日本一周の為にやったこと


 

●13、アンカーは頼みの綱(上手く効くかなの巻き)

 

クルージングに良く行かれるかたでしたら、入港する前にまず気にかけることは、アンカー(錨)のことでしょう。
マリーナのような、潮の干満にあわせて上下してくれる立派な桟橋に横付けで係留できるのであれば楽なの
ですが、漁港の場合、漁船はたいてい船尾から錨をおろし、へさきを岸壁に舫って留めています。
この形から「槍付け」などと呼ばれたりするらしいのですが、ヨットも、漁港の片隅を使わせてもらう場合には、
この慣習に従って「槍付け」で係留する必要があります。

 

こうなると、船尾から下ろした錨が、しっかりと船の前進を留めてくれることが非常に重要になってきます。
この錨が効かないと、船はまさに「槍」のごとく岸壁に突進することになって、船の舳先が岸壁で破壊されることに
なるのです。

 

しかし、いかなる種類の海底(砂、岩、泥、etc)にもしっかりとホールドしてくれる錨などありません。
従って、海底の種類に合わせた錨を幾種類か選定し、複数積みこんでおかねばならないのです。

 

また、錨は海底のガラクタや岩のスキマ、他の船のアンカーロープ等にからまって上がらなくなることもあります
から、時には、泣く泣く大切な錨を捨てる事もあります。こんな時を考えて、あまり高価な錨を使ってばかりいるわけ
にもいきませんし、予備の錨も積んでおく必要もあります。

 

さらに、錨はしっかりと海底に爪を立て、船を係留させることが必要ですが、反対に、出航するときには再び引き
上げて船内に格納する必要があります。つまり、しっかりと海底をホールドすることと相反する「引き上げやすさ」、
そして、コンパクトな格納という条件も兼ね備えねばなりません。そのために、「良く効く錨を簡単に上げて仕舞う方
法」を考える必要もあるのです。

 

Kasayanの船には、以前から2本の錨をつんでいましたが、日本一周にあたって、新たに2本の錨を購入しま
した。

 

 

上の写真は日本一周のために購入した、ダンフォースアンカーです。ダンフォースと呼ばれている錨のほとんどは、
「ダンフォース型」と呼ばれる錨ですが、これは正真正銘のダンフォース社の刻印が打たれているアンカーです。
普通に購入すると、一本3万円前後はする「お宝」なのですが、Kasayanの場合は、一年に一度マリーナで開催される
フリーマーケットで4千円で購入することができました。一番出番の多い、砂地や泥には抜群の効果を発揮するアンカ
ーの長島茂雄。このアンカーをメインアンカーとして「槍付け」の時の船尾錨として使うことにしました。


 このアンカーは軽量ですが、その効果は重くて長いチェーンをつけることで発揮されます。そこで、横浜市内の作業船
用の船具屋に行き、26ftのヨットには少々太めの9ミリのアンカーチェーンを4メートル購入して、取り付けました。
本当は、もっとチェーンを長くしたかったのですが、Kasayanの錨を上げる体力の限界がこの長さでした(体力が無い)。
 さらに、錨の先端部分に電気ドリルで穴を開けてシャックルを通し、モニターロープを10メートル接続し、アンカーロープ
にくくりつけました。これで、錨が根がかり(引っかかった)したとき、錨の頭の部分から引き上げることができるはずです。
(モニターロープはワンアクションで取り外しが出来るようにして、煩雑な入港時の作業を楽にしました)

 

アンカーロープは軽量と強度とコンパクトを考えて、30ミリの平たいベルト状のロープを使うことにしました。
50メートルでも小さなロープバックに入りほんの3Kg程度の重さです。これなら濡れても5Kg以内には収まるでしょう。
船尾錨用のロープですから、コクピットロッカーからいちいち取り出さねばならないので、軽量コンパクトは重宝しそうです。
また、ロープには5メートル毎に赤マジックでデカデカと数字を書き込みました。

また、引き上げ直後の汚れた錨を、他の物も入っている、コクピットロッカーにそのまま収納したくなかったので、船尾に
錨を引っ掛ける金具を取り付けました。単純な構造の割には国内で9千円もするのですが、アメリカのメールオーダーで同
じ物を3千円で手に入れることができました。

 

 

次に上の写真は、船首部分のアンカーウェル内の様子です。
この錨は、ブリタニーアンカーというものらしく、ヨット購入時にすでにセットになっていました。

ダンフォース型と似ていますが、アンカーストックが無い独特の形をしています。
夏にアンカーリングしたとき、「本当に錨が効いているのかしらん」と水深4メートルまで潜って見ましたが、
がっちりと教科書どおりに泥に食い込んでいる姿を目の当たりにして、信頼する気になりました。
カタログでは、シャンク(チェーンを取り付ける錨の手)の付け根に泥が詰まりにくく、どんな海底にも良く効くとの
ことですが、形状から見て砂、泥中心に考えたほうがよさそうです。
チェーンは3メートルで、アンカーラインは40メートル。5メートル毎にビニールテープでマーキングしてあります。

 

次にこのコックピットロッカー内に仕舞ってある錨は、日本のヨットで一番使われているかもしれない「ダンフォース型」
の錨です。これは、以前Kasayanが乗っていた船を売るときに、2本あったうちの一本を記念に残しておいたものですが、
前の船では、ちょっと錨を下ろして「昼食」等に効果を発揮していました。チェーンは2メートル、アンカーラインは25メートル。
予備アンカーとしてロッカーの一番下に予備のアンカーライン兼もやいロープ(25メートル×2=50メートル)と一緒に仕舞い
ました。

 

 

そして最後が、傘の骨のような形をしたホールディングアンカーです。これは開いた状態ですが、仕舞うときには、本当に
傘のように閉じることができます。コンパクトさではダントツ。他の錨では効果が少ない「岩」の海底に効果を発揮します。
他の錨と一緒にタンデムにして使えるように6メートルのアンカーラインを接続していますが、場合によっては、予備錨の
チェーン2メートルを接続して使用するつもりです。

 

でも、小心者のKasayanは、過去、深夜に走錨して船首を岸壁にぶつけた経験から、錨を打つと本当に効いているのか、
効いていないのか気が気でなくなって、船を置いて遠出ができなくなり、夜中にも目がさめて確認をしてしまうのです。
できるだけ「槍付け」をしないで済むことを祈るのみ。

 


 

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