好きまでの距離感
〜第二十八話〜



桂一郎の後をついて部屋の中に入り、俺は椅子代わりにあいつのベッドの上に腰掛けた。
あいつは勉強机の椅子に腰を下ろし、俺と真向かいに向き合う形になっていた。
こうして顔をつきあわせたのはいいんだけどさ。さて、何を話すんだ?俺らは。
そもそも話す事なんてあったんだろうかと、今更ながらに思っちゃった。

案の定っていうか、桂一郎から話の口火なんて切ってくれない。
これは俺から言い出さないと始まらないってことなんか?
まぁねぇ。
こいつとの会話なんて、いつもこうなんだけどさ。
しょうがねぇっつうか。面倒くさい奴。

「あのさ、桂」
問いかける俺に、桂一郎の瞳が向けられる。
いつものあいつの態度。
昼に垣間見せた冷たさはどこにも見受けられない。
あれは…嫌だった。
桂一郎は俺にあんな態度、見せちゃいけないんだと思ったんだ。
ああそうだ。思いだした。
昼に、こいつ意味不明な事も言ってたっけ。
改めて思いだして、それも聞かなくちゃと言う気になっていた。
「なぁ。昼にさ、俺に何か言いかけてたろ?あれ、何だったんだ」
問いかける俺に、何故か桂一郎はふっと眉を潜めて言いづらそうに口元に手を当てていた。

「あれは…お前のせいだ」
はい?
また、訳の分からんことを言いやがって。どうして俺のせいだっつーんだ。
「なんで俺のせいなんだよ。どーして俺がそこで出てくるんだ?」
身に覚えのない事を責められる筋合いはないと言い返したら、あいつが俺をじろりと睨み返してきたんだ。
「人からの告白を受けただろうが」

うっ。
身に覚え…あったわね。

「あ、あれはだな。つまり…迫力に負けたっつーか。勢いに押されたっちゅーか、俺にも色々ありまして…」
「告白を受けるのは止めてくれって、言ってないか?」

うん、それは分かってる。
散々に他人からの仲介なんて、止めてくれって言われてたもんな。
でも、彼女の真剣さは今までの軽い告白なんかとは違ってて、どうにも断り切れなかったんだもん。
だから俺の言い分ってやつを説明しても、あいつはにこりともしないで言い返してきたんだ。
「でも俺は嫌だ」

あぁぁぁ、もう分かったよ。
俺が悪かったってば。

「ご免よ」
これはもう謝るしかないと思って引いたんだ。俺が。
するとあいつが癪に障る事を言ってきたんだ。
「分かればいい」って。

なに?
ちょっとムッとしたぞ。今の言い方って。
確かに常々、他人からの告白の仲介なんて止めてくれとは言われてたけどさ。でも崎谷さんみたいな可愛い子からだったら、普通は喜ぶもんだろうが。
お前、どっか神経ずれてないか?

ついさっきまで桂一郎に彼女が出来たら寂しいな〜とか、うじうじ考えていた自分をさしおいて、俺はついこう言っていたんだ。
「んで、お前は結局はどうなんだよ。彼女と付き合う事にしたんか?」
ふてくされた気分のまま、ずっと気にしていた事を尋ねた。
頭の片隅にはきっと、放課後に見た光景が忘れられなかったっていうのもあったのかもしれなかった。

俺の問いかけにあいつは一瞬微妙な表情を見せたけど、直ぐにいつもの態度を見せて、素っ気なく答えたんだ。
「断った」と。

はい?
断ったってことは…つまり…。
彼女と付き合う気はないってこと?





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