四六版ハードカバーは社会や時代を色濃く映し出している人間のドラマ、新書版ノベルスはトリックを中心としたもの、短編は毒の強いブラック・ユーモアと、版型や長さなどによって、書き方を大きく変えてあります。それだけに「ハードカバーを読んで面白かったので、ノベルスを買ったら、同じ作家とは思えないくらい違っていて、がっかりした」 などという声も聞こえ、当方としても困惑したりすることがあります。

 でありますから、前述の区別に従い、お好きなものをお読みいただければ幸いです。
 さて新書版のトリック・ミステリーですが、思うところがあって、「『不要』の刻印」を最後に打ち止めにします。「『不要』の刻印」は私にとってノベルス・ミステリーの集大成として書いたつもりですので、この種のものとしては最高レベルに仕上がっていると自負しております。意外性、派手さ、論理性などが過度なほどに重視される最近新本格トリック・ミステリーに疲れを感じている方に、ぜひお勧めしたいと思います。

 また、ハードカバーのほうは「本岡類の本は当たり外れがない」などとインターネット書評でも高評価をいただいていますが、絶版までの期間がひじょうに短くなっている昨今、書店では手に入らなくなっている作品が多くなっています。各所の公立図書館には私の本も多く置いてあるようですので、絶版本はそちらでお読みください。

 しかししかし、いちばん良いのは、文庫になった時、お買い求めいただくことです。
 私のハードカバー、自信作ばかりなのですが、なぜかまだ一冊も文庫になっていない。
きっと、文庫担当者が、「本岡類の小説はド派手さが足りないから、売れんかもしれんなあ」 と判断して、出版を見送っているからでしょう。各出版社に、「本岡類の本を文庫で読みたい」 などというメールを送っていただければ、著者としては、これに勝る喜びはありません。




          それではどうぞ     著作リストへ 
著作を振り返って
著作リストはこちら
HOME
掲示板
本岡類の今

月刊エッセイ
プロフィール