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| 次の日。 「いつまで寝ているの。もうそろそろ起きなさい」 ルールーに肩を揺さぶられるまで、眠り込んでしまっていた。 もうみんな朝食を食べているのよと言われ、慌てて起きあがり急いで支度をする。 やっぱり夜中に外へなんか行ったせいかしら、すでにお日様が高い位置にある時刻だった。 遅くに目覚めた私にルールーが「疲れていたのユウナ?」って心配されちゃった。 「う、ううん。そんなことないよ」 まさか夜中に一人で外に出ていたなんて言えないから、曖昧に笑って誤魔化しちゃった。 ルールーと並んで食堂のほうへ行ったら、もうほとんどみんな食べ終わっているところだった。 それぞれに「おはよう」と朝の挨拶を交わし、自分もテーブルに着いて朝食を取ることにした。 私の隣にはルールーとキマリ。向かい側にはワッカさん。その隣にティーダとアーロンさんが座っていたのだけど、夕べというか深夜の彼の様子が気になって見てみると…なんかね。眠そうに見えてしまうの。 キマリもワッカさんのいびきには大変だったろうとは思うけれど、キマリはワッカさんのいびきには慣れているから。 でもティーダのことはどうしても気になって彼のことを見ていると、何だか動きとかがしんどそうなの。 今までの旅の疲れとかがあってみんな早めにお部屋に入ったはずなのに、よく休めなかったのかしら。 それともやっぱり夕べ何かあったのかしら? 喧嘩…しちゃったのかな。アーロンさんと。 …駄目ね。 考えれば考えるほど、気になってどうしようもなくなってしまう。 それとなく様子を聞いてみようかしら。 どうしたの?って。 食事が終わってもみんな席を立たずに、久々の宿での休憩を味わっているようだった。 ルールーとアーロンさんはこれからの旅のこととかを話し合っているみたいだし、ワッカさんは何だかまだ夕べのお酒が残っているのか、今ひとつ元気が無いみたいだし、キマリはまだ食べている。 でもやっぱり私が気になるのはティーダの様子。 どうしてもつい彼のことを見てしまう。 そんな風に私が彼のことを気にしているのが伝わったみたいで、ティーダが顔を上げて私の隣へとやってくる。 「ユウナ、どうしたの?」って。 自分が聞こうと思っていた台詞を逆に彼に言われて、何となく慌ててしまう。 「えっ……あの、何のこと?」 「だってさ、ユウナさっきからなんかチラチラ俺のほう見てたじゃん。気になることでもあるのかなって。それとも俺に言いたいことでもあるわけ?悩み事とかあったら、言いなよ」 「う、ううん。悩み事なんかじゃないわ。あの…え…っと」 いやね。 ルールーにもよく指摘されるのだけれど「ユウナ、あんたって本当に隠し事が出来ない性格よね」って言われちゃうのよね。思っていることとかが、すぐに顔に出るって。 今もティーダに気付かれていたみたい。 ずっと気にしていてもしょうがないし、思い切って言ってしまおうかしら? 私の目の前では、ティーダが優しそうに笑っている。 「あ、あのねティーダ。悩み事ってない?」 「俺?」 私の言葉にティーダが意外そうな顔をする。 一回口にしたことだし、後はもう勢いのままに続けてしまう。 「だって君は千年前のザナルカンドからいきなりこのスピラに飛ばされてきたんでしょう?環境とかも違うし、周りは知らない人ばっかりだし、それに……慣れないガードなんかして気疲れしているんじゃないかって思ったの。ねぇ、遠慮なんかしないでね。君にガードして欲しかったのは私の我が儘みたいなものだし、無理なんかしてほしくないの。きついときにはそう言って」 思いつくままに言葉を繋げた私に、ティーダが一瞬虚を突かれたような顔をしたけど、でも直ぐに笑いながら私の肩を優しく叩いてくる。 「馬鹿だなぁユウナ。そんなこと気にしていたわけ?」 「えっ、でも…」 「ユウナの気の回しすぎだって。そりゃ確かにスピラは俺の生まれ育ったところからは、何もかも違いすぎて戸惑ったけどさ、ワッカやルールー、それにユウナが俺のこと仲間として向かえて親切にしてくれたじゃない。俺、けっこうそれで助けられているんだぜ」 「でも…辛くない?」 そういう私にティーダが苦笑いをしながら頭をかいていた。 「そりゃあまぁ…ガードとしてモンスターと戦うなんて、初めての経験でしんどいのは事実だけどさ。今はなんとか慣れたし、俺ってけっこう戦力になってると思わない?」 明るく笑ってくれるティーダ。 でも…でも…やっぱり私の頭の中には、あの夜の事が消えてくれない。 「ホントに無理しなくてもいいんだよ。だって夢にうなされるのって、けっこう自分でも気付かないところで体に負担がかかっていると思うんだ。だから私にだけでもうちあけて欲しいの」 夢に…という私の言葉に、ティーダが怪訝そうな顔をする。 「夢って、それどーいうこと?俺、うなされてなんかいないぜ」 「だって、私聞いちゃったんだもん。昨日の夜、ティーダ苦しそうな声出していたでしょう?なんか辛そうな息づかいとかしてたじゃない。最初、アーロンさんと喧嘩してたのかと思ったくらいだもの」 昨日の夜と言う私の言葉に、ティーダが意外なくらいに狼狽している。 「き、昨日の夜って…それ何時くらいの事言ってんの?」 「えっ?何時って…えっと…結構遅い時間だったと思う。私、夜中に目が覚めちゃって、ちょっとだけ表に出ていたの。そのときにティーダの部屋の方から声が聞こえたから、何だか気になっちゃって………」 「聞いたの?」 狼狽えた様子のティーダに、私の方がビックリしてしまう。 「う、うん。それで夢にうなされているんじゃないかって…」 私がそう言った瞬間、端で見ていて分かるくらいにティーダの顔がバッと赤くなった。 ?いったいどうしたのかしら? 私、何か変な事を言ったのかしら? 「あの…どうしたの?」 「ユ、ユウナ、聞いたって…どこまで聞いたわけ?」 耳まで真っ赤にして、しどろもどろになりながらティーダが聞いてくる。 「そんなはっきりと聞いた訳じゃなくて、よく分からなかったわ。ドア越しだったし…それが何か?」 よく分からないという私の答えに何故だかティーダがホッと息をつき、私のほうに笑いかけてくる。 「何でもないんだ。でもホントにユウナの気にする事じゃないんだって。俺は大丈夫だから」 ティーダ、無理してる? なんとなくそう思ってしまい、たまらずに彼の両手を握りしめていた。 「私じゃ頼りない?でも本当に君の力になりたいんだ。そりゃ私はアーロンさんやルールーみたいに大人じゃないし、気の利いた事なんて言えないかもしれない。それでも話を聞くことだけでも出来ると思うんだ。ねっティーダ?」 そんな私の言葉にティーダが困ったような表情を浮かべ、どうしてかアーロンさんの方に視線を移していた。 すると声をかけられた訳でもないのに、アーロンさんがこちらの方を振り返った。 二人が一瞬視線があって、どういう訳かティーダが小さく口の中で「ばか」って言ったのが聞こえたの。 思わず「えっ?何?」って聞き返しちゃった。 そうしたらティーダが慌てて「何でもない」って大きく首を振った。 どうしてアーロンさんを見てばか…なの? それともやっぱり二人で喧嘩でもしたのかしら?ああ、もう分かんない。 だからその疑問を口にしてみた。 「あのねぇ…もしかしてアーロンさんと喧嘩でもしたの?」 そんな私に、ティーダが違うと即座に否定する。 「だからそんなんじゃないんだって。(ここでティーダが私の後ろを見て)なぁ、ルールーからも何か言ってやってくれよ。俺、本当に喧嘩もしてないし、悩みなんかないんだからって」 えっ、ルールー? ティーダの言葉に思わず後ろを振り返って見れば、ルールーがいつの間にか私の後ろに立っていた。 「二人で何を深刻そうに話し込んでいるわけ?ああ…違うわね。端から見ると、ユウナがティーダを困らせているように見えるわよ」 ル、ルールーったら! どうして私がティーダを困らせなきゃいけないの? そうしたらティーダもルールーの言葉に大きく頷いていた。 「助けてよルールー。ユウナ、俺が何でもないって言っても全然信じてくれなくってさ。俺が夢にうなされているんじゃないかって、言い張るんだもの。その声だってさ、案外他の声とか聞き間違えたんじゃないのか?」 「そんな!間違えたりなんかしないわ!だって確かにティーダの部屋のほうから声がしたんですもの。夜中だったし、周りの声となんか聞き間違えようがないわ。それに、アーロンさんのティーダって呼ぶ声も聞いたから確かよ!」 私の言葉にティーダが妙なくらいに狼狽えている。 そして…ルールーは、顔つきが険しくなっていた。 「夜中?」ルールーが念を押す。 「うん」と私。 「どうしてそんな真夜中にティーダの声を聞いたのかしら?確か私たちの部屋とティーダの部屋とは離れていたはずよ」 「あっ………」 マズイって思った。 多分今の言葉だけで、勘のいいルールーはある程度察してしまったような気がする。 恐る恐るルールーの顔を見てみれば、心なしか目が怒っているようにも思えてしまう。 ルールーが私に詰め寄ってくる。 「ユウナ、夜中にどうしてティーダの部屋の近くにいたのか、そこで何を聞いたのか。包み隠さず、全部、言いなさい」 「………はい」 口調は静かなんだけど、有無を言わせない雰囲気。 こういうときのルールーには絶対逆らっちゃいけないって、経験で知っている。 で、しょうがないから全部話してしまった。 眠れなくて夜中に目を覚ましてしまったこと。仕方なく起きて、表に出ようとして途中でワッカさんのいびきが煩くて足が止まり、そのときティーダの部屋の方から声が聞こえて気になって部屋の側まで行きかけ、思わず中に入ろうかなとドアノブに手をかけたこと、(ここでティーダが妙なくらいに慌てていた)でも思い直してそのまま外に出たこと。 「外へ?夜中に?」ルールーの眉がつり上がっていた。 「う…うん」 それから暫く外へ出てお月様を眺めてボーっとして、また部屋に戻ったことを細かく全部話した。 「それで、全部なの?」 言外に隠していることはないのかと匂わせて、ルールーが私に言う。 「…うん」 困ったように指で額を押さえてルールーが私を見る。 「まさか夜中に起き出して外に出ていたなんて…いくら疲れていたからって迂闊だったわ」 「ルールーに余計な心配をかけたくなくて、こっそり抜け出しただけなのよ。危ないことなんかしてないわ。本当よ」 そんな私の言葉に、ルールーが困ったような笑みを浮かべる。 「そうね、ユウナは私のことを考えたかもね。まぁこの宿の側なら夜でも危なくはないとは思うけど…(ここでルールーが思わせぶりにティーダを見て)それでユウナが部屋に戻ろうと中へ入ったときにはもうティーダの声とかは聞こえなかったわけなのね?」 「ええ……」 私の答えにルールーがちょっと考え込む素振りを見せ、それからティーダに視線を移し、ため息混じりに言い出した。 「それでティーダは昨日の…夜のことをなんて言っているのかしら?」 「だからあれはユウナの勘違いなんだって!」 ここで今まで黙って私の話を聞いていたティーダが、突然言い出した。 「勘違い?」ルールーが言う。 「そうだよ。夢にうなされていたんじゃないかとか、悩み事とか抱えているんじゃないかとか言ってるけど、俺はホントーにそんなんじゃないんだから。ユウナの考えすぎなんだって」 「私が気を回しすぎなの?」 そんな…だってあの声は聞きようによっては苦しそうにも聞こえたのに。 それで気になってティーダの部屋の前まで行ったんですもの。 それをティーダに言ったら、彼の顔がまた赤くなっていた。 どーして? そんな私にティーダがしどろもどろになりながらもこう言った。 「あ、あのさ、ユウナが俺のことを心配してくれるのは有り難いんだけど、でも間違いって誰にでもあるじゃん。あの日、ワッカのいびきが凄かったんだろう?それでごちゃ混ぜになったのかもしれないし………」 「ワッカさんのいびきとティーダの声は間違えようがないわ」 だって二人の声は全然違うんですもの。どうしたって聞き間違えないと思うから。 私が向きになったのがティーダにも分かったみたい、困ったような顔をして口ごもってしまった。 一瞬の沈黙。 「俺のいびきがどーしたって?」 そこへワッカさんののんびりとした口調で話しに入ってくる。 「あんたが口を挟む事じゃないわ。いいから引っ込んでなさい」 容赦のないルールーの言葉に、ワッカさんが肩を竦めてティーダの方を見る。 「おお恐。いったいどうしたんだ?」 「う…ユウナが夜中に俺がうなされている声を聞いたっていうから…それで…」 「なんだぁ。お前、怖い夢でも見たのか?」 「だから違うって!ユウナの勘違いなんだって!」 「私、ホントに聞いたのよ!」 「あのさユウナ…」 「お前達………いい加減にしないか」 私とティーダとワッカさんが入り乱れて会話しているところへ、アーロンさんが呆れたような口調で割って入ってくる。 「ア…アーロン」 何故だかティーダがアーロンさんを睨み付けている。 …どうして? ティーダのそんな視線を気にもしない素振りでアーロンさんが言う。 「さっきから何か色々言っているみたいだが、もうそれくらいにしておけ。そろそろ出かける準備をして置いた方がいいだろうからな」 「…そうね。アーロンさんの言うとおりだわ。この話はこれくらいでいいでしょう。ユウナ、あんたもいい加減に拘るのは止めなさい、ティーダが何ともないって言っているんだから、だったらいいでしょう?」 ルールーまでも話を終わらせたがっているように感じてしまう。 私…そんなにティーダのことを困らせているのかしら?ただ心配なだけだったのに。 でもここまで言われたらもう何も言えなくなってしまう。 「はい…分かりました。あの…一個だけアーロンさんに聞いてもいいですか?」 「何だ?」 聞き分けの無い奴だって思われちゃうかしら。 でもこのまんまじゃ気になってどうしようもなくて、この胸のもやもやが晴れないままでいたくなくて、思い切ってアーロンさんに聞いてみようと思った。 「夕べ、ティーダはいつもと変わりありませんでした?私、彼のうなされるような声を聞いた気がしたんです。アーロンさん、心あたりありません?」 「ユ、ユウナ何言ってんだよ!俺は何ともないって言ってんだろ!」 私がアーロンさんに聞いたことがひどくティーダを動揺させたみたい。おかしいくらいに狼狽えている。 一方のアーロンさんはそれとは対照的に、いつも通りだった。(目が面白がっているように見えたのは私の気のせいかしら?) 私の問いかけに、ゆっくりと答えてくれる。 「いや…普段と変わらんぞ。いつも通りの反応だったな。夢にうなされていたとかもないはずだ。…夢も見れないくらいに熟睡したと思うからな」 アーロンさんの言葉に、なぜかティーダが真っ赤になっている。 「熟睡…ですか?」 変ね? アーロンさんまでもティーダがうなされていないって言っている。私確かにティーダの声を聞いた気が…と、ここで改めて夕べの事を思い出す。 そうよ。私が聞いたのはティーダの声だけじゃ無かったって事を。 それをアーロンさんに確かめてみる。 「あの…私、夕べアーロンさんが「ティーダ」って呼ぶ声も聞いたような気がするんです。それで私、きっとアーロンさんが夢にうなされているティーダに気が付いて起こしたのかしらって思ったんですけど………」 私の言葉にアーロンさんが首を傾げる。 「俺がティーダの名前を?」 「ええ、覚えています?」 それにアーロンさんが一瞬考え込み、やがて思い当たることがあったのか、軽く頷いていた。 「ああ…あれはただの確認みたいなものだ」 「えっ?」 何だか言っている意味がよく分からなかった。 「確認って…何をですか?」 「それはこのまま入れても………」 「うわーーーー!」 言いかけたアーロンさんの言葉を遮るように、ティーダが大声を出していた。 それはもう部屋中に響き渡るくらいに。 「ティーダ?」私が驚いたのは当然だけれど、ルールーやワッカさん、今まで私たちのやり取りを静観していたキマリすら驚いたようにティーダを見ていた。 驚く私たちを後目に、ティーダがアーロンさんの服の袖を掴み、彼を自分の方に引き寄せ小声でボソボソ何か言っている。…もっとも興奮しているせいなのか、かなり大きめな小声だった。 だから所々声が聞こえてしまう。 「何を考えてんだよ、おっさん!」とか、「バラすんじゃねーよ!」とか………。 どーいうことかしら? 「あの…アーロンさん?アーロンさんは夕べティーダのことを呼んでいたのは確かなんでしょう?それはうなされているティーダを起こすのじゃなくて、確認って……。意味がよく分からないんですけど………」 どうにも話が掴めない。 だからそれをアーロンさんに聞こうとしただけなんだけど、何故かティーダがアーロンさんを牽制するみたいに睨み付けているし、ルールーはそんな二人を見つめて盛大なため息を付いている。 もう体中疑問符だらけの私に、アーロンさんが答えてくれる。 「あれは…別に夢にうなされたんでも何でもない。お前が心配するような事じゃないから気にするんじゃない」 「そう…なんですか?」 「そうだって!俺がさっきから何回も言っているじゃんか。ユウナがさ、俺のこと心配してくれるのは嬉しいけど、気の回しすぎなんだって」 釈然としない私に向かって、ティーダが畳みかけるように言ってくる。 どうにもここで話を終わらせたがっているように見えるのは、私の考え過ぎかしら? 「じゃあ結局のところ、夕べのあの声って………」 私の疑問にティーダが一瞬困ったように口ごもる。 「あ…あれは……」 そこへアーロンさんがボソリとつぶやく。 「あれは別にうなされた声じゃなくて、むしろ気持ちが良くて出た声だから心配する必要は………」 「わーっわーっわーっ!!」 アーロンさんの声に被せるようにティーダが突然大声を出す。 みんなの目がティーダに釘付けになってしまう。 そんな私たちに気付いているのかいないのか、ティーダが顔を真っ赤にしながらアーロンさんの襟首を掴んで詰め寄っている。 「アアアアアーロン!何を言い出すんだよ!ゆ…夕べの事がユウナに知れたら…」 「すまん、口が滑った」 「あうっ!」 ちっともすまなそうじゃないアーロンさんの腕を捕まえ、ティーダが彼を引きずって部屋の隅っこへ行って二人で言い合っていた。………と言っても、ほとんどティーダが一人で怒っているのをアーロンさんが悠然と受け止めているといった感じだった。それに…心なしか、アーロンさんの目が笑っている…か、楽しんでいるようにも見えるのは私の気のせい? でも…いったいティーダは何をあんなに慌てているのかしら? アーロンさんも口が滑ったって言っていたけど、どこをどう滑ったのか私には今ひとつ分からなかった。 ルールーなら分かるのかしらと彼女の方を振り返ったら、何だか奇妙な表情を浮かべていた。怒っているような、情けないような…微妙な顔。 分からなかったのは私だけじゃなかったらしく、ワッカさんも眉をひそめ、ルールーの方を見ていた。 「なぁルールー…。アーロンさんのあの台詞…アレって……」 「ホントにもう、どうしようもないわね」 呆れたように肩を竦め、額に手を当て、ルールーが吐き捨てるように言った。 …っていうことは、ルールーは今のアーロンさんの言葉の意味が分かっているのかしら? 「あのねルールー……」私が言いかけようとしたとき、ワッカさんが何事か思いついたのかルールーに声を潜めて尋ねていた。 「あいつらのあの会話…まさか、まさか…だよな」 「ワッカ、それ以上はここで言っちゃ駄目よ」 何事かを言いかけようとしたワッカさんの腕を捕まえ、今度はルールーとワッカさんが部屋の隅っこへ行ってしまう。ティーダとアーロンさんとは反対側の隅っこへ。 ティーダとアーロンさんは相変わらず二人で話しあっているし、ルールーとワッカさんも二人で深刻そうなやり取りをしている。 時折ワッカさんの「嘘だろ!」「マジかぁ?!」なんて、素っ頓狂な声も混じって。 私一人、つんぼさじき。 気が付けば、隣にはいつの間にかキマリが立っていた。 チラリとキマリの顔を見る。 するとキマリが私に気が付く。 「どうしたユウナ」 ぶっきらぼうな物言いだけど、これはいつもの彼の口調。 だけど…やっぱりキマリも私と視線を合わせないようにしている。 だからつい言っちゃった。 「キマリ…私に何か言うことない?」って。 そうしたらキマリの耳がピクンと動いた。 それから狼狽えたような声。 「キ、キマリは何も知らない」一応は否定。 ふうん、そう。 でもね。何か隠しているのは分かるの。 だって表情が違うから。 みんなね、キマリの表情なんか読めない、何を考えてるのか分からないって言うけど、長いこと一緒にいるせいかしら、私にはよく分かる。 嘘を付いているときとか隠し事しているときなんか、キマリだって表情に出るんですもの。 たとえば耳がピクピクしたりとか、鼻がヒクヒクしたり、口の周りの髭が立ったりとかね。 今がまさしくそれ。 だからもう一度キマリに念を押してみたの。 「キマリ…私に隠し事してない?」 「キ、キマリは何も知らない。ティーダの体からアーロンの匂いがしたなんて、どういうことか分からない」 ? それって、どういう事かしら? ティーダとアーロンさんはまだ隅っこにいて話し合っているし、ルールーとワッカさんは今はどういう訳か、ワッカさんが頭を抱えて床にしゃがみ込んでいる。…何かショックなことでもあったの? すべてのことが夕べから始まっているような気がするのだけれど、どうしてみんなこんなになってしまっているのかしら? 私…のせい? 何か変なこと聞いちゃったの? 一つだけ分かっているのは、みんなして私に隠し事をしているみたいだと言うこと。 そうね…キマリも。 「キマリ…どうして私に隠すの?」 みんなからつまはじきにされているような気がして、ちょっぴり拗ねたい気分。 私に隠し事を指摘されて、キマリが慌てて首を振っている。 「キ、キマリはいつだってユウナの見方だ。か、隠し事なんてしない」 ふぅん。キマリって、やっぱり嘘が下手だわ。 「じゃあキマリ。どうしてキマリの背中の毛が立っているのかしら?」 「!」 あ、今度は尻尾まで膨らんでいる。 ………そうなのよね。 キマリってば、興奮したり何かに集中してると毛が立っちゃうの。 今もそう。全身の毛が立ってる。 …キマリの嘘つき。っていうか、みんなしてどーして私に隠すの? みんなのいぢわる。 ※ ※ ※ 結局のところ、その後チョコボイーターとの戦闘が始まって話しはうやむやになってしまった。 でもいまだに私にはあのときの説明はないまま。 おかしいわ。 最初はティーダの心配をしただけなのに、どうしてあんなもめ事になってしまったのかしら。 私、何も変な事を言った覚えはないんだけど………。 あの後暫くしてからルールーに言われちゃった。 「世の中にはね、知らなくても良いことがあるのよ」って。 どーいうこと? |
END |
| 後書き や、やっと終わった。 サイトを立ち上げてからは…ひのふの…うわっ七ヶ月。ようやく小説を載せることが出来ました。いくらとろくさいと言っても、これは遅すぎ。 おかしいな。予定では12月には小説は出来ているはずだったのに。 やっぱり…イラストと小説の両立はなかなか難しいです。特に並行して描けないというのが一番の難問。 イラストだったら二三本同時進行して描くのは平気なんだけど、小説では一切それが出来ないのです。 イラストを描くと小説が止まるし、小説を書くとイラストが描けなくなります。 小説は同人をやっていたころからそれなりに書いていました。でも猛烈にその当時から遅かったです。 書きたいネタはたくさんあるのだけれど、いかんせん書くのが遅いのです。 イラストもそうだけど、文章も書かないと書き方を忘れるような気がします。…ため息。 FFでの初小説、いかがなもんでしょうか。 |