好きまでの距離感〜第四十三話〜 何とも気まずい朝食を終えて、朝の支度をすべく立ち上がる。 学校へ行くにはもう既に、かなりヤバ目の時間だった。 これは急いで支度しなくちゃいけないなと洗面所へと向かった俺に母親が声を掛けてくる。 「ああ、和正。あのね、今朝はあんなだからあんたの弁当も桂君のお弁当も作ってないのよ。悪いけど、今日は学食で済ませてくれない?桂君にも言っておいてくれない」 「あ…うん」 確かに姉貴とあんなやり取りをして、朝食すらもまともに作ってないんだから、弁当までは手が回らなかったんだろうとは納得した。 むしろ、これで今朝はあいつに弁当を届けずに済んだことをホッとしたくらいだった。 「分かった。じゃあ、昼飯は適当に済ませておくから」 「桂君にも、ご免ねって伝えておいてね。それと…あんた…」 そこまで言いかけたお袋が、俺の顔をマジマジと見やり、少し考え込む素振りを見せたけど、それ以上何も言うことはなかったんだ。 何だろうと不思議に思いながらも、時間に追われている俺としては、深く追求することもなくに支度をすべく洗面所へといったんだ。 顔とか歯を磨いて、速攻で支度しなくちゃね…と洗面所の鏡を見て、微妙な違和感を自分の顔に感じたんだ。 何だろう? 顔、いつもと違う? じっと自分の顔を見据えて、何が違うんだろうと考え込みながら(んなことしている時間帯じゃないんだけど)ふいに思い当たったんだ。 か、顔が微妙にむくんでないか? え、えっと…どして?何故? 暫し自分の顔とにらめっこして、唐突に原因が分かったんだ。 俺、昨日泣いた…んだっけ。 無様に。情けなくも。 うわぁぁぁぁぁ。 ヤベーじゃん。泣いた後のせいで、こんなんなっちゃったんか。 目とかは赤くなってないから、泣いたとは気づかれなかったかもしれないけど、顔がこんなんなるなんてーーー。 もう、お湯で顔を洗ってる場合じゃない。 水で顔を叩きながら洗いましたよ。 まさかあれっくらいで顔がむくむなんて〜〜〜。 あ、だからお袋が俺の顔を見てた訳? もしかしてそのせいか? これが普段の朝だったら、あのお喋りなお袋が何も言わないはずがないだろう。絶対に何があったのかとか、色々聞いてくるに違いないんだ。 今朝はたまたま姉貴と揉めていたから、そこまで追求されなかったのかも。 学校へいくにも、結構ぎりぎりの時間でもあるもんな。 に、してもだ。 このまんまじゃ、ヤバイんだって! 冷たい水で顔を洗いながら、なんとか元通りになってくれと祈ってしまった。 でも問題はそれだけじゃなかったんだ。 歯を磨いている最中に、首にも変な違和感を見付けてしまったんだ。 ちょっと冷や汗も出そうだった。 おそるおそる首もとを傾けてみれば…。 !!!! 赤い…鬱血の後。 こ、こここれって…。 もしかして、あれ? あれなの? 漫画とかで見かける…キ、キスマークってやつ? 首筋にべったりじゃんか。 き、昨日桂一郎が吸い付いた後がこんなにもくっきり残っているなんて…。 思わずその場にへたりこみそうになっちゃった。 どうすんだよ、これ! どうやって隠せばいいんだよ。 しかも一個じゃないし。 傷テープで隠そうにも、こんな場所に張った日には絶対クラスメイトから何か言われる。 もう、確実にひやかされるし、勘ぐられるに違いない。 どうする? どうするんだ、俺。 時間は押し迫ってるし、かといってこのまんまじゃ学校へは行けない。 どうにかして隠さなきゃならない。 まさかタートルネックの服を着るわけにはいかないし…。 うんうん、唸りながら考え込んだ。 考え込みながら歯を磨いて、軽く頭をなでつけて、着替えして学校へ行く準備を整える。 あぁぁぁぁ。どうしよう。 時間がない。ないのに〜〜〜。 もう、試験よりもず〜っと頭を使ったような気がする。 でもってさ。人間って、追いつめられると閃くんだろうな。 唐突に、あることを思いついたんだ。 もう、慌てふためいて再び台所へ向かって母さんに向かって言ったんだ。 「ねぇ、母さん湿布薬ない?」 「湿布?」 |
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