航海日誌 7

 

【5月31日(水)〜6月6日(火)】


 

5月31日(水)  香川県 詫間町 粟島 日和待ち
前線上を低気圧が北東進。瀬戸内海は一時的に強く降ることがあっても、降ったり止んだり、ほとんどが曇りか霧雨程度のはず。低気圧が頭上を通るので、通過のタイミングで東よりと北西、あるいは西よりの風が強く吹く恐れはありますが、カッパを着れば出港できるであろう天気・・・・・・・・・・・・・でもKasayan、臆病者なので、視界が悪くなったら備讃瀬戸の西で列をなしている本船が見えない、あるいは見てくれない、いたるところにある魚網
のブイが見えないのでは・・・・と考えてしまい、小さく美しい島で日和待ち。

昨夕、Kasayanが停泊している桟橋の隣に船を留めている漁師さんから「グチ?」という魚をもらいました。ぴちぴちとはねて、腹を抑えるとグーグーという泣き声を出すピンクの魚。かわいそうでしたが、Kasayanが包丁で一気に頭蓋骨割。桟橋でさばいて煮付けにしました。淡白な白身の魚で、全て二人に腹に納まりました。

この島には、見たところ、信号機など一つもありません。時折原付バイクが走っていきますが、誰一人ヘルメットなどかぶっていません。目の前に駐在所があるのですが・・・。お婆さんの多くは、昔の乳母車のような台車を押して荷物を運んでいきます。そして、発見!!!昔懐かしい、3輪の軽トラック「ダイハツミゼット」すでに廃車になっているようですが、懐かしさの余り、譲ってもらいたい衝動に駆られました。

また、島の中心地には、黒いかわらの立派な旧家がたくさんあります。この島は、かつて瀬戸内海から日本海を北上し、北海道まで行き来していた北前船の船主が80軒以上もあったところ。Y字型をした島は、いずれの方向の風からも船を守り、燧灘の西の重要な海上交通の拠点。多分、その時代、隆盛を極めた船主たちの家が残っているのでしょう。対岸の四国を眺めながら、北前船が白い一枚帆を揚げて西へ、東へ走っていく姿を想像していました。

朝食は魚肉ソーセージを使ったケチャップライス。魚肉ソーセージは、常温で保存が利き、そのままで食べても良し、肉の代用として使っても良しとロングクルージングの保存食としては非常に優れもの。昔、給食のサラダにほんのわずか入っていた魚肉ソーセージ。今でもKasayanの好物の一つです。

昼間は、キャビンで明日の航海計画。備讃瀬戸南、北航路の西の玄関口を横断。六島の東を通過、宇治島、走島の西にはつぼ網があるので、この二つの島の東側を北上、阿伏兎瀬戸に入ります。そのまま島の迷路、芸予諸島の水路を進み尾道か因島まで行く予定。条件次第では、芸予諸島の東の端、田島と横島の間の横田漁港に入りたいと思っています。ちょうど、4月号と6月号の「舵」誌の特集のあったところ。いよいよ、多島海としての瀬戸内海の中心部へ。ここ粟島でも潮の干満差は3メートル。潮が引いている間に絶壁になった岸壁に寄りかかった船の船底掃除をしている人も。
これからの急潮、干満差、そして迷路のような島の狭い水道を初めて経験するKasayan。少々緊張モードです。



昨日、高松から備讃瀬戸小槌島へ向かう途中に見た屋島の朝焼け
右はYBCのクラブ旗と金毘羅さんの海上安全旗。
とても綺麗だったので・・・・・・・・・・・

 

6月1日(木) 香川県 詫間町 粟島 ⇒ 広島県 尾道市 尾道港
このところ、低気圧が通過して雨が降ると、結果的に2日間は足止めになっていましたが、今回の低気圧は梅雨前線(入梅との関係で気象庁は梅雨前線と言いたくないのでしょうが)上を低気圧が通過しただけだったのでたった一日で天気回復。阿伏兎瀬戸と尾道水道の潮の関係でゆっくりと午前7時45分出港。
粟島の南側をまわり、備讃瀬戸の西の玄関口、六島の西を狙います。
ここは、東京湾の浦賀水道と同じで、瀬戸内海を東に向かう船が集まってくるところ。大きなフェリーと8隻の内航船をやり過ごして海峡横断。

瀬戸内海に入ってよく見かけるのが、海に浮いているミカン。15分に一回はぷかぷかとオレンジ色のミカンが船の横を通り過ぎていきます。さすが柑橘類の産地!日本のエーゲ海!!藻とちがって心が和みます。

宇治島と走島の西にはつぼ網があるとの情報を得て、両島の東側を北上。
昨日の低気圧に吹き込む西風が4メートル前後。久しぶりにジブをフルに開いてセーリング。5ノット前後。息のある風なので、時々エンジンを半開で足してやって平均5ノットを維持。

走島を過ぎたところで、北西へ変針。いよいよ芸予諸島の玄関口、阿伏兎瀬戸へ。
幅、300メートルほどの折れ曲がった水道はまるで川のようで、入り口の東側の崖上には赴きのある櫓がそびえていました。連れ潮に乗って6ノット以上で進入。曲がり角の向こう側から内航船がいきなり飛び出してきてやや肝を冷やしましたが、慎重に交わします。内海フィッシャリーナ、を過ぎ、田島と本州を結ぶ橋をくぐると境が浜マリーナ。

この先、非常に狭く、潮の早い尾道水道に入るので、メインダウン。
ただ、万が一のエンジン故障に備えて、いつでもセールアップができるように準備は欠かしません。

今日の尾道水道は、10時51分に西流に転流して13時52分に最大西2.3ノット。
エンジンを半開にしていても、対地速度は5ノットから6ノット。ちょっと吹かすだけで7ノットオーバー。尾道と向かいにある向島を結ぶフェリーは、潮の流れに逆らって、大きく迂回して、この狭い海峡を横断しています。

フェリーの動きに注意しながら、事前に情報を得ていた、旧フェリー乗り場の中央桟橋裏側へ。あいにく作業船でいっぱいだったので、作業船に舫いをとって、港湾事務所へ電話。作業船の所有者の電話番号を教えてくれて、連絡をとって横抱きOKなら停泊しても良いとのこと。ドキドキしながら電話をしたところ、快く横抱きOK。明日まで船を出さないとのことでした。停泊して船の周りを見ると、まるで船が走っているように舵の後ろに渦が巻いています。「さすが瀬戸内海!!!」転流しても良いようにスプリングをしっかりとはって船を固定しました。

・・・・・・・・・・・・・・・が、30分ほどして、港湾事務所の人間が二人・・・・・・・・・・・・この場所、プレジャーボートは停泊できなくなったとのこと。停泊するのなら、再び境が浜マリーナまで戻って欲しいとのことでした。「そんな!!!さっき留めても良いって言ったじゃない!!!!!!」・・・・・・・・・・潮はまさに最大流速。これに逆らって戻るなんて・・・・・・・・
拝み倒しのKasayan。すると、港湾事務所さんは「私、言うことは言いましたから、潮待ちして出て行くということで・・・・・・・・」とニッコリ。目をつぶるというサインを下さいました・・・・とKasayanは理解しました。明日の潮を待とう!!!

Kasayanは船に残り、例によって女房は尾道探検と買い物、そして風呂へ。Kasayanは船で行水。女房は、しっかりと古寺観光までしてきました。この桟橋、午後5時で入り口閉鎖。ビルの入り口が桟橋の入り口と兼用になっているため絶対に出入り不可能。
セキュリティーは最高ですが、結果的に5時で尾道の陸を踏むことはできなくなりました。
まあ、女房だけでも観光できたので良し。志賀直哉さん、また今度!!!!。

 


尾道港  旧中央桟橋 本当は停泊できないんだって!!!

 

6月2日(金) 広島県 尾道市 尾道港 ⇒ 愛媛県 越智郡 大三島 宮浦港
たった17マイルがこんなに遠く感じられたのはこれが始めてでした。

今日の潮周りは日の出直後から進行方向とは反対の東流。転流はお昼。出発を昼前にすると午後3時頃の到着になってしまうので、東流が最大になる午前8時半より出来る限り早く出港することにしました。

弱いながらも、今日も高気圧の圏内。アメダス風向風速を見ると、瀬戸内本州側はほとんど無風。バリバリの機走日よりですが、一つ心配なのは、瀬戸内海名物の霧。山口県、広島県全域には濃霧注意報が出ています。ただ、尾道水道を見渡すと視程は2マイルから3マイル。どうにか走れそう。

水道が狭いことと、まったく風がないことから、今日はメインを上げる用意はしても最初から一切セールを揚げずに機走。霧に加えて島陰からフェリーや高速艇、内航船がいきなり出てくるので視界を良くしておきたいこともあって、今日のGoldenWistaria号はまったくのポンポン船状態。

鏡のような平水の尾道水道を常用回転数2800回転で対水速度6ノット。波もまったくないので船の機走性能が最大限に発揮されているようですが、対地速度3.5ノット。7時7分、尾道水道の西に出て三原の沖へ。

小佐木島で進路を南西に向けて青木瀬戸へ。瀬戸田へ向かう寺の形をした妙なフェリーが前を横切っていきます。あまりに妙な形をしているので思わず写真撮影。多分こんな形をしているフェリーは日本広しと言えどもここだけでしょう。などと、考えていると瀬戸の入り口は、白波が立ち、岸辺では波が渦を巻いています。オートパイロットにしていましたが、進路が定まらなくなり、エラーアラーム。ティラーを持って巨大船の造船所に舳先を向けます。対地速度1.4ノット。恐るべし、瀬戸の急潮。風は相変わらず無風。小さな1GMエンジンと2枚ソリッドのプロペラに頼るのみ。這うように前進していると、海峡が少し広くなる頃から速度が上がり始め、ようやく速度は3.5ノット。時間は8時過ぎ。ちょうど潮の最大流速時間。

三原瀬戸を横断するころには、じわじわと4ノット前後まで対地速力が上がり、潮の早い大久野島と大三島の海峡も無事通過。大崎上島の手前で南に進路を変え、そのまま半島を回りこんで大三島宮浦へ。緑のブイ2個に沿って掘り下げられた航路を110度で進むとそのまま穏やかな天然の良港に入港。寺の屋根を模した第一桟橋の隣にある、旧フェリー
桟橋の第二桟橋に係留。フェリー事務所であっさりと係留許可。今日のねぐらは無事確保。今日の航程17マイルの距離に対して対水距離は27マイル。10マイルも流されていたことになります。さすがは瀬戸内海。逆潮クルーズも良い思い出になりました。

そして、昨日の引き続き、ミカンの浮遊物が多かったこと。今日の航路の潮目には必ずミカンがブイのように列を為して浮かんでいました。おかげでオレンジ色の列が目印になって潮目が遠くからでもハッキリ。言葉では表せないほどのミカンの多さ。恐るべし、芸予諸島潮目のミカン!!!!宮浦港ではヨットの周りに、数えただけで20個のミカンが浮かん
でいました。GoldenWistaria号はミカン風呂状態。

船の片付けと燃料補給をしたあと、大三島出身の横浜のヨット仲間のご実家に電話。以前から大三島に立ち寄った際に洗濯をさせていただけるようにお願いをしておいたのですが、お風呂まで入れていただき、風呂上りにはビール。そして、ヒラメのお刺身までご馳走になってしまいました。さらには、ミカンとレモン(自家製)のお土産まで。初対面の日焼けして薄汚い夫婦に、自分の子供のようにしていただき、心から感謝!!!!!感激!!!
大三島に良い思いでができました。

明日は、前線北上で天気下り坂。ただ、天気は非常に微妙。明日朝の天気図と実況で出港を判断する予定。霧が一番心配。そして、次は御手洗か?安下庄か?これからじっくりと考えます。



瀬戸田行きのフェリー  不思議な船です。

 

6月3日(土) 愛媛県 越智郡 大三島 宮浦港 ⇒ 広島県 大崎下島 御手洗港
梅雨前線が北上、前線上を低気圧が東進。レーダーアメダスを見ると、四国と九州は全域にかなり強めの雨雲がかかっています。でも芸予諸島方面は、弱い雨雲が掛かることがあっても、まとまった雨にはなりそうにありません。ただ、霧がかかっていて視程は3マイル。潮周りも悪く、午前11時までは東へ潮が流れます。そこで、11時まで、大三島に行ったら行かずばならない大山祇神社を拝観することに。

大山祇神社は、全国の国宝・重要文化財の指定を受けた武具類の8割が保存されているところ。平安時代、室町時代、鎌倉時代の武将達が、戦の前後に武運長久を祈り多くの鎧、兜、太刀を奉納したことで知られています。また、海の神様としても有名。船を留めている第二桟橋からは歩いて10分程度。立派な灯篭の並ぶ参道を歩いていくと、瀬戸内海に浮かぶ素朴な島とは思えないような広く立派な境内に、室町時代に建造された拝殿が厳かに立っていました。

これからの航海の安全を祈り、楽しみにしていた宝物館へ。昔、歴史の教科書に載っていた、国宝の源義経奉納鎧を始め、900年前の武具が並んでいました。潮が早く、都からも遥か遠いこの島に、はるばる武具を奉納していた武将達の信心深さと、ここまで航海してくる技量の高さに感心せざるをえませんでした。

宝物館を出ると、昨日お世話になったヨット仲間のご両親が思いもかけず、待っていてくださいました。1時間ほど、島をドライブ。井ノ口港へ。昨年開通した、しまなみ街道の道の駅があり、目の前には生口島と大三島を結ぶ世界一の斜長橋の前で記念撮影。再び宮浦港まで戻り、なんと炊き込み御飯のお弁当まで用意をしていてくださいました。なにか大三島にも故郷ができたような幸せな気持ちになり、何度も大三島を振り返るKasayanでした。

今日の航程はたったの9マイル弱。大三島の西を南下して、大崎上島の南にある明石瀬戸を西へ。まるで梅雨のようなしとしととした雨が降り出して視程は3マイル以下に。
でも、潮待ちしたかいがあって明石瀬戸では対地速力が8ノット。すぐに霧の中から大崎下島と岡村島の間にある狭い御手洗瀬戸の入り口が見えてきました。この海峡の入り口は幅200メートルくらい。高さ21.5メートルの橋が掛かっていています。例によって潮浪を乗り越えて7ノットで海峡へ。あっという間に御手洗港の灯台に到着してしまいました。

幅150メートル、奥行き100メートル以下の小さな港。横付けするような桟橋はありません。小さな油送船にいたおじさんに聞いて、槍付けしている漁船の横にスターンアンカー・バウ舫いで停泊。今回は十分な水面があったため、水深4メートルの4倍以上、チェーン4メートル、ロープ14メートルを繰り出すことができました。勿論アンカーモニターも。雨の中、手際よく着岸ができました。陸へ渡るには2つ隣の漁船にかかる橋が使えます。

今日は大潮の翌日。この港では干満差が約3.5メートル。近くの農協へ買い物に行っているうちに水深は2メートルまで下がりました。目の前の岸壁の下には大きな空間ができて、町の奥さんがバケツを持って、洞窟のような桟橋の下で貝を取っています。
恐るべし瀬戸の干満差!!!。多分、さっき沈めたアンカーモニターは海底に着いてしまって役にたっていないはず。干潮に合わせて位置を調整するため一旦、モニターを引き上げることにしました・・・・・・・・・が、ラインを手繰っているうちにしりもちをついてしまったKasayan。見ると、ラインとモニターを結んでいるシートが解けています。せっかく自作したモニターが・・・。御手洗港の海底に記念を残すことになってしまいました。しかし、どうして解けてしまったのだろう?????悩んでいても仕方ないので、予備のアンカーチェーンと
しっかり畳んで開かないように縛ったホールディングアンカーをラインに結びつけてモニターを作り直し、再び沈めました。約4メートルモニターラインを繰り出し、干潮の現在、海底に達しているはず。余長は1.5メートル。これから満潮まで3メートル水面が上昇しても十分に効果を発揮して、アンカーラインの張りを調整してくれるはず・・・・・・・・・・・だといいな。

この港、かつては北前船や瀬戸内海を東西に行き来する船が来島海峡の潮待ちに使っていたところ。当時、それは賑わったことでしょうが、現在は、観光客もいないミカンと漁協の静かな港になっていました。雨で出漁しなかった漁師さんがやってきて、ヨットの話。これから日本海へ向かう話をすると、大変に驚いていました。

明日は日本海から張り出す高気圧に覆われて晴れるはずですが、霧が心配。
九州のテレビ局でお天気おにいさん?(お天気おやじ)をしている元同僚からメールがあり、九州と四国は入梅したとのこと。これからは梅雨空の下の航海。これからますます霧が多くなる瀬戸内海を抜けてしまう必要がでてきたようです。


 

宮浦港第二桟橋から神社の屋根を模した第一桟橋を望む    


御手洗港の岸壁の下の洞窟?干満差3.5メートル


 

6月4日(日) 広島県 大崎下島 御手洗港 ⇒ 山口県 屋代島 東安下庄港
5時半起床。祈るような気持ちでスライドハッチから顔を出して見渡すと、視程は6マイル前後。霧だけが心配でしたが、どうにか出港できそうです。梅雨前線も、Kasayanの南下とともにゆっくりと南海上に下がる予想。午後から晴れ間も出そうです。さらにレーダーアメダスとアメダス風向風速を確認。九州の南部では一時間30ミリ前後のまとまった雨が降っていますが、瀬戸内海方面は雨の降っているところはありません。風も3メートル以内。文句なし!!

7時抜錨。底質が泥だったので、きっちりアンカーが効いて、なおかつ素直に抜くことができました。

大崎下島の南に沿って南西へ。安芸灘は空も海もすべて灰色に煙っていて、目標にしている5マイル先の斎島も見ることができません。迷路のような芸予諸島を抜けて久しぶりの広い海面ですが、少々おどろおどろしい。漁船を避けながら242度へ。8時半、斎島の西を通過。10時半のクダコ水道の転流時間にまにあうように逆潮にさからって7時に出港したのですが、対地速度はギリギリ4ノットをキープしている程度。島の周りではようやく見慣れてきた潮浪が沸き立っています。風は北。追い風ですが、転流に遅れないようにエンジン2800回転。

9時半、安居島通過。ぼんやりとクダコ水道のある中島が見えてきました。残り5マイル。どうやら転流時間に間に合いそうです。このクダコ水道は、大潮には5.4ノットで流れる海峡。GoldenWistaria号は機走でも6ノット弱しかでませんから、まともに逆潮につかまれば、まったく前進できなくなってしまいます。

11時、クダコ島よりも大きな自動車船の通過を待って、クダコ水道にはいりました。ようやく連れ潮に乗ることができ、海峡を抜ける頃には、対地速度7.4ノット。クダコ島の南の暗岩をさけて右転。梅雨前線に吹き込む北東風が吹き始めクオーターでエンジン半開、対地8ノット。島陰と海峡で風が息をするので、エンジンをニュートラにしたまま久しぶりにセーリング。狭く潮の早い芸予諸島ではセーリングができませんでしたが、久しぶりに帆走の安定感を満喫。

沖家室島の南を回りこみ、14時半、東安下庄港に入港。作業をしていた漁師さんに、水深のある停泊場所を教えてもらいちょうど干潮で4メートルの絶壁になった岸壁のはしごのある場所にスターンアンカー、バウ舫い。水面に余裕があり、チェーン4メートル、ライン28メートルを出してがっちりとアンカーを効かせることができました。

何処の漁港もそうですが、日曜日は商店街、農協、漁協の売店全て休業。寂しい町を散策。一軒の漁具屋が空いていたので覗いてみると、鉛でできた「釣鐘」と呼ばれる取っ手のついた分銅が売られていました。聞くと、網を沈めるためのもの。7キロで2000円でしたが、安下庄のお土産と、昨日落としたアンカーモニターの代わりに一個購入。鉛なので、非常にコンパクト。早速モニターに使いましたが、しっかりとアンカーラインを沈めてくれました。

明日は、早くも天気下り坂。前線上の低気圧が南寄りに進んでくれると良いのですが、北東の風も強まりそうです。ここまで4日間、連続でクルージングしてきたことと、今日の45マイル。体力の無いKasayanも少々疲れ気味なので、天気が悪化する前に、たった10マイルを走って、上関港に入港したいと思います。



安下庄港 停泊状況 アンカーラインがまっすぐに沈んでいます。

 

6月5日(月) 山口県 屋代島 東安下庄港 ⇒ 山口県 徳山市 競艇場横 フィッシャリーナ
疲れ気味でも、よく眠って、朝天気がよければ元気モリモリ。梅雨前線の微妙な位置で天気が決まってくるような状況での予報は、やはり直前の計算結果と、実況天気図、アメダスから判断するのが一番のようです。ほんの10マイル先の上関まで行く予定でしたが、一気に徳山まで足を伸ばすことにしました。徳山は工業港で本船岸壁しかないようなので、半島をはさんで東側のグリーン大和マリーナまで30マイルほど。

午前8時抜錨。またまたスムースに錨が上がりました。北東3メートルの追い風を受けて帆走。一路上関海峡へ。逆潮でしたが、10時には幅100メートル前後。上に橋のかかる上関海峡へ。瀬戸内海の海峡ではおなじみの潮浪がわいて、オートパイロットのエラーメッセージ。洗濯機のような潮の流れでは機械はまったく役立たず。転流時に近いので、10分ほどで海峡通過。海峡の脇に有る上関港も山と海の狭い平地にかわら屋根の家が立ち並び
素朴な雰囲気の漂う町。やっぱり立ち寄って見ようかという気持ちが湧き始めましたが、まだ10時半。少々遅れ気味のスケジュール。この先、梅雨の足止めをくらいそうなので、ぐっとこらえて先を急ぐことにしました。

長島と佐合島の間をぬけて周防灘へ。風は真向かいの北西。ジブを巻いてのんびりと機帆走。このあたりの漁船は夫婦舟。戦艦大和の故郷に近いからか知りませんが、船首に巨大な出っ張りのついた漁船は、ほとんどが夫婦で網を引いています。およそ2時間、遠くに見えた笠戸島が近づいてくると、島の北側の本州にかかる赤い橋が見えてきました。

光港の前を通り、笠戸島の橋をくぐると湖のような笠戸湾へ。目的のグリーン大和マリーナはその南側の入り江にあります。遠めに見ると、確かに「グリーン・・」の名にふさわしい何も無いところ。ふと湾の西側を見ると、競艇場の横の山添に家が立ち並び、白い灯台と漁港らしい防波堤。なにやらそそられるものがあってこの漁港を覗いて見ることに。マリーナはまだ予約の電話を入れておらず、できることならマリーナより人気のある漁港のほうが好きなKasayan。港湾案内には漁港とも何も書かれておらず、チャートにも防波堤だけ。測深器を見ながらゆっくりと近づくと、防波堤の向こう側にヨットのマストが見えてきました。

中は、最近はやりのフィッシャリーナ。モーターボートに人が居たので聞いてみると、どこでも空いているところなら留めていいよ!!!!とのこと。スターンアンカーで、桟橋に舫いを取りました。このフィッシャリーナ今年4月にできたばかりとのこと。正式名称を聞いても、停泊している本人も知らないとのこと。なんと大らかな!!!!!年間9万円で37フィートのヨットが停泊できるとのことでした。・・・・・うらやましすぎる!!!!しばらくして近くのヨットに人がきたのでご挨拶。とても親切に近くの健康ランドの風呂のこと、スーパーのこと、教えてくれました。また、釣えさを買いに行くついでに車で買い物に連れて行ってくれるとのお誘いも。このあたりでは、マリーナでもとても人情が厚いようです。

明日は、午後から南がやや強めに吹くものの、基本的には晴れ。ちょっと早めに出て南が吹き上がる前に宇部港へ着きたいと考えています。今日で6日間連続でクルージングしています。やっぱりちょっと疲れ気味かな?



上関海峡の入り口へ向かう

 

6月6日(火) 山口県 徳山市 徳山競艇場横フィッシャリーナ ⇒ 山口県 宇部港
今日で6日連続のクルージング。九州、四国が入梅しましたが、梅雨入り宣言が梅雨前線最北上の時に出されることが多いので、その後の梅雨前線の南下によって晴天が続くことは良くあること。昨日の計算結果では南風が若干強まる予想になっていましたが、朝の計算結果では風も穏やか、またまた絶好の機走日より。今日も「日本外洋機帆走協会会員」になりそうです。

午前7時、抜錨。湖のような笠戸湾はまるで大きな鏡のように静か。メインのみを揚げて機帆走開始。周防灘にでても、風浪一つたたない海面。天気は快晴、無風。エンジン回転数2800回転で対水速度6ノット弱。モーターボートだったら最高の日和といったところ。女房は日焼けを恐れてキャビンで読書、「菜の花の沖」。
行き交う船も無く、タダひたすらオートパイロットに進路を任せ、Kasayanは、英虞湾浜島港で230円で購入した麦藁帽子をかぶってボーッとワッチ。気温は10時にすでに30度。真夏・・・・・。

昨日までのように島の間を抜けるクルージングは、メリハリがあって飽きないのですが、広い海面をただただ同じ進路で走るのは同じ距離でも結構しんどい。

9時半、三田尻中関沖通過。まだ風は吹かず。自分の進路上にだけなぜか漁船がかたまっていたり、網のブイが浮いていたり、大きな流木が浮いていたりするものですが、三田尻から宇部の間はまさにその通り。広い海面があるのですが、なぜかKasayanが引いた進路上にだけ漁船。そして、発泡スチロールに竹ざおの立ったブイ。これで少しは気がまぎれるというものでしょうか?

宇部空港に着陸する大きなジェット機の下をくぐって宇部港入港。久しぶりに大きな工業港。宇部興産の巨大な工場が煙を上げ、砂の山があちこちに出来ています。その一番奥にある海上保安部の船だまりへ。漁船がとまっているのですが、もう一艘も入れないほどの過密状態。隣のマリーナは本日定休日。ウロウロと回っていると、作業服を着た20代の若者が手を振って岸壁を指示してくれ、もやいまで取ってくれました。久しぶりの岸壁横付け。干潮時に絶壁は必至ですが、静かそうな海面にこのまま横付けにすることに。

この若者、宇部のタグボートの船員さん。昔、ディンギーに乗っていたことがあって、今は、26ftのマクレガーが欲しいとのこと。しばらくヨット談義に花が咲きました。若者も人懐っこく、そして親切。

下の写真は干潮の絶壁。縄梯子の無いKasayan。もう船から下りることができません。夜の10時までは船に缶詰状態。テンダーを出せばよいのですが、疲れていて出す気もせず。

風呂にいかれないので、女房は船の流しで洗髪。この暑さなので逆に涼しくて良いとのこと。また、探検をしたくても不可能なので、昨日沢山買い入れた野菜と買い置きのコンビーフでポトフをコトコト。久しぶりに手の込んだ煮込み料理。晩飯が楽しみ。

明日もたぶん晴れ。ついに九州へたどり着くことができそうです



宇部港 干潮時の絶壁 縄梯子は必需品

 


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