好きまでの距離感
〜第三十一話〜



嫌い?
お、お前、今更何を言ってんだ?
んな青臭い台詞を真面目くさった顔で聞く神経が理解できねぇぞ。ガキじゃあるまいし。
「あの、な。桂」
戸惑う俺を見据えたままで、桂一郎が再度尋ねてくる。
「和が俺のことをどう思っているのか、聞きたいんだ」
桂一郎の真摯な言葉の響きに、俺はごくりと唾を飲み込んでしまった。
だってさ。
桂一郎の顔があまりに真面目すぎて、冗談で交わすことさえ躊躇われたからだ。

…っていうか。
お前、どうしてそんなに真剣な目、してんだ?
怖いぞ。マジで。

「どう思ってるかなんて…。それって改めて聞くことか?お前、何年俺と付き合ってるんだ?き、嫌いならこうして一緒にいるわけねぇだろう?それくらい察しろ。今更な事、聞くんじゃねぇよ」
好きだ嫌いだなんて、こっぱずかしくて口に出しづらくって、俺はやけ気味になって答えてしまった。
だけどしどろもどろながらも答えた俺に、あいつはどうやら不満だったみたいなんだ。
「俺はもっとはっきりした言葉で聞きたいだけだ。和が俺のことをどう思っているかを…だ」

ぐっと唾を飲み込んでしまった。
お、お前さぁ。俺に何を期待してんだ?
俺に何を言わせたいんだろうと、思ってしまう。
桂一郎の真意がまるっきり分からなかった。
本音を言えば、こんな濃密な空気も落ち着かなくて嫌だった。出来るなら逃げ出してしまいたいくらいだったけど、それすら許してくれなさそうな雰囲気なんだ。
こんな熱っぽい視線で俺のことを見詰める桂一郎が、俺の知らない…もしくは、見たことが無い奴みたいで、不安になってしまうから。

「あの…さ、桂」
「俺が嫌いか?」
ぐっ。
どうしても言わなきゃ駄目…みたい。
「き、嫌いじゃないよ」
「じゃあ好き…か?」
うわぁ!
真顔で言うな。そんなこと。
「も、もちろん」
どうしても好きという台詞を言うのが恥ずかしくて、曖昧に言葉を濁す俺に、桂一郎は許してなんかくれなかった。
「和の口から言ってほしい」
「うぅ…」

この野郎!
俺が言うまで諦めないつもりだな。
ああもう。分かったよ。俺が言えばいいんだろう、言えば。
お前がしつこい性格だってのは今更だもんな。

「桂一郎のこと、好き…だよ」
んぐぐ…。
な、なんでこんな恥ずかしい事、言わなきゃならねーんだ。
言った瞬間、顔から火が出そうな気分だった。
だ、だいたいだな。こんなこっぱずかしい台詞なんて、今時の青春ドラマでも言わないんじゃないのか?





BACK NEXT