は,着る人のアメリカに対する思い入れの度合いで,価値なんて決まるものなのだろう。しかし,私には場違いな気がしてとっとと出る。
牧志方面に向かって歩き出す。さっきはいま進んでいる方向で行くと,逆の通りを歩いてきた。バスは左にドアがあるから,必然的に(?)そうなる。同じ道を歩くのはつまらないから逆を歩く。これまた必然(?)である。こっちも土産物屋が多いし,喫茶店もある。なんだか琉球カレーとかいうのもあるようだ。
土産屋の中では,とあることを発見する。缶づめ5缶入りつめ合わせであるが,銘柄を見てみると「SPAM」とあり,その他脇に「ウインドミル」「チューリップ」というのもあった。どうやら,スパムというのはブランドの1つで,曙が「スパム」と言ったのは例えれば,「コンビニ」を「ローソン」「セブンイレブン」と店名で言ってしまう感覚なのだろう(第3回参照)。逆に「スパム」と言うほうが一般的なくらい,高い支持を得たブランドのようだ。よって,あの加工されたハムは「ポーク缶」と言うのが正式ということだ。

それにしても,バスを待っているときに止んだ風がまた強くなっている。歩いていて再びかさを裏返しにされる。どこかに避難せねばと思っていると,三越まで来た。とりあえず入るが何も変わったものはない。再び外に出て,目の前に「OPA」に入る。どうやら,6階にタワーレコードがあるようなので,エスカレーターに乗る。
「OPA」がどんな建物かをいまさら説明することもなかろうが,若者が多いことはたしかだ。ABC‐MARTもあるし,その他ファッション関係のテナントが多い。6階に辿り着く。
入口すぐのおすすめのブースには,沖縄で大ブレイクしたという,「Amy‐N‐Ryoo(エイミーアンドリョウ)」という2人組の女性デュオのCDがあった。とりあえず聞いてみると,R&Bやらレゲェやらヒップホップやら,これがホントのチャンプルーって感じだが,元々自分がこの系統をあまり好まないせいもあるかもしれないが,どれもこれもありがちな感じで,大していいとは思わなかった。パンフレットがあるが,顔はKiroroと同レベルか,下手したら0930(オクサマ)か。衣装も,着物にブーツでチャンプルーだ。ま,多分全国ブレイクは難しかろう。
その他,沖縄シリーズで一ブース設けられていたが,誰かがヘッドホンを占領していたので,あきらめて退散する。

外に出て,隣接する市場本通りに入る。アーケード街で,昔ながらの庶民的な匂いがする。道幅は4〜5mほどだろうが,うち両端1mほどは陳列棚である。1軒の敷地自体は10畳ほどだろう。となれば,店内に置ける商品の量なぞたかが知れているし,結局は外に出さざるを得ないということだろう。よって道幅は1〜2mほど。大晦日とあって人が多く出てきているので,閉塞感やらゴミゴミ感やらを覚えてくる。
それはそうと,ちょうど昼の時間。タコライスの店を探さなくてはならない。しかし,おばさん連中の着る服だとか,お菓子類,雑貨屋,あるいは沖縄で有名なブルーシールのアイスクリーム屋はあっても,タコライスの店はなかなかない。交差する道に入っても,ソーキそばの店があって繁盛しているが,お目当てのタコライスの店はなかなか見当たらない。アーケードを出てどこかの路地裏をぐるぐる廻っているうちに,本通りの入口に出てしまう。
それでは朝見つけた店辺りをと思い,国際通りを松尾方面に向かうと,小洒落たタコライスの店を発見。「国際通りで一番おいしい店」と店頭に看板がかかっている。面白そうなので,ここに入ることにする。

この「ベーカリーカフェ W‐crop」は,名前のとおりメインはパンで,セルフサービスのような店らしい。ドリンク類もいくつかあったが,タコライス(600円)のみ迷わず注文。一瞬の不思議な沈黙の後,会計。とりあえず近くの席に座り,ブツを待つ。
1〜2分してタコライス登場。千切りキャベツが山状になっていて,その頂上にトマトのみじん切りが乗っかっている。脇にトマトベースのソース。おそらくは、タコスが元だけにサルサソースと思われる。それをかけてほおばると,キャベツのヒンヤリ感とともに,ご飯のあったかさが。それと同時にひき肉の温かさ・ジューシーさと,乳製品ぽい味。黄色いのでとろけるチーズだろう。ソースはやっぱりサルサソース。すべてがミックスされると,なるほど「ウケる味」だと思う。キャベツのヒンヤリ感は,決して嫌味がなく,いいアクセントだ。ボリュームがあるとかどっかに書いていたが,腹八分か。女性にはたぶんちょうどいいだろう。ただし,サンプル1軒につき,「国際通りで一番おいしい店」かは立証できなかったが。
ふと左前に目をやると,マガジンラックが。Non‐noやオレンジページ,そして「ベッカム様」だ。ここは女性向きの店のよう。そういえば客は数人だが,店員も含め自分以外はすべて女性だった。

B牧志公設市場
再び市場本通りに入る。客足が大分出てきている。さきほどタコライスの店を探そうとして交差する道に入るとき,20〜30人ほどの列を見た。その列の先が牧志公設市場である。とりあえず入ってみることにする。
その列の先頭は,入口すぐの手打そば屋だった。食べるのではなく,麺のみの販売。中では従業員が麺を袋に小分けする作業に追われている。無論,「年越そば」である。そういえば,昨日ホテルのテレビで麺の小分け作業の中継をやっているのを見たが,ここだったかもしれない。照明で,黄色い麺の色がキレイに光る。
さらに中を進む。さぞ年季が入っているのだろう。古い建物独特の匂いがはっきり分かる。加えて,生鮮食料品のいろーんな匂いが混じって,表現の難しい匂いになっている。幅1.5mほどの通路が碁盤の目のように走っていて,そこには人やら店員やらでごった返す。大晦日ゆえ余計にだろう。店員は誰一人として開店休業みたいにボーッとすることなく,しきりに「安いよ」「いかがですか」と勧誘してくる。実に活気がある。
途中でエスカレーターがあり,2階へ。食堂街だ。といっても市場の食堂街。清潔・品性・優雅・整然とは無縁の,ホント庶民的な食堂街だ。間違ってもここを「レストラン」街などと称してはいけない。老若男女入り混じって,1階の勢いをそのまま持ち込んだように,実に賑やかだ。酒を飲む人も目立つ。ラーメン・丼ものも沖縄料理もチャンプルーである。なかには,市場で買ったものを調理して食わせてくれるところもあるようだ。
再び1階に下りて,どこが何だか分からないまま進んで行く。さながら,東南アジアのどこかに行ってしまったような気分だ。

精肉。まず豚については,“内外”問わずいろんな部位が売られている。三枚肉と呼ばれている肉の塊は,飛ぶように売れる。そばに入れたり,煮込んでいわゆる「ラフテー」にするとか。しかし,やっぱ衝撃なのは豚の顔だった。こいつも「皮の部分だけきれいに剥がしました」と言わんばかりの生の姿もあれば,醤油で漬け込んで密封されて売られているものもある。
そして牛肉。こっちもナカミ,いわゆる内臓系が売られていた。赤だか黒だか灰色だか,どこかの臓器をとりあえず水洗いだけして,適当にぶつ切りにしました,ぶっこみましたという感じで,無造作にバケツに入れられている。でも,これだって立派な売り物なのだ。
鮮魚。CMYK4色そろいぶみで実にカラフルだ。もっとも,それぞれはそれそれで結構うまいのだろう。どー見ても鯵にしか見えないのに,食紅を注入したかのように腹が赤い魚もあった。亀に見えたので,「へぇ,沖縄は亀も食うんだ。でも,スッポンがあるから当然か」と思ったら,実はワタリガ二だったということも。そんなんで,いまさらながら生きているカニは赤ではないことを認識させられた。あるときは,そのワタリガ二がひもでしばられて売られているのを,デジカメで撮っているカップルもいた。あるいは隣に置いていた鮮やかなシャコ貝を撮っていたのかもしれない。店員にはえらい迷惑な客だろう。で,たまにマグロの切り身が売られているのを見ると,そっちがもの珍しくなってしまう。もちろんマグロも結構売れているようだ。あと,コンブだけ専門に売っている店もあった。結構食されているのだ。
土産物。まったく,菓子もあればアメもあればサトウキビもある。黒糖,かりんとうもあった。どこの店にも同じものが売られている。そんなに在庫を抱えて大丈夫かとすら思ってしまう。

まさに食のワンダーランド。こんな陳腐な表現しかできなくて,申し訳ない限りだ。すっかりどこかのアトラクションに入った感覚に陥ってしまい,1回見ただけでは飽き足らず,何度も市場の外と中を行き来する。よりによって出口が何箇所もある。どこからともなく入っては出て行く。で,入るたびに新たな衝撃を覚えていく。まったく,まじめに商売している人間には大迷惑な客であろう。
ただし,これだけいろんなものがあっても,なぜだか野菜だけは見なかった。もちろん,どこかの一角に間違いなく売られているのだろうが,鮮魚と精肉コーナーの強烈さが残って,いわば「怖いもの見たさ」の精神になっていたのかもしれない。だって野菜なんて,怖そうに見えるものがあるだろうか。
ちなみにこの建物,外から見ると2階建ての建物。しかし,本通りにアーケードがあり,アーケードの商店街の店舗が密集しているので,一瞬建物の中に建物を造ったような錯覚を覚える。おそらくはこの市場が先にできて,ついでアーケードができたのだろうが,建物の外壁に沿うように店があり,それがアーケード街にすっかり溶け込んでいるのだ。たとえそれが理解できても,次の瞬間にはまた錯覚に陥ってしまう。
極めつけ。ある時外に出ると,子どもの声で「あ、ヘビだ!」。その方向を見ると,乾燥…もとい燻製にされた黒いヘビが無造作にぶらさがっていた。それも何匹も。これもまた市場の光景なのだ。

Cいざ,石垣へ
牧志公設市場を堪能した後,国際通りを再びぶらぶら。正月以降の下着類をゲットせねばと思い,すでに安里バス停で降りたとき見つけていた,100円ショップ「ダイソー」へ入る。都合525円。うち,パンツは「使い捨て5枚・100円」のやつを購入。ハンカチは東京から持ってきたタオルを本日まで持たせた(何のことはない。水洗いして一晩立てば乾いてしまう)ので,明日以降に回すことができた。よって購入せず。
そのまま南下して松尾まで。途中,あるいは平和通りや市場本通りでも気になったのは「沖縄限定ハローキティ」。沖縄のシーサーをかぶったペアストラップは600円。だが,ペアなんていらない。一つでいいのだ。それにシーサーがつぶれて何だか分かりゃしない。シーサーシリーズは他にもあるが,はっきりシーサーだと分かるのは,もっとデカいやつになってしまうのでパスする。あと,小麦色に焼けアロハシャツを着たやつ(600円)もあった。これではハワイ土産みたいなのでパス。その他いろいろあったものの,結局今回はどれも買わずに終わってしまいそう。
国際通りを出てすぐ,県庁北口バス停より空港行バスに乗車。時間はただいま14時55分。ホントだったらばおやつとして,沖縄ではポピュラーなブルーシールアイスクリームを食うか,これも沖縄で有名なシークワーサージュースを飲みたかったが,タコライスが思いのほか腹持ちがよい。暴飲暴食は体重増加のもと。それでなくとも,少々体重が増えてしまったのだ。ここはムリをせず,明日以降に持ち越そう。

空港では人がごった返し……てはおらず,ガラガラだった。とっとと手荷物チェックを終え,出発ゲートへ向かう。時間は15時半。飛行機は16時半だから,まだ1時間はある。
右には次から次にゲートが現れては消え,左には次から次に売店が現れては消える。いずれにもブルーシールアイスクリームと,シークワーサージュースのペットボトルが。まるで私に「その胃の中に入れてくれ」と言っているようだ。アイスとジュース,どっちがカロリーが高いか分からないが,持ち運びの差でシークワーサージュースを選択。500ml入りで150円。
美味い。前回旅行のときにも飲んで,えらい気に入ったのだが,今回もその期待を裏切らなかった。柑橘系のさわやかさと甘味のなかに,ほのかな苦み。たとえ果汁が10%であっても,私が気に入ったのは,あくまでこの味だ。ただし「原産国:台湾・沖縄」。はたして自分は国産を飲んだのか,輸入物を飲んだのか?
そうこうしているうちに出発の時刻。沖縄本島はこれで終わり。今日も飛行機は満席である。

(11)石垣の夜
石垣は天気がよい。天気予報では晴れの予想だったが,その通りである。空港から連絡バスにて市内バスターミナルへ。そこから歩くこと約5分。今日と明日2泊する「スーパーホテル石垣島」である。
早速チェックインすると,2枚チケットを渡される。1枚は翌朝の朝食案内券。毎朝7時〜8時半まで,軽食をサービスするという。そしてもう1枚は「無料・年越そば券」だ。昼にそばを食わなかったことが,ここで役に立った。ただで食える権利をみすみす放棄することほど,バカらしいものはない。さっそく部屋へ戻り,荷物を置いて再びロビーに来る。誰か1人,すでに食事をしている。
待っていると,直径10cmほどの小さい発泡スチロールのお椀に入れられたそばが出てきた。具はかまぼこ2切れのみと超シンプル。肉が入っていないのが不満だが,贅沢は言えまい。すすってみる。長崎チャンポンの麺と同じくらいの太さの麺である。ラーメンとうどんの中間くらい。味は塩味。塩ラーメン(塩そば)の感覚に近いか。石垣空港に着くころにはすっかり空腹だったので,おいしく感じてとっとと食い終わる。
が,これだけで大晦日は越せない。そう,今日は大晦日なのだ。たしか,市内にアイスクリーム屋があったはず。そこはブルーシールではなかったけど,1軒くらいはブルーシールがあるだろう。外へ出てみることにする。

歩いて行くこと数分。アーケード街だ。しかし,残念ながらここはほとんどの店が閉まっている。年末年始休暇なのか,つぶれたのかまでは分からないが,寂しい限りだ。途中の本屋で1冊本を買ってさらに進むと,1軒のレストラン。その隣にブルーシールの看板。神は私を見捨てなかった。もっとも,こんな支店が本場のブルーシールの味なのかは分からないが,看板が出ていればクリアとしよう。
ここで「さとうきびアイスクリーム」(300円)を購入。味は……なるほど,さとうきびってこういう味がするんだねって感じ。基本はあの砂糖の甘さだと思うが,クリームの甘さも少し入っているだろうか。食
して先に進む。
街中には至る所で「祝・紅白出場,BEGIN,夏川りみ,DA PUMP」の文字。垂れ幕もあれば,ポスターもある。BEGINに関しては,例の『島人ぬ宝』があちこちでよく流れている。一方,ポスターには,最上段に「石垣島出身・BEGIN」,真ん中「石垣島出身・夏川りみ」,で一番下にDA PUMP……の写真の一番右に矢印がしてあって,「小浜島出身・宮良忍」と書いてある。いくら全国区のDA PUMPであっても,石垣じゃないから一番下なのか。小浜島は西表島のそばにあって,とりあえず八重山つながりだから,お情けで入れてやったとか。あるいはヴォーカルじゃないからか。真実は謎である(大げさか)。ちなみに,BEGINのヴォーカルの実家は,この市街地の中にある「新栄荘」という民宿らしい。

市役所に向かう。実はターミナルからホテルに向かう途中,ここでカウントダウン・イベントがすでに催されているのを見たのだ。時間がまだ19時なので,人影こそまばらだが,スクリーンが設置されている。紅白もこのスクリーンに映し出されるのだろう。いまはちょうど,地元の野球チームが紹介されている。どうやら大会に出たらしいが,どんな大会かは分からない。アメリカと対戦し,だれかがホームラン競争で勝ったそうな。
次は,VOICE BOYSとかいうアカペラグループが出てきた。素人だろう。紹介されて1〜2曲ハモる。なるほど。次にサザンの『真夏の果実』。なんじゃそりゃ。メロディが完全にズレてるぞ。どうやら,初めのほうで声が聞こえにくく,「もっと前に出て」と司会の人間が言ったので前に出たところ,モニターだかが見えなくなって音程がズレたようだ。司会がしきりに気にしていたが,ホントだろうか。紅白にBEGINとかが出るまであとどれくらいなんだか。これ以上期待がもてなくなり,宿へ戻ることに。戻り際にはゴスペラーズ『星屑の街』をハモっていた。こっちはまずまずだ。
結局,紅白といえばBEGINが21時20分に『島人ぬ宝』,夏川りみは21時50分に『涙そうそう』をそれぞれ熱唱。外からも彼らの歌声がはっきり聞こえてきた(DA PUMPは,私もあまり注目してなかった)。100mほどでも距離があるか,テレビから1秒ほどずれて聞こえてきたが。

彼らが歌い終わると,急に眠気を催して退屈になってきた。並行して格闘技の特番を見ていたが,ボブ・サップの出番までは待てそうもない。そもそもそこまでしてサップを見たいとも思わない。wowowでは桑田佳祐のカウントダウン・コンサートをやるようだ。東京…いや実家にいればwowowがあるから確実に見ているだろうが,今年はそれもない。ここ石垣は,テレ朝系統のCSだかBSだかは映るが,wowowは残念ながら映らない。
となれば,もはや選択肢は寝るのみだ。しかし,除夜の鐘を聞かずに寝るのって,いつ以来だろうか。(第6回につづく)

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