/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/航海日誌(8)/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

【6月7日(水)〜6月13日(火)】

6月7日(水)  山口県 宇部港 ⇒ 福岡県 関門港 田野浦
昨日の気象庁予報では、南西が吹き上がる予想になっていましたが、今朝5時発表の予報では、吹き上がらない
方向に代わってきています。文句なしに九州へ向かうしかない。天気は勿論晴れ。夏の晴天が予想されています。
午前7時。干潮で、岸壁が絶壁になっているので、前日にロープを結んで作っておいた簡易縄梯子に女房をよじ登らせ
絶壁の上から舫いをといてもらいました。そして、対岸の浮き桟橋にとまっているモーターボートのところまで移動し
女房を乗せてようやく出港。

今日は、ほんの15マイル前後。この天気ならば関門海峡を越えて芦屋港くらいまでいけそうですが、潮の早い
関門海峡を前に心と身体と船の整備をと考えて、関門海峡の入り口関門港田野浦まで。久しぶりの晴天の休日。
田野浦は、高松のヨットハーバーに寄ったとき、JCNの会員でもあるM氏より教えてもらったところ。
本当は、新門司マリーナへ行く予定だったのですが、昨日電話をしたところ、昨年の台風でほとんど壊滅状態になって
とてもビジターを受け入れる余裕がないとのことで急遽田野浦に変更。

宇部沖は、昨日に引き続き、ほとんど無風。今日も外洋機帆走協会。
ただ、このあたりは、平均で10メートル前後の水深しかないので風が弱い割には波が立っています。
8時。小野田港への航路入り口通過。大きなクレーンを引いているタグボートを追い越し(たまには追い越すことも)
進路295度。関門海峡の入り口へ。

いよいよ九州へ、航路横断。関門海峡方面から巨大な自動車船と内航船が5隻。反対に関門海峡へ向かう船は、
巨大なコンテナ船と内航船4隻。計10隻もの船が、わずか1マイル前後の狭い航路を猛スピードで走っています。
おまけに海上保安庁の巡視船がうろうろ。船を留めてタイミングを待つこと10分。
エンジンが静かになり、女房がコンパニオンウェイに出てきました。
「船がイッパイ!!!!」と楽しそうですが、Kasayanは緊張の糸がピーンと張り詰めています。

この10隻がすれ違ったあと、少々船の切れ間がありそうです。関門海峡に向かうコンテナ船の船尾に向けて全速力。
コンテナ船の通過後、引き波にもまれながらエンジンフルスロットルで航路中央ブイを越えました。
一安心・・・・と思いきや、視程2.5マイルのもやの中からまたまた巨大な貨物船が2隻、関門海峡方面から突進してきます。
この2隻の船の間にはさまれるようにして並走し、2隻を交わしたところでようやく横断終了。
のどはカラカラ。狭く、航路が曲がった上に視程が悪く、慣れた東京湾浦賀水道航路よりも緊張した航路越えでした。
ホッとすると目の前は、関門港。いよいよここは九州です。
女房にブラックコーヒーを入れてもらい、乾いたのどを潤しながら田野浦の入り江へ侵入。
幅が80メートル、奥行きが500メートルほどの奥深い入り江で波も潮も入らない良い入り江。岸辺にそって漁船やプレジャー
ボート、作業船が並んでいます。その中にGoldenWistaria号と同じリベッチオを発見。
水深は絶対保証されたようなもの。その隣にスターンアンカーで槍付け。
わずか15マイルでしたが、非常にスリリングな航海でした。

昨日宇部であまり陸の探検ができなかった女房は、停泊後すぐに探検へ出発。これだけを楽しみにしているらしい。
Kasayanは船でエンジンの点検。・・・・「Kasayan」と呼ぶ男性の声。知り合いは居ないはずなんだけれど・・・・ハッチから顔を
出すと、以前HPを見ていただき、メールをいただいたN氏とのこと。和歌山マリーナシティーで妹さんにクラブの会報を届けてい
ただいた方でした。今日の入港予定をHPで見ていただき、来られたとのこと。船内で付近の情報、関門海峡の抜け方等、
綿密に教えていただきました。また、女房が探検から帰ってくるのを待って、関門橋の橋脚のところにある展望レストランへ連れて
行ってくださり、お昼をご馳走になりました。フグのフライ・・・・・・・・・・最高でした。本当にご馳走様でした。
またこのレストラン、関門海峡が一望できます。今日の関門海峡は、大潮でないにも関わらず、所々で白波が立ち、まるで川のよう
に流れています。また、右へ左へと大きな船から漁船まで一目30隻以上。少々、腰が引けているKasayanでしたが、N氏に海図
ではなく実物の海峡を見ながら航路を教えていただきました。
その後は、門司のレトロという町並みにドライブしたあと、再び船まで送ってくださいました。

N氏は、室津のフィッシャリーナにトンガ語で「風」という名前のヨットを置かれている方。
室津は、これから博多を回った後にお世話になる予定の港。
この先、N氏の仲間が大勢いらっしゃるこの港に入港するのがとても楽しみになりました。
そして思いもかけず、素晴らしい門司の休日を過ごすことができました。

もう少し門司に居てもよいかな・・・という気持ちになりましたが、明日後半から天気は下り坂。南東が強まる恐れ有り。
できれば大島、ダメなら手前の芦屋、最悪若松まで進みたいと思います。


関門港 田野浦 リベッチオ二隻が並びました。


6月8日(木) 福岡県 関門港 田野浦 日和待ち
今日の関門海峡西流の転流時間は11時。それまでは出港したくても出港できません。
玄海灘の玄関が開くのをひたすら待つのみ。

午前5時起床。九州の最大の目的地、博多を目前にして、天気の検討。
FXFE502、FXFE504というコンピュータの数値予報計算結果をダウンロードして解析・・・・するまでもなく今夜は
大荒れの大雨。午前中は晴れて夏の陽気ですが、午後からは急速に天気悪化。ということは、11時の転流を待って
出発すると、ちょうど玄海灘に出たところで、天気がどんどん悪化してしまうということ。
この時点で出発可能性40パーセント。

出発時間が遅いので、Kasayanの元同僚のお天気お兄さんが出演している朝の天気予報をテレビでチェック。
自分の解析と彼のコメントとのズレを綿密に確認しましたが、ほぼ同じ考え方。ただ、久しぶりに対面したような気がして
天気より、「太ったんじゃないかな?」「元気そうだな・・」などということばかりに目がいって半分は天気どころでは
ありませんでした。(後で彼とメールのやり取りをしましたが、決して太っていないとのこと。テレビは太って見えますから)
実は、博多で彼と会う約束をしているので、博多へ急ぐ気持ちが非常に強くなっていて、天気の解析にも今まで以上に
力が入ってしまうのです。

午前9時過ぎ。ラジオを聞きながらアメダスとレーダーのチェック。風はまだ強くなっていませんが、ばらばらの風向が次第に
南東に揃ってきています。またレーダーでは対馬の東側に強い雨域が観測されてきました。
この時点で、出発可能性20パーセント。芦屋、大島への出発をあきらめてせめて若松までとの可能性を模索。

そして11時過ぎ。やっぱりレーダーの雨雲は東へ進んでいます。そして風速も全体的に上がる傾向。
つけていたラジオから、以前勤めていた気象会社の長期予報の大御所のおじいちゃんの天気予報が流れてきました。
ラジオの前にかしこまって拝聴。「前線上を低気圧が進み、今夜には対馬付近を北東へ進むでしょう。南の風が強まって
雨は明日朝までに100ミリを越えるところも・・・・今後の情報に注意してください」
まるで玉音放送のように重々しく、Kasayanは完全に出港をあきらめました。出港可能性0パーセント。
若松まで行っても、停泊地の状況から考えて、夜中の強風に走錨を恐れてねむれないような状況は避けようと判断。

となると、午後からは門司の探検。昨日、車で案内していただいたので、状況は大方把握済み。
レトロと呼ばれる観光地まで3キロほど歩き、散策。おなかがすいたので、「一銭洋食」というネギとさつま揚げしかはいって
いないお好み焼きのようなものを食べました。200円也。非常に美味。

このあたりには、小売の市場が多く、中には間口が1間ほどしかない小さな魚屋や八百屋、惣菜屋が何軒も並んでいます。
珍しい魚がないか物色。鮫の湯引き、すずきの洗い、名物フグの湯引き、ブリの白子。珍しさと安さに見ているだけで
時間の過ぎるのを忘れてしまいました。

散策中、午後3時から門司でも雨。南東の風が強まって立木をゆらしています。
若松で停泊作業中にこれでは、結構しんどかったかな・・・・。

帰り道に銭湯へ。350円なり。午後4時の開店と同時で、一番湯を楽しみにしているおじいちゃん達で満員でした。

明日の前半も雨。昼までには回復しそうですが、西よりの風が強く吹く見込み。
昨日お会いしたN氏のお話では、玄海灘の西は波が非常に悪くなるとのことでしたから、もう一日、門司近辺を散策するか、
状況によって午後から若松まで進むか、明日朝の計算結果と実況で決定することになりそうです。


6月9日(金) 福岡県 関門港 田野浦 ⇒ 福岡県 関門港 若松
昔、北前船の船員たちは、神仏を深く信仰していて、その信仰心が遭難や漂流の時、生きるための原動力に
なっていたという話を以前本で読みました。Kasayanも今日の出来事に関しては、神仏を信じたくなりました。

昨夜、強い雨と南東の強風を吹かせた低気圧は足早に北東へ進み、梅雨前線はゆっくりと南下。
門司でも10時には雨がやんで、どうにか出港できる状態に。
アメダスを見ると、若干風向きは北よりに変わってきましたが、いずれも3メートル前後。
関門海峡、西流の転流時間12時45分の一時間前。11時45分抜錨。泥の海底にアンカーがしっかりと食い込ん
でいて、少々てこずりましたが、無事出港。

目の前の関門橋に向かって機走。関門海峡では、セールを揚げていると保安庁から注意を受けるという話を聞いて
いたので、セールは畳んだまま。そのため、狭い水道の巨大な引き波にローリングするばかり。
対地速度に気を使いながら関門橋の下を通過。まだ、東流の海峡は潮の波がまるで恐竜の背中のように湧いています。
スライドハッチから顔を出した女房「怖い!!!!!」。Kasayanも、結構腰がひけていましたが、ぐっとこらえて
「カメラ!!!」。橋の下からの写真撮影をして、余裕を見せます。

この橋のたもとには、布刈神社という海の神様が祭られていて、この潮の海に向かって参道と鳥居があります。
数百メートル離れたちょうど対岸は平家滅亡の壇ノ浦。いままでの航海と、これからの航海の安全を祈って手を合わせました。
勿論、ティラーは股間にしっかりとはさんでいます。

関門海峡航路の紅ブイに沿ってできるだけ岸よりを前進。宮本武蔵と佐々木小次郎が対決した巌流島を越え、
大きく北へ曲がったところで、真向かいの北風が強まってきました。すでに転流して、潮は西へながれているのですが、
対地速度は4ノット前後。・・・・・この先、芦屋までは15マイル。大島は25マイル。すでに午後2時近く。
関門海峡さえ抜ければ潮の時間をこんなに気にする必要はありません。そこでわずか10マイルですが若松入港決定。

製鉄所の煙突が立ち並ぶ深い入り江を入ること30分。若戸大橋をくぐってタグボートの止まっている新しい船だまりへ。
タグボートの会社へ行って停泊の許可を求めると、会社はウェルカムだけど港湾局に電話して欲しいとのこと。
港湾局に電話をすると担当者が席をはずしているとのことで携帯へ連絡待ち。

ガランと空いている岸壁に舫って連絡を待っていると、デイパックを背負った男性がやってきました。
このHPを見て、今日あたり沖を通るのではないかと双眼鏡で見ておられたとのこと。なんという偶然。
思わず嬉しくなってビールで乾杯。長崎と福岡でヨットに乗られているH氏。これから向かう福岡のヨットハーバーのことなど
丁寧におしえてくださいました。門司に続いて九州では連続の出会い。

そうこうしているうちに、港湾局の作業服を着た人が・・・・・・「上司に言われたんだけど、ここはヨット、留めてはいけないという
ことで・・・・」「北九州にはヨットを泊めるところはどこも無いから・・・・」
ゲゲゲゲゲ。入港前にあたりをつけておいた漁船だまりに逃げ込むしかないか・・・と思っていると、H氏が「知り合いの造船所
がありますので、連絡とりましょうか?」
まさに天からの声に聞こえました。
この出会いは、ほんの数時間前に手を合わせた布刈神社の神様のお導きだったのでしょうか。そう思わざるを得ませんでした。

そして、今、造船所の桟橋でパソコンを開いています。
H氏に心から感謝するとともに、帰港後、横浜を訪れるヨットのために自分は何が出来るだろうと考えるKasayanです。


関門橋とそのたもとの布刈神社 

6月10日(土) 福岡県 関門港 若松 ⇒ 福岡県 福岡市 福岡市立ヨットハーバー(小戸)
梅雨前線の位置は、昨日午後発表の計算結果より、若干南に下がっています。また、昨日17時発表の気象庁予報は
北東の風がやや強めに吹くことを予想していましたが、今朝の段階では特に強く吹くことは予想していません。
適度な北東風といえば、目的地の大島、博多方面に向かうためにはアビーム、ないしクオーターの絶好の風になるはず。
ひょっとしたら博多までいけるかもしれない・・・・・と思いつつ、夜明け直後の5時15分出港。

厚い雲に覆われ、灰色のもやに煙る製鉄所の煙突にそって玄海灘へ。久しぶりの外洋。うねりの無かった瀬戸内海とはうって
代わって、微風にも関わらずゆったりとした北からのうねり。
紀伊水道以来のうねりに少々緊張するKasayan。

強弱、方向定まらない風にメインのみで機帆走。大島と地ノ島にはさまれた倉良瀬戸を目指します。
気温18度。日差しはまったく無く、湿度はキャビン内で99パーセント。洋上は肌寒く、カッパのズボンにジャケットと手袋まで。

倉良瀬戸を10時に通過。まだ午前中で残り25マイル前後。ならばためらうことなく博多を目指すことに。
大島港は、日本海への北上時のために残しておくことにしました。

倉良瀬戸を出ると、東の風5メートルの吹きだし。ジブをフルに開いて帆走5ノット。さらにエンジンを半開で足して帆走6.4ノット。
逆潮ですが、対地速度は5ノットをキープ。
博多では、お天気キャスターをしている元会社の同僚に会う約束をしています。早く到着して、久しぶりに顔を見たいという、先を急
ぐ気持ちが身体を奮い立たせます。進路をキープするために全神経を集中。

相ノ島通過12時。風が落ちてきて、再びメインのみで志賀島の北を目指していると、一隻の赤いヨットが近づいてきました。
どうもこちらを目指している様子。速度を落として待っていると、なんと昨日若松でお会いし、バースのお世話までしていただいた
H氏。昨日の出会いも偶然の重なり合いでしたが、今日も絶妙のタイミングで再びお会いすることに。
まだまだ布刈神社の御利益は続いているようです。
ビデオとカメラを出して記念撮影。大きく手を振って分かれました。

そして、志賀島沖の浅瀬に気をつけながら福岡湾へ。
ぽつぽつと降り出した雨の中、能古島の西を通過して、14時過ぎに小戸の福岡市立ヨットハーバー到着。
次回出港予定の15日までの係留の許可を得ることができました。

対水距離53マイルは、オーバーナイトを除いて最も長いレグ。会いたい人がいるという状況では、思いのほか元気が出るもの。

夕方からは、迎えに来てくれた元同僚と、出港前にこれまた元同僚から託されたシャンパンで久しぶりの再会に乾杯。
夜は街に繰り出して久しぶりに、都会の夜を過ごしました。

これから14日までは、ここ博多でエンジン、そのほかの整備、補給を行うとともに、懐かしい人に会う予定。

14日まで、「今日のKasayan」はお休みさせていただきます。


6月11日(日) 〜 6月13日(火)
福岡では、オイル交換など船のメンテナンス、友人と会ったり、市内の観光など、のんびりとした時間を過ごしました。
また、福岡湾で友人夫妻とセーリング。昨年、Kasayanが仲人したS夫婦(人材不足)ですが、これをきっかけにヨットに目覚めたか?
もし、この二人が福岡のヨットスクールやクルーに応募してきましたら、是非よろしくお願いいたします。

 
S夫婦 ヨットに目覚めたか?


 

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