その臀部の感覚に、真菜は背筋を凍らせる。
”痴漢..”

本能的にそう思ってしまった。
ただ、おそらく小谷の手の”はず”だった。

真菜は、自分の背後に小谷がいる事は解っていたが、先ほどの声だけで、振りむいて確認した訳ではなかった。
”そ、そこ駄目...”

多分、小谷の手だろう感触が、真菜の臀部の割れ目に達していた。
明らかに当たっているのではなく、上下に真菜の双丘の間を摩っていた。

真菜は、周りに気付かれない様に、首を軽く横に振り、拒否の態度を小谷に伝えようとした。
”やっぱり無理...”
真菜はそう思った。

一番辛いのは、本当にこの手が小谷の手なのかすら、確認できなかったからであった。
ただ、真菜の嫌がる素振りに答える事無く、その手は止まらない。
逆に、太ももの方までに達していた。

公衆の中で逃げる事もできない真菜は、どうする事もできなかった。

”えっ”
そんな中、その手はあろうことか、真菜の腰のあたりに彷徨っていたかと思うと、
真菜のスーツのタイトスカートのファスナーに伸びて行った。

電車の揺れと共に、真菜は背中側の自分のスカートのファスナーが
おろされて行く感覚を味わう。

”小谷さん..何処までやるつもり....もう無理!”
真菜は、小谷だろう手に、自分の手を軽くあてがい、拒否をする。

その時だった。真菜の耳元で小谷の声が聞こえる。
「手が邪魔。」

真菜は、その声が小谷の声だと認識すると、安堵してしまう。
小谷だろう手が、小谷の手という認識に変わったからだった。

ただ、その安堵と共に、払いのける真菜自身の手の力を緩めたのがいけなかった。
小谷の手は、スカートのファスナーから、真菜のスカートの中へ滑り込んでいた。

”す、スカートの中...”
真菜は自分の頭の中が真っ白になっていく感覚を覚える。
邪魔といわれた両手を吊革に戻し、小谷の言いなりになる格好だった。

自分のスカートの中の手が、真菜の内股を撫ぜる。
真菜は、背中に鳥肌が立つのを覚えた。


”もう...もう終わり。”
真菜は、必死に念じるが、小谷に通じる訳も無かった。
内股を撫ぜていた指が、上向きに変わる。

そこは、人前で触らせる場所ではなかった。
”だ、駄目。”
真菜は必死で太ももを閉じ、小谷の手の自由を奪おうとした。
ただ、その程度の力で男の握力には敵わなかった。

真菜は、小谷の遊びが、これほどの羞恥になるとは思っていなかった。

声を出しそうだった。それを我慢するだけでなく、
周りの視線に気付かれないように平静を装って立っていなくてはいけなかった。

太ももに必死に力を入れると、腰が揺れてしまい、周りに違和感を与えていまう。
真菜は、そう気付くと、小谷のなすがままに、身をゆだねるしかない。

必死に平静を装い耐える真菜と対象的に、小谷の指は遠慮をしなかった。
明らかなピンポイントを狙って、指がうごめく。

”我慢できない.....”
初夏の社内の熱気以上の汗が、真菜の額に浮かんていた。

そして、それ以上の滴が小谷の指の近くで流れていく感覚を味わっていた。

動いても、声を出してもいけない。
それどころか、表情も替える事ができないまま、自分自身を弄られる感覚。

真菜は、それを耐えるだけで必死だった。

”早く..駅に着いて!”
それだけを考える。

ただ、真菜の我慢を小谷は嬲る様に、真菜のストッキングに爪を掛ける。
電車の音にかき消された物の、小谷の指は、真菜のストッキングに穴を開けてしまった。

”それは絶対に駄目!!”
真菜は、周りを気にしながら、後を向き、小谷に避難の視線を投げようとする。

”酷い..”
一瞬、真菜の視線に小谷の顔が入るが、小谷は視線を合わせる事無く、赤の他人を装った。

あまり長く後を向く訳にも行かなかった。
直ぐ前を向く。

真菜が、諦めた事を悟ったのか、小谷の指は、直接ショーツに触れる。
真菜の目の前の女性は、本に集中しており、真菜の様子に気づいていない事が救いだった。

本に集中している女性に真菜は視線を向ける。
”何の本を読んでるのかしら...”
そんな事を考えないと、もう立っていることもできなかった。

小谷の指が、真菜のショーツの隙間を狙ってくる。
”心理カウンセラー入門..”

真菜は、席に座る女性が読んでいる本の題名に視線を送る。

”うっぐ”
心の中で真菜は叫んでいた。
表情は、何時もの冷静で清楚な顔を必死に保つ。
体が小刻みに震えそうになるが、理性で抑える。

小谷の人さし指が、真菜の溝を直接往復し始める。

真菜は、自分の視界が白くなってくる感覚だった。
「ガタン..」

電車が減速するために揺れた。
「あっ....」

小谷の指が、真菜の敏感な場所に当たって、思わす呻いてしまった。
その声か、電車の揺れか、本を読んでいた女性が視線を上にあげる。

真菜とその女性の視線が一瞬会う。
お互い気まずそうに直ぐその視線は離れるが、真菜は死にそうな羞恥だった。

自分の股間には小谷の指があてがわれ、その指を汚すほど濡れている。
そんな中で、同性と視線を合わせるのが恥ずかしかった。

「○×駅。お降りのお客様を先に御通しください。」
途中の停車駅に着いた。
その時、小谷の指がするりと抜ける。

”やっと終わった”
真菜は、そう思った。

途中駅にも関わらず、結構な出入りがある。真菜は小谷を探そうとするが、満員の荒波からか、周りに古谷の姿がなかった。
”ど、どこ行ったの?”
真菜がそう思った時だった。

先ほど本を読んでいた女性もこの駅で降りる様だった。
その女性の邪魔にならない様に、真菜が通路を開ける。その際、また視線が会った。

「すみません。」

そう言われると真菜は思った。が、女性の口からは別の言葉が出る。

「朝から、みっともないわよ。」
女性は、そう言い残すと、電車を降りていった。

”ば、ばれてたんだ....”
”も、もうこの電車には乗れない....”

真菜は羞恥で卒倒しそうになっていた。
一通りの降車が終わると、前以上の乗車だった。

真菜は吊革にも掴まれず、車両の奥に押し込まれてしまった。
”小谷さんは何処?”

真菜がそう思った時だった。
後から、自分の腰に手を廻してくる感覚があった。

「ばれちゃったね。」
笑いながら後から羽交い締めの様な格好で小谷が小声で話しかける。
真菜は、車両と車両を仕切るドアと古谷の間に挟まっていた。

真菜はガラス越しに古谷が笑っているのを確認した。

「笑いごとじゃないですけど!」
真菜は、ガラス越しに、小谷を睨む。

ただ、その視線の古谷の答えは、羽交い締めした手を今度は胸に差しのべる事だった。

「もう嫌。」
小さな声で、真菜は古谷に訴える。

ただ、小谷の返答は真逆だった。
「指がふやけちゃったんだけど。」

真菜は、それがどんな意味かを認識すると、俯くことしかできない。
古谷は、それを良い事に、ドアで死角になった真菜のブラウスのボタンに手を掛けた。

”み、見えちゃう。”
先ほどと違って、上半身で動く手は目立ちやすい。
真菜は、先ほどと違った羞恥をあじわらされる。

ただ、左右の乗客は背を向けており、背後は古谷だった。
ばれるとすると、2m位先の、前の車両でガラスに向き合っている若い学生だった。

学生は今の所、ゲーム機に夢中になっている。
ただ、既に真菜のブラウスのボタンは突破され、小谷の左手が、真菜に差し込まれている。

そして、真菜の右胸を覆っていた。

”視線向けられたら、ばれちゃう...”
真菜は、学生の視線を機にしながら、胸を弄られていた。

”えっ”

真菜は、羞恥に耐えていたが、小谷のもう片方の手が自分の背中に向かって驚いていた。
ブラウス越しに古谷の指が、ブラのフォックを狙っていた。

”駄目!!!”
真菜は小刻みに首を横にふる。
ガラス越しに古谷と視線が合い、必死で睨むが、小谷は笑って簡単にフォックを外した。

”ぬ、脱げちゃう..”

真菜の心配を他所に、小谷の左手は、器用に真菜のブラをずらした。

 

三話に続く