好きまでの距離感〜第三十四話〜


あいつの望んでいる”好き”と、俺が桂一郎に対する”好き”との間には、違えようもない温度差があるんだと思う。
言い換えれば距離感と言ってもいいかもしれない。
”好き”という言葉に対しての重みの違い。

でもさ。
たとえばの話なんだけど、俺が桂一郎を嫌いだったら、こんなにも迷わなかったんだろう。
もっと事はあっさりと終わってしまう。
簡単に一言で済んじゃうんだ。「その気がない」ってね。
それが言えないからこんなにも悩んでいるんだ。だって、俺も桂一郎が好きなんだから。
ずっと小さい頃から一緒にいたんだもの。それこそ家族のように。
もしかしたら、家族よりも俺の近くにいてくれたかもしれない。それほどまでに誓い存在だったんだ。
俺は桂一郎の手を離したくない。
いつまでもこのままでいたいと思うほどに。

これを…。
この気持ちを伝えれば、こいつは分かってくれるだろうか?
面と向かっては言いにくかった。
まだちょっとね。気恥ずかしさは残っているから。
だから俺は下を向いたまま、意を決して告げようとしたんだ。拙くても良いから、言わなくちゃって。

「け、桂が俺のことをそんなふうに思ってるのは意外だった」
「………」
桂一郎は何も答えない。俺が次の言葉を発するのを、静かに待っているみたいだった。
「正直驚いたし、何で俺なのかな…って気もした」

どう言えばいいんだろう。何て言えば、俺の気持ちは桂一郎に上手く伝わるんだろうか。
桂一郎の事は好きだけど、友達としてしか今まで考えていなかった。
だけど俺はお前の手を離すのは嫌なんだっていう、独占欲にも似たこの思いを。

うん?
独占欲って…。
あれれ?

俺、今、何を考えたんだ?
桂一郎の手を離したくない…までは、いいよな。
問題はその先。
友達として好きだった。いつまでの俺の側にいて欲しい。友達として…って、下りもまぁいいでしょう。
でもその一方で、別の感情が自分の中にも存在しているって事に気が付いちゃったんだ。

桂一郎はずっと俺の側にいて欲しい。どこにもいかないで。出来るなら、俺以外の奴なんて見て欲しくないって気持ち。
こ、こーいう感情って何だ?
それが…つまり…。
「独占欲?」
「和?」

自分の思考に嵌り込んでいたらしい俺は、知らず知らずのうちに口に出してしまっていたらしい。
殆ど独り言のようなつぶやきを、桂一郎が聞きとがめる。
何気ない言葉を耳にしたあいつと、内に秘めた思いを口に出しちゃった俺。
こんな事を突っ込まれたらヤバイとばかりに、訂正しようとして顔を上げた俺の目の前に、驚くくらいに近くに桂一郎の顔があったんだ。

「いっ!?」
殆ど触れんばかりの距離だった。
今の状況下でのこの距離の近さは、心臓によろしく無さ過ぎ。
桂一郎から離れようと、慌てて体を後ろへ退けようと後ずさったら、後ろへ付いたはずの手が、空に浮いた。

あれっ?
うそぉ!!!!





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