Maggie's J‐POP論
その24 私をコンサートに連れてってJ
     ―桑田佳祐「LIVE TOUR 2007 呼び捨てでも構いません!!
      『よっ、桑田佳祐』SHOW
」2007.12.7@ホットハウススーパーアリーナ―

桑田佳祐氏のコンサートというと、昨年の同時期に“ACT AGAINST AIDS(以下「AAA」とする)”コンサートに行きましたが(コンサート鑑賞記はこちら)、このときは洋楽ロックのカバーばかりでオリジナルを一切やらなかったんですよね。ま、これはこれでなかなか面白かったんですが、大晦日の桑田氏ないしはサザンオールスターズ(以下「サザン」とする)の横浜アリーナでのコンサートをテレビで観て楽しんできた者としては、本音は「一度でいいからオリジナルをコンサートで聴きたい」という思いがありました。
その思いが、いよいよ叶う日がやってきました。桑田氏が5年ぶりにソロツアーを決行! 大晦日の横浜アリーナでのコンサートまで全国各地でのツアーをやるとあっては、これを逃しては二度と観に行けないと確信。ブログにも書いたように、本来であれば一番家から近い横浜アリーナで観たかったのですが(大晦日以外でも12/28〜30も開演)、チケット一般発売日には外せない用事が入っていて、すでにファンクラブ会員用にかなりの枚数はけていることを考えれば、横浜アリーナ分の入手は実質困難と判断。まだ空いていた福岡・札幌・仙台公演のうち、次に近い仙台での週末金曜日のチケットをゲットするに至りました。

ホットハウススーパーアリーナ(以下「アリーナ」とする)を目指すべく、まずは17時半の仙台始発利府行き列車に乗車。切符もこれに合わせて、東京都区内と利府駅との往復切符にしておきました。6両編成の電車の乗客は、ほとんど今回のコンサートの観客だったでしょうね。

17時45分、利府駅着。帰りの最終列車は22時44分。その1本しかなく、臨時列車も出る雰囲気がない。はて、それに間に合うように終わってくれるか。あるいは仮に終わっても、その後一斉に帰るわけですから、無事利府駅に戻ってこられるか。いかにも終点という感じの利府駅の小さい駅舎に、そんな一抹の不安を抱かずにはいられませんでした。

利府駅からアリーナへは路線バスが出ていますが、従来の路線バスが1時間に1本程度とあっては、さすがに臨時バスが出ていました。タクシーも常駐していたとはいえ、ほとんどがバスに乗り込んでいました。17時50分過ぎに乗り、18時10分到着。片道230円。臨時バスとあって、アリーナの前まで行ってくれるのかと思いきや、路線バスと同様にその入口で下車させられました。アリーナまでは登り坂を5分ほど上りますが、なるほど、アリーナへの道は自家用車が駐車場へ入れようと長い列ができており、それによる渋滞遅延を避ける配慮があったんでしょうね。

広場の隅に設置されたグッズ売場(右下の写真)で、Tシャツ(3500円)とギター型のプログラム(2000円)(左下の写真)を買い、いざ場内へ。当初買っていたチケットの番号「西スタンド・K3列11番」は、前もってアリーナのHPで、ステージから見て右側、ステージ方向を見ると左側の、一番ステージ寄りに位置するステージサイド席という確認をしていたのですが、いざその席のそばまで行くと、「K3列4番」より後の番号は完全にステージの内側に入っていて、黒いシートで覆われていたのです。近くにいた係員のアンちゃんに尋ねると、端っこで何やら座席チェックみたいなことをやっている感じ。もしかして、座席を振り替えをさせられるのか。


その通り、「こちらでお願いできますでしょうか」と言われて振り替えられた座席は、その黒く覆われたエリアから上部にスライドされた「K9列11番」でした。見下ろせば、ステージの両サイドに設置されたスクリーンの裏側に位置し、真下すなわちスクリーンの裏側には音響だか照明だかの機械類を扱うブースがあり、係員が数人いました。そこから視線を奥にやると、キーボード・ドラムスといった楽器類が置いてありました(見づらいですが、左下の写真参照)。左上にはステージを映し出すと思われる小さめのスクリーン(右下の写真)。右側に見える大きいスクリーンの手前には、人が1人程度通れそうなスペース。おそらく、その端っこまで桑田氏が時々来てくれることを期待しましょうってことかな。

これぞホントのステージサイド…いやいや、完全に「バックバンドサイド」みたいな位置でしたね(笑)。バックバンドの楽器の真横だったんですから。ステージのまん前センターに来るであろう桑田氏は、座席からは右前に見える格好になるわけです。「何だか面白い席にさせられたな」と、個人的には妙なプラス思考で楽しみになっちゃっていたんですが、やはり中には「せっかく買ったのに、この席はないだろ」的クレームを言っている客もいましたね。そりゃあ、買った側にしてみたら、いくら前もって「機材の都合で見えないところもあります」と書かれているとはいえ、「限度ってものがあるだろ」ってことですよね。私の数席右側もまた、大きいスクリーンとそれを支える鉄骨にかぶってしまうからか、やはり黒いシートが覆っていましたけど、まあ完全に主催者側の見込み違いなんでしょうね。
そんなこんなでも次第に座席が埋まっていき、やがてコンサート開演が近づくと、突然ウェーブが数往復。サザンのファンクラブの会員さんなんでしょうか。コンサートグッズの扇子を持った男性2人が、通路を前から後ろへと駆け足で観客を煽っていました。最新シングル「ダーリン」のPVもフルコーラスが流れ、早くも場内では総手拍子。そんなまだ始まってもいないのに、盛り上がってしまって息切れしないだろうかって感じですね。それも終わると、主催者側より注意事項のアナウンス。桑田氏がCM出演している缶コーヒーの「WONDA」を全員分プレゼントというお知らせに場内大拍手。アナウンスが終わり照明が落とされると、19時10分、いよいよ20年越しで楽しみにしていたコンサートの開演!

オープニングは「哀しみのプリズナー」。ファーストアルバム「KEISUKE KUWATA」(1988)のかっちょいいオープニングチューンは、早くも座席のハンデを忘れさせてくれました。ステージの上段に現れ、やがて真ん前センターの位置に落ち着くと、次いでKUWATA BAND時代の大ヒットチューン「BAN BAN BAN」。原曲のキーより2音くらい下がって、個人的には気持ちもやや下がっちゃいました。やっぱ、原曲のキーでやってくんないとね。3曲目は、懐かしき「いつか何処かで〜I feel the echo」。有難かった配慮は、必ず曲名と歌詞が出てくれたこと。知っている曲とあって、1曲目から早くもカラオケ状態でした(笑)。ステージの様子と歌詞を左上のスクリーンでチェックしてカラオケしつつ、右下で歌っている桑田氏に目をやるというのが、コンサート最後までの私の行動パターンでしたね。
最初のMCでは、各地で必ずやっていると思われるお約束の「仙台に帰ってきましたー!」という桑田氏の第一声。その後は東北各地より来た人たちに、桑田氏「○○から来た人〜!」観客の一部「ハーイ!!」というコミュニケーション。青森・秋田・福島・山形の4県までやったところで、「全部いっちゃうと大変なことになりますんで、このヘンで」と桑田氏から一方的に締めて爆笑。ちなみに、最初に反応したのが新潟から来た人で、その人には「東北って言ってるでしょ」と一蹴して、これまた爆笑を誘っていました。MCが終わって「男たちの挽歌」「NUMBER WONDA GIRL〜恋するワンダ」「MY LITTLE HOMETOWN」と3曲披露。2度目のMCでは、「MY LITTLE HOMETOWN」にからんで桑田氏が「故郷なんかより仙台のほうがいいです!」と、これまた福岡でも札幌でも地名だけ替えて言ってそうなフレーズ。
MCを終えて、私の大好きなKUWATA BAND「Merry X'mas in Summer」では、間奏とアウトロで仙台のフレーズを使って軽く観客とコミュニケーション。曲の途中では、桑田氏がマイクを持ったままスピーカーに抱きついてハウリングを起こし、苦笑していました。また、女性コーラスの清水美恵氏の真剣な面持ちがスクリーンに映るや、桑田氏「顔がこわい!」と振り、清水氏が「胸がない!」と自虐ギャグ。締めは清水氏ともう1人の女性コーラス・安奈陽子氏が桑田氏を指差して「剥けてない!」と返すと、桑田氏の股間が映し出されて三段落ち。次いで、三沢またろう氏のパーカッションソロから「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」へと流れ、ジャジーなイントロから「BLUE〜こんな夜は踊れない」、タイトルは忘れましたが、クリスマスを意識した教会ソングをオーバーチュアに「白い恋人達」へと続きます。「BLUE〜」は、オリジナルはバリバリ打ち込みの曲なんですが、今回のバンド演奏では「なるほど、こういう風にやるんだ〜」と感心させられるような秀逸なアレンジでした。
3度目のMCでは、バンドメンバーの紹介。AAAのときとほぼ同じ面子でしたね。三沢またろう氏が、桑田氏に突然話題を振られ困惑するも、仙台特有の交通渋滞を「牛タンラッシュ」と(勝手に)命名して、ご丁寧にそれらしい絵を描いたフリップまで披露する用意周到さぶり。トランペット・西村浩二氏は「全身マトリョーシカ」と桑田氏に紹介されると、ホントにマトリョーシカ(ロシアの民芸品。同じ形の小さい人形が次から次へと中から出てくる)の画がスクリーンに出てきて場内爆笑。
キーボード・深町栄氏は桑田氏に「スティーブン・セガール似」とも「高見盛似」とも紹介され、深町氏もそれらしきものまねをお茶目に披露していました。清水美恵氏のところでは、清水氏がまず「先ほどはお見苦しい怖い顔をしましたことをお詫び申し上げます」とお詫び。その後で自ら「痴漢を虐待する顔を披露します」。桑田氏が「虐待…虐待でいいんだっけ?」と訝っていると、「ごめんなさい。“撃退”です」と言い直し、その後で再度披露した怖い顔以上にウケていました。
このMC以後は、一気に「こんな僕でよかったら」「遠い街角〜The wanderin' street」「地下室のメロディ」「東京ジプシーローズ」「東京」「月」「風の詩を聴かせて」「明日晴れるかな」「ダーリン」「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」「波乗りジョニー」「真夜中のダンディ」と披露。「遠い街角」は一気に20年前まで時間を引き戻して、何ともおセンチな気持ちにしてくれましたね。うーん、名曲。「東京」ではディープな世界を、「月」ではしっぽりした和の世界を堪能できました。
「ダーリン」では、先日HMVで購入したシングルについていたLEDバッジを点灯できるチャンスだったのですが、残念ながら私のは、最初テープを外したときに光った(ネジらしき部分にはさまっていたテープを外さないと光らない仕組みなのです)以外は最後まで何をやっても光らず。この楽曲以外では「演出上の妨げになるので禁止」(主催者側)なのですが、アリーナ席では常にあちこちでピカピカ光っていましたね。スタンド席では、すぐ係員が飛んできては注意していましたが。


アンコール前には、これまた開始前と同様、仕切り屋さんの絶妙の仕切りで2度目のウェーブ。アリーナ席で一番後ろから前に向かって折り返そうとしていたころ、今度はスタンド席にも仕切り屋の男性2人がやってきて、私もウェーブに参加しました。一番端っこだったもので、折り返しの役回りとなり、軽くスクワットしました。ウェーブをやるのは2005年10月の日本シリーズ「ロッテ―阪神」のオープニングゲーム以来(「管理人のひとりごと」Part61参照)。一瞬でしたけど、楽しかったです。
そのウェーブが終わると桑田氏とバンドメンバー登場。桑田氏の「今日は遅くまでやっていいですかー!?」というコールで、心の隅っこで「終電には間に合わせてくれよ」と思いつつ(笑)アンコール開始。1曲目の「漫画ドリーム07」は、アコースティック主体のセカンドアルバム「孤独の太陽」をロック調にアレンジし、今年の世相を歌詞に取り入れた替え歌を披露。朝青龍関や力士急死などの大相撲の不祥事、自民党と民主党の大連立騒動、守屋元官房長官の汚職問題、食品偽装、年金問題などを桑田流に切りまくって、場内大歓声でした。次のKUWATA BAND時代のバラード「ONE DAY」は、しっとりと歌い上げて下さり、個人的に大感動でした。3曲目「可愛いミーナ」は、桑田氏いわく「夜だから静かにやりましょ」と、初めはアコースティックに静かに始まり、途中からは普通の音程を展開。サビの「ロマンティックな〜」のところは、全員で合唱していました。最後は「祭りのあと」。たしか、5年前のツアーも最後はこれだったんですよね。まあ、たしかにコンサートの締めには曲名からいって合っているのかも。
21時45分終了。購入したプログラムで桑田氏でも述べていましたが、前回ツアーはロック主体のサードアルバム「ROCK AND ROLL HERO」(2002)をひっさげていたので、楽曲自体もロックが多かったと思いますが、今回はシングル「風の詩を聴かせて」「明日晴れるかな」「ダーリン」と、いずれもポップな楽曲をひっさげていたこともあってか、幅広いジャンルの楽曲・アレンジになっていたんじゃないでしょうか。全体的にポップな仕上がりとなったファーストアルバムの楽曲が多かったのも、その一つの象徴みたいなものでしょう。
いずれにせよ、今回は桑田氏のソロコンサートといえど、「20年越しの夢が叶って超感激」っていう気持ちが第一です。披露された全曲が知っている曲というのは、多分今までで初めてでしょうね。しかも、メロディが簡単に思い出せて歌えてしまいますから。だてに長くファンは続けていませんし、「ここまで生きていてよかった」という感慨も、まんざら大げさではないかも。位置的にステージのバックの演出がやや見づらかったのはありますが、桑田氏も何度かこっち側の端っこまできてくれたし、そのときはかかっていた黒いカバーを踏みつぶしてまで、桑田氏の見える位置まで移動する観客もいました(笑)。我々の位置に一番近かった深町氏や清水・安奈両氏が、演奏の最中にこちらへたまに手を振ってくれたのもまたうれしかったです。

建物前の特設テントでWONDAの“モーニングショット”と“ブラック”を受け取り、ダッシュで利府駅行きのバス乗り場へ。無事22時発の臨時バスに乗ることができ、22時15分に利府駅到着。22時44分発の仙台行き最終まで30分ほど待つことになりましたが、列の先頭で待つことができ、仙台駅まで座って戻れました。利府駅からの電車については臨時の増便が一切なかったため、えらく大混雑するのかと思っていましたが、立ち客こそ出たもののそれほど混まなかったですね。結構、仙台駅行きのシャトルバスに乗った人が多かったんでしょうか。(おわり)


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