(注) この物語に登場する人物・団体などはすべて架空のものです。
「今日はまず順序の表し方をやりますね。数詞に形容詞語尾 (-a) や副詞語尾 (-e) を付けると、何番目っていう、順序を表す言葉 (序数) になるんですよ。形容詞のときは、順番で特定されるって考えて、ふつう冠詞も付きますよ」
「『unu → unua』は母音が増えてアクセントの位置が変わるよ。『mia unua (私の最初の〜)』とか所有形容詞があるときは冠詞はいらないよ」
「数字で書くときは『la 123-a』か『la 123a』って感じで書くんです。数量を聞く疑問詞『kiom』も同じ変化をしますよ」
「何倍や何分の一の言い方は、接尾辞 -obl- と -on- を使います」
「全部規則的に作れるんだな」
「ここで、語句や文をつなぐ接続詞についてもやっておきますね」
「二人合わせて主語が複数になるから、補語は複数形ですね。両方とも目的語なら両方が対格ですよ」
「単数形の形容詞は単数の名詞しか修飾できないし、複数形なら複数を修飾するから、形容詞がどこまでかかってるのかわかりますね」
「ああ、形容詞が複数形になることで、この区別がつくってことか」
「これは前置詞部分どうしをつないでるんだな」
「じゃあ、ここで時刻の表し方です。この単位を使いますよ」
「この『horo』は一時間 (60分) って意味よ。一般的な意味の『時間』っていう単語は前回やった『tempo』ね」
「『なん時に』ってときは、前置詞 je を使います。j はヤ行ですよ」
「『la oka』は『8 (ok)』に -a が付いて『八番目の』ですね。零(れい)時から数えて八番目です。この文の括弧(かっこ)の語は省略できますよ」
「へぇ、『時』は序数で単数形だけど『分』はふつうの数詞で複数形なんだな。ってことは『八番目の時間と五個の分』って言い方か」
「端数だけ付け足して言ってる感じね。30分のときは『duono』とも言えるよ。さっきやった『二分の一』の名詞形ね」
「15分を『kvarono』、45分を『tri kvaronoj』ということもあるよ。『kvar (4)』の変化形ね」
「この『nun (いま)』は主語じゃなくて副詞だから、なくてもいいですよ。英語は主語 it を置くとこですけど、エスペラントは主語なしで言うんです」
「前置詞もない?」
「うん。『十時半にです』じゃなくて『十時半です』だからですね。疑問文のときも、『なん時?』は前置詞なしで『なん時に?』は『je』が付きますよ」
「前回やった『rigardi (見る)』は意識的に見るって意味ね。この『vidi (見えてる)』は視界に入ってるって意味だから、意識的の場合も無意識の場合もあるよ」
「『何番目の (kioma)』『時 (horo)』かを聞くんだな」
「次は年月日の言い方です。この単位を使いますよ」
「『日』は前にやった『tago』よ。『monato』は天体の月じゃなくて、一か月の月の意味ね」
「年月日のように幅がある時間を指すときは前置詞『en (〜の中で)』を使うんです。年はふつうの数字と同じ読み方ですよ」
「『この前』は、過去から現在までの並びの『最後』って感じね。序数と同じ理屈で『lasta』にも冠詞を付けるよ」
「『この月の二番目の日』で『今月二日』か。日付も序数で言うんだな」
「うん。……次のようなのは合成語の副詞形にしたら一語で言えますよ」
「『ĉi』と『ĉiu』を見間違えないように、『ĉi』を合成語にするときはハイフンを入れることが多いよ」
「『この月に』と『それぞれの月に』か。この合成語は『jaro (年)』なら『ĉi-jare (今年)』『ĉiujare (毎年)』になるのか?」
「うん。『今週 / 毎週』『今朝 / 毎朝』でも全部同じ言い方ですよ」
「『en frua mateno = frumatene (早朝に)』みたいに、エスペラントでは前置詞を使う代わりに副詞形が使えるってことも多いよ。『matene (朝に)』『nokte (夜に)』とかも副詞一語で言えるよ」
「あと、年月日を数字で書くときの注意だけど、『年/月/日』って斜線で区切るのは国際的にはまぎらわしい書き方みたいね。『日/月/年』とか『月/日/年』とか国によって書き方の習慣が違うのよ」
「その書き方って国によってバラバラだったんですね」
「ちなみに『年-月-日』(ハイフン区切り、年は必ず四ケタ、一ケタの月日は前に0) って書き方が国際規格 (ISO) になってるよ」
「次に、前後の表し方です。この前置詞は時間にも場所にも使えますよ」
「副詞形『antaŭe』は母音が増えてアクセントが変わるよ」
「『二時 (la dua horo)』は序数で単数だけど、『二時間 (du horoj)』はふつうの数詞で複数形にもなるんです。『post (〜後)』でも同じ言い方ですよ」
「そうか。二時間は60分が二つだけど、二時は零時から数えて二番目なだけで、二つあるわけじゃないってことか」
「『二日の日』と『二日間』でも同じね。こんな言い方もあるよ」
「『午前』は『antaŭ (〜前に) + tagmezo (正午)』の副詞形か。その『正午』も合成語だから、結局これは三つの語根の合成語なんだな」
「うん。……午前午後じゃなくて、19時とか言ってもいいですよ」
「次は期間の言い方です。これは前置詞でも言えるんですけど、前置詞を使わずに対格 -n で言うこともできるんですよ」
「現在も継続してることは、ただの現在形でよかったね」
「二年を住んでる?」
「えっと、これは目的語じゃないんですよね?」
「そう。『目的語の対格』『方向の対格』につづく第三の用法ね。数量を表す副詞的語句は対格で表すことができる (数量の対格) っていうものなのよ。期間・回数・長さ・重さとかでよく使うよ」
「『vivo (人生)』に冠詞が付いてるのは、不特定の人の人生じゃなくて、その人の人生だからよ。所有形容詞の代わりの冠詞ね」
「直訳したら『年の中で一回』『人生の中で一回目』ですね。『一回』とか『一回目』ってところは目的語じゃなくて、名詞の対格が副詞として働くんです」
「へぇ。この対格で副詞の働きになるのか」
「回数は合成語の副詞形でも言えるよ。序数を合成語にするときは、ふつうの数詞と区別するために、形容詞語尾 (-a) もいっしょに合成するよ。『一回目』と今回の最初に出てきた『一番目』の違いにも注意してね」
「『それを一回した』『初めてそれをした』『まず、それをした』の意味の違いですね」
「そうか。たしかに三つとも言ってることが違う」
「ほかにも『la duan de ĉi tiu monato (今月二日に)』とか、日付を表すときに『en 〜』の代わりに対格を使うことがありますよ」
「数量の対格は、形容詞にかかることもできますよ」
「これも『57メートル』の部分が副詞として、形容詞『高い』にかかってるんですね。『tre alta (とても高い)』の『tre』の部分みたいな感じなのかな」
「その副詞として働く部分が、数量の名詞だから対格で言うってことか。この55万kgって、550トンのことだな」
「ところが、『トン』っていう単位は国によって定義が違ってて、まぎらわしい単位みたいね。国際的には『メガグラム』と呼ぶべきって話もあるみたい」
「ええっ!? 一トンが1000kgじゃない国があるってことですか」
「トンは、もともとはポンドで定義されてた単位だからね」
…………。
「『kiom』は数量を聞く疑問詞だったね。こういう文の対格は、目的語なのか数量の副詞なのかって分類することにあまり意味はないと思うよ。どっちにしろ対格になるってとこが重要だからね」
「いや、それよりも例文に突っ込みたい気持ちでいっぱいなんですけど」
「年齢は形容詞形を使って『Ŝi estas dek sep jarojn aĝa.』とも言えますよ。さっきの高さを言う文と同じ形ですね」
「最後に分量の表し方をやりますね。『(量を表す語) da (物)』で、その物をそれだけの分量って意味になるんですよ。『de (〜の)』じゃないですよ。不定冠詞がないからこんな形です」
「へぇ。英語と違って、『(A) de (B)』は、そのまま『(B) の (A)』の意味になってしまうんだ。分量には別の前置詞を使うんだな」
「ちなみに、ティーカップは合成語で『tetaso』って言うよ。英語と違って、名詞で名詞は修飾しないから『teo taso』とは言わないよ。『tea taso』ならいいけど」
「で、ほかの前置詞と同じで、目的語のときは前置詞の前だけ対格ですよ」
「『茶』や『乳』は文化によってどの種類を思い浮かべるかが違うから、注意してね (緑茶/紅茶、牛乳/ヤギ乳/馬乳、など)。種類を言わないとうまく伝わらないことがあるよ」
「そうか。意味的には後ろの牛乳を指すけど、対格になるのは前なんだ」
「もちろん、目的語じゃないときは対格にならないよ。さっきの数量の対格と間違わないでね。これは、数量が副詞になるわけじゃないからね」
…………。
「前置詞の前の、量を表す部分が疑問詞ってことですね。本は数えられるから後ろが複数形になってます。『kiom』は目的語になっても対格の語尾は付かないですよ」
「うん。『kiom』は副詞だから、『いくつ〜する』って感じで動詞にかかるときはそのまま使えるよ。でも、『いくつの〜』って感じで名詞にかかるときは、間に『da』がいるのよ。形容詞形の『kioma』は『何番目の』だったし」
「ってことは、『kiom da (名詞)』で、それが何個か聞けるわけですね」
「『Kiom da jaroj vi havas? (いくつの年を持ってる)』っていう年齢の聞き方もあるよ」
「じゃあ、最後に問題です」
エスペラントに訳そう。
…………。
「えっと、正解はこうですね」
「『三日間』前で、『5000メートル』が副詞的な数量だから対格か。二つ目の文は、牛乳は数えられないから複数形にならないってことだな」
(つづく)
次回は第10課「接続詞と比較表現」の予定です。お楽しみに。