Maggie's J‐POP論
その34 私をコンサートに連れてってS
 ―井上陽水 40th Special Thanks Tour 2009.5.9@市川市文化会館―

 
今回のコンサートの会場となった「市川市文化会館」は、JR本八幡駅が最寄り。
  
徒歩10分ほどで会場に到着。数千人規模のホールでした。中高年6割、若者4割って感じでしょうか。
 
ツアーのパネルの前で携帯で写真を撮る人たちが多かったですね。
 
コンサート前に、ツアー記念Tシャツを買っちゃいました。3000円。

  
で、曲目リスト。初めて見ました、こうやって全部公開するのって。もちろん、コンサート終了後ですけど、いちばん帰り際に人だかりができていました(笑)。実はネットで調べたら、こういうパネルを紹介しているブログなんかがあって、事前に演奏曲は予想がついていたりなんかします。
とはいえ、ネタバレでがっかりしたって気分はなかったですよ。それどころか、年代に配慮しているのか、オフィシャルサイトやツアー限定HPとかでなく、こうしてパネルで収録アルバムも含めて公開してるのって、すごく親切だなと思いましたよ。それだけの自信の表れだと思いますし。ま、ツアータイトルにもあるように、40年もやっているわけですしね〜。

18時5分、開演。オープニングの
「Happy Birthday」から3曲目「闇夜の国から」まで淡々と歌い上げたところで、「市川のみなさん、こんばんは」と最初のMC。「40周年ということで(ここで場内拍手)……まあ、40年前はまだ生まれてなかったって人から、『デビュー以来のファンです!』って人から、『ホントは井上陽水って、まあ名前くらいは知っていたけど、よく分からん。ただ、どうやら切符が余ったらしいから行こうか』ってな人から……ホントにねぇ。ご愛顧というか何というか……ご寛容?」と、早速独特の表現力・雰囲気が炸裂。場内が早くも結構ウケていました。
ロック調の
「娘がねじれる時」、アルバム「ガイドのない夜へ」バージョンの「東へ西へ」を歌って、再びMC。「40年というと、四半世紀×2−10年ということで…(場内笑)」というお言葉で始まり、言わずと知れた“アンドレカンドレ”名義でのデビュー時のエピソードの話。バックバンドやコーラスがいったん退場のうえ弾き語りが始まります。その“アンドレカンドレ”名義のデビュー曲と2曲目・3曲目を一節披露しましたが、何だかとっても漫談チックな曲に、場内も何とも言えない苦笑モード。「まあ、20歳くらいで怖いものなかったですですから…」と、御大も何だか苦笑い。
その後、別のレコード会社から「井上陽水名義でレコードを出さないか?」と言われ、井上陽水名義のファーストアルバム
「断絶」が発売されるのが1972年5月。クレイジーキャッツの歌や美空ひばり氏の「お祭りマンボ」のサビ手前の一節を口ずさみながら、「こういう曲の感じが突然変わるところにインスピレーションというか、そういうものを得て作った」そうで、その中からタイトル曲「断絶」を披露。
その後は、先日亡くなった忌野清志郎氏との合作
「帰れない二人」を披露。今から40年前の出会いを紹介してくれました。「よくいるでしょ。普段はぶっきらぼうで、『もうちょっと接し方を考えた方がいいんじゃないの?』って人が、実はいざって時に力になってくれる人。彼もそういう人の1人でした」「もう40年近く前の話だからはっきり覚えてないんですけど、『一緒に曲をやろうよ』って言ったんでしょうね、あのとき」と話し、静寂の中で弾き語りを披露。「まあ、58歳ですか。早かったですね」
次いで「人に贈った曲も結構あるんで、歌います」と、再びステージに戻ったバックバンドやコーラスとともにパフォーマンスしたのは、中森明菜嬢の1984年のヒット曲でもある
「飾りじゃないのよ涙は」。ジャジーな仕上がりの陽水バージョンでお届け。名バラード「5月の別れ」「自然に飾られて」では、「5月の歌、6月の歌(『自然に飾られて』の中に6月がキーワードで出てくる)と歌ったわけですが、どうやって歌ができるかというと、5月だから5月の歌作らなきゃ、6月だから6月の歌作らなきゃ……」(場内笑)
「ドレミのため息」では、曲作りの方法を紹介。「音楽って、いろんな決定事項がいっぱいあるんです」「ラララララ↑と最後が上がるか、ラララララ↓と最後が下がるか……こういう決定事項がいっぱいあって、だから音楽を作るって大変で、作り終わってヘトヘトなときに夕食で『ねぇ、今日の夕飯中華にする?』とか来られると……もう、決めるのイヤって(場内笑)」何ていうか、ある種の“陽水漫談”確立ですね(笑)。とにかく、そういう多くの難しい決定事項を経てできたという曲とのこと。
「氷の世界」は、この日の本編でいちばん激しいノリだった曲ですね。場内も本編でいちばんテンションが上がっていたと思いますし、生で聴けて感動しましたよ。数々の印象的な映像とともに演奏された「最後のニュース」を経て、締めは大ヒット曲「少年時代」

アンコール直前、ステージ上の画面では、かつての井上氏のいろんなPVが流れてきます。20年前の有名な「みなさ〜ん、お元気ですか〜?」には、場内から思わず懐かしさも含んだ笑いが。単独インタビューでのひとコマでは、「何ていうか、自分が何者か分からないっていうんですか? そういう状態が好きなんですよね……ま、どう考えても歌手なんでしょうけど」――うーん、やはりこの方は漫談師ですよね(笑)。場内が爆笑していたのは言うまでもありません。そして、本編でも演奏された「最後のニュース」の最後、井上氏がケーキの上にたくさん置かれたロウソクの火をフッと消すと、ステージ上に明かりが灯ります。
 
アンコール1曲目は、新曲
「Love Rainbow」。帰りに気づいたんですが、事前に上記のポスターでオーディエンスの中から女性コーラスを募集していたようです。CDのサビでも実娘の依布サラサ嬢含めて数人の若い女性がコーラス参加していますが、これをぜひコンサートでもやりたかったようです。で、全員で9人。母娘で参加あり、40年来の陽水氏ファンあり、生まれて初めて買ったのが陽水氏のレコードで、店のおじさんに「お嬢ちゃんが聴くの? いいセンスしてるね〜」って誉められて以降の30数年来のファンあり〜で、音はきちっとまとまってましたよ。リズムのノリは各自バラバラだったですけど(笑)。
2曲目は、これも言わずと知れた
「夢の中へ」。この日、唯一1階席前方がスタンディングでノリノリになってました。多分、2階席も誰かが立っていたら、続々と立っていったんじゃないでしょうかね。そんないい雰囲気をスッと消し去り、締めに歌ったのは「いっそセレナーデ」。まさしく「しっとり歌う」ってのはこのことなんでしょうかね。

20時20分、終演。時間はやや短かったですけど、「若干35歳で、こういう楽しみを覚えちゃってよかったんでしょうか?」ってくらい、密度の濃い極上の大人のコンサートをしっかり堪能できました。(おわり)


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