好きまでの距離感〜第三十六話〜


あ、あのさ。今更ながらなんだけどさ。
桂一郎ってば、結構…その…男前だったりするわけ。
あいつの親父さんも渋くて格好良くて、男臭い顔立ちの二枚目なのよね。大人の男って感じで。
俺は桂一郎のお母さんの顔は知らないんだけどさ。桂一郎はかなり父親似だと思う。

端正でちょっと険の強い感じもあるけれど、今はやりの甘い顔立ちとかではなくて、むしろきつめの容姿なんだ。
男臭い顔立ちって言えばいいのかな?
奥二重の切れ長の目。通った鼻筋。口元は引き締まってて、ちょっとすれば強面とも取られがちなんだけど、それがほんの少し緩むだけで暖かいものに変わることを俺は知っている。
髪は俺と違って真っ黒で、少し固め。それをいかにもスポーツマンって感じに短めに切りそろえているのが、とてもあいつに似合っていると思う。
いつも年より下に見られがちな俺と違って、落ち着いてて大人びてみられる容姿。
自分のガキくさい見た目が好きじゃない俺は、桂一郎の男っぽい顔立ちがとても好きだった。別な言い方をするならば、桂一郎の男っぽい顔立ちは、俺のガキくさい顔立ちに対するコンプレックスを刺激するものでもあったんだけどね。

今は周りの女子達からは「地味」とか「怖そう」とか言われているけどさ、きっと後数年もすればあいつの親父さんみたいに格好いい男になるんじゃないかな〜って確実に思える。
今だって見る目のある女子からは時々は告白されたりとかしてるみたいだから…。って、崎谷かおりちゃん…みたいな。

まぁ、ぶっちゃけ桂一郎の顔は俺の好みなんだと思う。
あまり男らしくない顔の自分とは違う。男っぽい顔立ちっていうのが。

で、その顔が俺の目の前にあるんだ。
しかも直ぐ近くに。
優しげな瞳で俺を覗き込んでいる。
落ちかけた俺を支えている逞しい腕。
これも、俺のコンプレックスをちくちくさせるものの一つ。

小さい頃からずっとやっている剣道のせいなんだろう。かなり着やせする質で、この私服の下には高校生にしてはしっかりと筋肉の乗った体があるんだ。
縦も横も俺よりしっかりしている。
学校と家の往復だけの俺なんかと違って、均整の取れた体つきなんだ。
だから俺を支えても揺らがないんだと思うけど…。
に、してもだ。
同じ年の男に抱きかかえられているのって、情けなくねぇ?

あの〜。なんかさぁ。
俺、恥ずかしいっていうか…。みっともないっていうか。
えっと…その…。ドキドキしちゃうっていうか…。

そ、それにだよ。
桂一郎が俺をじっと間近で見詰めている視線がみょ〜に、熱い気がする…のは…考えすぎ?
しかも俺を抱きしめる腕の力がな〜んか強いような…気も…しなくもないっていうか…。

や、やばいっす。
これ以上考えると…なんか怖い気がする。

「和」
ぎっくう!
い、いいい今の言い方がなんかいつもの俺の呼び方と違う。
そ、そんな熱い目で俺を見るんじゃねぇ。
慌ててあいつの胸を手で押しのけよとしたけど、これがびくともしないんだ。

嘘?
何で?

こ、この体勢ってば…。
「和」
「だ、駄目!」





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