A.C.ジェネレータベルト張り調整・スロットル洗浄

車検も終わり、一週間ぶりにNSXで出勤しようとすると車の調子がなにやらおかしい。
聞きなれない音がリヤから聞こえます。
そして暖気後のエンスト。
今回はこの不具合2点の原因調査と解決ヒストリーをご紹介します。

 

●「D」レンジで異音発生●

 ようやく車検も終わり、一週間ぶりにNSXでの出勤を迎えた月曜の朝。エンジンを掛け暖気後出発しようとギヤを「D」レンジへ入れた途端、リヤから
「グぉーーゴゴゴゴゴーー!」
という音がして、あわててギヤをニュートラルへ。すると通常のアイドリング音に戻りました。まさかATが壊れたのかと思いつつ再びギヤを「D」レンジへ。すると再び「グぉーーー」と音がする。このときは完全にATが逝ったと思いましたね。昨日はなんともなかったのに・・・。でも車は進もうとトルクが掛かっているし、時間もないことなので、「えーい!止まったらそんときだ!」と覚悟を決めて出発しました。

  駐車場の出口で一旦停止後、道路に出ようとアクセル踏むと、「グぉーグぉーグぉー!」と凄まじい音がしてる・・・。「これはヤバイなぁー」と思いつつ加速すると、ピッタッと音が止まり通常走行音に戻りました。訳が分かりませんが、とりあえず加速もするし、スムーズに変速している・・・。途中、踏み切りで一時停止すると例の異音がするものの音が小さくなってる。さらに走って信号待ちで停車したら完全に通常のアイドリング音に戻りました。以降会社へ着くまで異音は発生しませんでした。

 そしてその日の仕事を終え、帰宅すべくエンジンを掛けてみると再び異音発生。かまわず帰宅しましたが、やはりエンジンが温まると異音は収まります。暖気後異音が収まるので、交換したファーストアイドルバルブがおかしいのかな?などと考えましたが、ギヤを「D」レンジへ入れていると音が発生する説明がつかない。冷気時に音がするので、ファーストアイドル時の燃調が変わったのかな?など色々考えましたが、良く分からないままとりあえず、ECUのメモリーをリセットしてみました。

 翌日、仕事が終わってから会社の駐車場で作業。暗い中、ボンネット内のクロックヒューズを抜いて、メモリーをリセット。期待してエンジンを掛け、ギヤを「D」レンジへ入れると異音発生・・・。さぁ困りました。原因が分からない。エンジン掛けたまま、あれこれ考えましたが分からず、遅いことだし帰ろうとギヤを「D」レンジに入れると暖気されているので異音は発生しません。そしてライトをつけた途端、「グぉーーー」と異音が発生しました。どうやら特定の回転数で音が発生するようです。車検で交換した部品で回転している部品・・・。電気的負荷が掛かると音が発生・・・。「A.C.Gベルトしかない!」とようやく原因が見えてきました。翌朝、エンジンを掛ける前に、A.C.Gベルトの張りを確認すると、やはり張りが弱い。そしてエンジンを掛けてみると、目に見えて凄い振れ方をしているので、この時点でベルトの張りが弱いと判断し翌週末、とりあえずベルトの張りを調節してみることにしました。

ファーストアイドリング時の「A.C.Gベルト」の触れを動画で撮影してみました。
不具合箇所の動画での公開は当サイト初めての試みですね。
年代物デジカメの動画撮影機能を使用したので、画質は悪いです。ご了承下さい。
約2.4メガ有るので、右クリックして適当な場所にダウンロードしてご覧下さい。

A.C.Gベルト振れ動画 (約2.4メガ AVI フォーマット)

 

●今度はエンスト・・・●

 原因が特定できて一安心していましたが、再びトラブル発生。今度は暖気後、「P」レンジ無負荷でアイドリング中、軽くエンジンをあおると回転数の下降と同時にそのままエンストしてしまうのです。タコメータの読みでアイドリングは700rpmと若干低め。ECUのメモリーをリセットしたからかな?と思いましたが、その程度でエンストするはずもなく、再びトラブルの発生に悩まされました。
 大きく2000rpm以上回転を上げると、エンストすることはありません。多分ダッシュポットの作動により全閉付近でゆっくりスロットルが閉じるのでエンストしないと思うので、ダッシュポットが作動しない、低い回転からのエンジン回転数の下降に対して空気量の調節ができていないようです。暖気後なので、アイドリング回転数は全て「EACV」で制御しているはずです。冷却水が通っているので、車検時に交換も考えましたが高い部品なので交換しなかったんですよね。見事に裏目に出た・・・。でも以前、KSPエンジニアリングさんのHP内のTYIZさんの作業記録にスロットル洗浄の記事を拝見し、自分の症状と似ているので、こちらを参考にさせていただき、とりあえず自分もスロットル洗浄してみることにしました。これでだめなら交換です。(涙)

こちらも動画を撮影してみました。
音が小さいので、ボリュームを調節してみてください。
動画中、エンジンの回転が上昇するのはアクセルペダルであおっています。
注目は回転が下がるときに、エンスト寸前まで回転が落ちるところです。
このときはエンストすることなく、持ちこたえましたね!(^^ゞ

アイドリング回転異常動画 (約10メガ AVI フォーマット)

 

●まずはA.C.Gベルト張り調整●

 実はNSXの取り扱い説明書の運転前点検の項目に「発電機ベルトの点検」が有るのはご存知でしたか?10キロの力で押してタワミ量が12〜14mmが適正と有りますが、実際触っただけでその程度の遊びがありましたので、まずは張りを調整してみたいと思います。

 まずはエンジンルームのストラットバーを外します。ストラットじゃないけど、やはりストラットバーなんですね!サービスマニュアルにはストラットバーを外す手順はありませんが、A.C.ジェネレータを固定しているボルトを緩めるためには、ストラットバーを外したほうが楽に作業ができると思います。ボルト4本外すだけなので時間もかかりませんよ。二面幅12ミリのボルトなのでソケットレンチか、メガネレンチを使用してください。
 次にA.C.ジェネレータを固定している「A.C.G.アジャストロックナット」を緩めます。写真でストレートメガネがセットしてあるナットですが見えるかな?実車で確認すればすぐ分かると思います。スペース的にラチェットは入らなかったと思うので、今回はストレートメガネレンチを使用しました(っていうかこれしか持ってないんですが・・・)。でもストレートメガネが一番まわしやすいと思います。完全に外す必要はなく、緩めるだけでOKです。二面幅14ミリのナットです。
 ロックナットが緩んだらいよいよ張りの調整。スピンナハンドルがセットしてある、二面幅10ミリのアジャストボルトをまわすことで、張りを調整します。まわしてもボルト自体は移動することなく、メスネジを切ってあるものとA.C.ジェネレータが同じ動きをすることにより、A.C.ジェネレータが上がったり、下がったりすることで張りを調整するんですが・・・説明が難しいですね。
 仕組みはひとまず置いといて、このアジャストボルトを右に回すと、A.C.ジェネレータが上がってくるので、ベルトを張る方向に調整できます。左にまわすとベルトが緩む方向に調整できます。
 調整が出来たら、最初に緩めた「A.C.G.アジャストロックナット」を締めてA.C.ジェネレータを固定します。固定したら張り具合を確認します。基準は写真で押している部分を10キロの力で押したときに、タワミ量が12〜14ミリです。この10キロという力がどの程度なのか難しいところです。測定機も有りますが、個人で持つようなものではないので、自分で調整する際は「カン」で調整するしかないですね。
 調整が良いようでしたら、エンジンを掛けてみて音、振れに異常がないか確認した後、ストラットバーを取り付けます。この際は危ないのでエンジンを止めて下さいね。

 ベルトの張りを調整後、音の発生はほとんど気にならない程度まで治まりましたが、よく聞いているとなんとなく、例のうなり音を出したがっているような印象です。まだ、張りが弱いのかな?調子の良い時のエンジン音を知っているだけにチョッと気になります。日常点検で意識してベルトの張りを確認したいと思います。作業自体は道具さえあれば、難しい作業ではありませんし短時間で作業できますが、張りの程度を確認するのに経験が必要なので、ディーラーで点検してもらい確認した後の張りの状態を覚えておくといいかもしれませんね。引き続き・・・

 

●スロットル洗浄●

 引き続いて、暖気後のエンジンストール対策としてスロットルバルブとアイドルポートの洗浄を行ってみたいと思います。この洗浄方法は「KSPエンジニアリング」さんの作業記録に紹介されている対策方法なので、そちらを参考にさせて頂きました。通常アイドリング時はスロットルのバタフライは全閉しており、バタフライ手前のバイパスポートから空気を吸い、「EACV」(エレクトロニック・エアー・コントロール・バルブ)で吸入空気量を調整して、アイドリングの回転数を制御しています。暖気中はファーストアイドルバルブも開いていますが、完全暖気後は「EACV」のみの制御となります。ですから暖気後、エンジンストールしやす場合は「EACV」を疑って見るのが最初の手順なので、まずは「EACV」を含めたアイドルポート全体を洗浄してみることにしました。

 最初にエアクリーナケースとスロットルボディーとの間にあるエアインテークダクトを外します。写真ではエアクリーナケースがASSYで外してありますが、エアフィルターを交換する要領でカバーだけ外して、フィルターとインテークダクトを外した方がいいと思います。エアクリーナケースはASSYで外れますが、元に戻すのにチョッとコツがいるので、慣れないと時間が掛かるだけですし、同時にエアフィルターの点検にもなりますよ。
 スロットルを覗き込むと、想像以上に汚れていることに驚きました。んー酷い!スロットルバルブ表面にはリヤバンクからのブローバイでしょうか?霧状のオイルが付着して、サビが出たような汚れ方をしてますし、スロットルバルブとスロットルボディーの接触面付近は特に黒い汚れが付着していて、洗浄のしがいがあります。
 今回使用したのは呉工業のエンジンコンディショナー です。近所のホームセンターでたまたま見つけ、安いこともあり買っちゃいました。「四輪ガソリン自動車専用気化器・燃焼室クリーナー」ということで、今回の作業にピッタリな専用品なので、遠慮なくガンガン吹き込ませられます。
 ではいよいよ作業開始。作業中の写真を撮り忘れましたが、スロットルを覗き込むと左上にアイドリングのバイパスポートがあるので、そこに向かって「エンジンコンディショナー」を吹き込みます。アイドリングの回転が落ちたら回復するまで噴射を止め、回復後再噴射。EACVとファーストアイドルバルブを洗浄します。(ファーストアイドルバルブは交換したばかりなので、洗浄の必要はありませんが・・・)
 次にエンジンを止めた状態でアイドルポートにエンジンコンディショナーを吹き込んで、EACVに付着した汚れを浮かせます。効果あるのか分かりませんが・・・。その間にスロットルポートとスロットルバルブに付着した汚れを拭き落とします。特にバタフライがスロットルボディーの壁面へ接触する部分は念入りに拭いて、汚れを落としました。そしたらウエスが写真のとおり。目に見える部分だけを綺麗にしたんですが、それでもこの汚れなので、スロットルから奥はどんなことになっているんでしょうか?
 エンジンを掛けては吹き込み、止めては吹き込みを繰り返すこと数回。目に見えたり、音の変化があるわけでもないので、自分で納得したところで作業終了(^^ゞ。スロットルも綺麗になったので写真を撮って見ましたが、よくよく見ると上半分がまだ汚れていますね。でも洗浄前の状態とは全く違いますね!綺麗になっただけで空気の流れがよくなりそうな感じです。

洗浄後エンジンの調子はよくなりましたよ!と言うより本来の性能に戻ったと表現したほうが正しいですね。

アイドリング回転の異常低下が直りました。
 これを直すために行ったスロットル洗浄なので、これが改善されなければ意味はないのですが洗浄後はアイドリング中、アクセルで大きく回転を煽ると1500rpmくらいまではスーっと下がり、それ以下はダッシュポットの作動により徐々に回転が下がりますが、この動きが非常にスムーズになりました。今までとは全く違い滑らかに回転が下降します。最初に公開した動画のように軽く煽っても、ピタッとアイドリング回転まで下降し安定したアイドリングになります。アイドリングが滑らかになった印象です。

シフトショックが少なくなりました。
 これは予想外の結果でしたが、ギヤを「D」や「R」レンジに入れるときに、エンジン回転が大きく上下し、特に回転数の落ち方が大きかったのですが、スロットル洗浄後はエンジン回転数の上下が少なく、そのためショックも小さくなり、思いがけず得した気分です。洗浄したおかげでEACVの動きがよくなり、エンジン回転変動に対しレスポンスよく動くようになったのかな?と思います。

 A.C.Gベルトの張り調整は必要がなければ通常行う作業ではありませんが、A.C.Gベルトを自分で交換にチャレンジする方には、少しは役立つかな?ベルト交換は部品代より交換工賃の方が高い作業ですからね。スロットル洗浄はお薦めの作業です。通勤快速NSX号と同じように、エンストするようだと末期症状ですが、そこまで酷くなる前に作業しても洗浄前との違いを体感できることと思います。今後も半年に1度くらいの割合でスロットル洗浄を行いたいと思います。エンジンが滑らかにレスポンスよく回ると気持ちがいいですからね!

 

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