好きまでの距離感
〜第二話〜


寝癖だらけでぴんぴんにはねた頭を鏡に映しながら歯ブラシを手にして、俺はあの時の事を思いだしていた。

どういう経過であれを言われたんだっけ?って。

え〜っと確か家になんとなくいたくなくて、外に出て…たんだよな。
でもって公園行っても、知ってる顔はいないし。何人か公園の遊具で遊んでるのを見ても、その輪の中に入りづらかったんだ。
一緒遊んでって言ったかなぁ………。
よく覚えてないや。
とにかく誰も遊んでくれる人もいなかったし、妙な疎外感を味わってベソをかいて公園の端っこだったかな。それとも近くのお寺さんの木の陰…か?
おっきな木の側だった事だけは覚えてるんだ。
そこで寂しいよ〜とか言いながら、べそべそしていたらあいつがいきなり顔を出してきたんだ。

顔の表情なんか変えない奴がさ。あの時だけは心配そうな目をして俺を覗き込んできたんだ。
「大丈夫?」って言ってくれた。
もうそのころから俺ってば結構、見栄っ張りの意地っ張りだったから、泣いてる顔とかを見られて、焦った事は覚えているんだ。
「うっさい、あっちいけ」
そう言って、そっぽ向いたんだよね。
「ねぇ、何で泣いてるの?誰かに苛められたの?」
「け…桂君には関係ないだろ。あっち行ってろってば」
何か恥ずかしい気分やら悲しい気分とかがごっちゃになって、俺は心配してくれている桂一郎の優しささえも、素直に受け止められない心境だったんだ。

暫くそっぽ向いてやったのに、あいつはその場を動かなかった。
ずっと黙りこくったままで、俺の側にいたんだ。
どれくらいそうしていたかな?
いい加減俺も焦れちゃって、桂一郎の顔を見たんだ。
「なんで、そこにいるの?あっち行けって言ったのに」
我ながらぶすくれた声を出していたと思うんだ。
そうしたらあいつ、俺を見て言ったんだよね。
「でも…和君、まだここにいるんでしょう?」
それがどうした?って思ったね。
「い、いいじゃんか。俺のこと、放っておけよ」
「でも、和君。ここ、寒いよ。それよりあっちいって、遊ばない?」
なんかもう、あいつの優しさが逆に俺のささくれだった神経に突き刺さるんだったんだ。
「いいんだってば!だって、どうせ誰も俺のことなんか知らないんだもん。遊んでくれる人、いないんだもん。ここの人、誰もしんない。お前だって、友達を遊べばいいだろ。俺、いいんだもん!」

うん。殆ど八つ当たりだったよなぁ。あれってばさ。

そしたらさ、あいつが俺のこと真っ直ぐに見詰めながらこう言ったんだよね。
「和君と一緒がいいって」





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