マーくんの初恋
 最初の子供というのは、すべてにおいて初めての事ばかりで親は戸惑う事が多いですね。自分だって子供のころがあったのだからと思うのだけど私達の頃とはいろいろな場面で違うと感じる事が多いです。
 好きな子ができるなんて言うのも私たちの頃は早くても3年生頃でした。今では早い子は幼稚園の頃にそんな事を言い出すようです。マーくんはというと幼稚園の頃には女の子には殆ど興味ないようで、ママが「大好きな女の子とかいないの?」と聞いても「男の子ならいる」という答えでした。4月生まれで、比較的なんでも器用にこなす割に情緒の発達は幼い子だと思っていたので、そんなもんかと思っていました。一年生になっても、懲りずに「好きな子とかいないの?」と訊ねるママに、マーくんは「いない」と答えていました。この答えの微妙な違いに私は気がつかなかったのです。ある日、マーくんのお友達のお母さんとお話しをしてるときに、「うちのは幼いから好きな女の子とかいないみたいだわ」と言った私に、そのお母さんは「なに言ってるのよ、マーくんだっているわよ、何とかちゃんが好きなんだって言ってたわよ」 なんてことでしょう! 私はもうびっくりするばかり。私に限って子供のそんな成長を見逃すなんて!好きな子ができた事もですが、母親に秘密にするなんてところまで成長していることに気がつかなかった自分が情けない思いでした。
 家に帰ると、さっそくマーくんに「ねぇ、好きな子いるんでしょう、教えてよ」攻撃。マークんもかなり頑張って「いない 」と言い張りましたが、ママの最終兵器「Kちゃんのお母さんには言えてママにはいえないわけね」という攻撃に、ついに撃沈。聞き出した名前はMちゃん。次の参観日が待ち遠しかった事!とっても可愛らしい子でママはニンマリ。その後、なんとマーくんは彼女に告白したらしいのです。私「えっ?それでMちゃんは何て言ったの?」 まーくん「Mちゃんも僕の事好きだって」 私「すごいじゃない、マーくん両思いじゃない!」
 しかし、期待していた(ママだけですけどね)バレンタインデーにも音沙汰なくて、そのまま2年生になってクラスが分かれてしまいました。このまま自然消滅かと思われたころ学校から帰ってきたマーくんが「ママ日記帳ちょうだい」ママ「なんで?」マーくん「だってMちゃが交換日記しようって言うんだもん」 ママ「!」 私は、そうそうにノートを用意してあげて、何を書いていいかわからないマーくんに内容まで指導して翌日渡しそこなったと言うマーくんを車に乗せてMちゃん宅に届けさせました。
 今こうして客観的に文章にしてみると、なんておせっかいな親でしょう!(自爆) でも、その日はMちゃんちで遊ぶ事が出来て嬉しそうでした。問題はその日、Mちゃんの部屋で二人がキスをしたらしい事なのです。翌日マーくんがMちゃんから受け取ってきたノートには「きょうは、いっぱい(ハートマーク)したね」という書き込みがあって、始め私には何だか判らなかったんです。あっ、内緒で見たんじゃないですよ。マーくんが見せてくれたんですからね。何気に、「マークン、Mちゃんと何したの?」と訊ねると、「ゲームしたり、チュウしたりしたの」と、あっさり答えました。私はどう考えればいいのか迷いました。パパなんかに言って大変な事になっても困るし、ましてや、Mちゃんの親御さんに知れたら、どうなっちゃうんだろう、って感じでした。迷った末、担任の先生に相談しました。先生は「幼い証拠ですから心配ないですよ」とおっしゃいました。でも、あちらの親御さんには暫くは言えず、実はパパはまだ知りません(笑)。
 その後、Mちゃんのお母さんと電話やEメールでコミュニケーションが取れるようになり子供達同様、親同士も仲良くなれ、夏休みには4人で映画を観に行ったりしました。お母さん達はお茶しながらおしゃべりをしていたので彼らは二人っきりで映画デートが出来たわけです。
 家の行き来もして遊びましたし、今年のバレンタインデーには無事チョコがもらえて、交際は順調のように思われました。 ところが! やっぱり初恋ってこんなもんなのでしょうか。Mちゃんが遠くへ引っ越す事になってしまったのです。この春から彼らの恋は遠距離恋愛になってしまいました。
 マーくんはMちゃんが引越しをしてしまう事を知ってから何かプレゼントを渡そうと考えて写真立てを送る事にしました。でもママに「ママが買っちゃったら、あなたがあげた事にならないわよ」と言われ、その日から御風呂掃除のお手伝いをした、お金を貯め始めました。一回20円です。それから、テストで100点をとると100円がもらえるのと、おばあちゃのお手伝いのお駄賃。少し貯まると自分のものが買いたくなってしまったりしましたがママにMちゃんの事を言われて、あっそうだと思い直してコツコツよく貯めました。ある日、Mちゃんちに遊びに行った時に私が二人のツーショットの写真を撮ってやりました。その写真を入れた写真立てを無事Mちゃんに渡したマークんでした。今、Mちゃんの机の上に置いてあるとお母さんからのEメールに書いてありました。 
 でも、電話するでもなく、ごくたまに短いEメールを送るぐらいで、なんて不精な男なんでしょう! もう、振られたって知らないから!ゴールデンウィークに会ったときは、まだラブラブだったみたいでしたけどね。
 物置に隠れてキスをしたと言っていました(苦笑)
                         (Jun.2000)