●大脳
@ 大脳は、脳の大部分を占め、左右半球からなっている。
A 大脳半球は、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉の4葉に分けられる。
B 大脳の表面は、大脳皮質という神経細胞体の集まる厚さ数mmの灰白質で覆われている。
C 大脳皮質障害に見られる局所徴候(巣症状)は次のうようである。
中大脳動脈の支配領域 前大脳動脈の支配領域 前頭葉 ・精神障害(知能低下・人格崩壊・自発性低下)
・運動失語(ブローカ失語−言語理解は可能だが、発後の障害が強い)
・異常反射(吸引反射・にぎり反射・交叉屈曲反射)
・錐体路症状(運動領野障害)
頭頂葉 ・皮質性感覚障害:二点識別・立体覚等の複合感覚障害・構成失行
・(劣位半球)失認:左方の空間や身体失認・病態失認
・ゲルストマン症候群(優位半球角回領域の障害)
⇒手指失認・失算・失読(頭頂葉性失語)・失書
・同名下1/4半盲または対側下1/4半盲
後大脳動脈の支配領域 側頭葉 ・精神運動発作(別名、側頭葉てんかんという)
・性格変化(粘着性と爆発性)、異常行動、感情鈍麻
・記憶障害(健忘症候群)
・クリューバービューシー症候群、性的行動増加、幻臭、
聴覚異常
・感覚失語(ウエルニッケ失語−よく喋るが、言語や文字の理解障害が強い)
・同名上1/4半盲
後頭葉 ・対側の同名半盲(黄班回避(+))、幻視
・視覚失認(後頭葉性失読)
・両側の障害時にアントン症状(病態失認)、皮質盲
※中大脳動脈は内頸動脈・前大脳動脈、後大脳動脈は椎骨動脈より分岐する。
※2点識別:2つの皮膚を同時に刺激し、2つの刺激があると識別できる能力をいう。
D 大脳皮質の内部は、その大半を新皮質が占め、それ以外の部分は大脳辺縁系に属する旧皮質である。
E 大脳の新皮質は部位により、運動野、感覚野、連合野がある。
F 体の運動を指令する運動野は中心前回に、体の感覚を司る体性感覚野は中心後回にある。
G 視覚野は後頭葉に、聴覚野は側頭葉にある。
H 連合野は、運動野と感覚野の間に広がり、感覚と運動の連絡や統合を行っている。
I 側頭葉の内側面にある海馬とその周辺が、記憶保持や想起を調節している。
J 大脳皮質の下には神経線維の集まった白質が存在し、さらにその内部には大脳基底核という神経細胞体(灰白質)の塊がある。
K 大脳皮質から脊髄に向かって下行する運動経路のうち延髄錐体を通過する経路を錐体路、それ以外の下行性運動経路を錐体外路という。
錐体路障害と錐体外路障害は、次のようである。
  錐体路障害 錐体外路障害
障害部位 大脳皮質(運動野)、内包
大脳脚、橋底部、脊髄側索等 大脳基底核(尾状核、被殻、
黒質、赤核等)
運動障害 筋萎縮を伴わない痙性麻痺 不随意運動(振戦、舞踏病等)
筋力低下はあるが麻痺はない
腱反射 亢進
正常
病的反射 バビンスキー反射など ―
表層反射 腹壁反射(-) 正常
歩行 はさみ歩行、円弧歩行 小刻み歩行(パーキンソン病)
歩行障害のいろいろ
  特徴 障害部位  
痙性対麻痺歩行
(はさみ歩行) ● 尖足で歩行し、両膝をするように歩く ● 両大脳半球・脳幹・脊髄側索における両側錐体外路
パーキンソン歩行
(小刻み歩行) ● 前かがみ、小刻み、手をあまり振らない
すくみ足、進行すると加速歩行、突進現象
● 錐体外路障害
● 鶏歩行
(垂足歩行) ● 垂れ足になり足を高く持ち上げつまさきから投げ出すように歩く ● 下肢運動ニューロン(腓骨神経麻痺)
動揺性痺歩行
(トレンデレンブルグ歩行)
(アヒル様歩行) ● 左右に腰を揺すって歩く
(膝伸展制限) ● 肢体筋の障害
[失語・失読]
@ 品ものを見てもその名称が言えない場合は、失語・失認・構音障害が考えられる。
A 失語とは言語の理解と生産における高次昨日障害をいい、読字・書字・計算も通常障害される。
B 失語にはブローカ失語とウェルニッケ失語がある。
C ブローカ失語では非流暢型で発後の障害が高度であるが、言語や文字の理解障害は軽い。ウェルニッケ失語は、流暢でよく喋るが理解障害が強い。
D 失認には視覚失認があり、視覚障害によらない対象認識の障害をいう。
E 構音障害は、言語の理解・喚語は正常であるが、構音が不良なものをいう。
F 失読では、書かれた文章が理解できなかったり、読めなかったりする。
(失語・失読等は、ずべて優位半球の障害(通常は左)で起こる)
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