穿たれた刻印〜独白〜中編





そうしてアーロンはジェクトの側で、彼と共に魔を祓う仕事をすることになったのだ。





穿たれた刻印〜独白〜中編





最初は何をすればいいのか何も分からずに、ただジェクトの側についているだけだったような気がする。

正面切って魔と対峙するのも初めてなら、その魔をねじ伏せることすらそれまでのアーロン生活では想像だにしないことだったのだから。
目前に迫る魔の禍々しさとおぞましさ。並の人間なら、その姿を目にしただけで脅えて恐れおののくだけだろう異形の化け物。幼少の頃から魔の存在を感じ取っていたアーロンでさえ、直接目にしたときは足が竦んで動けなかったくらいなのだから。

なのに彼は…ジェクトは違っていた。
それを職業としているとはいえ、ジェクトは余裕の笑みすら浮かべて、魔と相対していたのだ。
どこか近所へ散歩でもするかのような気軽さでもって魔を迎え撃ち、魔物と間近に接してさえいても、彼は普段の態度のままで魔物とやり合うのだった。

何もかもがアーロンを圧倒しているジェクトの力とその存在。
傲慢で口が悪く、時に人を見下すような態度さえ感じさせられて、反発を覚えるのだけれど…。
彼の強烈な力と的確な判断力。たとえそれがどんなおぞましい魔物だとしても、ジェクトは動揺すらせずに相手をねじ伏せていた。

畏れるでもなく。脅えるのでもなく。
魔物を祓うのが自分の仕事なのだと割り切って、淡々と迎え撃つジェクト。

彼のようになりたいとアーロンは思った。
自分の力に振り回されるのではなくて、その力を使いこなし、自分の両親を死に追いやった魔物を滅ぼしてしまいたいと切実に願ったのだ。

ジェクトの力はまさしくアーロンがなりたい存在そのものだった。
魔物を畏れるのではなくて、魔物が畏れる存在になりたいと。

その為にジェクトの側で彼の事を見、その力を振るう術を学ぼうとしたのだった。


ジェクトは…何もかもがアーロンの想像外の相手だった。
魔と相対するときの彼は力強く、圧倒的で、超越的な力で全てをねじ伏せてきた。
それは見る者を驚嘆させるに足りるほどに、彼の全てが凄かったのだ。

ただ…。
それは魔を退治するときの彼の場合だけ。
普段のジェクトはおよそ尊敬という言葉を使うのさえ憚られるほどに、不真面目でだらしなく、我が儘で強引。
自分勝手で相手の気持ちを逆なでするような事ばかりを言う、酷く自己中心的な男だったのだ。
よく言えば飾らない人柄とも言えそうだが、アーロンにとってはどう見てもガキ大将がそのまま大人になったような印象なのだ。

普段の彼と、魔を退治するときの彼との激しい落差。

それがまたアーロンをさらに駆り立てる。
生来の負けん気の強さも関係しているのだろう。
ジェクトに追いつきたい。彼に負けたくない。普段、あんないい加減な男が魔物を簡単にねじ伏せるのがアーロンの焦燥感を煽るのだ。

ジェクトの出来ることが出来ない自分。
彼に出来ることなら、自分にも出来るはず。そう思い、彼のようになりたい、彼を越えたい…と願ったのだ。

なのに…。
どうしても彼に勝てない。
ジェクトのようには振る舞えない自分がいた。
ジェクトの側で彼の仕事を手伝い、少しづつではあるが魔と相対するときの術を学んでいった。
赤子の歩みのように徐々に、徐々にではあったが。

けれど後一歩のところではジェクトの手助けを必要とした。
あれほどに忌み嫌った自分の力を、もっと欲しいとさえ今では願っていた。
もっと力が欲しかった。
誰にも負けないくらいに強い力が欲しいと。

そんなアーロンの焦燥を、ジェクトは気づいていたのだろうか?
今となっては知る術はなかったが…。

ただ…一緒の仕事をしていたブラスカだけはアーロンの焦りをそれとなく察していたらしかった。
彼は仕事に疲れて帰ってきたアーロンを出迎えたときに、こう言ったのだった。
「焦ることはないんだよ。君は君。ジェクトはジェクトなのだから。そりゃあジェクトの力は確かに他を圧倒するものだけどね、彼だって今のようになるにはそれなりの経験と努力があったんだよ。まぁジェクトの努力なんて、想像つかないと思うだろうけど、それでも彼は彼なりに努力をして今のジェクトがあるんだから。最初から上手くやろうと思うほうが無理があると思うけどね。焦らないで、ゆっくりとでいいんだよ。無理をすれば、ゆとりがなくなる。周りを見るゆとりがなくなるとね、判断を見誤ることにもなる。もしかしたら取り返しのつかないことになるかもしれない。むしろそっちのほうが、怖いと思わないかい?自分の出来ること、出来ないことをちゃんと見極めた方がいいよ。そうしないと怪我の元になるんだから。怪我をしてから気がついたら、もう遅いしねぇ」
いつものおっとりとした口調でアーロンを心配してくれたブラスカ。
今にして思えば、彼の言ったことは正論だったのだ。

けれど…血気にはやっていたあの時のアーロンには、ブラスカの気遣いが逆に自分の若さ、不甲斐なさを指摘されているようで、ますます焦燥感を駆り立てられてしまったのだ。

ブラスカはまさしく、この後の悲劇を予想していた。
彼の心配のそのままのことが起こってしまったのだから。


傷がアーロンを苛む。

あの時の事は今でも忘れたことがない。

依頼されていった田舎の旧家。
そこに寄りついた魔物。
それを祓うべく二人、アーロンとジェクトはいったのだ。
出かける前に、魔物について調べたブラスカにくれぐれも用心しろと言われたのだ。
「いつもの魔物ではあるのだけどね…どうもそれだけじゃあすまなそうなんだ。嫌な予感がしてしょうがないんだ。まぁアーロンも大分仕事には慣れたことだし、大丈夫だとは思うけれど…用心するにこしたことはないだろうね」
そんなブラスカの心配をジェクトは鼻で笑い飛ばしていた。
「この俺がいて、失敗なんてするわけねぇだろう?」
いつもの様子で。いつもの態度で。
もちろんジェクトのその態度はいつものことだったので、さしてブラスカは気にも止めていなかったのだが。
ただ、ブラスカはアーロンに向かってこうも続けたのだった。
「アーロン。分かっているだろうとは思うけど、無理はしないことだよ。自分の手に余ると思ったら、遠慮なくジェクトの手を借りればいい。人の手を借りるのはけっして恥ずかしいことじゃないんだからね。むしろ自分の力を見誤ることのほうが、もっと危ない。これは君一人だけの問題じゃない。困り果てて、私達に助けを求めた人達の為でもある。くれぐれも…先走らないように」

まるでこの後起こる悲劇を予見していたかのようなブラスカの忠告。
あの時、もっと彼の言葉に耳を傾けていればよかった。もっと素直に彼の言いたかったこと、彼の心配していたことに気を回していれば、この後に起こる悲劇は防げたのだ。

何もかも、自分の未熟さのせい。
若さに走り、後先も顧みずに突っ走ってしまったがゆえに起こった出来事。
もう…今となっては取り返しのつかない。

さして難しい相手ではないだろうと思った。
それはジェクトも同じだったのだろう。
こんな相手なら自分が出るまでもないと、アーロンに任せてくれた。
初めて一人で任された仕事。

何とかして一人でこなそうと血気にはやった。
それが…最初の間違い。
屋敷の周りに結界を張り、他の魔物が入らぬようにした。それは同時に普通の人がこの場に入ってこられないようにもするためのものでもあった。

魔物をおびき出し、結界の中へ追いつめそのまま滅ぼしてしまおうと思った。
実際途中までは上手く事が運んだはずだったのだ。

あと少し。
魔物が断末魔の悲鳴を上げ、アーロンが投げた独鈷を喉元に突き刺したまま倒れようとしたその時…。
魔物の足下に暗い穴が突然に口を開いたのだ。
戦いのせいで地面が陥没したとか、そういうのでは無かった。
寒々とした冷気がそこから立ち上り、底の見えない暗闇が無限に広がる穴がそこに突如として現れたのだった。
異次元の…。
おそらくは魔物の巣穴へと繋がる穴。
いったんは倒したと思った魔物が再び、息を吹き返す。自身の足下に現れた巣穴から精気を受け取ったのか、喉元に独鈷を突き刺したまま、頭半分を潰れた状態でアーロンに向かってきたのだった。

倒したと思って気を緩ませたまさにその時。
しかも突然に現れた魔界の穴にアーロンの精神が許容外の状態に陥ってしまったのだ。
立ちつくしたままのアーロンに魔物が襲いかかる。
人型の形を模していながら全身に毛を纏い、牛のようなとも、虎のようなとも言い難い顔と形。
今はその姿さえも保てないのだろうか、全身がぐずぐずに溶け始めているのだ。

「アーロン!何やってんだ。逃げろ!後は俺に任せろ!」
遠くの方からジェクトの声が聞こえていた。
その瞬間、アーロンが気を取り直す。
(俺に任せろ)と言うジェクトの言葉によって。
あと少しで倒せるかもしれない魔物。初めて自分に任された仕事。
たとえ魔界の巣穴の出現という予想外の事態があったとしても、今ならまだ手を尽くせるはず。
殆ど瀕死の状態の魔物を倒し、後は開きかけた魔界の巣穴を結界符で閉じればいいだけのこと。
ジェクトの力を借りなくても何とかなる。
そう…アーロンは思いこんだ。

魔物との戦いで体は限界寸前の状態ではあったが。
それでもまだ自分で何とか出来る。まだ自分一人でこなせると。
懐に忍ばせた消滅符と結界符の護符を右手に取り、魔物に止めをさそうと近づいたその時…。
溶けかけた魔物の後ろから、別の魔物が咆哮を挙げながらアーロンに迫ってきたのだった。
それはたとえて言うなら巨大な蜘蛛のような魔物だった。
おそらくは突然に出現した魔界の穴から這いだしてきたものだろう。前面の魔物に気を取られて気づかなかったのだ。
八足の足を伸ばしアーロンに迫り来るもう一匹の魔物。
ゆっくりと伸ばされた足。その先には大きなかぎ爪のような凶器が備わっていた。
それがアーロンの目の前で振り下ろされる。
「危ねぇ!」
後ろから聞こえるジェクトの声。
誰かの手によって後ろに引きずられるのと、顔に焼け付いたような痛みが同時に走る。
自分の体から赤い血が迸るのを、アーロンはまるで他人事のように眺めていた。

…やられた?
俺は…失敗したのか?

体から迸る夥しい血がアーロンには見えた。
後ろ向きに倒れたのにも関わらずに、痛みなんて殆ど感じなかった。
ひくひくと手足が痙攣しているのを、まるで不思議な思いで見ていただけだ。

倒れたアーロンの視界にジェクトが剣を構えて魔物に向かっていく姿が映っていた。

あれは折伏刀。
魔を鎮め、仏の力で魔の存在を調伏させるジェクトの聖なる武器だ。
それを振るい、彼が魔物に立ち向かっていく。
魔界の巣穴から立ち上る冷気。それを糧にしているのか、目の前の魔物はなかなか倒れなかった。
それどころか巣穴の奥底の方からさらに禍々しい無数の咆哮が聞こえ始めていた。おそらくは魔界の住人の声なのだろう。この人間界へと現れ出ようと、暗い穴の底から這いずりだしてこようとしているのか。
普段魔物と対峙しているときですら余裕の笑みを浮かべているジェクトの目が険しくなる。

いつもならこの折伏刀の一降りで倒れる魔物がいくら斬りつけても向かってくるのだ。
何故に魔物が倒れない?

ジェクトの足下の魔界の巣穴が徐々に広がっていく。
これが…これのせいで魔物が倒れないのか。

魔物を倒すのと、巣穴を閉じるのを同時に行わない限り堂々巡りになってしまうのか。
そう…ジェクトが判断するのとアーロンが気づくのは、ほぼ同時だったのだろう。

俺が…何とかしなければ。
半分動かない体を引きずり、アーロンはジェクトの元へといこうとする。
こんなところで倒れている訳にはいかなかった。
あの時、もっと早くにジェクトの忠告を聞いていればこんな最悪の事態に陥ることはなかったのだ。
だから…。
これは自分のせい。
ジェクトの手助けをしなくては。
たとえ今ここで死ぬ羽目になったとしても、今やらなければもっと大変なことになってしまうから。

必死の思いで自分達に助けを求めてきた人たち。
彼らのせっぱ詰まった状態は、まさしくかつてのアーロンと同じなのだ。
あの時は何の力も無くて両親を死なせてしまった自分だけれど…。
今のアーロンはあの時の何も知らなかった子供ではない。少なくとも魔と渡り合えるだけの力と知識を持っているのだ。
あの時のような思いだけはしたくはなかった。
今ここで何もせずにいたら、あの頃と何ら変わりがない自分がいるだけ。後悔だけが残るだけ。

何よりも…。
突如として現れた魔界の入り口だけは塞がなくてはならないのだ。
あれをこのまま放置してしまったら、どんな恐ろしい事が待ち受けているか予想がつかない。最悪の場合、魔物がはびこる元となってしまう。この人の世に、魔を解き放ってしまうことになってしまうから。

それだけはなんとしても避けなければならないはず。
たとえこの命と引き替えにしても、あれを防がなければ。

傷が深いのは知っている。もしかしたら自分は助からないのかもしれないと、アーロンは覚悟していた。
それでも、このままではいられない。
一人で魔物と戦っているジェクトに、せめて力になりたかった。
自分の若さのせいで事態がこんな状況になってしまったのだから。

傷を負い、動かない体を何とか引きずってジェクトの側に近寄ろうとする。
少し動くだけで激痛が走り、口元からも血を吐き、体からは力が脱けかけていく。

ジェクトを…彼の…手助けをしなければと。

そんなアーロンの葛藤を尻目に…。
さらに魔界の穴は広がっていく。
地鳴りのような音が足下から響いてくる。
ジェクトが剣を振るい魔物を倒しても倒しても、相手は倒れない。
このままでは埒があかない。
戦っている間にも魔界の領域は広がり続けている。

ジェクトの視界の端に傷つき倒れ伏しているアーロンの姿が見えた。
魔物の爪を受け、体を切り裂かれながら倒れている彼の姿が。
殆ど瀕死の状態でありながらも、傷ついた体を引きずってジェクトの側へ近づこうとしていた。
彼の手には血にまみれた結界符が握られている。
あの状態でありながらも、何とかして自分の責任を全うしようとしているのか。

(馬鹿野郎が…。怪我人なら、怪我人らしくおとなしくしていやがれ)
そうジェクトは胸の中で舌打ちをする。

多分このままではいずれ自分の体力も尽きて、自滅するばかりだろうとジェクトは悟る。
体力にも腕力にも自信がある自分ではあるけれど、それでも限界はあるのだ。無限に戦い続けることなど出来ないのだから。
魔界の穴が在る限り目の前の魔物は倒れない。
そしてこの巣穴を結界符で塞がないと、魔物達の供給場所を作ってしまう羽目にもなりかねない。人の世に魔物たちを解き放ってしまうのだ。
魔物を倒すのと結界を塞ぐのとを同時に行わないと無理だろう。
アーロンは…頼るわけにはいかない。
魔物の一撃で死ななかったのが不思議なくらいの怪我の状態なのだ。

だとすれば…。
自分の取るべき行動は?

戦いの中でジェクトは考え、そして決断する。
懐から結界符を取り出し、それを口にくわえ、彼は魔物に向かって突進した。

手にした折伏刀がジェクトの霊気を帯びて白く輝く。
自分の持てる力を全て剣に込めて、魔物に振り下ろす。

「くたばりやがれ!」

「ぐぎゃぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

今までジェクトの太刀を受けて傷つきながらも立ち向かっていた魔物がおぞましい叫び声を上げる。
ジェクトの霊気の固まりを直接体にあびて、その禍々しい体がふるふると痙攣していた。
魔物が怯む。
どんなにジェクトが太刀を振るっても構わずに進んできた魔物の足が止まる。

今だ!
ジェクトが口にした結界符を右手に持ち替え、結界の呪文を唱える。


アーロンが驚愕の面持ちで事の成り行きを見守っていた。
何とかしてジェクトの手助けをしようと動かない体を引きずり、彼の元へいこうとしかけたのだが、流れ出る大量の出血が彼の体を重くしていたのだ。
流れ続ける血によって、まともに思考すらままならない。視界すら暗くなりかけ、殆ど気を失いかけていた。
そんな中、ジェクトの叫び声と魔物の咆哮を耳にして遠くなりかけた意識が覚醒する。
指一本動かすのさえ辛い中、必死で面を上げて声のする方を見やる。

ジェクトが…。
彼が手にした剣が異様な白い光を帯びていた。
アーロンが散々手こずった魔物に剣を突き刺し、そのままじりじりと魔界の穴のほうへと押し込んでいたのだ。

彼は何をするつもりなのだろうか?
嫌な考えがアーロンの頭をよぎる。

ジェクトが口元に何かをくわえていた。
あれは結界符?
まさか…とアーロンは思う。
まさかジェクトは自分自身を結界の要として使うつもりなのか?と。

アーロンの見ている前で、ジェクトが魔物を魔界の穴へと押し込んでいく。
立ち上る霊気が彼の髪を揺らしていた。

駄目だ!
アーロンは彼を止めようとして、叫ぼうとする。
死なないでくれ!
もう誰も…自分の為に、俺の目の前で死なないでくれ…と。

けれど…。
叫ぼうと口を開いても、出るのはひゅうひゅうとした空気の漏れる音ばかり。
ジェクトを助けるどころか、声を上げることさえままならない自分。

ジェクトの体から霊気の白い帯が立ち上る。
魔界の穴に彼の体が飲み込まれるのが見えた。

魔物を穴へと押し込め、自分自身さえもその巣穴へと飛び込んでいく。
その瞬間に、穴がぶるりと震えたのだ。

ぴしりと、空気が軋む。
地面が揺れる。
魔界の巣穴からそって、眩い光があふれ出る。
それと同時に、結界の封じ呪文の文字が光りの中に浮かび上がっていた。
ジェクトが自分の体を張って放った呪文と結界が、強烈な力となって魔界の入り口を封じ込めたのだ。

アーロンの目の前で、ジェクトが消えた。

そして。

突然に現れた魔界の穴が、また突然に閉じられる。
何の痕跡も残さずに。
耳に痛いくらいの静けさを伴って。

今、自分の見ている光景がアーロンには信じられなかった。
あの時…我を張らずにジェクトに任せていれば、こんなことにはならなかったのだ。自らのちゃちな見栄が彼の手助けを由としなかった。其れが故に、ジェクトが犠牲となってしまった。

全て自分のせい。

俺の…過ちがジェクトを死に追いやった。
俺のせい。
何もかも自分のせい。

アーロンの意識が遠くなっていく。
流れ続ける大量の血が彼の体から力を奪っていく。
目の前が暗くなっていく。
このまま俺は死んでしまうのかと、アーロンはやけに醒めた頭で考える。


それでもしょうがないのか。
もう、何も考えられない。
傷の痛みすらも感じられない。

薄れていく意識の中で、ふとアーロンの頭をよぎる顔があった。

ティーダ。
彼のあの明るい笑顔にもう会えない。
実の家族のように慕ってくれたあの子にもう会えないのか。

それだけが…少しだけ心残りだった。




そして…アーロンの意識は遠くなっていく。




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すみません、まだ続きます(大汗)

穿たれた刻印〜独白後編〜→



やばいです。まだ終わりません。どうしましょう。
軽い気持ちで始めたアーロン、過去編。
さら〜と終わらせるつもりが何故にこんなに長くなってしまうのでしょうか?
書いている自分が分かりません。殆ど冷や汗ものです。

そしてまだ終わらないのです。やばいです、マジで。
これ以上長くしたら…読む方だって、辛いよねぇ。
いや、書く方だって焦ってます。

あと一回。もう一回だけアーロンの独り言にお付き合い下さいませ。
次こそは終わりにしたいです。(切実)




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