りらくのき

東洋医学からとらえた体質について


東洋医学では陰と陽(陰陽説)、「木」「火」「土」「金」「水」の五行(五行説)を基本として人体や病気を捉えようとします。(自然界全体を陰陽五行説で理解しようとした結果、人体の理解にも応用された、というのが正しい順番ですね)さらに人体の構成要素として「気」「血」「津液」という概念を考案しその量、働きが過小、過剰になった状態を様々な言葉で表しています。

1.脾虚(ひきょ)・・・胃腸が弱く、「気」の補充がうまくいかない。外見として色白、痩せ型。

2.気滞(きたい)・・・「気」の流れが悪く、「気」が足りない部分と過剰な部分が生じる。赤ら顔、神経質。

3.腎陽虚(じんようきょ)・・・先天的に生命力が弱い。外見は色白、華奢、髪質が薄い、細い

4.湿熱(しつねつ)・・・「気」「血」の流れが妨げられている。暑がり、多汗、肥満

5.血虚(けっきょ)・・・「血」が不足し、栄養が足りない。イライラ、健忘、乾燥肌

6.血お(けつお)・・・「血」の流れが妨げられている。筋肉質、皮膚のトラブル(しみ、そばかす)

7.陰虚(いんきょ)・・・「津液」の不足から体全体の乾燥。熱っぽい。便秘症、スタミナ不足

8.湿痰(しつたん)・・・「津液」が過剰となり、「気」「血」の流れを妨げる。むくみ、肥満、めまい、頭痛

Aさんは脾虚と腎陽虚が強い・・・Bさんは湿熱と湿痰の傾向が強い・・・という具合に一人の中に一つのタイプと固定されるわけではありません。複合的に考えてください。

1.脾虚(ひきょ)

このタイプは東洋医学で言う「気」(生命力の根本)が少ない状態にあります。

人体で気を生成するのが「脾」と考えられています。この「脾」の働きが衰えているために体に気を補充できず、気そのものと気から生成される「血」「津液」が少ないのです。

このため体調としては「食欲が無い」「胃腸が弱く疲れやすい」「免疫力が弱く病気にかかりやすい」といった傾向と外見的には「色白、痩せ型、ちょっと動くとすぐに息切れや汗をかき、疲れやすい」といった特徴があります。

そしてなりやすい病気として胃下垂、腎臓下垂、子宮下垂、低血圧、慢性胃炎、慢性腸炎、便秘などがあります。

さらに東洋医学の「五行」の考え方では「脾は肺を育てる」という考え方をします。脾虚の状態では脾の働きが悪いため「肺」にも問題が生じカゼ、慢性気管支炎、喘息、気胸などが見られます。

脾虚への対策としてはまず食事の考え方です。食欲が無く、体力の低下を感じるので「元気になるため食べなくちゃ」となりがちですが、食べて食物を消化し、吸収するのは胃腸に負担をかけ、エネルギーを消費するのです。胃腸の弱まっている脾虚の人が無理をすると返って体に負担をかけてしまいます。「規則正しく、一定の量を」ではなく、「空腹を感じたら、腹八分」という食べ方を意識してみてください。

また脾は冷えを好みません、しかし食べ物には体を冷やす種類があります。刺身などの生もの、生野菜、果物などです。「食欲が無いけど」「ダイエットのため」といった理由でサラダだけで食事を済ませる方がいますが、要注意です。

また冷房や薄着などにも気をつかい、体を冷やさぬように心がけてください。同時に適度な運動と十分な休息で体の「活動→休息」のサイクルの振幅を大きくしてください。

2.気滞(きたい)

このタイプは「気」(生命力の根本)の動きが文字通り「滞る」状態にあります。

このため体調としては「腹部の膨満感」「頭痛」「耳鳴り」「イライラ」「倦怠感」「顔などのほてり」「手足の冷え」などの傾向と外見的には「充血気味の目」「神経質な印象」といった特徴があります。

「気滞」と判断される方に多く見受けられる病気として神経症、頭痛、自律神経失調症、不眠、不整脈、神経性胃炎、過敏性腸症候群、慢性扁桃腺炎などの気管支関連の病気があります。

気の動きが滞るとある部分では「気」が過剰になり、ある部分では「気」が不足する状態となります。過剰となった部位では「熱」がこもります。部位によっては「口の渇き」「顔の火照り」「頭痛」「耳鳴り」「かゆみ」などが見られます。痛む場合には「張り」を感じる痛みが生じます。反対に不足する場所では「冷え」「倦怠感」などが見られます。

気の動きを調整するのは「肝」(五臓の一つ)です。この「肝」は感情の影響を受けやすく、現代社会(生活)において避けられない「ストレス」が過剰な場合、その働きに乱れが生じるのです。そう考えると、気滞は程度の差こそあれ、多くの人に存在する体質と言えましょう。

対策としては「肝」の働きを順調にするため、「イライラ」「くよくよ」といった感情をもたらす要因を生活から少なくすることになります。ポジティブシンキング、楽観主義といったキーワードで語られる生活、思考スタイルです。

3.腎陽虚(じんようきょ)

脾虚が食物から「気」を取り出す働きの弱さから「気」が不足するのに対して腎虚は先天的(または生後間もなくの大きな消耗)によって「気」が不足している状態と考えられます。外見的には脾虚のタイプと同じような痩せ型、体力の無い感じ、髪が細く、薄い、冬の寒さ、冷房が苦手、といった特徴があります。

腎虚に特徴的な病気として倦怠感、息切れ、風邪、生殖機能に関連する異常(生理不順、無精子症など)慢性腎炎、頻尿、軟調、耳鳴り、脱毛症、不眠症、頭痛、動悸などがあります。

腎虚の対策としては、熱を生み出す腎が弱っているので少しでも熱を失わないようにすることが重要です。この場合、冷暖房による室温の調整よりも、衣服による調整が体から熱が逃げるのを防ぎます。そして外部だけでなく、内部から体を冷やさぬよう食べ物にも注意を払ってください。電化製品の発達した現代では野菜や飲み物を冷えた状態で口にすることが可能になっています。これを腎虚のタイプの方がそのまま取り入れるのは大量の熱が奪われます。特に冬季は「触って冷たいと感じる」ものは控えるようにします。

少ない「気」をやりくりして生活する腎虚タイプの人は疲れもたまりやすいので十分な睡眠による回復が大切です。次の日の朝、気分良く起きられるかどうかが体調、回復の目安です。朝がつらいと思われるようでしたらまずは睡眠時間を確保することを心がけてください。

4.湿熱(しつねつ)

湿熱とは体を冷まし、潤す「水」と体を温める「熱」という反対の性質をもったものが体内に過剰に存在する状態を示します。このため「気」「血」の巡りが悪くなります。湿熱の人は外見的には体格が良く、血色も赤ら顔と言える感じで元気そうに見えますがこの巡りの悪さのために本人はどことないだるさや熱っぽさを感じることが多くあります。

これまで述べたタイプに比べると食欲は旺盛で脂っこいメニューを好みます。のどが渇きやすく、トイレが多め、暑さが苦手、といった特徴があります。

このタイプでは蓄膿症、慢性鼻炎、緑内障、ものもらい、おでき、慢性胃炎、肝炎、胆のう炎、腎炎、膀胱炎などの化膿性の炎症が多く見られます。そして食欲の旺盛さに対して体内の巡りの悪さが糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化などをもたらします。その他には多汗、頭髪のトラブル、排便のトラブルなどです。

これまで述べたタイプは何かが足りない、働きが弱っている、というものでしたが湿熱は「水」「熱」が過剰になった状態です。ですから対策としてはまず「湿熱」を体内に取り込まないように食事に注意することです。もともと食欲が旺盛なので食事の全体量を減らすことが第一です。そして「水」「熱」を体にとどめやすい性質を持った「味の濃い(甘い、辛い)」「脂っこい」メニューを控えます。

湿熱は体に「熱」というエネルギーが過剰になった状態ですからこれを消費することも大切です。適度な運動により体内の熱の巡りをよくすることで同時に「水」の巡りも改善されます。消費する手助けとしてハトムギ茶、ドクダミ茶、アロエなどの健康茶をとることも有効です。

5.血虚(けっきょ)

血虚とは全身の組織、器官を滋養する「血」(いわゆる血液も含みますが、ここでは血液の持つ働きも含みます)が不足した状態を指します。体は「血」の栄養により機能しますので、血虚の人は血の不足が激しい器官、働きに異常が出ます。

顔色は白く、体型も筋肉が少なく細身、食欲もあまり無い方です。皮膚や髪は乾いた感じでつやに乏しく、爪が割れたり欠けたりします。

なりやすい病気としては貧血症、生理に関する異常、神経炎、筋肉痛、視力障害、皮膚乾燥症、アトピー性皮膚炎などがあり、体の異常以外にも睡眠障害、不安感、不眠、健忘といった精神症状も見られます。

血虚の原因として

といったものが挙げられます。

血虚を察知するサインとしては上述した「髪」に注目します。東洋医学においては「髪」は血が体の主だった器官に回った後の残りから作られると考えます。ですから髪のつやが無くなったり、細くなったり、薄くなったら「血」が不足すると考えられるのです。

不足した「血」を補うための食材は人参・ほうれん草・レバー類・ゴマなどが良いとされます。血虚の状態は「血」を作ること、体の各部に運ぶこと、それぞれの働きが弱っていますから、たくさん食べればよいというものではありません。むしろ大量に摂取した食材を処理するために体に負担をかけます。ご注意を。また、取り入れた食材が有効に体内に取り入れられるためには睡眠も大切です。

6.血お(けつお)

体に栄養を与える「血」の流れの悪い状態です。皮膚は浅黒く、つやが無く、乾いた印象を与えます。切り傷や日焼け跡が黒く残りやすく、唇や口の皮下出血のトラブルが多く見られます。病気とまでいかない日常の疲れや痛みも「いつも同じ箇所」で「刺すような」痛みが「持続的」に続きます。

特徴的な病気として肩こり、頭痛、便秘、女性は生理不順、不妊症、各種の脳血管障害(脳出血、脳梗塞、脳動脈瘤など)などがあります。

この理由としては

などと複合的に捉えられています。

そのため対策も

といった、これまで紹介してきたようなものになってきます。

「血」の巡りをよくするとされる食材としてはなす、にら、みょうが、あじ、いわし、さんま、さば、たこ、海苔などがあります。

7.陰虚(いんきょ)

陰虚とは全身を潤し、活動を調整する「津液」の不足から体内の熱が強くなった状態を示します。

陰虚の人は「乾燥」を感じさせます。皮膚や髪は潤いがなく、体つきも痩せた感じ。呼吸も浅く、空咳が多い。水分をよくとりますが便通はあまりよくありません。比較的活動的ですが、スタミナに乏しく、疲れると手足に熱を感じたり、睡眠をとっても夢が多く熟睡できないことも。

めまいや耳鳴り、白内障や眼精疲労、口内炎、扁桃炎など感覚器の不調が多く見られます。生活習慣では「夜型」の人に多く見られます。

本来、夜は活動をやめて、その日の消耗を補い、次の日への活力を蓄える時間であるべきなのですが今はそうではありませんね。深夜まで営業する店舗、24時間放送するテレビ、ラジオなど皆深夜まで活動しています。

こうした状態が慢性化しますと、「津液」をつくることが出来なくなる上、消耗した肉体、精神が大量に「津液」を消耗し、陰虚の状態に陥るわけです。この対策としては体をきちんと休める十分な睡眠に尽きます。東洋医学の考え方では「津液」が増えるためには「陰」の性質の強い夜間の休息が必要とされますので、22時~深夜3時は睡眠にあてて合計して8時間は寝ることが理想的です。

仕事の都合などで睡眠時間を延ばせない人も多いと思いますが、トータルの睡眠時間は変えなくても早めに寝て朝早起きすることで調整するのもいいかと思います。

8.湿痰(しつたん)

肺や気管支を患うと痰が出ます。この痰は東洋医学では「湿」が固まって動きが悪くなったものと考えます。では「湿」とは何でしょう。

東洋医学では体を潤し、関節や筋肉を滑らかに動かす体内の水を「津液」と呼びます。この「津液」が過剰に体内に蓄えられた場合、「湿」となります。

過剰な水を表す「湿」と「痰」ですからご想像の通り、湿痰のタイプは色白で水膨れの肥満タイプです。皮膚は柔らかく、むくみの傾向が強くあります。体格は比較的しっかりしていますが、スタミナに欠け、すぐに疲れやすく、動けばすぐに汗をかき、息切れしやすいです。気温の変化に弱く、暑がり、寒がりで、雨の日などに体調がすぐれないことも。

特徴的な病気としてアレルギー性鼻炎、花粉症、慢性気管支炎などの呼吸器系、アトピー性皮膚炎や帯状疱疹や白癬症などの皮膚のトラブルがあります。

飲み物を多くとる傾向がありますので、まずは水分の摂取を控えます。また飲む時もあまり冷えた状態で飲むことは避け、量も少量ずつ摂取します。水分の状態にはありませんが野菜や果物も大部分は水分です。注意が必要です。このように体に入ってくるものに気を使ったら、後は体にある水分を適度な運動で積極的に消費しましょう。



からだに優しい整体のりらくのきです