Maggie's J‐POP論
その25 私をコンサートに連れてってK
     ―及川光博「ワンマンショーツアー07/08 イチャイチャしたい」
      
2007.12.14@NHKホール―

“ミッチー”こと浅香光代…三橋美智也…と時代遅れな、でも一度は必ずそうボケてみたくなる及川光博氏…って、おいおい(笑)。とりあえず言いやすいので、以下では“ミッチー”とさせていただきますが、ミッチーの楽曲って、結構私にはメロディアスで分かりやすくて好きです。歌声とか歌詞とかキャラはともかくとして、ロックもファンクもバラードも素直で分かりやすさがあると、個人的には思っています。
シングルやアルバムは、借り出されれば必ず借りる(でも買わない…)パターンが結構多かったんですが、ここ数年は寡作というわけではないものの、レンタル店ではあまり見なくなってしまいました。昨年は、デビュー10周年記念で『光』『博』という2枚のベストアルバムが出たんですが、なかなかレンタル店で借り出されなかったため、結局2枚とも購入。元々知っている曲も多かったですし、いずれもよく聴かせていただき、オリジナルMD作成時にも結構お世話になりました。そんな流れで今年出されたオリジナルアルバム『FUNKASIA』も、楽曲のよさが期待できると思って購入。結果は見事ビンゴ。タイトルにもあるようにファンク中心の楽曲で、元々私がファンク好きというのもあるんでしょうけど、これまたビンゴな内容でした。
コンサートに行くきっかけになったのは、知っている曲が多いのもありますが、上記ベストアルバムでおまけについていたDVDにコンサートやミニイベントの模様が収録されていて、なかなか面白そうに映った点。ミッチーらしい個性的なステージ演出に、期待に違わぬ楽曲のよさ。イベントの映像を観る限り、観客全員が女子だったですし、なるほど女子がいかにも好みそうな雰囲気はあちこち漂っていたので、今回のコンサートも女子が多いことだろうは、容易に予想ができていました。

NHKホールに行くのって、12年ぶりでした。大学4年次に就職活動で行って一度行って以来。干支が1周していますね(笑)。ホールの中に入ると、何だか懐かしくなっちゃいました。ほとんど変わってないんだもん。あのときは平野啓子氏がパネリストだかで出てきていたんですよね。座った場所は2階席の前方。下の写真のような形でステージを観る格好です。しかし、この写真だけで見ると、どっか地方の市民会館みたいですね(笑)。

場内は、ある程度予想できていたとはいえ、改めてやっぱり「こうも女子が多いとは!」って感じでした。ミッチーがMCで何度か「3020人」と言っていましたが、多分半端の20人くらいしか、ホントに男子はいなかったんじゃないでしょうか(笑)。そのくらい女子がワンサカといました。時節柄か、サンタの格好をする女子もちらほらいましたし、いかにも「ミッチーのためにドレスアップしてきました」的衣装の女子も大勢いました。
年齢層はやっぱり20代がほとんどって感じ。ミッチー自身は1969年生まれで今年38歳。年齢よりは若く見えますが、そこはやはり年の近い男子を見るのとはまた違った、ちょっと年の離れた大人の男性を“憧れの視点”と“物珍しさ(笑)”で見るってところでしょうか。

18時35分、ちょっと低音で色っぽい男性の声による注意事項のアナウンス。場内の3000人の女性が軽くざわめくと、ミッチーの友人であるという俳優・谷原章介氏(後でお祝いの花を見て思い出しましたが、フジのドラマ「山おんな谷おんな」での共演がありましたね)でした。ぐっと色めき立つ場内。「写真とかは絶対ダメだよ」「女同士の取っ組み合いは禁止です」で軽くハートをつかみ、「演出上の都合で非常灯の照明を消しますが、何かあったときはご安心。お近くに立っているイケメンがきちんと誘導致します」と言って、1階の誘導係の男子(イケメンかどうかは知らん)数人が「よろしくお願いします!」と元気よく挨拶すると、女子ども大爆笑&大歓声とともに、一気にボルテージアップ。
そして、オープニングとともに白いスーツのミッチーが登場。初っ端から何の曲か分からず「マズったかな…」と不安になりましたが、次いで「キミノマニア」「哀しみロケット2号」と知っている曲が続いてホッ。「哀しみ〜」はもう10年近く前ですよね。いまや懐かしい“ドレミファソラシド”宍戸留美嬢がバックヴォーカルを取っている楽曲ですが、今回は宍戸留美嬢ではなく伊藤理枝嬢という女性シンガーが歌っていました。声やしゃべりがとても若々しかったですが、あとでミッチーから年齢を35歳とバラされていましたね。ま、宍戸留美嬢も私と同じ34歳なんですけど。
最初のMCは、バックバンドとバック女子ダンサーの紹介も兼ねて…とその前に、照明が少し落ち、ミッチーが後ろを向いてドリンクを含み、呼吸を整えるところまではごくありがちですが、櫛で髪まで整えるところは、さすがミッチー。まあ、いっつもこんな感じなんでしょうけど、改めて見るとミッチーも認めていたけど“キモかっこいい人”です(笑)。曲が終わる締めのときも、いちいち“決めのポーズ”をビシッと取るしね。そこが何ともベタで、これはこれで笑いのツボをしっかり心得ていらっしゃいますね。
そんなミッチー。ボタンをすでに1つ外している衣装のもう1つ下のボタンを外そうとして、あちこちから「キャッー!!」「外してー!!」「(服の中を)見たいー!!」と“NHKベイベー”の嬌声は起こるけど、実際のミッチーは「見た目ほどモテない」そうで、その理由は「ミッチーって、面倒くさい人だと思う人ー!?」の質問に起こった大爆笑つき大拍手(笑)。ちょっとミッチー、ショックを受けて「こう見えても実際は優しいんだぜ。たしかに(コンサートをやっている)今ほど明るくはないけど」と、いまいちフォローしきれていないコメントを発していました。場内もお約束の爆笑。こんなやりとり、今はお互いに若いけど、あと数十年したら、オジさん演歌歌手リサイタルでの、演歌歌手とオバちゃんたちとのやりとりの様相を垣間見た気がしました。
MCの後は、最新アルバム『FUNKASIA』より「Get Down To The Funk!!」「夜行性ガール」など、3曲を披露。女子の皆さん、バックダンサーに合わせてしっかり合わせて踊っていました。終わってミッチーがいったん袖に引っ込み、バックバンドがインストで間をつなぎ、黒いスーツに衣装替えしたミッチーが登場。1曲アップテンポな曲を披露すると、照明が落ち、総スタンディングだった女子がこれまた示し合わせたように着席。エレピのインストからバラード「タカラモノ」を披露。その後、個人的に大好きなミディアムナンバー「ココロノヤミ」。歌詞の中に出てくる“コバルト”色の夜明けを連想させます。
終わって、照明が明るくなり、女子が再び総スタンディングでアップテンポなファンクナンバー
「モラリティー」「三日月姫」「Shinin' Star」と一気に3曲。皆さん、息ピッタリに踊っていましたが、中にはやっぱりというのか、マジで入り込んでいる女性もいました。ステージバックの映像に映る下着女性の動きに合わせて、腕のしなやかな動きといい、エロティックな腰つきといい、「イチャイチャしたい」のコンサートタイトルよろしく、完全陶酔状態ってところでしょう。ここで本編終了。曲が終わって、ミッチーいわく「三日月姫」のあたりで「心臓が止まると思った」と一言。ミッチー、何やかやでも38歳。

女子たちの“ミッチー、チャチャチャ(手拍子)”コールの後で、アンコール@。ミッチーは、ピンクのスーツに黒の水玉シャツで登場。黒のタキシードを着た執事“チエホフ”氏を交えて、タイトル名は忘れたけど、これまた恒例の質問コーナー。完全にリサイタル的ですね。このコーナー名を言うのも、いちいち女子がミッチーとピッタリな掛け合いするんですよね。
質問はあらかじめ、入場時に質問箱を設けておいてそこに入れてもらうんですが、今回採用されたのは「年末ジャンボ宝くじ購入」と「女子の勝負下着の好み」について。前者については、ミッチーは毎年40枚ほど買うそうです。なかなか当たらないそうですが、質問者の「当たったら半分あげます」という内容に、「うれしいです。コンサートでファンと近くなると、こんないいこともあるもんですね」とリップサービス。後者は「清楚系、セクシー系、それとも…」と口ごもるミッチーに、「ワイルド系!」とファンの一声が上がり場内爆笑。「皆さんに合うような下着をつけてもらえばそれでいいと思いますが……ボクは白とか紺が好きです」と、思わぬ本音。これまた場内爆笑。
楽曲披露に戻って、1曲目はジャジーなナンバー「ワンダフルニューヨーク」。次いで一転してロックナンバーの予感。すると、ガンの闘病生活から先日復活したばかりの忌野清志郎氏がマントに全身金スーツ&ミッチーに合わせた黒の水玉シャツで袖から登場。場内騒然の中で“ミツキヨ”名義の「ロマンス天国」を披露してくれました。大御所登場で一気に華やかになるステージ。ツアーはこれから来年3月まで続くそうですが、おそらくはこのNHKホール限定スペシャルゲストなんじゃないでしょうか。
終わって2人でMC。忌野氏、ミッチーが映画の撮影に出かけるときは、現場にチャリ(あの盗難されて戻ってきたやつ?)で駆けつけるそうです。また、来年2月10日に日本武道館で完全復活コンサートをやるそうで、場内から大拍手が起こっていました。頑張れ!――ってな感じで、このデュエット1曲で忌野氏はバックバンドの演奏とともに袖に消えるはずだったんですが、お約束というのか忌野氏がマントを翻したりなんかしてなかなか消えてくれず、しまいにはミッチーに「早くいなくなってください」と注意されていました。
締めは「死んでもいい」。ノリノリなナンバーに合わせて、皆さん自前の“ボンボン”を手に持って踊っていました。グッズ売場には売っていなかったので、ホントに1人1人色とりどりってな感じで、本格的なものから安上がりなものまで(笑)、ほとんどの観客が持参していました。

再び女子たちの“ミッチー、チャチャチャ(手拍子)”コールの後、アンコールAは「S.D.R」「Song for you」の2曲。最後にマイクなしでミッチーが「ありがとうございました!!」と、深々一礼して終了。個人的には聴きたい曲のほとんどは聴けましたが、楽しみにしていた中で唯一聴けなかったミディアムナンバー「pillow talk」は、その挨拶が終わって、ステージの全員がセンターにそろって決めのポーズつき挨拶で締めた後、バックに流れてきました。
3000人レベルの中規模のキャパとはいえ、狭い密室に近い中で聴いていると音がものすごく響いて、曲がおわるたびにコールされる“ミッチー”コールとも相まって、耳がクワンクワンしたとともに、改めてミッチー・バックバンド・バックダンサーそしてファンが一体となった、まさしく「及川光博歌劇団」というタイトルがピッタリな2時間半だったと思います。(おわり)


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