日本一周の為にやったこと


 

●3、エンジンオーバーホール(やっといて良かったの巻き)

 

帆で走るヨットとはいえ、入港したり着岸、離岸するときにはエンジンのお世話になります。
また、風が吹かないときには唯一の頼もしい動力源。
勿論KasayanのGoldenWistaria号も「ヤンボー・マーボー♪」のヤンマーディーゼルエンジンを搭載しています。
(蛇足:ヤンマーはKasayanの仕事のスポンサーでしたが、今ではKasayanが客。沢山部品を買ったけど、よしみで安くしてほしかった)
ですから、エンジンが故障してストップしてしまうと、風が無くなって目的地にたどりつけなくなったり、
後進が効かないために岸壁に激突したり、向かい風では着岸が困難になったりと、大変な事態に遭遇することになります。
船の場合には、車のようにちょっと道路の脇に止めてJAFを呼ぶというわけにはいきません。
なんとしても自力で港にたどり着き、地を足でふまなければならないのです。
また、塩分を多量に含んだ海水は、陸上では考えられないほど、エンジンを始めとする船上のあらゆる金属を蝕みます。
日本一周を前にして船を上架して、11歳になるエンジン君をバラバラにして、若返らせることにしました。
 また、船を陸に上げるこの機会に、水面下の船体の点検補修、船底に穴を開ける必要のある航海機器取り付け、
さらにプロペラシャフトが船体に貫通する所にある一種のパッキン(PSSという)などの交換作業を行いました。

 

              

ポッカリと開いたエンジンルーム(奥)とエンジン(手前)       取り出したエンジンを上から見たところ。ピストンを抜いてある。

 

上の写真がエンジンを取り外したところ。給排気バルブの取り付けてあるシリンダヘッドを取り外し、
エンジン下のオイルパンも取り外して、クランク棒、そしてピストンも抜いてあります。
長年の疲れで、給排気バルブのすり合わせ部分に腐食が見られ、圧縮が十分に行えなくなっていました。
また、ピストン側面にも腐食部分があり、シリンダーライナーとピストンリングの隙間から
ややオイルが上昇しているようにも見えました。
 このままでは長距離を走るうちにエンジン出力は次第に下がり、終いにはピストンが焼きつくおそれもあります。
そこで、思い切ってシリンダヘッドとピストンの交換をおこなうことにしました。
その他にも、エンジンを支えている防振ゴムが剥離していたり、エンジンオイルパイプが腐食していたり
この先3年以内に何かしら発生しうるトラブルの元が次々と見つかりました。
もしオーバーホール無しに日本一周のような過酷な使用をしていたら大変なことになったことでしょう。
「やっておいてよかった」とつくづく思うKasayanでした。
 交換作業、特に組み立ては、トルクレンチ等の特別な工具や、高等技術が必要なため業者に頼むことにしましたが、
いざというときには自分でもある程度作業ができるように、簡単なバラシ作業、部品の軽油洗浄等は自分で行って
作業方法を覚えました。

 

       

シャフトサポート付け根のFRP積層        積層部分をライトで暖める       船底貫通の測深器(手前)速度計(奥)

 

また、エンジンに加えて船体にも、更年期障害がみつかりました。
プロペラシャフトを支えるサポート部分のFRPにクラックが・・・・。銅のコアがあるため、直接危険な部分ではありませんが、
万が一プロペラ周辺に流木が当たっても多きなダメージにならないように、念のためFRPの積層をやり直すことに。
また、日本一周で多くの漁港にも入港するため、水深をコクピットで見ることができるように測深器を、
また、対水速度とLogを知るために速度計をとりつけました。

 12月10日、作業を全て終えて試運転。およそ3マイルほどをゆっくりと回転数を上げながら走りましたが、
作業前よりもエンジン音が軽快になり、心持トルクがアップしたような・・・・・。
そして測深器のスイッチをいれて・・・・「数字が出ない」・・・・・・・・・。6日後に本体交換作業がまっていました。
 6日間の作業で肩こり、腰痛になりましたが、船は若返りました。
これから3ヶ月、できるだけ沢山走らせて、アラ出しのシェイクダウンをしなければ・・・・。

 

若返ったGoldenWistaria号とKasayan


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