好きまでの距離感
〜第二十二話



やけに抑揚の無い声で告げたあいつの言葉に、俺は頭を傾げていた。
分かったって、どーゆうことだ?
分かったというあいつの顔からは意味を推し量ることなんて出来ずに、俺は桂一郎の顔をマジマジを見やっていた。
「桂?」
「崎谷さんの事は分かったと言った」
だから…どう、分かったの?
「えと、それは…彼女の気持ちを分かったってこと?」
俺の問いかけに、あいつが無言で頷いた。
何故かチクンと胸の奥が痛んだ。

「そ、それってさ。彼女の告白を受け入れたって解釈していいってこと?」
何で動揺しているのか自分でも分からないままに俺が尋ねると、あいつが素っ気なく言い放った。
「彼女に直接言う」
う…。
今度の胸の痛みはチクリじゃ済まなかった。
あえて言うなら、ズキリ?
「桂、あの…お前、彼女と付き合うの?」
妙にしどろもどろになって問いかける俺に向かって、桂一郎がやけに醒めた目で見詰めていた。
「俺にそれを聞いてどうするんだ?」
え?どうって…。
「や、やっぱ、一応は気になるじゃん。間を橋渡しした俺としてはさ」

だからどうなんだと尋ねる俺に、あいつは素っ気なくこう言い放ったんだ。
「これは俺と彼女の事だから、言いたくない」と。
そ、そーいう言い方ってないだろう。
そりゃあ確かに俺は部外者かもしんないけど、だからってそんな突き放した言い方しなくったっていいじゃんか。
これでも俺はちょっとでも係わったんだんだぞ。
事の結末を知りたいって思うのは、普通じゃないか。

だからふてくされた気分のままでそれを言ってやってもあいつはどうにも口を開かなかった。
こんな時、こいつの口の重さは腹が立つ。

「桂…どうして、俺に言いたくないの?」
今までこいつに冷たい態度をなんて、俺は一度たりとして取られたことはなかったんだ。
結構我が儘な事を言ったりもした事もあったのに。
なのにどーして、いきなりこいつは俺を突き放すような態度を取ったんだろう。
それが分からなくて。分からない事に傷ついている自分が嫌だった。
「桂?」
こんな事くらいで不安感を感じている自分を情けないとは思うけど、やっぱり辛いものは辛いんだ。
そんな俺の気分が声にも態度にも出てしまったんだろう。
俺を見ていた桂一郎が困ったような表情を見せ、僅かばかりに声の調子を変えて、こう言ったんだ。
「お前にだからこそ、言いたくないんだ」
はい?
俺だから?
それってどーいいう意味なんだ。
「言いたくないって」
問いかける俺の声に被さって、微かにチャイムの音が聞こえてきた。
あ、昼休みが終わった?

その音を聞きとがめ、やおら桂一郎が立ち上がる。
「時間切れだ」
お、おい?!
ちょっと待て!
まだ話は終わってないだろう。





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