オキナワンクリスマス



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羽田空港を飛び立つのが遅れ、那覇空港到着は9時45分と、予定より30分遅れてしまった。降り立った瞬間のモワッとした空気を味わいたいところだが、乗り継ぐ南大東島行きの飛行機は10時15分発。J-TAPツアーのクーポンは持っているが、飛行機のチケット自体はカウンターで発券してもらわないといけないため、急いで外に出て3階の発券カウンターへ。「9A」という紙のチケットをもらい、再びさっき降り立った方向へ向かう。何だか非効率的である。
9時55分、離島行き搭乗窓口に着くと、急いで来たのをあざ笑うがごとく、「天候調査中」の文字が。どうやら、前線が南大東島を通過していて豪雨になっているらしい。10時に最終決定になるとのことで、梅雨時のように蒸した搭乗口でしばしウェイティングタイム。
10時ちょっと過ぎ、無事運航とのアナウンスが流れホッ。やれやれ、ここまで来て南大東島に行けずに那覇泊まりなんっつったら、自身初めて徹夜で出発したテンションが一気に奈落の底に突き落とされるところだった。南大東島まで乗るのは、久々の39人乗りのDHC-8。窓側は私の後ろの列以外全部埋まっていたが、通路側はあまり埋まっていなかった。予定より10分遅れて10時25分、出発。

那覇空港を飛び立ち洋上飛行すること1時間。なるほど、今まで雨を降らせていましたといわんばかりの雲が大東地方を覆っており、その中から間もなく降り立つお盆型の南大東島が見えてきた。実際、南北大東島はお盆のように周りがやや高くなっていて、「沖縄といえばこれ!」というあの砂浜がいっさいない地形が特徴だ。島の北側から空港のある東側へと旋回し、いよいよランディングである。

11時25分、南大東空港着。那覇からやってくる人、これから那覇へ向かう人で、空港は賑わっていた。今から24時間後には、私も那覇へ向かう人の立場になるのだ。
さて、南大東空港が右の写真のような立派な建物になったのは、DHC-8が就航するようになった10年前から。それまではその下の写真のようなオンボロで小さい建物であったのだ。位置としては現在の空港よりも陸側にある。
ま、オンボロになったのは時間の経過と、使われなくなって手入れされなくなったからだろうが、前回旅行時は旧空港は誰もいない廃墟だった。その裏にある「南大東ビジターセンター」は前回もあったが、かつて滑走路だった周囲の地面がすっかり凸凹して、飛行機を遅らせた豪雨でたまったと思われる水溜りがあちこちにあるのが、何よりの証拠である。
その廃墟に南大東島産ラム酒工場「グレイスラム」が入ったのは、2004年のこと。南大東島もまたさとうきびの島。そのさとうきびを使ってホントの地酒(沖縄の地酒といえば「泡盛」が有名だが、原料はタイ米である…)ができないかと、地元出身の女性が立ち上げた会社である。この廃墟の中で実際製造していて、工場内見学や試飲などもできるようであるが、ちらっとのぞいてみたらおじさんが何だか暇そうにテレビを観ていた。邪魔しちゃ悪いかなと思い、黙って退散した。2種類あって、ともに700ml入り3000〜4000円台だったか。ラベルの入った洒落たTシャツもある。島内だけでなく沖縄本島や遠く本州の酒屋でも扱いがあって、全国配送も受け付けている。

今回宿泊する「ホテルよしざと」のおじさんのワゴンに揺られて、ホテルへ。若者4人に親子連れ4人に私、そして運転するおじさんの10人で、ワゴンは満車である。
失礼ながら、こんな辺鄙な島に来る人間なんて自分くらいかなと思っていたが、3連休というのもあったのか、思いのほか乗客は多かったし、「ホテルよしざと」が島随一のホテルとあっては、ましてや、日帰りするよりも1泊するほうが安上がりとあっては、宿泊が集中するのも当然か。
部屋に荷物を置き、まずは昼食をとる。迷わず目の前にある「大東そば」に入り、奥のテーブル席へ。ここは前回の旅でも入った店である。そのときは入口に近い手前の座敷に座らせてもらったが、大勢で来ないとも限らないので、座敷は避けた。「大東そば・寿司セット」1000円を注文。
前回行ったときは日曜日だった――ネットで店の検索をしたら「日曜」と「不定休」とあり、はてどちらなのだろうかと店に問い合わせた。店主の男性が出て、最初「日曜は休み」と言ったので、那覇に支店があることからそっちに行けばいいと思い、「分かりました」とその場で素直に電話を切ろうとした。
すると、今度は店主が「日曜に来るんですか?」と切り出してきた。さらに「日帰りですか?」とも聞くので、「日曜日に日帰りで訪れて、夕方の飛行機で那覇に行ってそのまま東京へ帰ります」と言うと、返ってきた答えは「それじゃあ、店開けますよ」――「そこまでしてもらわなくても」とは思ったが、せっかくなのでご厚意に素直に甘えて当日店を開けていただき、1杯のかけそば…ならぬ大東そばを食べた。主人の朴訥さそのまま滲み出た味だった(「沖縄・遺産をめぐる旅」第3回参照)。
あれから4年――そのとき食べられなかったもう一つの名物「大東寿司」も今回食べることができた。あっさり目標がクリアできてしまい、ちょっと拍子抜けしてしまった。厨房にいたのは女性で、主人は外で野良作業をしている感じだった。
決して不味くなったのではないが、心なしか何か物足りない感じがしたのは、そのあっさりありついてしまった状況からかもしれない。ただ、セットは私で最後だったらしく、後からやってきた若者4人組も頼もうとしたものの売り切れ。「多勢に無勢」で取られずに済んだことに、心なしか気持ちが弾んでしまったのは言うまでもない。(第2回につづく)

↓現在の南大東空港は、1997年からの就航。

↓旧南大東空港の建物はラム酒工場「グレイスラム」に。その下は旧滑走路(左)と南大東ビジターセンター(右)。

↓今回泊まった「ホテルよしざと」の外観と部屋の中。南大東随一の施設。

↓「ホテルよしざと」の真ん前にある「大東そば」に、今回食べた「大東そば・寿司セット」1000円。