地下室(地階の居室)の活用の仕方によっては、より豊かな、ゆとりのある居住空間を生み出すことが可能になります。今まで、あまり地下空間に暮らすと言うことは、あまり見られませんせした。しかし、平成66月の建築基準法改正により、一定部分を容積率の対象面積から除外できるようになりました。以下地下室のメリット・デメリット、法規制、留意点等について考えてみます

地下室のメリット・デメリット

長所

短所

備考

断熱性、保温性、遮音性、防音性において地上より優れている

換気、通風、採光等が確保しづらい湿度が高い(水が出やすい)

 

プライバシーの確保が可能

閉塞感がある(考え方によっては長所となりますが)

  閉塞感についてはドライエリア(からぼり)やトップライト、ハイサイドライト、吹き抜け等の利用で解消は可能、逆に地下室の活用によって豊かな空間を作り出すことが可能となります。

法的優遇措置がある(容積率の緩和)

施行費が高い(通常は地上部の2倍程度はかかると考えた方が良いでしょう)

容積率に余裕がない場合や高さ制限などにより規模が制限される場合、また近隣への配慮が必要な場合有効となります。

 

地下室の法規(概要)

容積率不参入の効果

述べ床面積の1/3までの容積が容積率算定において不参入となる。

例えば敷地面積100平方メートル、容積率100%の地域の場合その土地には100平方メートル(約30坪)の住宅しか建てられませんが、地下扱いの居室をとる場合50平方メートルまでの地下室を設けることが可能となります。合計150平方メートル(約45坪)

* 自動車車庫については地下室の容積率の緩和とは別に、延べ面積の1/5まで容積率算定から除外されます。

 

容積率不参入の対象

不参入の対象となるものは、住宅(共同住宅も含む)だけであり、店舗や事務所併用住宅においては、店舗、事務所等の用途部分は対象外となります。

 

容積率不参入の対象となる地下室

地下室の天井面が地盤面から1m以下にあるもの

<簡単に言えば1/3程度地盤に埋まっていれば地下扱いになります>

* 参考として建築基準法施行令に規定する地階とは「床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井面の高さの1/3以上のものをいう」

* その他傾斜地等では平均地盤面という概念があり、高低差3mごとに法規上の平均の地盤を任意に設定します。

住宅等の地階の居室について

建築基準法30条では原則は地階の居室は禁止されているが、居室の前面にからぼりを設け、また衛生上支障がない場合は地下の居室も可能になります.

*衛生上支障がないとは、採光の確保、換気の確保、火気仕様の制限、非難経路の確保、結露対策、排水措置等の検討が必要という意味合いです。

建設省(国土交通省)の通達の概要

からぼりの奥行き1m以上、かつ深さ(埋まっている部分)の4/10以上であること

からぼりの長さ2m以上かつ深さ以上であること等

その他衛生上支障がないことの細部の規定があります

 

地下室を作る場合の留意点

防水方法

* 地下室を作る場合、地下の水位や水はけに注意が必要とります、地下水位が低く水はけの良い場所では、簡易な方法として地下の外壁面に防水処理をし、同部分に砂利層や下層に自然に浸透させる部分を設ける等で対応は可能です。

* 水はけの悪い場所(一般的)では、2重壁や2重床を設け、万一の外壁面からの水の浸入に対処できるようにするのが一番である思います。

防湿方法

* 防湿・結露の観点からしても、2重壁をとり空気層を設け、更に断熱材を施行すれば断熱等の効果も期待できます。

* 地下では空気が滞留し、湿度も高めになりがちです、ドライエリアやトップライトから自然の換気をとりましょう

通風・採光

* 自然の通風・採光を確保することは、地下室の居住性や防湿の面からも有利になります。前述のドライエリアからの窓や地表面に出ている外壁面、天井のトップライト等を検討しましょう。最近では開閉式のトップライト等を数多く出ているので、採光だけでなく換気にも役立ちます。

* 通風を考えた場合最低2箇所は窓がほしいところです。

開放感・閉塞感

* 地下室を設ける場合、閉塞感のある空間は簡単に生み出すことが可能です。近隣から遮断された空間や都市から遮断された空間も可能となります。(この場合閉塞感ではなく、外部から閉じられた空間と言ったほうが良いかもしれません)

* 開放感としては、ドライエリアを大きくとることや、垂直の壁面ではなく、段上にしたり勾配をつけることも考えられます。また同部分に植栽を施すことも開放感の増大につながります。また縦方向の開放性としては、吹き抜けを設けることも、立体的な開放感を得るうえで重要です。

遮音性

* 地下に居室等を設ける場合、寝室等で使用する場合地上の居室と同様に採光等が必要となりますが、ゆとりのスペースとして利用する場合地下室の遮音の特性を生かした部屋の設置(音楽室やオーディオルーム、趣味室等)が可能になります。ただし大きな音を出すものに対しては、前述の開口部や給気口にも防音対策は必要になります。

機械設備・排水設備

* 地階においては地面という断熱材に囲まれているため、温度差が少ないことや遮音性に優れている反面、空気が滞留しやすく湿度や換気がししずらいことがあります。自然の換気や建築的な対処がしづらい場合は機械換気や空調の設置が必要になります。

* 窓のない居室については(音楽室等)常時換気や換気設備の騒音レベル、消費電力、耐久性等の検討も必要となります。

* 地階に部屋を設けるということは、雨水や湧水、水廻りを設ける場合は雑排水もポンプでくみ上げる等の措置が必要になります(傾斜地等で自然に排水できれば別ですが)大雨等の場合の雨水の浸入や逆流防止メンテナンスの方法等も考慮が必要です。

避難について

* 通常の階段からの出入り口のほかに、原則として、階段、タラップ、窓ドライエリア等からの二方向非難が必要です。

施行費について

* 今まで見てきたように、地下室を作ることは、前述の長所を得られることや、空間としての豊かさやおもしろさを創り出すことが出来る反面、設備面や施工時の山止めや残土処理、地下水の処理、防水対策、換気設備等が必要になり施工費てきには高くなります。しかしよほど条件が悪くなければ考え方や工夫次第でコストを押さえることも可能になります。地価の高い都心部では、容積率を超えて建築が可能な地下空間の有効利用は十分検討の価値があると思われます。

 

 <ホーム> <個人住宅目次ページ>
 

    
空間工房イアニス 一級建築士事務所  
                                                                      

最終更新日 : 2001/05/20