<受講生の声>

観光では到底できない経験
 「学者、土地の人、入り人……いろんな人々に出会い、影響を受けました。祭りに参加するなど、観光客としては到底できないことができました。
 短い期間で忙しく、何が身に付いたのか整理されていませんが、きっとこれからここでの体験が自分の人生に影響を与えていることを感じることでしょう。とは言うものの、扇風機と朝食の充実を切に望みます。」

語り合っていろいろ見えてくる
 「面白い森はどこにでも見られますが、屋久島のように様々な環境が狭い範囲で一緒くたになった所で、いろいろな分野の人と一緒に語りあうことができ,また先生と語りあうことで今まで見えるはずなのに見えなかったことがいろいろ見えるようになって良かったと思います。
 ただ、全体として時間が少し足りなかったと思います。これで、自分で消化して考える時間が持てたらもっと良かったと思います。」

屋久島の自然は大きなひとつの輪
 「この1週間がすごく早かったのでびっくりしています。前期はサル班でしたが、植物を見たり鳥を見たり、雨がやんだら海にきれいな虹がかかっていて、自然が大きなひとつの輪のような気がしました。屋久島の自然は迫ってくるものがあります。
 環境生態という学科に所属しているんですが、自分がしたいことがよくつかめないでいます。だけど、この講座に参加してフィールドワークはこれからもっと積極的にやっていこうと思います。講師の先生方や全国から来られた方々にお会いしたこともとても感動でした。」

人も自然の中の一部だと肌で感じた
 「私がこの屋久島講座を受けたいな、と思った理由はニュータウンに住んでいて緑に飢えていたこともありますが、自分が何をしたいか分からなくて大学をさぼったりしていて、これでは自分が腐ってしまうような気がしていました。だからいろいろなことにあたってみようと思い、運良くここを受けることができました。
 やってきて感じたことは、これまで植物しか見ていなかったんですが、植物は植物だけでいきていけないし、動物も動物だけでは生きていけない、もちろん人も自然の中の一部なんだということを肌で感じることができてよかったです。森について少しだけ理解できたような気がします。
 いろんな所から来られたみなさんと触れあったのもたいへん刺激になりました。自分から発表することが、普段あまりなかったので、今回色々発表できて大変良かったです。それから、ものすごく個人的な意見かもしれませんが、色々な植物の名前を知ることができたことです。」

森が私を受け入れてくれた
 「心のどこかで観光客みたいな気分があったんです。どうして縄文杉を見られないの?ってぐあいに??。自然に対して傲慢な態度で接していました。でも、島の人々の自然への接し方を知って人と自然とのかかわりの大切さを学びました。
 実は、私は初日、川で用をたしてしまったんです。いろいろお話をうかがっているうちにとっても悪いことをしたな、どうすればいいの?と思ったんですが、川にお酒を流して、塩をまいてくるといいんだよと言われました。翌日さっそくやってみました。そうしたら、木を踏んだら木が痛いんじゃないかなと思えてきて、踏まないように歩こうとしました。そうしたら、今までみえていなかった自然の姿が見えてきて、森が私を受け入れてくれたような気がしました。観光客は、けっして見ることのできない、林道の扉をあけてだれも来ないところに行かせてもらったりできたのがとてもよかったです。
 私は教育学部に所属していて、教育的な勉強が多いのですが、『生きる力』が足りないことや理科離れの原因は、自分で考えたり、自然に触れたり、不思議に思ったりすることがなくなっているからだと思います。今回、この講座で学んだフィールドワークは教育の場でいかせることができると思うので、あさってからの中学生の合宿で実践したいと思います。
 島の人が、燃えないゴミは今、処理の仕方が分からないから溜めているということを聞いてすごく真剣に考えているな、と思いました。愛知県では分別も遅れています。愛知万博の問題にしても他人まかせでいかんなあ、と思います。地元のことは、自分たちで守らなければいけないと教えてもらったので、身近な自然を守るために少しずつ努力していこうと思います。」

どんな生物とも同じ目の高さで
 「緑の多さ、北海道にはない森の色が目の前いっぱいに拡がっていることに感動しました。共生したり再生したり、土砂崩れから回復しようとしている森など。
 後期は糞虫ばかりでしたが、しだいにその生物のいる大切さが感じられてきて、始めはピンセットではさんでいた糞虫を、終わりごろには素手でつかむようになってきました。同じ目の高さでみるようになって、植物ともどんな生物とも同じ高さでいたいなあ、と思う一方、いろんなことに興味をもてる自分、それが拡がってきたことをうれしく思います。
 『生命の島』の日吉さんの言葉を聞いて、私にしか見えない屋久島があると感じました。これからも自分の中での屋久島は、いいにつけ悪いにつけ、語らなくても見えてくるようなものであってほしいと思います。そして、これからは、自分でしかできない屋久島との関わり方を探したいなあ、と思いました。楽しかったです。」

屋久島は人が住んでいる島だった
 「私は初め、屋久島に行けることが決まったときに、単純に世界遺産としての屋久島のことしか考えていなかったと思います。しかし、毎日いろんな先生が講義してくださったこと、自分でもこの地でフィールドワークを経験したことから、今まで知らなかった屋久島のことを知って、とても充実した毎日でした。特に先生方による毎晩の講義は本当に贅沢に感じて、これまでは入り込んだことのない分野に触れて、いろんなことに興味が持てるようになりました。
 ここへ来て特に思ったことは、屋久島は自然が当然すごいんですけれど、この講座を通して、人と自然のかかわりというものをとても意識して、屋久島には人が住んでいるということが前提にあって、そこからいろんなことが起きているんだ、ということを強く感じたことです。この経験から、私が自然とどうかかわっていけるかを探してみたいです。
 他に感じたこととしては、様々な人々との出会いがすばらしかったです。後半の『森林と植物』では、植物の名前はほとんど覚えていませんが、森の中でたくさんの木を見て過ごせたことがよかったです。ぜいたくな1週間といいましたが、スケジュール的にはちょっときつかったかな。施設はこれで不満はありません。」

ジーンと心に入ってくる出会い
 「生まれたころから東京の町の中で暮らしていて、自然との接点がわからなくて、自然と自分のこれからの生き方にどういう関係があるのか、少しでも見いだせたらいいな、と思ってきたんですけれど、7日目になって、ますますわからなくなって、でもわくわくしています。
 人と自然班、サル班にいたんですが、人の話に耳を傾けたり、土をほじくりかえしたり、永田の浜でボケーッとして、夕日を眺めたりしたのが良かったなあと思っています。くやしいのは、先生方が話されたことと自分との距離がうまくつかめなかったことですが、妖怪みたいな先生とか、ジーンと心に入ってくるような話し方とか間の取り方をする人たちにであって、面白い人はどこにもいるので、そういう出会いを探して行きたいと思います。
 『若い人は言葉が足りない』と言われていましたが、自分も逐一言葉をなにかの意味を伝えるものとしてだけ捉えていたということを感じています。意味だけでないつきあい方を自分の中で発酵させて行きたい。
 宿舎の設備があまりよくなると、大切なものが抜け落ちてしまうとおもいます。こういう人なつっこい場所で続けてもらえればおもしろいなあ、と思います。お世話になった島の人とか、同じ部屋の仲間とかに本当に感謝しています。」

人の話を聞いて感動したのは初めて
「芸大の4年生で、植物をデザインに生かすということを考えて卒業研究に取り組んでいました。でも、森林と植物班に参加しの自然に触れ、それぞれの植物には人間みたいな個性があるな、ということを実感しました。そして植物に対して深い理解をするためには、植物の勉強をしなければならないと思いました。
 また、人と自然の班に参加し、島のおばあさんの話をきかせてもらって、目に見えない力というものの存在が現実にあることを感じました。そして、心が洗われたような感じがして、テレビや映画を見たときの感動ではなく直接人の話を聞いて感動したのは初めてでした。欲ではありますが、この屋久島にまたご縁がありますように??。」

穏やかな、しかし何かわくわくする気持ちに
 「何もいわずに語ります。と言うほどまだ語るのがうまくないんですが??。密度の濃い、ぜいたくな1週間でした。私はサル班と鳥班で、動物をじっとみていることが多かったのですが、そうしていると彼女、彼らが何を思っているのか、どういう風に見えているのか色々疑問や妄想がわき出して来るんですが、そういう質問に答えて下さる先生方がおられたことに感謝します。
 普段の忙しい時間を離れて、穏やかな、しかし何かわくわくする気持ちになることをうれしく思います。屋久島は盆地の中に人が住んでいる京都とは正反対で、真ん中に山があり、周囲に人が住んでいます。こういうところに住んでいると、環境の違いから、自然に対する認識にも違いが出てくるのではないでしょうか。屋久島では自然の裾野に人が住まわせてもらっている、という感じがしました。
 フィールドワークはとても楽しかったですけど、欲を言えばもう少し時間をかけてみてみたいことがたくさんありました。また屋久島に来たいです。ありがとうございました。」

自分が生まれ変わったような気が
 「屋久島に来て、いろんな分野の人や植物や動物に会えたことがうれしかったです。一期一会ということばがありますが、出会いは本当に偶然だと思います。今日は鹿の解体をさせてもらったことが印象強く残っているのですが、毎日いろんな勉強をさせていただきました。
 フィールドワークは自然が相手と思っていましたが、様々な人々との関わりがあることがわかりました。フィールドワークの面白みを発見できたことも大きな収穫です。屋久島には神秘的な感じがあるな、と思って安渓先生の話なんかを聞くと、宇宙がずうっと拡がっているような感じがしました。このフィールドワーク講座で何とは言い表せませんが、自分が生まれ変わったような気がします。
 この1週間、内容がすごく濃くて、吸収するのに精一杯で、自分の考えとかがまとまりませんでした。帰ってから自分なりに整理したいと思います。上屋久町のみなさん、先生方大変お世話になりました。ありがとうございました。」

生命の連なりを生かすために
 「何千年もの命の流れが続いているのが、欲望のためにこの何十年かでなくされてしまっているということを実感できたのが印象的でした。それを大事に守っていこうとしておられる方々がいらっしゃること、過去に培ってきたものを未来にどう生かすかを考えていらっしゃることに感銘をうけました。生命の連なりを生かすために、自分がどんな役割を見つけて果たしていくのかを考えるようになりました。
 屋久島はこれから観光産業が発達していくと思うんですけど、それが自然と共存する形で発展してほしいと願います。動植物を簡単に壊してしまって、そのあと植林すればいい、という考えの怖さを感じました。いろんな人にお会いできてよかったとおもいます。ありがとうございました。」

何らかの形で屋久島につながっていきたい
 「屋久島に来る前は、『世界自然遺産』とかいう名前からちょっと外国みたいなものを求めていたのかもしれませんが、森に入ってみたら、やっぱりここは日本で、どこよりも日本で、なんというか濃い日本だと思いました。森の中の雨の下を合羽を来て歩いている自分が醜いような気がしました。自然と肌を合わせられない自分が、土に穴を掘ったりしながらどろどろになってくると、逆にきれいになってきたなあ、と思いました。
 1日目の講義で私は、たくさん質問をしました。これまでは、質問はあるけれど、場がゆるさないという感じが中学高校と続いたんです。予備校では質問は原則禁止でした。ここでは思うように質問ができました。でも、私の質問が長くて他の人が質問できなかったとしたら反省しています。
 屋久島の自然を考えることで、いろんな人とつながっていけることがとてもすばらしいと思いました。みんなきっと、これからも何らかの形で屋久島につながっていきたいと思っていると思います。役立てることがあったら、いつでもご連絡下さい。」

屋久島で得たことを自分の町でも
 「21歳です。ここに来てからひげを剃っていません。鏡もみていません。でも似合ってると思い込んでいます。
 最初、ペットボトルを燃やす人やブルドーザーでガーガーやっている場所を見て、屋久島だからそれはダメだと思ったんですが、考えてみれば、屋久島だけが特別ではないんですね。自分の住んでいる彦根でもペットボトルは捨てられているし、ブルドーザーでニュータウンもできてます。それに対してなんにも思わなかった自分が恥ずかしい。ここでゴミを4種類に分けたように自分の町でも分けないといけないのです。
 僕はほとんど誰にもいわずに屋久島に来ました。帰ったらどこにいってたか聞かれると思います。僕は日本に行って来たと言います。同じ日本に来て同じ日本に帰るということです。最後に、仲良くして下さってありがとうございました。」


湯本貴和 「特別な所で特別なことをするのがフィールドワークではなくて、自分の所にもどって身近な自然や人とつきあうのもフィールドワークなんですね。みなさん、ありがとうございました。」

屋久島フィールドワーク講座を終えて 根津 朝彦
屋久島から伝えられたこと 大西 瑞木
屋久島フィールドワークに参加して 猪飼 京子


目次に戻る