好きまでの距離感〜第十四話〜 小さい頃からそんな桂一郎を見てきた。 ずっとあいつのことを知っていたけど………。 「和。メシ、食わないのか?」 ぼんやりとしている俺に向かって、桂一郎が自分が座っている隣を指し示す。 「あ、うん。メシ…だよな。そうだった」 その為に来たけれど、それだけじゃない。 本当の目的は違うところにあるのだけれど、今は先にメシを食うべきかも。 取りあえずメシ食って、落ち着いて。それからだ。 それから桂一郎に話せばいい。 俺はそう自分に言い聞かせて桂一郎の隣に腰を下ろし、持ってきた弁当を広げた。 あいつはそんな俺を眺めた後、穏やかな声で言ってきたんだ。 「和、これ」 「ん?」 俺が箸を持ちかけたところへ、あいつが売店から買ってきたんだろうウーロン茶をよこしてきたんだ。 見ると、あいつも同じものを持っている。 これは…一緒に呑もうってことなんだろうな。 「あっ…サンキュ。わざわざ買ってきてくれたのか?」 「ん」 頷いて、目元を和らげる桂一郎。 何か、そんなあいつの気遣いにむずがゆい気分にさえなってしまう。 無愛想で口の重い桂一郎。 一部の女子からは怖いとか、何を考えているのか分からないとか言って敬遠されているのは知っている。 見た目の印象だけで人の価値とかを決めつけているやつらに、今のこいつを見せてやりたい気分だった。 何も知らないくせに。 桂一郎は決して人に乱暴なんか、したりしない。 確かに無口であんまり表情が表に出ない奴なんだけど、その分人の悪口なんかは言ったことがない。聞いたことないもん。 ぶきっちょで、ちょっと人より感情を表に出すのが苦手なだけだ。 本当のこいつはこんなにも優しい。 背が高くて、剣道をやっているせいかガタイもいい。 でもそれで他人に威圧感を与えているからって、中身まで同じだなんて決めつけて欲しくない。 こんなに良い奴なのに。 とっても優しい、暖かい奴なんだ。 桂一郎の人となりを知っていれば、よく分かるはずなのにさ。 でも…さ。 分かる人には分かるんだよね。 桂一郎のいいところは。 たとえば…。 たとえば、彼女。 崎谷かおりとか。 桂一郎と一緒の部にいる彼女には、ちゃんとこいつの良さは伝わっていた。 俺が言うまでもなく。 彼女は桂一郎の良さを見抜いていたから。 あ…ヤベ。 なんかまた胸の中のもやもやが広がってきちゃったよ。 ホントに俺、マジでおかしくない? |
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