販売・生産・搬送計画率案支援システム・エンティティのライフサイクル
はじめに
ER図を元に,エンティティのライフサイクルを検証します.エンティティには,作成から削除にいたる一連のプロセスが必要です.エンティティのライフサイクル検証の結果,業務概要には載っていない新しいプロセスを発見できる可能性も出てきます.
エンティティの抽出
作成したER図を図1に示します.
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このER図からエンティティを抜き出します.
エンティティ | ||||||||||||||||||||||
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社員 | 商品 | 得意先 | 販売可能商品 | 販売計画 | 販売実績 | 商品販売可否履歴 | 販売担当者履歴 | 工場 | 生産可能商品 | 生産計画 | 生産実績 | 商品生産可否履歴 | 生産担当者履歴 | 搬送経路 | 搬送可能商品 | 搬送計画 | 搬送実績 | 搬送担当履歴 | 倉庫 | 保管可能商品 | 商品保管可否履歴 | 補完担当者履歴 |
プロセスの抽出
業務概要よりプロセスを抽出します.まず,以下のプロセスを選びました.
- 販売計画立案
- 販売担当者が担当する得意先毎に,次の1年間で納入する商品の数量を予測します.その際は,過去3年分の販売計画と販売実績を参考にします.
- 生産計画立案
- 生産担当者が担当する工場毎に,次の1年間で生産する商品の数量を予測します.その際は,販売担当者が立てた販売計画と現在の在庫状況を参考にします.
- 搬送計画立案
- 搬送担当者が担当する搬送経路毎に,次の1年間で搬送する商品の数量を予測します.その際は,販売担当者が立てた販売計画と生産担当者が立てた生産計画,現在の在庫状況を参考にします.
エンティティ | ||||||||||||||||||||||||
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社員 | 商品 | 得意先 | 販売可能商品 | 販売計画 | 販売実績 | 商品販売可否履歴 | 販売担当者履歴 | 工場 | 生産可能商品 | 生産計画 | 生産実績 | 商品生産可否履歴 | 生産担当者履歴 | 搬送経路 | 搬送可能商品 | 搬送計画 | 搬送実績 | 搬送担当履歴 | 倉庫 | 保管可能商品 | 商品保管可否履歴 | 保管担当者履歴 | ||
プロセス | 販売計画立案 | R | R | R | R | CR | R | R | R | |||||||||||||||
生産計画立案 | R | R | R | CR | R | R | R | R | ||||||||||||||||
搬送計画立案 | R | R | R | R | CR | R | R | R |
これだけでは明らかにプロセスが不足しています.エンティティの作成と削除を中心に,業務概要に出ていないプロセスについて更に検討します.
販売・生産・搬送の実績データは販売システム・生産システム・搬送システムが把握しています.したがって,実績データの生成と抹消はこれらのシステムの責任となります.
販売・生産・搬送共に計画と実績の保管期限は3年でした.上述した通り,実績データの抹消はは販売システム・生産システム・搬送システムの責任です.したがって,保管期限を過ぎた計画は本システムが抹消します.抹消する際の担当者への連絡要否は,ユーザとの仕様の確認が必要です.今回は単純にするため,保管期限を過ぎた計画は自動的に抹消します.
社員の入退社・異動は人事部の担当者が把握し,人事システムで管理しています.社員データの生成・抹消・更新は人事部と人事システムの責任です.
販売・生産・搬送・保管の各担当者は現在各部所長が口頭で任免しています.計画立案時に必要となるため,当システムで把握します.保管担当者は計画立案には不要ですが,これを機会に記録だけ残すことにします.
得意先との取引開始や取引終了・新しい商品の販売や古い商品の販売終了は営業統括部の担当者が把握し,営業管理システムで管理しています.したがって,商品データと取引先別販売可能商品データの生成・抹消・更新は営業統括部と営業管理システムの責任です.
工場での商品生産開始や終了は生産統括部の担当者が把握し,生産管理システムで管理しています.したがって,工場データと生産可能商品データの生成・抹消・更新は生産統括部と生産管理システムの責任です.
搬送経路を把握しているシステムはありません.したがって,当システムの責任とします.
倉庫での商品の保管開始や終了は在庫統括部の担当者が把握し,在庫管理システムで管理しています.したがって,倉庫データと保管可能商品データの生成・抹消・更新は在庫統括部と在庫管理システムの責任です.
エンティティ | ||||||||||||||||||||||||
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社員 | 商品 | 得意先 | 販売可能商品 | 販売計画 | 販売実績 | 商品販売可否履歴 | 販売担当者履歴 | 工場 | 生産可能商品 | 生産計画 | 生産実績 | 商品生産可否履歴 | 生産担当者履歴 | 搬送経路 | 搬送可能商品 | 搬送計画 | 搬送実績 | 搬送担当履歴 | 倉庫 | 保管可能商品 | 商品保管可否履歴 | 保管担当者履歴 | ||
プロセス | 販売計画立案 | R | R | R | R | CR | R | R | R | |||||||||||||||
生産計画立案 | R | R | R | CR | R | R | R | R | R | |||||||||||||||
搬送計画立案 | R | R | R | R | CR | R | R | R | R | |||||||||||||||
販売計画抹消 | D | |||||||||||||||||||||||
生産計画抹消 | D | |||||||||||||||||||||||
搬送計画抹消 | D | |||||||||||||||||||||||
販売実績発生・抹消(販売実績システム) | CD | |||||||||||||||||||||||
生産実績発生・抹消(生産実績システム) | CD | |||||||||||||||||||||||
搬送実績発生・抹消(搬送実績システム) | CD | U | ||||||||||||||||||||||
履歴抹消 | D | D | D | D | D | D | D | |||||||||||||||||
販売・生産・搬送担当者の任免 | U | C | U | C | U | C | U | C | ||||||||||||||||
社員の入退社・異動(人事システム) | CUD | |||||||||||||||||||||||
取引開始・終了(営業管理システム) | CUD | CUD | C | |||||||||||||||||||||
商品仕様作成・抹消(営業管理システム) | CUD | |||||||||||||||||||||||
生産開始・終了(生産管理システム) | CUD | CUD | C | |||||||||||||||||||||
搬送開始・終了 | CUD | CUD | ||||||||||||||||||||||
保管開始・終了(在庫管理システム) | CUD | CUD | C |
プロセスの過不足とエンティティの生成・抹消プロセスの存在を確認して,ライフサイクルの定義は終了です.
他システムが果す役割
本システムが稼動する際に,他システムが果さなくてはならない役割が見えてきました.整理します.ただし,実現方法(既に実現済み・直接テーブルにアクセスするプログラムを新作・本システムで操作プログラムを用意等)に関しては今後の検討としてあげておきます.この段階で決める必要はありません.
- 販売・生産・搬送実績システム
- 販売・生産・搬送実績の把握と4年以前の実績の抹消
- 人事システム
- 社員の入退社・異動に伴うデータの生成・更新・抹消
- 営業管理システム
- 得意先との取引開始・終了,商品の販売開始・終了に伴うデータの生成・更新・抹消
- 生産管理システム
- 工場での商品生産開始や終了に伴うデータの生成・更新・抹消
- 在庫管理システム
- 倉庫での商品の保管開始や終了に伴うデータの生成・更新・抹消
- 各部所長
- 販売・生産・搬送・保管担当者の任免に伴うデータ入力.部所長は担当者の任免のみ,データ入力は新しい担当者が行うというやり方もあり