萌えるエスペラント語

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『萌えるエスペラント語 っ!』(13)
第9課 「時刻や量の表し方」

(注) この物語に登場する人物・団体などはすべて架空のものです。

今回の学習項目 (ページ内リンク)


序数

【沢渡さん】「今日はまず順序の表し方をやりますね。数詞に形容詞語尾 (-a) や副詞語尾 (-e) を付けると、何番目っていう、順序を表す言葉 (序数) になるんですよ。形容詞のときは、順番で特定されるって考えて、ふつう冠詞も付きますよ」

【美音先輩の補足】「『unuunua』は母音が増えてアクセントの位置が変わるよ。所有形容詞 (mia とか) があるときは冠詞はいらないよ」

【沢渡さん】「数字で書くときは『la 123-a』か『la 123a』って感じで書くんです。数量を聞く疑問詞『kiom』も同じ変化をしますよ」

【沢渡さん】「何倍や何分の一の言い方は、接尾辞 -obl--on- を使います」

【俺】「全部規則的に作れるんだな」

接続詞 (〜と)

【沢渡さん】「ここで、語句や文をつなぐ接続詞についてもやっておきますね」

kaj [kaj] (カィ)
[接続詞] 〜と、そして

【沢渡さん】「二人合わせて主語が複数になるから、補語は複数形ですね。両方とも目的語なら両方が対格ですよ」

【沢渡さん】「単数形の形容詞は単数の名詞しか修飾できないし、複数形なら複数を修飾するから、形容詞がどこまでかかってるのかわかりますね」

【俺】「ああ、形容詞が複数形になることで、この区別がつくってことか」

【俺】「これは前置詞部分どうしをつないでるんだな」

時刻の表し方

【沢渡さん】「じゃあ、ここで時刻の表し方です。この単位を使いますよ」

【美音先輩の補足】「この『horo』は一時間 (60分) のほうの意味よ。一般的な意味の『時間』っていう単語は前回やった『tempo』ね」

【沢渡さん】「『なん時』ってときは、前置詞 je を使います。j はヤ行ですよ」

La knabino venis je la oka (horo) kaj kvin (minutoj).
その少女は八時五分来ました。
je [je] (イェ)
[前置詞] 〜時に (時刻)

【沢渡さん】「『la oka』は『8 (ok)』に -a が付いて『八番目の』ですね。(れい)時から数えて八番目です。この文の括弧(かっこ)の語は省略できますよ」

【俺】「へぇ、『時』は序数で単数形だけど『分』はふつうの数詞で複数形なんだな。ってことは『八番目の時間と五個の分』って言い方か」

【美音先輩】「端数だけ付け足して言ってる感じね。30分のときは『duono』とも言えるよ。さっきやった『二分の一』の名詞形ね」

(Nun) estas la deka (horo) kaj duono.
(いま) 十時半です。

【美音先輩の補足】15分を『kvarono』、45分を『tri kvaronoj』ということもあるよ。『kvar』の変化形ね」

【沢渡さん】「この『nun (いま)』は主語じゃなくて副詞だから、なくてもいいですよ。英語は主語 it を置くとこですけど、エスペラントは主語なしで言うんです」

【俺】「前置詞もない?

【沢渡さん】「うん。『十時半です』じゃなくて『十時半です』だからですね。疑問文のときも、『なん時?』は前置詞なしで『なん時?』は『je』が付きますよ」

Kioma horo nun estas?
いまなん時ですか?
Je kioma horo vi ŝin vidis?
あなたはなん時彼女に会いましたか?
vidi [víːdi] (ヴィーディ)
[他動詞] 見えている、(人に) 会う (対象は目的語)

【美音先輩の補足】「前回やった『rigardi (見る)』は意識的に見るって意味ね。この『vidi (見えてる)』は視界に入ってるって意味だから、意識的の場合も無意識の場合もあるよ」

【俺】「『何番目の (kioma)』『時 (horo)』かを聞くんだな」

年月日の表し方

【沢渡さん】「次は年月日の言い方です。この単位を使いますよ」

【美音先輩の補足】「『日』は前に出てきた『tago』よ。『monato』は天体の月じゃなくて、一か月の月の意味ね」

【沢渡さん】「年月日のように幅がある時間を指すときは前置詞『en (〜の中で)』を使うんです。年はふつうの数字と同じ読み方ですよ」

lasta [lásta] (タ)
[形容詞] 最後の、この前の (昨〜、先〜)

【美音先輩の補足】「『この前』は、過去から現在までの並びの『最後』って感じね。序数と同じ理屈で『lasta』にも冠詞を付けるよ」

【俺】「『この月の二番目の日』で『今月二日』か。日付も序数で言うんだな」

【沢渡さん】「うん。……次のようなのは合成語の副詞形にしたら一語で言えますよ」

【美音先輩の補足】「『ĉi』と『ĉiu』を見間違えないように、『ĉi』を合成語にするときはハイフンを入れることが多いよ」

【俺】「『この月に』と『それぞれの月に』か。この合成語は『jaro (年)』なら『ĉi-jare (今年)』『ĉiujare (毎年)』になるのか?

【沢渡さん】「うん。『今週 / 毎週』『今朝 / 毎朝』でも全部同じ言い方ですよ」

【美音先輩の補足】「『en frua mateno = frumatene (早朝に)』とか、エスペラントでは前置詞を使う代わりに副詞形が使えるってことも多いよ。『matene (朝に)』『nokte (夜に)』とかも副詞一語で言えるよ」

【美音先輩】「あと、年月日を数字で書くときの注意だけど、『年/月/日』って斜線で区切るのは国際的にはまぎらわしい書き方みたいね。『日/月/年』とか『月/日/年』とか国によって書き方の習慣が違うのよ」

【俺】「その書き方って国によってバラバラだったんですね」

【美音先輩の補足】「ちなみに、『年-月-日』(ハイフン区切り、年は必ず四ケタ、一ケタの月日は前に0) って書き方が国際規格 (ISO) になってるよ」

前後の表し方

【沢渡さん】「次に、前後の表し方です。この前置詞は時間にも場所にも使えますよ」

antaŭ [ántaw] (ンタゥ)
[前置詞] 〜前に (時間)、〜の前で (場所)
post [post] (ポスト)
[前置詞] 〜後に (時間)、〜の後ろで (場所)

【美音先輩の補足】「副詞形『antaŭe』はアクセント位置が変わるよ」

【沢渡さん】「『二時 (la dua horo)』は序数で単数だけど、『二時間 (du horoj)』はふつうの数詞で複数形にもなるんです。『post』でも同じ言い方ですよ」

【俺】「そうか。二時間は60分が二つだけど、二時は零時から数えて二番目なだけで、二つあるわけじゃないってことか」

【美音先輩】「『二日の日』と『二日間』でも同じね。こんな言い方もあるよ」

mezo [méːzo] (メーゾ)
[名詞] 真ん中

【俺】「『午前』は『antaŭ (〜前に) + tagmezo (正午)』の副詞形か。その『正午』も合成語だから、結局これは三つの語根の合成語なんだな」

【沢渡さん】「うん。……午前午後じゃなくて、19時とか言ってもいいですよ」

数量の対格

【沢渡さん】「次は期間の言い方です。これは前置詞でも言えるんですけど、前置詞を使わずに対格 -n で言うこともできるんですよ」

En la lando li loĝas dum du jaroj.
En la lando li loĝas du jarojn.
その国に彼は二年間住んでいます。 (どちらも同じ意味)
lando [lándo] (ンド)
[名詞] 国、国土
dum [dum] (ドゥ)
[前置詞] 〜の間ずっと (時間的な継続)

【美音先輩の補足】「現在も継続してることは、ただの現在形でよかったね」

【俺】「二年住んでる?

【沢渡さん】「えっと、これは目的語じゃないんですよね?

【美音先輩】「そう。『目的語の対格』『方向の対格』につづく第三の用法ね。数量を表す副詞的語句は対格で表すことができる (数量の対格) っていうものなのよ。期間・回数・長さ・重さとかでよく使うよ」

La urbon ŝi vizitas unu fojon en jaro.
彼女は年に一回その街を訪れます。
La urbon mi vizitis la unuan fojon en la vivo.
私は生まれて初めてその街を訪れました。
viziti [vizíːti] (ヴィズィーティ)
[他動詞] 訪れる、訪ねる (訪問先は目的語)
fojo [fóːjo] (フォーヨ)
[名詞] 回
vivi [víːvi] (ヴィーヴィ)
[自動詞] 生きている、生活する

【沢渡さん】「直訳したら『年の中で一回』『人生の中で一回目』ですね。『一回』とか『一回目』ってところは目的語じゃなくて、名詞の対格が副詞として働くんです」

【俺】「へぇ。この対格で副詞の働きになるのか」

【美音先輩の補足】「『vivo (人生)』に冠詞が付いてるのは、不特定の人の人生じゃなくて、その人の人生だからよ。所有形容詞の代わりの冠詞ね」

【美音先輩】「回数は合成語の副詞形でも言えるよ。序数を合成語にするときは、ふつうの数詞と区別するために、形容詞語尾 (-a) もいっしょに合成するよ。『一回目』と今回の最初に出てきた『一番目』の違いにも注意してね」

【沢渡さん】「『それを一回した』『初めてそれをした』『まず、それをした』の意味の違いですね」

【俺】「そうか。たしかに三つとも言ってることが違う」

【沢渡さん】「ほかにも『la duan de ĉi tiu monato (今月二日に)』とか、日付を表すときに『en 〜』の代わりに対格を使うことがありますよ」

寸法・重さなど

【沢渡さん】「数量の対格は、形容詞にかかることもできますよ」

Ĝi estas 57 metrojn alta kaj 550000 kilogramojn peza.
それは57mの高さで55kgの重さです。 (身長57m体重55kg)
metro [métro] ()
[名詞] メートル (複数形にもなる)
kilogramo [kiloɡráːmo] (キロモ)
[名詞] キログラム (複数形にもなる)
peza [péːza] (ペーザ)
[形容詞] 重い

【沢渡さん】「これも『57メートル』の部分が副詞として、形容詞『高い』にかかってるんですね。『tre alta (とても高い)』の『tre』の部分みたいな感じなのかな」

【俺】「その副詞として働く部分が、数量の名詞だから対格で言うってことか。この55kgって、550トンのことだな」

【美音先輩】「ところが、『トン』っていう単位は国によって定義が違ってて、まぎらわしい単位みたいね。国際的には『メガグラム』と呼ぶべきって話もあるみたい」

【俺】「ええっ!? 一トンが1000kgじゃない国があるってことですか」

【美音先輩の補足】「トンは、もともとはポンドで定義されてた単位だからね」

Kiom ŝi aĝas?Ŝi aĝas eterne dek sep jarojn.
彼女は何歳ですか? ― 彼女は永遠に17歳です。(おいおい)
Kiom tio kostas?Tio kostas 9240 enojn.
あれはいくらしますか? ― あれは9240円します。
o [áːʤo] (アーヂョ)
[名詞] 年齢
eterna [etérna] (エナ)
[形容詞] 永遠の
kosti [kósti] (ティ)
[自動詞/他動詞] 値段がある、(費用を) 要する
eno [éːno] (エーノ)
[名詞] 日本円 (複数形にもなる)

【美音先輩】「『kiom』は数量を聞く疑問詞だったね。こういう文の対格は、目的語なのか数量の副詞なのかって分類することにあまり意味はないと思うよ。どっちにしろ対格になるってとこが重要だからね」

【俺】「いや、それよりも例文に突っ込みたい気持ちでいっぱいなんですけど」

【沢渡さん】「年齢は形容詞形を使って『Ŝi estas dek sep jarojna.』とも言えますよ。さっきの高さを言う文と同じ形ですね」

分量の表し方

【沢渡さん】「最後に分量の表し方をやりますね。『(量を表す語) da (物)』で、その物をそれだけの分量って意味になるんですよ。『de (〜の)』じゃないですよ。不定冠詞がないからこんな形です」

taso [táːso] (ターソ)
[名詞] カップ、湯のみ茶わん
da [da] (ダ)
[前置詞] (分量を表す)
teo [téːo] (テーオ)
[名詞] 茶 (全般)

【美音先輩の補足】「ティーカップは合成語で『tetaso』って言うよ。英語と違って、名詞で名詞は修飾しないから『teo taso』とは言わないよ。形容詞にして『tea taso』ならいいけど」

【俺】「へぇ。英語と違って、『(A) de (B)』は、そのまま『(B)(A)』の意味になってしまうんだ。分量には別の前置詞を使うんだな」

Du glasojn da lakto li trinkis.
彼はコップ二杯の牛乳を飲みました。
Estas en ĝi tri kilogramoj da akvo.
それの中に3kgの水があります。 (主語が新情報。もちろん違う語順も可)
trinki [trínki] (ンキ)
[他動詞] 飲む
glaso [ɡláːso] (ソ)
[名詞] コップ、グラス
lakto [lákto] (ト)
[名詞] 乳 (全般)

【美音先輩の補足】「『茶』や『乳』は文化によってどの種類を思い浮かべるかが違うから、注意してね (緑茶/紅茶、牛乳/ヤギ乳/馬乳、など)。種類を言わないとうまく伝わらないことがあるよ」

【沢渡さん】「ほかの前置詞と同じで、目的語のときは前置詞の前だけ対格ですよ」

【俺】「そうか。意味的には後ろの牛乳を指すけど、対格になるのは前なんだ」

【美音先輩】「もちろん、目的語じゃないときは対格にならないよ。さっきの数量の対格と間違わないでね。これは、数量が副詞になるわけじゃないからね」

Kiom da libroj vi havas?
あなたは何冊の本を持っていますか?

【沢渡さん】「前置詞の前の、量を表す部分が疑問詞ってことですね。本は数えられるから後ろが複数形になってます。『kiom』は副詞だから、目的語になっても対格の語尾は付かないですよ」

【美音先輩】「うん。『kiom』は副詞だから、『いくつ〜する』って感じで動詞にかかるときはそのまま使えるよ。でも、『いくつの〜』って感じで名詞にかかるときは、間に『da』がいるのよ。形容詞形の『kioma』は『何番目の』だったし」

【俺】「ってことは、『kiom da (名詞)』で、それが何個か聞けるわけですね」

【美音先輩の補足】「『Kiom da jaroj vi havas? (いくつの年を持ってる)』っていう年齢の聞き方もあるよ」

【沢渡さん】「じゃあ、最後に問題です」

エスペラントに訳そう。

…………。

【沢渡さん】「えっと、正解はこうですね」

【俺】「『三日間』前で、『5000メートル』が副詞的な数量だから対格か。二つ目の文は、牛乳は数えられないから複数形にならないってことだな」

(つづく)


今回の要点

次回は…

次回は第10課「接続詞と比較表現」の予定です。お楽しみに。

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