辞書の原則

辞書を作成する際に絶対に守らなくてはならない原則の一つに,「定義対象の単語を説明文の中に使わない」と言うものがある.

例えば,「右」という単語の説明を「右手のある方向」としてはいけない.定義対象の「右」という単語を,説明文の「右手」に使っているためだ.

「右」の定義が「右手のある方向」だとしよう.そうすると「右手」の「右」も「右手のある方向」となる.したがって「右手」の定義は「右手のある方向にある手」となる.ややこしいが,結果として定義が堂々巡りをしていて,「右」という言葉の定義はどこにもない.読者に混乱を与えるだけだ.

操作マニュアルを読んでいて,こんな記述に出会ったことはないだろうか.

工数確認機能
工数を確認するための機能である
工数承認機能
工数を承認するための機能である

この記述は,「定義対象の単語説明文の中に使わない」という原則に反しているため,読者に混乱を与える.

これを回避する方法の一つに「それを行った結果を説明文として記述する」というやり方がある.例えば,確認した結果,過去の勤務時間の履歴を月単位に表示するのであれば,

工数確認機能
過去の勤務時間の履歴を月単位で表示する

となる.承認した結果,全社集計の対象となり,変更はできなくなるのであれば

工数承認機能
全社集計の対象となり,以降変更は不可

となる.