好きまでの距離感〜第三十三話〜


えーっと、えーっと、えーっと。
その好きってば、つまり…ライクじゃなくて、ラブの好き?ってこと…だよね。
と言うことは………。
一瞬の間をおいて、俺は心の中で悲鳴を上げていた。

うっひゃぁぁぁぁぁ!

もうなにをどうしていいやら。自分がどういうリアクションを取ったらいいものやら、頭の中が真っ白け。
パニックって、こういうものなのね。
起きたままの状態での金縛りって、俺初めてじゃ〜ん…って。おふざけに走るな、俺!

ああ…。いや、違う。分かってる、分かってるんだ。
多分これは俺の頭が予想外の展開について行けなくて、思考がお気楽な方向へ持って行こうとしてるんだってことを。
ある種の防衛本能みたいなもん?
でも、だからってこのままおちゃらけて逃げても何の解決にもならないことも知っている。

そもそもここまで腹の中をさらけ出した桂一郎が、俺から何の回答も引き出せないままに引き下がるなんて、思えなかったんだ。…何しろこいつ、しつこい性格だし。

狼狽えまくっている俺を見て桂一郎がどう感じたのかは分からない。
表向きはいつもの様子であいつは俺を見据えていた。
「俺のこの気持ちは、和にとっては迷惑か?」
「い、いや…迷惑なんて、そんな…」

迷惑とか以前に、予想外です。はい。
呆然としたままに、それでも嫌悪感は抱いていない事を告げた俺に、あいつはほっとした表情を見せたんだ。
あれ?って、思った。
もしかしてこいつ、緊張してんの?
こんないつも通りの顔と声音をしているくせに。

ふぅん。そうなんだ。
まぁね。桂一郎があんまり喜怒哀楽を表に出さない奴だって事は今更なんだけど。
俺に向かっての今までの発言ってば、実は桂一郎にとっても一杯一杯だったんだろうか。
こんなに焦りまくっているのは俺だけじゃないんだ。
なんか、ちょっと気が楽?
だからって俺の置かれている状況が改善されるわけでもないんだろうけれど。

「和、お前は?」
桂一郎が熱っぽく、俺を見詰めている。
う…。
だ、だからぁ。そんなに熱の籠もった視線で俺を見るんじゃねぇ。変な気分になっちゃうだろう。
「お、俺?」
「そう。俺は自分の気持ちを告げた。和は?」
き、気持ちって言っても…。
言いよどみ、口ごもる俺を見て、何を思ったのか。あいつが今まで腰掛けていた椅子から立ち上がり、俺が座っているベッドの方へと体を移してきたんだ。
桂一郎が俺の近くにいる。情けない話だけど、ついびびってしまい、俺は思わずベッドの端の方へと体をずらしてしまってたんだ。
「俺の…気持ちは…えっと…」

あ、あんまり近寄ってくんなって。
認めるのも腹立たしいけど、怖いんだってば!俺は。
「和は俺をどう思ってる?」
そう言いながら、さらに詰め寄ってくる桂一郎。
「どうって…」
嫌いじゃないと言っても、多分こいつは納得しないだろうと思う。
だけど好きという言葉を発するのも、今のこの雰囲気では、妙に言いづらいものがあったんだ。




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