Maggie's J‐POP論

その18 私をコンサートに連れてってD
     ―桑田佳祐「Act Against AIDS 2006 星条旗よ永遠なれ!?
       〜私のアメリカンヒーローズ@パシフィコ横浜」2006.11.30―


初めは桑田氏のソロアルバムを全部持っている者としては,「これは楽しみだぞ」と思っていたのですが,タイトルをよく見れば「アメリカンヒーロー」なんてある。一応はAct Against AIDS(以下「AAA」とする)の啓蒙コンサートなんだろうし,「もしかしてオリジナルの曲は一切やらないのかい?」と勘付いたのは,キャンセル待ちのチケットをゲットしてからだったりして……で,後でパシフィコ横浜のホームページをたまたま見たところ,案の定というか,アメリカのロックやポップスのコピーがメインとのこと。正直,失礼ながら買ってよかったんだろーかと思ったりしてしまったのですが,もしかしたら1曲ぐらいはオリジナルをやってくれるかもしれない…ま,もしもやらないにしても,桑田氏の肉声を生で聴けるなんてそうはないことですから(テレビやCDではさんざん聴いていますけど),それだけでもいいやと思って,コンサートに臨むことにしました。
今回座った席は何と前から2列目。ステージの右端寄りではありましたが,今まで一番いいと言っていいくらいの位置でしょう。席そのものもゆったりしていて背もたれももちろんあるし,結構広い席でしたね。ステージには米軍基地を連想させるフェンスと有刺鉄線が緞帳代わりに張られていました。時間があったので,入場時にもらった袋を開けると,中に入っていたのは四つ折りのパンフレット。桑田氏によるメッセージなどが書かれてあり,もう一つ入場時にもらったものがあったのですが,こちらはハンカチでした。他にもロビーにはAAAのオリジナルTシャツなどのグッズが売られていて,結構それを着ている観客が多かったですね(言うまでもないですが,その代金はAAAに寄付されます)。

19時5分過ぎ,開演。まずは桑田氏のナレーションによるアメリカと日本の戦中・戦後の歴史の解説。要は,よくも悪くも戦後の日本はアメリカのいろんな影響を受けてきたということをナレーションしていました。今回の音楽のテーマにも通ずるところがあるわけですね。
……で,1曲目から何の曲かさっぱり分からない(笑)。いわゆる「ドゥーワップ」調の曲で,上記の緞帳が降りたまま,その後ろにもカーテンらしきものが下りたままで,カーテンの後ろから3人のコーラス隊とともに,フェンスとのはざまに桑田氏登場。赤のジャケットに黒のズポン,白のシャツに赤いネクタイというスタイルで,ハイトーンボイスを披露。この曲が終わると,フェンスが左右に分かれて,ライトがつきバックバンドも登場しての2曲目演奏開始。
私のいた席から近いところにはベースの角田俊介氏がいました。その隣にはサザンオールスターズのサポートギタリストとしても活躍の斉藤誠氏。米米CLUBのパーカッショニスト(MJP「その17」参照)としても活躍の三沢またろう氏は角田氏・斉藤氏の背後にいました。ちょうどスピーカーが真ん前だったので,ベースの音が相当響いていたし,桑田氏・斉藤氏らによるギターの共演なんかのときは,メロディが聴き取れないくらいに「ギュイーンギュイーン」という音がしていましたよ。でも,それでいてドラムのシンバルの音なんかもしっかり聞こえていたし,パーカッションの音もはっきり聴き取れました。やっぱりステージに近かったからでしょう。
その2曲目はたしか『プリティ・ウーマン』だったっけな? その後も,ほとんど何を歌っているのかは分かりませんでしたが,ステージ両脇のスクリーンとステージ下のテレビモニターに歌手名と曲名に歌詞に対訳までしっかり出るので,そこいら辺は曲が進むにつれて,テキトーではありますけど,リズムに乗って口ずさんだり身体を動かしたりしていました。桑田氏のMCでは「自分が影響を受けた60,70年代の曲をやります。マニアックな曲もやると思います。分かったら手で大きく○を作って,分からないときは×を作ってください。1人1000円払います(場内笑)」ということでしたが,その通りの構成になっていました。
何曲目かは忘れましたが,ジミー・ヘンドリクス氏の『パープル・ヘイズ』では,桑田氏やサザンオールスターズのコンサートではお決まりの色物によるパフォーマンス。たしかアメリカのブッシュ大統領,日本の安倍晋三総理など5カ国の首相・大統領のお面をかぶった人間が,ステージ左右の高いところから登場。ステージの奥に潜んでいた鉄骨が前にせり出してきて,その上に5人が乗っかって何やらウダウダしている様子。多分,会議か話し合いでもやっているのでしょうか。こーゆー演出もまたコンサートのテーマに通ずるものでしょう。
その下で『パープル・ヘイズ』が引き続き演奏される中,やがて最後のクライマックスのあたりで,ステージ左隅に作業着のようなグレーの服を着たメガネに下ぶくれの顔のお面……そう,金正日氏をもじった人間が登場。5人がウダウダしている間に,何やらミサイルを発射するような仕草。すると,3階観客席から我々のいた方角に向かって一発のミサイルが向かってくる。それがステージまで届く……一瞬何も起こらなかったので失敗かと思いきや,目の前のステージから「ババパバーン!」と激しく火薬が爆発。すぐ近くで起こったので,前の人とか結構ビビッていましたね。火薬の匂いがしばらくの間結構していましたよ。桑田氏いわく「ここで火薬使っちゃって,どうしようかなって感じですね(場内笑)」
はたまた,私は一番通路側の席だったのですが,そのまさしく脇の通路を「キツネの嫁入り」がテーマと思われる,キツネのお面をかぶった花嫁と花婿らしき神輿が通過。ステージ上に上がっていき,何やら踊ったりしていました。うーん,こちらはいまいち意図が伝わらなかったです。

結局,最後までほとんど知らない曲ばかり演奏。5mくらい先で観る桑田氏は,ホントフツーの50歳のオッチャンでしたね。私にとっては,その50歳のオッチャン(とその仲間)が楽しそうに演奏しているのを見て楽しむっていう時間だったような気がします。知っている曲も数曲はありましたけどね……いま来日中のビリー・ジョエル氏の『ストレンジャー』,カーペンタースの『I need to be in love』(邦題は『青春の輝き』)は知っていました。キャノンのカメラのフェイスペイントした子供たちが出ているCMでかかっているKISSの曲もやっていたかな。あとはアンコールで演奏されたイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』とモンキースの『デイドリーム・ビリーバー』ってとこ。桑田氏いわく「エアロスミスとかも考えたけど……やらない。だってキーが高いし(テンポが)早くて…(場内笑)」だそうで。
そういや,奥様の原由子氏が途中で登場。こちらは赤のチェックのシャツにブルージーンズにウエスタンブーツにカウボーイハットをひっかけ,(人間の)馬に乗って登場。バックバンドのギタリスト・斉藤誠氏と桑田氏と3人で,アコースティックギターの弾き語りをやっていました(曲名など忘れた。多分,サイモン&ガーファンクルあたりの曲だったような)。
トータルで20数曲歌って,21時40分終演。結局,オリジナルの曲は最後までやらなかったですが,それなりに乗ることはできたコンサートだったと思いますね。終演後には私の前の列,すなわち最前列の観客が桑田氏に小さい花束なんか渡したりしていました。両手に花…ならぬ花束の桑田氏。そうそう,私の前にいたカップルなんかは,最後の演奏中に桑田氏が近づいてくると,黒いものを渡してそれを桑田氏も何気に受け取っていました。受けとっておきながら,桑田氏はやや怪訝そうな顔してましたけど(笑)。多分「何じゃ,こりゃ?」って感じでしょう。おそらく形状からしてハンカチだと思われますが……後で袖のスタッフに投げていました。多分,返却とかもないんでしょう(自分で勝手に渡したのだから当たり前だが)。カップルはその行動を見てどう思ったのかしら? 喜んでいるような感じではあったですけどね。(おわり)

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