Maggie's J‐POP論

その11 クリスマスソング・アラカルト

今日(2005.12.24)はクリスマス・イブ。いまや『きよしこの夜』などの童謡をのぞけば,日本のクリスマス・スタンダードナンバーとなった山下達郎氏の『クリスマス・イブ』が,元号が変わってからナンバーワンとなり,世紀を超えてからもオリコンにランクインされ続けたりしています(「管理人のひとりごと」Part63参照)。この曲とともに,はたまたユーミン氏の『恋人はサンタクロース』もこの時期になるとやたらと聴きますけど,私はいずれもそれほど好きじゃありません。今回以下に取り上げたのは,そんな私が好きなクリスマスソング11曲です。中には“クリスマス”というより“冬の歌”というのもありますけど,そこはまあ「クリスマスも冬の一時期」ということでご容赦を。

@杉山清貴『最後のHoly Night』
(1986)
夏のイメージが強い氏ですが,こちらは氏の冬の名曲ですね。たしか,最近氏の冬の曲のセレクションアルバムが出ましたね――発売から20年近く経っても色あせない洗練されたメロディと声だと思います。都内のシティホテルの午前5時ぐらい。ベッドルームにはカーテンの隙間から月明かりだけが差しこんで,闇がほのかにクールなブルーがかったイメージを(勝手に)連想します。すなわち,ホワイト・クリスマスじゃないんですね。東京独特の深々と冷えて乾燥した冬の気候が似合います。

Aおニャン子クラブ『MERRY X'MAS FOR YOU』(1986)
「素晴らしい」の一言。正統派なスローバラードで飽きが来ない。そして,イントロと締めのアコースティックピアノとフレーズを聴くにつけ,ホントにクリスマスに聞きたい曲って感じがする。サウンドは,そのアコースティックピアノをベースにして結構重厚だし,ヘンな打ちこみとかじゃなくって,ちゃんとしたミュージシャンがバンドになって演奏しているのだろう。楽曲の素晴らしさは,さすがメロディーメーカー・後藤次利氏である(ここまで「その9 いまさら懐かしいおニャン子クラブ」よりママ流用)。
で,この曲がなかなかリメイクされないのが惜しい。もちろん,当時のおニャン子のメンバーが集まることが難しくても,例えばDEF DIVAの4人(安倍なつみ・後藤真希・松浦亜弥・石川梨華)あたりに歌ってもらったら,それはそれですごいいい感じになると思うのだが……個人的にはおニャン子あたりが歌う曲ってあんまり好きじゃないのだが,そんな中での数少ない名曲なだけに,一緒くたに消えてしまうのだとしたら残念な限りである。

B竹内まりや『すてきなホリディ』(2001)
ケンタッキーフライドチキンのCMでよくかかるこの曲,元は『Bon Appetit!』というアルバムの1曲です。オープニングのハープから始まるイントロは,まるでCMの中に出てくるような,暖炉を囲んだ冬の暖かい家庭団欒を連想させてくれます。そしてイントロが終わると,場面は変わってそこは一面の銀世界。雪がすっかり積もってシーンとしている,午後8時から9時ぐらいの光景が浮かんできます。いつかシングルカットしてほしい1曲です。

C広瀬香美『ゲレンデが溶けるほど恋したい』(1995),『ストロボ』(1998)
「夏といえばチューブ」のフレーズとは対極に,90年代半ばから「冬の女王」の名前を欲しいままにした彼女。その曲の中ではこの2曲が好きです。前者はタイトル通りに完全にスキー場のための曲だと思います。それもサビの「ぜっ・こおちょお〜」以降しかかかっていない感じで(笑)……後者はサビに入る前の「FALL IN WINTER DREAM〜」というフレーズが,一単語ごとに“抑揚”がすごくって,まるでジェットコースターメロディ(笑)。張りと伸びのある自身の高音を出したいがために作られたとしか思えてなりません。

D米米CLUB『ORION』(1992)
歌詞はいまいちよく分かりませんが(笑),これは完全にメロディが勝っている曲ですね。ホーンセクションとストリングスとバンドをフル活用した壮大な曲に仕上がっています。テレビで1回やってほしかったな〜。『君がいるだけで』をこの年の春にメガヒットさせ,その勢いを借りて作っちゃった感じですね。クリスマスコンセプトアルバム『聖米夜』の中にも入っています。タイトルにもついているように,冬の星が出まくった夜空の下で聴くと,バツグンに気持ちが盛り上がります。

E広末涼子『真冬の星座たちに守られて』(1999)
何かのイメージソングになったと思いますが,覚えていません。基本的には打ち込みの曲ですが,要所要所で入ってくるストリングスが,真冬の空気がキレイなイメージを連想させてくれます。どっちかというと,星座が出ている夜というよりは昼間のほうがイメージとして合うでしょうか。当時,彼女は19歳だったと思いますが,歌うのにちと「背伸びしている」印象を持ちました。

F桑田佳祐『白い恋人達』(2001)
桑田氏のクリスマスソングというと,KUWATA BAND『MERRY X'MAS IN SUMMER』(1986)とか,サザンの『クリスマス・ラブ〜涙のあとには白い雪が降る』(1993)などもありますが,やっぱりこれかなと思いますね。間違いなくプロモにも出てきたような深々と雪が降る北国のイメージしか浮かびません。そして,カラオケではサビで韻を踏んでいる「SERENEDE」と「CELEBRATE」のところが,メロディともども結構歌いにくかったりします(笑)。

G佐野元春『Christmas time in blue 聖なる夜に口笛吹いて』(1986)
レゲェのリズムを取り入れたスローバラード。後半の歌詞を聴くと,どうしてもジョン・レノンとオノヨーコの「ハッピークリスマス」と底辺でつながっている感じがしてなりません。氏の曲は,どれもメッセージ性が強い印象を持ちますが,「クリスマスくらい,難しいこと考えないでひたすら恋人といたい」なんて人は,間違っても恋人と過ごす部屋では,この曲をセレクトしないほうがよいかなと思ってしまいます。

H松任谷由実『ダイヤモンドダストが消えぬ間に』(1987)
ちょうどユーミンというシンガーを知った80年代後半というと,毎年冬が来ると必ずユーミンの歌が「オレたちひょうきん族」から流れてきていました。で,その“ひょうきん族”が終わってからはCMで聴くという時期が,何やかやで10年くらいありましたね(それ以前は知らないのですいません)。その真っ只中に発売された同名タイトルのタイトル・チューンですね。ちなみに“ダイヤモンドダスト”という単語は,当時14歳だったこの曲にて知りました(笑)。
あ,そう言えば「シンクラヴィア」という機械の名前を知ったのも,これまた彼女のアルバムのクレジットから……思うに,ユーミンや桑田氏など,当時の大物アーティストの曲がこぞってデジタルサウンドになっていたから,何も知らない私は「打ち込み=オシャレで都会的なサウンド」と一時勘違いしていたような気がします。もちろか,流行り廃りはどの世界でも必ずあるものですから,その時々でサウンドに“時代性”があることを決して否定はしませんが,やっぱり辿りつくところは誰もが一度は通る「バンドサウンド」なんだなーと,20年近く音楽ファンをやっていると,何となくですが思えてくるようになりました。

I稲垣潤一『メリークリスマスが言えない』(1990)
氏のクリスマスソングといえば,ドラマのテーマ曲にもなってミリオンヒットになった『クリスマスキャロルの頃には』(1992)でしょうけど,私はこちらのほうが好きです。最近,氏のベスト『25 INAGAKI』を買ったのですが,それに入っているライナーノーツによれば「時代性と切ない男心が見事に表現」とあります。前者“時代性”は,2人で見つけたレストランを予約して入ってワインで乾杯したってところが,いかにもバブリーですね(笑)。30代後半くらいのカップルが入るのにちょうどいい場所に,10歳以上若い男女が入り込んでその後は……(笑)。
後者“切ない男心”は,あえて言えば“未練”という言葉に近いかもしれません。氏の歌詞といい声といい,クールに未練っぷりを歌うにはピッタリです。「ホントは“メリークリスマス”が言いたいんだけど,それが言えない」って,いかにもって感じですよ。彼女は今ごろ別の男といること間違いないはずなのに……でもって,その後は日本酒か焼酎で「飲んで飲んでー飲まれて飲んでー…」となるのかと思います(笑)。嗚呼,哀し。(おわり)

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