星☆までひとっ飛び


シンガポール・チャンギ国際空港には、現地時間23時半過ぎに到着。時計は携帯でしか見られないが、日本より1時間遅れなだけので、設定が面倒でそのままにしておいた(以下、時間表示は現地時間。日本時間は+1時間)。M氏が時計を持っているので、知りたくなったら聞くことにしようか。

入国審査は、もちろん初めて。別の窓口でカップルや女友達が一緒に窓口に行っていたので、M氏と一緒に行こうとしたところ、「あっち行け」と手を払うポーズをされた。どうやら、入国審査は1人1人やるものらしい。まったく、私のレベルはこんなもんである。改めて1人で窓口に行くと、インド系の男性に無言のまま一瞥いただいて(髪型が変わっていたからか?)、事務的にパスポートにスタンプを押される。以上。ほんの20秒程度であっさり入国パスとなった。

次は両替窓口へ。成田にも両替窓口はいくつもあるのだが、M氏が現地でやるとのことなので、それに従った。窓口にいた中国系のおばちゃんが、私の1万円札が見えたようで「イチマンエン?」と言ってきた。すがるようにうなづくと、向こうも慣れたもんで、ちゃかちゃかと両替してくれた。“塾長”がマレー系のオヤジと硬貨に化け、レシートを確認すると130.30シンガポールドル(以下、SGDとする)。すなわち、1SGD≒76.75円。成田では79円台後半だったので、現地で両替して正解ということなんだろう。
 
夜もいい加減遅いので、タクシーでホテルへ。ハイウェイをすっ飛ばすこと20分で、2日泊まるホテルへ。
 
泊まるのは「フレグランス・ホテル クリスタル」。どうやら、チェーン店らしい。1部屋1泊5000円程度というから、折半して1泊2500円ほど。中はちょいと狭いが、ごく普通のツインルームだった。
 
一応、お菓子もついていた。「蒸夢坊」はさつまいもベースのポテトチップス。こやつがなかなか美味い。全部私が食べてしまった。なお、マンゴーの袋は、私がコンビニで買ったドライフルーツ。
 
さて、時間は25時を過ぎていたが、M氏が「ドリアン食うぞ!」と鼻息が荒い。とりあえず、外出することに。「シンガポール=きれいな都市」と思っていたが、一歩入ると数十年前のアジアの匂いがする。人工的な都会的なシステマチックなイメージとは真逆の、昔ながらの田舎のアナログな世界である。
 
ドリアンは好き嫌いがはっきり分かれると言われるが、はたして私は後者になってしまった。「たまねぎの腐ったの」っていう、ドリアン好きには不幸なトラウマを背負うことになってしまった。

2人で食べるべくパックでM氏は買ってきたが、私は一口表面部分に手をつけただけでKO。「もっと、中のほうが旨い」とM氏は勧めてくれるが、しまいには彼の旨そうに食う姿すら腹だだしくなってくるほど、不愉快な時間を送ってしまった。一度匂いがつくとなかなか落ちず、部屋に帰ってきてベッドでM氏がこいた“ドリアン屁”で、こちらは一層ハラスメント気分になってしまった。もっとも、M氏に落ち度はないんですけどね。
 
さて、M氏からは予算の都合で今回の宿を選んだと言われたが、その場所はラブホテル街だとも言われてもいた。こちらは、渋谷か新宿あたりのそれをイメージしていたのだが、その実態ははたして原始的なフーゾク街であった。建物こそ木造とか漆喰とかの無骨な造りじゃないけれど、昔の“赤線”という言葉がピッタリ当てはまるような光景が、目の前で繰り広げられていた。

翌朝に撮影
した“処理場”の一つ。「Shall we play with as...oops! us?」なんて、言われこそしなかったけれど、カメラを向けようものなら「F...k with us, or I'll kill you!」と脅されそうだったので、ドリアンの店への行き帰りは、M氏ともども一切彼ら・彼女らと目を合わさず、早足で駆け抜ける羽目になったのであった……。

                       
                             ☆   ☆   ☆   ☆   ☆


 
そんな悪夢(?)も、翌朝になるとすっかりどーでもよくなっていた。曇天という天気予報も、窓を開けるとよく晴れていた。散策日和になりそうな予感。テレビをつけてウダウダしていると、何とテレ東の「いい旅夢気分」の再放送が流れてきた。男性タレント夫婦が長野の温泉を訪れていた。
 
時間は8時。宿に荷物を置き、本格的な旅のスタートだ。M氏の予定では1時間早くスタートしたかったようだが、3時寝だから8時でも早いくらい。まずは、市内を走るMRTの最寄り駅であるアルジュニード駅に向かう。
 
鉄ちゃんではない私でも、異国の鉄道になぜかカメラを向けてしまった。
 
まずは、M氏ご希望の料理「ラクサ」を食べに行くことに。2駅だけ乗車するのだが、左がフツーの切符。右が「イージーリンク」というICカードで、市内のMRTとバス両方に使用可能。シンガポール経験者のM氏のおかげで旅費が地味に浮いた。カード料金5SGD、デポジット3SGDに、とりあえず7SGDを入れてもらう。
 
時間は9時前。さすがに静かだ。市場のテナントも閉まっているか、開店準備中のところがほとんど。
 
少し歩いてスーパーマーケットを見つけたので入る。何かを買うわけではない。ネタを探すためである。
 
「のどがしよくりょう」「うどんがあればすぐおいしい」。
 
「たまねぎなっとうもち」「やさいなっとうもち」「モダンなファミリーヨーヒン」……最近日本語が乱れているとは言われるけど、それでもこの表現には微妙なズレを感じずにはいられない。こういうプチ発見ができるのが、旅人ならではのスーパーマーケットの楽しみ方だ。

陽が出てきて蒸し暑くなってきた。野良猫は早くもダウン気味だ。
 
さて、場所をあいまいに覚えたままだったので、かれこれ1時間以上歩き回って、ようやく10時過ぎに朝食。ガイドブックに載っている有名店「328カトン」にて。

お目当ての「ラクサ」(右上の丼)とは、マレー・中国合作の海鮮ヌードル。辛いスープにココナッツミルク(ここのはコンデンスミルク)が入り、魚介類(ここのは貝類)と平打ち麺というもの。ココナッツミルクのまったりしたスープに、貝のだしがたっぷり出ていて、ちょっと変わった味ながらとても美味かった。機会があればまた食べてみたい食べ物だ。左上は、ゆずジュースのようなレモンジュースのような飲み物。これも汗をかいた身体に染み入るように美味い。
 
食後、近くのヒンズー教寺院へ。「ゴープラム」と言われる壁面の彫刻が特徴的だ。建物脇の水道で足を清めてから、素足で中に入る。何か信者らしき人に目をつけられている感じだったが、M氏は慣れたように中まで入っていった。

寺院を見学後、近くのバス停からマーライオンのいる地区へバス移動。待つ顔は、インド系の方、アラビア系の方、東南アジア系の方、中国系の方+我々日本人と、いろいろいる。ある意味、シンガポール共和国の縮図でもある。
 
2階建てバスだったので、「煙と××は上に向かう」の言葉よろしく、2階へ上がる。
右上は、ビル群をバックに1枚。道路には鉄骨が組みたてられていたが、これは2週間後の9月26日から行われるF1シンガポールグランプリのため。F1史上初のナイトレース、国にとっても国家プロジェクトだけに、その開催に注目が集まっている(はず。F1ファンにとっては)。いまバスが走っているこの道もまた、レースコースとなる。
 
バスに揺られて20分。いよいよ(あくまで)自称“マーくん”ことマーライオンとの遭遇である。
 
ジャーン!…ってほどの大きさや迫力でもなかったが、こいつが正真正銘のマーライオン。機械の故障で水を噴射できないことで「世界三大がっかり観光地」の汚名を着せられた“マーくん”だが、この日はちゃんと水を噴射してくれていた。離島にもっと大きなマーくんがいるそうだが、あくまでこちらが本家。あちこちで写真を撮る姿を見る。たかがマーライオン、されどマーライオン。

その裏手には「ミニマーライオン」の姿もある。こちらも世界三大がっかり観光地の一つ「小便小僧」のように、チャ〜ッと水を垂らしていたのであった。(中編につづく)


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