好きまでの距離感〜第八話〜



向かった先は剣道場。

うちの学校ってば、所謂文武両道をうたい文句にしていてさ。体育館の他に剣道場とか、弓道。合気道。それに薙刀の部活動まで有ったりするわけ。
特に弓道は全国クラスだし、剣道部もそこそこいけてる部活動なんだよね。

で、俺が用事があるのは剣道場で剣道部。
そこに俺の目的の主がいるって訳。

校舎の端にある剣道場の入り口から中を覗く。
あいつがいないかな〜と。
真剣な練習中に部外者の俺がだよ、覗き込むんだからさ。やっぱそれなりに気を遣ったりするじゃん?
おそるおそる顔を出したら、俺が見付けるより早く、目当ての奴が俺を見付けてくれたんだ。
「和!」
低めだけと、凛とした声が俺の名前を呼ぶ。
「よっ桂」
それに俺が軽く右手を挙げて答えてやった。
剣道場の中。道着姿で竹刀を抱えていた野間桂一郎がそこにいたのだ。

「朝練終わったんか?そろそろ時間かな〜と思って来たんだけどさ」
入り口で顔だけを覗かせた俺に近づきながらやってきた桂一郎が、俺の問いかけに微かに頷く。
「ああ」
知らない人間が見れば、不機嫌そうに見えるんじゃないかと思えるくらいにぶっきらぼうな声と表情。
だけど長い付き合いの俺には、これが桂の普段の姿だって知っているから別に気にもならなかったんだ。

確かにあんまり喜怒哀楽を表に表さない奴だけどさ、別に感情が無いわけじゃない。
何を考えているのか読みにくい奴ではあるけれど、機嫌が良いとか悪いとかの区別はつくから。
もっとも…それって、長い付き合いの俺くらいのものかもしれないけどさ。
他人からしてみれば、いつも冷静沈着で落ち着いて鷹揚(ホントにそう言っている奴がいたんだよね)な人間…みたいな事、言われているみたいだ。

でもなぁ。
他の連中は知らないんだよね。
こう見えて、桂ってば結構人の好き嫌いが激しい奴だって事をだ。
見た目からそれをうかがい知るの、難しいかもしんないけど。でも、俺にはなんとなく分かるんだ。
奴の態度とか、雰囲気でね。

これが分かるのって、奴のおやっさんとか俺くらいだろうとは思うけどね〜。





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