好きまでの距離感〜バレンタイン編、二十五〜

そう考えた瞬間、顔が熱くなってきたような気がしちゃったんだわ。
な、なんで俺がいまさら動揺しなくちゃなんねーんだ。桂一郎から好きだって言われて、危うい関係に陥ってからけっこうたっているちゅーのに。

しかもさ、キスまでしちゃってる仲なのよ。俺らは。

で、ここでもう一つ思いだしたことがあったんだよね。
確か夕べもこいつに同じことを言われた記憶があったっけなって。
バレンタインのチョコが欲しいとか、なんとか。
その後の姉貴のチョコのどたばたやら、桂一郎とのキスとかですっかり忘れていたんだわ。

チョコ。チョコね。
「あの…桂」
色んな余計な事を思い出しちゃった俺としては、いささか複雑な気分で隣に座っているあいつを見上げていた。
「うん?」
桂一郎が見返してくる。
いつもこいつは俺を真っ直ぐに見てくれる。
その視線にいつから熱い気持ちが入るようになっちゃったんだろう。俺には知るよしも無いことなのだけど…。

「その…さ。チョコはチョコじゃん。別に自分がどうでも人から好意を寄せられるのは嬉しいし、単純に人気あるって分かるだけでも良い気分にならない?」
「好きな相手から貰えるチョコは特別じゃないのか?」
「そりゃあ…まぁ…」

うん、その気持ちは分かる。分かるよ。
ただねそれに素直に同意出来ないのは、俺が当事者なのだからなんだろう。
だってさ、桂一郎の好きな相手ってのはまさしく俺だもの。
好きな相手からのチョコっていうことは、俺がこいつに贈らなきゃいけないって言う意味じゃないか。

俺が桂一郎にチョコを?贈る?
「これが俺の気持ちでーす」とか何とか言っちゃって、こいつにチョコを…。
うう………。
そんなのは俺のキャラじゃねぇ。

…駄目だ。
考えただけでこっぱずかしい。
「あの…桂?」
「無理しなくていい」
「は?」

バレンタインのチョコ、欲しいのかなって改めて聞こうとした俺の言葉を遮るようにあいつがいきなり言い出してきたんだ。
眼鏡越しに優しい瞳を向けてさ。
「無理しないでって…?」
「和にチョコを貰えたら嬉しいとは思うけど、だからといってチョコは懇願して貰うものじゃないだろう?和が俺にチョコを贈りづらいっていう気持ちも分かるから」
「分かるって…」
「この時期に男がチョコを買うのは気まずいと思ってるんだろう?」
「う…」

おま、お前ってば無頓着に見えて結構鋭い人だったの?
俺が桂一郎にチョコを贈るのを渋っている一番の要因を分かってたんか。
知っててそれでチョコを欲しがってたりとか、してたのかよ。
なんていうか。もう…。まったく…。

「桂…お前…」


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