■コンピューターを離れて

 めちゃくちゃきれいな海が見たくなった。そしていつかどこかの国を旅していたときに「世界で一番きれいな海は沖縄にある」と誰かが言っていたことを思い出した。

 名古屋から石垣島まで1日1往復直行便がある。2時間半の飛行時間だ。(ちなみに国内では名古屋からもっとも長いフライトで、ついでに言うならソウルより遠い)国内線では珍しく機内で軽食がでた。サンドイッチだと信じ切って飲み物はコーヒーを頼んだところ、スチュワーデスさんがにっこりとほほえみながら「和食ですがよろしいですか?」ときたもんだ。先行きが思いやられる。

 沖縄諸島を上空から眺めると珊瑚礁に囲まれているのがわかる。そして珊瑚礁の内側と外側とで海の色がちがっている。そう、珊瑚礁の内側はよくテレビや写真で見る”エメラルドグリーン”だ。いよいよ来たんだ!!!と高ぶる気持ちを押さえきれない。

 石垣港のあたりで市がたっていて、そこでパイナップル、マンゴー、アセロラ、バナナ、オモチ、天ぷら、カラアゲなど「こんなに食べきれるのか?」というぐらい買い込む。(だって今から無人島、いやいやリゾートアイランドにいくんだから)パンパンに膨れ上ったバッグを持って船に乗り込む。スタッフ二人のほかは私たち二人だけだ。さぁいよいよ出発!!

 船は先端を軽やかに持ち上げてスピードに乗っていく。島からはなれるにつれて海の色がクリアーになる。エメラルドグリーン、明るい水色、透明感のある青、深い藍色。『そう、この色が見たかったんだ』(久々の感動モノでした)

 
 

 私たちが滞在する黒島はエメラルド色の海の中に浮かんでいる。船着き場には待合い室風の建物がひとつあるだけ。切符売場も店も自動販売機もない。「え〜っ!こんなんじゃ飢え死にしちゃう、きれいな海だけじゃおなかはいっぱいにならない・・・」

 にこやかに迎えてくれたホテルのスタッフについて(オンボロ)ワゴンに乗り込む。牧草地帯を行くただの道。途中見かけたのはたった5、6軒の建物のみ・・・。(それもいくつかは廃墟のような・・・)しかし私たちが泊まるコテージは文句なし。ただ部屋の中に各種殺虫剤が置いてあったことが気になると言えば気になった・・・。

 着いて早速石垣港で買ったおやつ類をほおばり、昼寝の強い誘惑を押し切って「いざ海へ!」ビーチサンダルをはいた足下がなんだか”るんるん”という感じだ。(うちからこみあげる喜びってところかな)

 シュノーケルポイントのある海岸まで歩くこと20分。広〜い珊瑚棚のエメラルドに輝く海を、ほ〜んの15人程で独占しちゃうこの贅沢さ。もう歩きながら服を脱いじゃいたい気分。(なんて海に気をとられていたら石の上で滑った)

 はやる気持ちに身をまかせ、フィンとマスクを付けてドボン!(その間わずか3分)
「ワオー!!!」見えるみえる色とりどりの魚、オレンジや青やみどりの枝珊瑚。海の底は波模様のついた白い珊瑚の砂。太陽の光が水の中でキラキラと輝いている。(泳いでいたら突然足に痛みを感じた。振り向いてみたけどなにもない、誰もいない。あっ、また痛みを感じた。振り向くと「七色カワハギ」が挑戦的な目でこちらをみている。あいつにちがいない!それにしても魚とは本当によく目が合う)

 夢中になって海の中を見ていたらいつの間にか日が傾きはじめてきた。足には歯形がつき血がにじんでいた。(ちょっとビックリ!)そろそろ戻り時だ。 コテージまでフラフラともどり、外のシャワーで水を浴びる。「あ〜、いい気分」とーぜん水のかけあいっこでひと騒ぎ。

 やっと落ちついてひと休みしたところでフロントから「お食事の用意ができております」との電話がはいった。「よっし!」(・・・気合いが入ってしまうのは何故なんだろう?)「こういうところだからカツとかハンバーグとかがでるのかな・・・」なんて思いながらダイニングに入ると予想以上の内容。初日は中華だったが、炒めものとかにも魚介類がふんだんに入り(スライスした貝が入っていてちょっとビックリ)、食べきれないくらい。もちろんビールは「オリオン生ビール」、中ジョッキ1杯じゃぁちょっと物足りない気がするけど・・・とにかくおなかいっぱい。

 部屋に戻ってテレビをつける。そうだ今日は参議院選挙の日だった。(ちゃーんと投票してから来たからね)ついでに言うならワールドカップの決勝戦も明日の早朝にあるんだ。

 しかしとにかくおなかいっぱいで苦しくて、もひとつおまけにきのう夜更かししたから眠い。「ちょっと休憩」とベッドに入ったと思ったらもう朝の6時になっていた。
 

 あわててテレビをつけるとフランスが優勝トロフィーを掲げて走り回っていた。
カーテンをあけると青空が広がっている。「私も負けずにもり上がるぞ〜!!」と、心の中でつぶやく。何となく顔がニヤけているのを感じる。

 朝食までにはまだ時間がある。砂浜のきれいな”西の浜”まで行ってみることにした。きっと朝日に光って想像を絶するきれいさだろうな。それにそこには亀が産卵に来るっていうから亀にも会えるかも・・・。沖縄の強い日差しにもめげずに歩き出した。




つづく???