●1991年(平成3年)10月4日に公布され、1992年(平成4年)8月1日に施行された新借地借家法は、土地・建物の貸主と借主の関係を公平かつ合理的にしよう定められた法律です。借地については新たに「定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用借地権」という制度が創設され、借家について「期限付建物賃貸借制度」が新設されました。どちらも、一定の期間が経過すれば契約は更新されずに終了します。よって貸主側の返還や高額の立退き料に対する不安を解消できるとともに、権利金などの契約締結時に支払われる金額を抑える作用が期待されます。

● 新法の施行に伴い旧借地法・借家法・建物保護法は廃止されましたが、新法施行前に締結された契約については、従前の法律がまだ効力を有しています。

● 定期借地権については新たに創設された権利で、まだ存続期間が満了している事例がないため、その行く末はいまだ不透明な部分はありますが、定期借地権(新借地借家法)について簡単に紹介します。

借地法関係(主要な改正点)

 

 

旧法

新法

■当初借地期間

(旧借地法2条)

契約期間 :堅固建築物で30以上

     :非堅固建築物20以上

*これより短い存続期間を定めた場合

     堅固建築物で60

     非堅固建築物30

    が法定存続期間となる

(借地法3条)

契約期間は最短でも30

(建物が堅固か非堅固かを問わず)

*これより短い存続期間を定めた場合は

30年が法定存続期間となる

■更新後の存続期間

(旧借地法5条)

最短でも堅固建築物で30

非堅固建築物20

(借地法4条)

1回目20

2回目以降10

(建物が堅固か非堅固かを問わず)

 

定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用借地権

 

■定期借地権の概要

●旧法では一度借地契約を結ぶと、連続的に借地恵契約が更新され、返却してもらうためには、高額の立退き料を支払う必要が生じ、土地所有者の貸ししぶりが生じ、土地が有効に活用されない状況にあった。

●それに対し新法は、前述の貸主側の返還や高額の立退き料に対する不安を解消できるとともに、権利金などの契約締結時に支払われる金額を抑える作用が期待されている。この法律の成立により都市基盤整備公団、住宅供給公社や民間の手によって賃貸や分譲マンション、一戸建て住宅等を建設するために利用することが期待される。

■定期借地権

(借地法22条)

1.借地期間   :契約期間50年以上

                (50年未満の約定をすると普通の借地権として扱わ れる。)

2.契約の更新  :契約は更新されない。

3.建物の再築  :建物の再築(建替え)による借地期間の延長が無い。

4.建物買取り請求権:借地人に借地上建物の買取り請求権を認めない。

5.24の特約は公正証書などの書面でしなければならない。

* 建物用途の規定は無し

* 契約期間満了後、基本的には借りた人の費用で更地ににして返還する。

* ちなみに借地権の消滅時に建物があり、双方の合意により有償又は無償で譲り受けることは可能。(建物買取り請求権を認めることには当たらない。)

■建物譲渡特約付借地権の概要

● 一般の借地権に借地権を消滅させるための建物譲渡特約を付加したもの。借地人が借地上の建物を土地所有者に譲渡すれば、借地権も土地所有者に移転し借地権は必然的に消滅する。

● 借地権を設定後30年以上経過した日に借地上建物を借地権設定者(土地所有者)に譲渡することをあらかじめ特約する。

■建物譲渡特約付借地権

(借地法23条)

1.借地期間   :契約期間30年以上

                (30年未満の約定をすると30年の存続期間が法定される)

2.契約の更新  :契約は基本的には更新されない。

3.建物の再築  :建物の再築(建替え)による借地期間の延長が無い。

4.建物譲渡特約 :借地期間満了時に借地上建物の売買契約が成立する旨の特約をつける。

5.契約書式の規約:無し

*建物用途の規定は無し

■事業用借地権の概要

● 契約の更新及び建物の再築による借地期間の延長がない。

● 借地人に借地上建物の買取り請求権を認めない期間

● どちらかというと貸地人に有利な契約方法であるが、短期間で一定の利益を上げることを目的とする事業に於いては、権利金等の額を抑えることが可能。

■事業用借地権

(借地法24条)

1.借地期間   :契約期間10年以上20年以下

                (これ以外の約定をすると普通の借地権として扱われる。)

2.契約の更新  :契約は更新されない。

3.建物の再築  :建物の再築(建替え)による借地期間の延長が無い。

4.建物買取り請求権:借地人に借地上建物の買取り請求権を認めない。

5.契約書式の規約:公正証書により設定しなければならない。

*建物用途の規定 :事業専用建物(居住用のものは設定できない)

*契約期間満了後、借りた人の費用で更地ににして返還する。

■参考

● 土地所有者(特に農地等の所有者)にとって興味深いのが前述の建物譲渡特約付借地権である。土地所有者はこれを宅地に転用(農地転用)し、マンション建設を目的とする借地権を設定し、借地権者がマンションを建設する。当初30年間は地代が収入として見込め、30年経過後は、マンションを「相当価格」で譲渡され、その後は賃料が収入として見込める。

建物譲渡特約付借地権における借地権者(建物を建てた人)のメリットとしては、建設当初は土地代金が賃料のみとなり、総事業費抑えることが可能となる。また、借地権が消滅すると同時に請求すれば期間の定めのない賃貸借が成立する。建物を建てた人はそのまま建物を使用することができ、同時に建物を譲渡することにより、収入を見込むことが可能になる。借地権消滅後は、一般の建物の賃料を支払っていくことになる。

● この考えを更に推し進めた考え方がスケルトン定借(通称つくば方式)と呼ばれる制度で、前述の建物の譲渡価格を土地所有者が一括で支払う変わりに、借地権消滅後の建物賃料と相殺する「家賃相殺制度」が導入される。土地所有者は譲渡の際の負担が無く、居住者は低額の家賃(通常、当初支払っていた土地の賃料なみ)で住み続けることができる。

  参考文献 新借地借家法 二瓶 五郎著
 

  <ホーム>  <コーポラティブハウス>  <住宅金融公庫融資について> <都市居住再生融資とは>

 

 

    
空間工房イアニス 一級建築士事務所  
                                                                      

最終更新日 : 2001/07/18