屋久島の旅
 
 
今回の宿泊先は、安房(あんぼう)地区にある「御宿鶴屋」。いろいろ見比べてみて、宿のホームページに載っていた夕飯と朝食が何とも美味そうだったので、それで選んだのだ。
 
全体的に小ぎれいで清潔な宿であったが、そんな宿に泊まるのは私1人。ガクッ。右上はCX「めざましテレビ」の出演者がやってきたときの写真だ。皆藤愛子嬢(右から2人目)がいるから結構最近か。真ん中に写っている白いTシャツの男性が、宿のご主人である。他にもいろいろな芸能人がこの宿に泊まっていて、写真がいくつか立てかけられてあった。
左上の写真の奥に写る食堂は、チェックイン時はほとんど明かりがついておらず、暗い部屋で小さい姉弟2人が遊んでいた。「すいませ〜ん」と声をかけると、お姉ちゃんが出てきて目の前を素通りし、お母さん(女将)を連れてきた。
 
夕食を18時、朝食を翌朝7時半に指定し、いったん部屋へ。6畳程度の白木の和室でバス・トイレ別(洗面台はあり)。いつもビジネスホテルかリゾートホテルで洋室ばかりだったので、和室での宿泊はホントに久しぶりであった。布団は自分で敷くようにとのことで、最初は左上の写真のようなレイアウトだったものを、右上のように自分仕様に変えておいた。写真には写っていないが、浴衣・半纏・バスタオルなどはしっかりついていて、アメニティも髭剃りと歯ブラシはついていた。
注目の大相撲を結びの一番まで見届けてから食堂へ。備え付けの宿のファイルには「時間厳守で作りたてのアツアツをお楽しみください」と書いてあったので、ホントに大相撲から18時のニュースに画面が変わると同時に部屋を出た。
 
部屋は2階のみにある。やや殺風景な感じというか、どっか民宿的というか、そっけないというか、そんな曖昧な印象をこの廊下に持った。ラックがあって、屋久島のガイドブックや島内施設のパンフレットが、観光協会並みに充実していた。

いさ夕食。こんな手書きのお品書きがあった。酒は別料金で注文することになる。宿自体がマイスター資格を持っているというキリンビールを飲もうかどうしようか迷ったが、女性に人気があって、生産量も少なく半年待ちとか書いてあった芋焼酎「愛子」の水割りを1杯注文した。600円。女性に人気だというなら、酒にそんなに強くない私にも飲みやすいと思ったのだ。
 
左上の写真は、左から芋焼酎「愛子」の水割り刺身盛り合わせとびうおの酢の物。「愛子」とは皇太子様のお子様・愛子様ご生誕記念から取っている。皇太子妃雅子様にも実際振舞われたようだ。なるほど、口当たりにクセがまったくなく飲みやすかった。刺身は残念ながら名前を失念したが、いずれも美味い地魚であった。とびうおは、屋久島ではもっともポピュラーな魚。まず出てきた酢の物は、いい感じに酢でしめられてあった。
右上の写真は、ごはん・漬物のセットカンパチのカマ焼。このカマ焼がなかなか絶品。身のあるとこあるとこ、できる限り掘り出しまくって食べてやった。ご飯は、魚をおかずに食べたかったので一緒に注文したのだが、あとで夕食のボリュームを知ったとき、「頼まなければよかったかも」とちと後悔した。漬物もヘンに「市販の漬物をとりあえずつけときました!」って感じがなくていい。
 
左からとんこつとびうおの変わり揚げ季節の鍋である。カマ焼も絶品だったが、それ以上に絶品だったのがとんこつととびうおの変わり揚げだ。鹿児島の郷土料理「とんこつ」は、骨付き豚肉を煮込んだものに野菜を添えるものだが、奄美で食べたのも含めて、数度食べた中でNo.1の美味さだった。普通とんこつのみ色が変わっていて、野菜類はほとんどそのままの色なのだが、ここのは添えられたこんにゃくと大根にまで味噌の味と色が染み込んでいて、お酒や飯にものすごく合った。変わり揚げは、とても味の濃い南蛮揚げで、こちらもまた食が進む。骨までしっかり食ってやった。
この“最強の2つ”でかなりお腹がいっぱいになっただけに、鍋がやや堪能できなかったのが惜しい。基本塩味の寄せ鍋。だしが美味しかっただけに、かえって鍋はなかったほうがよかったんじゃないかって思った。野菜の下には餅が入っていて、満腹の胃の中に辛うじてできた隙間へ強引に入れ込んでやった。
 
たっぷり夕飯を堪能した後、サッカーの“岡田ジャパン”の初陣を見届けながら軽く酔い覚ましをして風呂へ。それほど広くない風呂も、誰もいない1人にとってはとても広かった。既述のようにいつも洋室ばかりで、しかもバス・トイレつきだったこともあり、自分のペースでシャワーを浴びて…というのが泊まったときの流れであったが、これまた十何年ぶりに宿の風呂を堪能しておいた。

「風呂上がりに水を1杯」こんなポットが心憎い。ただし、味はごくごくフツーだったような……芋焼酎「愛子」と風呂の渇きを潤すには、美味しい自然の水よりも残念ながら人工飲料・アクエリアスのほうが効果的だった。
部屋に戻り、岡田ジャパンの初陣の続きを観ながら、パソコンで旅行記を作って夜を過ごす。荷物にはなるが、パソコンのおかげで夜を持て余さないで済む。前日の睡眠が浅かったので、22時にて就寝。
 
翌朝は5時起床。NHKの落語とかを観ながら、またパソコンで旅行記の続きを作っていた。7時前、ようやっと明るくなった外を見ると、山の上には大きな黒い雲。残念ながら、昨日より天気は悪くなっている感じだ。
朝食は、また1人の食堂で。ホームページのふれ込み通り、白飯はお釜で炊きたて。茶碗によそると3杯分になるが、しっかり食べておく。おかずも、朝食としてはなかなか充実していたと思う。
絶品の夕食、なかなかの朝食は期待通り…いや、期待以上であった。風呂も堪能できたし、夜もぐっすり眠れた。1泊2食付1万円のところ、ホームページの割引で1000円引かれて9000円。これに芋焼酎「愛子」の水割りをつけて、しめて今回の宿泊料9600円也。

                      ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

宿は8時に出発。雨がぽつぽつ降っている。昨日見損なった大川(おおこ)の滝を目指すべく、一気にノンストップで走りまくることに。先に滝を見て、余裕があれば帰りに適当に寄り道しようと思ったのだ。飛ばしたかいがあって、安房から標準で1時間10分かかるという大川の滝まで、40分で何とか辿りつくこどができた。

大川の滝手前の電光掲示板。やれやれ、やはり西部林道は今日も通行止めのようだ(後で調べたら、2月半ばまで通行止めのようだった)。

大川の滝は、落差88mの名瀑。2002年秋に放映された、屋久島を舞台にした宮地真緒嬢主演のNHK朝ドラ「まんてん」のオープニングで出てくる滝としても有名である。たしか、この滝をバックに彼女が写っていたような。
 
滝近くの駐車場からは遊歩道が延びていて、川沿いに海岸まで下っていけるので、最近“河川ブーム”な私としても、その最後を見届けるべく下ってみることにした。

はじめは石畳風に整っていた遊歩道も、しだいに土の道になっていく。鬱蒼としている上に天気が悪いので、夕方のように暗い。そんな中を通り抜けると……
 
石だらけの海岸に出た。昨日に比べて、大きな雨粒がしっかり落ちてきている。
 
海に出て進行方向左に、滝から続く川の河口がある。この辺りは民家が皆無なので、水もきれいだ。

時間は9時ちょい過ぎ。これで観たいものをすべて観られたので、あとはテキトーに寄り道をしながら、来た道をひたすら帰るのみ。
 
途中、南部の平内(ひらうち)でいくつものガジュマルに出会う。志戸子のような公園風(第3回参照)になっているものとはまた違い、町にしっかりとけ込んでいて、これまた何とも言えない雰囲気があってよかった。思わずシャッターを切りたくなった。
 
平内以外にも寄り道をしようかと思ったが、安房に来た辺りで雨が急に強くなって寄り道する気持ちを削がれ、結局空港まで直行してしまった。オリックスレンタカーに戻る前に、スーパーで130円の「三角あげパン」を昼食で買っておく。帰りの飛行機で、鹿児島でのトランジットが25分であるため、万一昼食の買い物ができないといけないからだ。

                      ☆    ☆    ☆    ☆    ☆

10時20分、オリックスレンタカー着。そのままコルトに乗せられて空港へ。1/27のブログは、空港に到着してすぐに投稿したものである。

「この雨なので、場合によって屋久島に(鹿児島からの)飛行機が来られない場合は欠航になります」と搭乗手続き時に言われはしたが、雨こそ本降りでも風があまりなかったので、無事定時に飛行機に搭乗できた。屋久島はよく喩えで「1ヶ月に35日雨が降る」と言われるが、前回同様たしかにその通りで、今回も青空を見ることは一切なかった。
――そういえば、鹿児島から羽田への飛行機内でのこと。私が『ひかりのあめふるしま屋久島』(1/25のブログ第1回第3回参照)を読んでいると、斜め前に座っていた女性が、その本が気になったのか、ちらちらこちらを見ていたような気がする。おそらく、気のせいかもしれないけど、そんな気がした。(「屋久島の旅」おわり)


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