航海日誌 1

 

【4月19日(水)〜4月25日(火)】


 

4月19日(水)
夜から深い気圧の谷が接近し、風雨とも強まる恐れ。翌20日の荒天は確実。20マイル先の三崎に足止めされても仕方ないので。出航延期。

 

4月20日(木)
終日、横浜ベイサイドマリーナにて日和待ち。強い雨が断続的に降り続き、宵の内に止むが東強風が収まらず。
翌21日も、雨の予報。

 

4月21日(金)
終日、断続的に雨。北東強風。日和待ち。

 

4月22日(土) 横浜ベイサイドマリーナ ⇒ 三崎港
午前3時に南西の強風と断続的に降り続いた雨、そして船尾をせわしなくたたき続けていた波の音が止みました。気圧は1000Hpaを切っていますが、すでに下げ止まって一定。東の空に乱層雲、西の空は快晴。無風。月明かりで文字が読める程明るくなっています。・・・・・・・・FSAS(午後9時地上予想天気図)を取ると、南高北低方の気圧配置。高気圧の張り出しに伴い南西風が吹き上がってくることが予想されるため、午前中の三崎到着を考え午前7時出発を決定しました。


北東の風5メートル前後、沖の根のブイの西を通り、ポートタッククオーターで「海鹿島レース」のコースに従って観音崎をクリアー。風が南東に変わり、昨夜来の荒天のうねりが2メートル前後に高まります。クローズで登りきれる方角ですが、南西が吹き上がる前の到着を考え、フルメインの機帆走に変更。海上保安庁、東京マーチスの1655kHz風通報では、洲埼以北は全て北よりですが、大島はすでに南西に変わっています。10時過ぎに剣埼を交わし300度にて三崎港へ入港。入港直前、下田方面からの大きなうねりと、南西のブローが。いつものデイセーリングのコースですが、違った景色に見えたのはやはりこれから先への第一歩だったからかもしれません。

 

旧市場前に横付けすると、早速観光協会のおじいさんが停泊料3000円の徴収に・・・これが無かったら最高なのに・・すると領収書を書いているおじいさんの手から3枚の千円札が風に飛ばされて海上に。Kasayanの船では初の落水になりました。
船尾から足を伸ばし、夏目漱石氏がおぼれる前に救出。今後、落水防止祈願の儀式ということにしましょうか。

 

日誌を書いている今、港内でも結構波立っています。あすも南高北低。下田までは真向かいの強風が吹きそうです。明日は多分、マグロで一杯やって、早速の日和待ちとなりそうです。

三崎港 旧市場(現在は無い)前に係留

 

 

4月23日(日)
相変わらずの南高北低の気圧配置。寒冷渦が日本海にあって吹き込む南西風が強い。神奈川県西部、静岡県東部には、強風波浪注意報が発表されています。静岡県東部に強風波浪注意報がでるということは、注意報の基準から考えると、海上で平均風速15メートル以上が予想されているということ。平均で15メートルなので、瞬間的には20メートル以上の向かい風が予想されます。40マイルを超える航程をこの風をまともに正面に受けて走るのは、困難と考えて早朝5時の時点で、昨日の計画通り、早速の日和待ちになりました。


午前9時前後に弱い寒冷前線が相模湾を通過するはず。現在8時半をまわったところですが上空には雲が列をなして横浜東京方面に流れて行きます。早朝より風が強まっていて、港内でも風がマストをならし、波が船体を叩いています。ただ、気温は高く、朝なのにすでに22度。雲の間から初夏を思わせる日差しものぞいています。雨が続いたら、今度はせっかく晴れても向かいの強風・・・・・。つくづく天気の神様にもてあそばれています。
この風、午後には北西か西に変わるはず。明日、早朝からの10時間。穏やかになって欲しいと祈るのみです。今日午後、発表される計算結果(00Zといいます)で検討しますが、今回の航海の約束「がんばらない」を肝に銘じてマイペースで「待てば海路の日和あり」を実践したいと思います。

今朝は、三崎の朝市にいってきました。旅番組専門局といわれるテレビ東京が取材にきていて、パンチ佐藤がマグロの切り身を売っているオバちゃんにインタビューをしていました。まだまだ関東のど真ん中。早く関東圏を出たいと思うのですが、なかなか許してはもらえないようです。一日も無駄にしないようにと三崎にきましたが、ホームポートから目と鼻の先の港で日和待ちは辛い!!!!

 

4月24日(月) 三崎港 ⇒ 伊豆大島 波浮港
午後に神奈川、東京方面に寒気が流れ込み、局地的にな低気圧が発生することが予想されたので、三崎、下田間9時間の航程中に南西が吹き上がる可能性があると判断。石廊崎測候所の予報官に電話をして前日00Zデータの検討結果について相談してみましたが、やはり同意見。さらに、相模湾真中では、午前中から西風が10メートル以上も吹くとの見解を示してきました。多少疑心暗鬼な部分もありましたが、昨日三崎の岸壁から見た白波が脳裏から消えず、この際、大島経由で下田に向かうことにしました。三崎〜大島波浮港間30マイル。大島波浮〜下田26マイルで、トータル56マイル。三崎から下田まで直行すると47マイルですから、およそ10マイルの寄り道となります。でもそれぞれの航程を6時間ないし7時間以内で終わらせようとするのがこの作戦の目的。北日本を通過している今回の寒冷渦。Kasayanには、たちが悪そうに思えてならないのです。日の出前の午前4時半前後に出航すれば、南西が吹き上がる昼前にはなんとか入港が可能となります。
また、どっちみち26日(火)からは深い気圧の谷が接近するため、どうせ日和待ちするのなら、24日大島、25日下田と歩を進め、下田の温泉につかりなが疲れをいやすというのも悪くない・・・などという考えも。

午前4時薄暗い三崎港を出航。微風で風向がさだまりませんが、昨夜の名残の南からのうねりが2〜3メートル。久しぶりに外洋に出た実感がします。たった26ftのGoldenWistaria号は、ゆっくりとうねりを登ったり降りたりしながら、ひたすら方位205度へ。15マイルほど南下したところで、チャートに現在位置をプロットすると1マイル程東へ流されている様子。方位を225度に変針し、1時間後位置を確認するとちょうどオンコース。いつもの流れが今日もあるようです。また、対水速力は機帆走で5.8ノットは出ているのに、対地速度は4.5ノット前後。やっぱり今日も逆潮につかまってしまいましたが、風早埼をかわしたところで反流もなくなり波浮港入り口へ。気をよくして生まれてはじめて、ケンケンというものを流して見ましたが、初釣果は、ゴム手袋の包装紙でした。竜王崎を10時30分に通過。ここで、向かいの南西風が吹き上げてきました。再び逆潮がきつくなり、対地速度は一時的に2.7ノットまで下がる始末。近くで操業していた漁船が、集団で波浮港へ引き上げてきます。
ワンポイントリーフで8年ぶりに入港した波浮港は、ゴールデンウィークを前にしてガラガラ。なんと岸壁に横付けすることができました。

下田までの航程は今日より逆潮が強くなります。最高に運がよければ5時間。最悪8時間は覚悟しておかなければ。
あすも今日の作戦のように、風の神様、午前中はおとなしくしてくれるかしら。

大島波浮港で初めての横付け

 

 

4月25日(火) 伊豆大島 波浮港 ⇒ 下田港
昨日の午後、伊豆諸島北部には強風波浪注意報が発表され、大島の南側は15メートルを超える風に大きなうねりと白波が荒れ狂っていました。予想通り東京に局地的な低気圧が発生し、各地で雷雨。雷で災害も起こったようです。またこれに吹き込む南西風が関東の南の海上で大暴れ。この1時間前に辛くも大島波浮港に入港したKasayan.。丘の上に上り、新島方面を眺めならがホッと胸をなでおろしていました。
・・・・・・・・で・・・・・・・・下田へ向かうための「大島経由作戦」下田編。

午前3時起床。早速モバイルでアメダスの風向、風速調べ。昨日の南西風はどこにも見られず、関東の南部は全て北東風の場になっていました。そこで「出航決定」!!!
昨日、石廊崎測候所の予報では「西のち南西の風ややつよく」、大島測候所の予報では「北東のち南西の風やや強く」だったので、大島測候所に軍配があがりました。きょうは、昨日のような強い寒気はすでに北上しているため、大気は安定するはず。とはいっても
移動性高気圧の東進に伴って、やはり昼前後から南西風が吹き込みやすい傾向は確か。昨日ほどではないにしろ、午後になると10メートル以上の風が吹き上がる可能性は十分にあります。そこで、今日の作戦も遅くとも午前11時までに下田に入港するというもの。
ただ、このコースには黒潮の分流が流れ込んでいるため、逆流2ノット前後が存在する可能性あり。最悪の場合、対地速度3.5ノットで、到着時間11時で逆算し、日の出前の午前4時前後に出航することが必要になりました。

午前4時20分、日の出30分前、薄明るくなってきた波浮の港を、出漁する漁船の後を追ってそろそろと出航。朝日にに照らされて、利島、鵜渡根島、新島が赤く染まっています。また、はるか遠くには伊豆半島の高い山並みが浮かびあがりました。やっとクルージングの気分がでてきたのですが、北東の風は大島の影になってしまいほとんど無風状態。うねりだけ。メインセールのみで機帆走を始めましたが、早速逆流につかまって対水速度は5ノット以上なのに対地速度はたったの3.5ノット。そこで大島の岸よりに反流を求めて接近。10分間逆流につかまっては10分間開放されるという走りを2時間。ようやく大島の西側に出ることができました。しかし、ここからは、いよいよ本格的な逆流につかまってしまい対地速度4ノットをキープすることができません。おまけに石廊崎方面からは3メートルの大きなうねりが押し寄せてきてGoldenWistaria号をエレベーターのように上下させます。
このままでは入港時間が遅くなる・・・・・・と思っていると・・・・・・大島と下田の中間地点で、ようやく待望の北風が吹き始めました。どうやら伊豆半島方面の山々から吹き降りてくる風のようです。ジブセールを開き、ややのぼり気味のアビームで、今航海初のまともなセーリングが始まりました。たった26ftの小さな船ですが、対水速度、6.5ノットをキープ。ブローでは7ノットでうねりの上を滑っていきます。そのため対地速度も上がって、逆流に負けず5ノット!!。風に息がありますが、そんな時はエンジン半開を加えてやると、6ノットをキープしてくれます。

9時過ぎに下田港入り口の爪木埼灯台を視認。風が落ちてきましたが、ちょうど伊豆半島沿いを南下する流れをつかむことができました。10時20分入港、港内西部にある稲生沢川沿いに横抱きで6杯係留してあるヨットの一番外側に7杯目として横抱き。10年前に、鳥羽レース回航で入港して以来の下田、義経の8艘飛びならぬ7艘飛びで上陸することができました。早速、軽油の補給にポリタンクを海外旅行用カートにのせてガソリンスタンドへ。もうすでに南風が吹き始めていました。

今日の航海は実際の距離が26マイルのところ、対水ログを見ると35マイル。逆流によるおよそ10マイルの損。航程四分の三をキャビンで寝ていた女房に話すと、「マイレージカードならよかったね」・・・・・・・・・・ですと・・・。

 

下田の川留め 洗濯物を干す女房

 

 


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