好きまでの距離感〜第九話〜



今だって俺がこうして剣道場にいることだって、部外者が…みたいな目で見ていないって分かるもの。
あとこれは身内(俺と桂ってば、もう殆ど家族同様の付き合い方してるから)の欲目もあるかもなんだけど、俺と接するときの桂って、他の奴らと相対している時よりかは心を許してるみたいな感じがするんだけどなぁ…ってね。

桂がフェイスタオルで汗を拭いながら、俺を見詰めている。
その目はやっぱり優しそうな感じがするんだよね〜。

あ〜でも、さっさと用件済ませて俺も自分の教室に戻らなくちゃ。
何のために教室へ行かずに、この剣道場に直行したかだ。
俺は肩から下げていたバッグのファスナーを開け、中から特大サイズの弁当箱を取りだして桂に手渡した。
「これ、お前の弁当な。確かに届けたからよ」
「………ああ。…悪い」

手渡された弁当箱を受け取ったあいつの表情が、微かにほんの少し和らいでいる。
桂のこの悪いは、いつも弁当を作ってもらって済まないの悪いなんだろうな。
相変わらずに最低限の単語しか言わない奴なんだからよ。
しょうがねぇなぁと思いつつ、こいつとのこんな会話なんて今更って思って慣れてしまった自分が怖いね。

「別に悪くなんてねぇよ。これは俺のお袋のただのおせっかいみたいなもんだからさ。お袋、いつも言ってるだろう?弁当なんて、二個作るも三個作るも手間は一緒だって。むしろ数が有った方が、材料が中途半端に余らなくていいわよって言ってるくらいなんだから」
「………」
お袋の口癖を俺が声真似して言ってやると、あいつが僅かに頷いていた。
ぶっきらぼうな奴なんだけどさ、変なところで気を遣う奴でもあるんだ。

そんなに気にしなくてもいいのに。ある意味お互い様なんだからよ。

だいたいお袋のお節介っていうか、あの年代のおばはんっていうのはさ、やっぱ桂一郎のところみたいな父子家庭がどうにも見過ごせないんだと思う。
あれこれ口を出したり、世話を焼きたがる存在なんだろうなと。

まぁねぇ。
それでなくても桂一郎の家も、うちに負けず劣らずに色々あるからね。





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