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TOP | モンゴル横断 | 平泉・遠野・恐山・金田一・津軽 | 出羽三山登山 | |
モンゴルにも町くらいはある。ただ日本に比べて少ないだけだ。そして、首都ウランバートル以外の町は小さい。今回の騎馬行は東京・鹿児島間に匹敵する距離だったが、その間に見た町は、20分で町の端から端まで行ける町が7つと、10分で町の端から端まで行ける町が8つだけだった。町と町の間が100キロほどあり、その間ずっと草原が続いているのだ。草原地帯には遊牧民がいるだろうと考えがちだが、彼らは飲料水の確保ができないところでは遊牧しない。だから下手すると1日中、人っ子一人、馬一匹見えないこともあった。モンゴル国の人口は200万人。東京の人口の6分の1で、しかも人口の半分が首都ウランバートルにいる。過密状態になれというほうが無理なのだから、この結果は当然かもしれん。
草原地帯は、日本にはない広がりをもった風景なので、見ていて新鮮だけれど、それも限度ものである。人どころかヒツジ一匹見えない草原を、しかも地面がゆるやかに大きくうねっているので遠くまでは見えない、つまり行けども行けども1日中草しか見えない苦難の草原を行くのは、ステップ特有のやたら暑い昼にはキツイものだった。
現代の地図には町として載っているのに、実際には廃墟しか存在しないという怪奇現象はイカす(死語)。ちょっとしたミステリーである。
都市部の人はどうだか知らないが、遊牧民はうらやましいくらい体力がある。モンゴル人と相撲とって思いっきり投げ飛ばされて、その後3日間腰が痛くてしょうがなかったこともあった。夜中3時まで酒飲んで騒いだのに夜明け頃にはもう仕事を開始していたという報告も入っている(私は酒を飲みすぎて昼まで寝袋の中だったので見ていない)。
また、彼らは非常に酒好きで、男で酒を飲めない人を私はついに発見できなかった。普通の食料品店の隅っこで、普通のお婆さんが昼間から酒飲んで李白のようになって座り込んでいたり、私たちがこれまた昼間から酒乱にからまれたこともあった。
ただし、これはあくまで特異な事件で、どこの国でも3ヶ月もいればあり得ないことではないだろう(もっとも、彼らはたいてい馬鹿力なので、その点だけは往生したが)。それに、私たちはモンゴル人からは全くの他人にも相当世話になっていた。酒乱でいやな思いをしても、その直後に別のモンゴル人に手助けしてもらったりするので、後口スッキリ大吟醸風にわだかまりが残らなかった。
なんだか不思議なのだ。爽快なモンゴリアンブルーの空の下で酒乱にからまれるというのが、日本にいると現実感を伴った場面として想像できない。うまく言えないけれど、日本にいるときの陰険ネチネチとした不快感とは違って、素朴さや、開けっぴろげな爽快感をも感じてしまう。
ただ、飲酒運転(これまた昼間)が多いのはやめてほしい。酒をぐいぐい飲んで、アバよと言いながらバイクにまたがるとは見上げた度胸である。バイクは馬ではない。ま、衝突事故しようにも対向車もいないような道路(?)だからいいんだけどね。