屋久島フィールドワーク講座
「鳥の暮らし」

参加者: 名倉京子、斉藤亜矢、猪飼京子、足立 隼

講師: 上田恵介、野間直彦、早石周平

目標
1. 類群集の調査に使われる「ラインセンサス法」を習得し、環境による鳥の生息密度の違いを比較する。
2. 観察に基づいて、利用場所や餌、種子散布を通した植物との関係など、鳥類の生活のさまざまな側面を考察する。

調査日程と場所
7月23日 スギ林と照葉樹林との移行帯(標高1000m付近)でのラインセンサス調査
7月24日 照葉樹林(標高200m付近)でのラインセンサス調査
7月25日 照葉樹林(半山地区、標高200m付近)でのラインセンサス調査
 およびテーマ研究
  記録される鳥の時間帯による違い(猪飼)
  道路の拡幅工事をした所としていない所での鳥類群集の比較(名倉)
  アカメガシワ種子の利用(足立)
  アコウ果実の利用(斎藤)

方法
 ラインセンサス法により、定められたルートを片道1時間を目安に往復し、その総計を調査範囲に生息する鳥の数と考えた。ラインセンサス法とはある一定の速度でルートを歩き、観察半径内で目視または音声情報で半径内に入ったと思われる鳥の種類と数を記録していき、集計する方法である。今回は時速約2km観察半径は25mで調査を行い、移動距離は地図上で測定した。このようにして求めた種別の生息数を、全観察域の面積で割って生息密度とした。面積は歩いた距離×25×2+起点・終点分の半径25mの円の面積で考えた。

調査
7月23日 大川林道終点北の移行帯林内(標高1000m付近) 11:24-14:41
大川林道終点付近の林道沿い(標高1000m付近) 14:50-15:20
7月24日 西部林道の林道沿い(半山地区、標高200m付近) 5:40-8:11, 10:50-12:30
7月25日 西部林道の林道沿い(半山地区、標高200m付近) 5:40-7:25,
その後テーマ研究
  天候は全て晴。


報告1 大川林道1000m付近における林内と林道での生息密度の比較

<林内>
スギ、ツガ、ヒサカキ、ヤマグルマ、ウラジロガシなどの目立つ以降帯の二次林で、コケやつる植物などの着生殖物が多く見られる。大木が密に存在するので、林内は日陰が多い。尾根を歩いたり、沢を渡ってセンサスした。

<林道>
 道路(未舗装)の両側は伐採後の二次林が続く。スギやツガの幼木など、低木層とブッシュが多い。斜面上側は法面、下側も崖のようになっていて、全体によく日が当り、視界が開けている。
 結果は図1のようになった。林内ではヤマガラの個体数が多かった。親子やつがいと思われる2羽ぐらいが共に飛翔しているのも何度か見られた。止まり木としては、カラ類ではスギやサカキ・ツガなどが、メジロではウラジロガシやアカガシが、それぞれ多かった。林道では、道沿いのブッシュの中でウグイスの囀りが多く聞かれた。それ以外は鳥の種類も数も少なかった。

<考察>
 林道では林内に比べて明らかに鳥の数も種類も少なかった。生息総密度では10倍もの差があった。主な原因は、その環境の違いであると考えられる。林内では葉のよく茂った高木が多いため、種子や小さな虫などの餌となるものが豊富にあり、また、外敵からも身を隠しやすい。一方、林道のように視界の開けた場所では外敵にも狙われやすく、手頃な止まり木が少ない。ただし、例外的にウグイスは林道付近での方が多く記録された。伐採後にできた草やぶが多く、ウグイスの巣があったためではないかと思われる。ウグイスは、餌もやぶの中で虫などを取り、あまり着の上のほうへは上がらないようだ。一度オスとメスらしい地鳴きが同じやぶの中から聞こえ、少しバタバタ音がしていたが、何をしているのか確認することはできなかった。
 林内と林道とでこれだけの差があった理由として、もうひとつ、時間帯の違いを考慮に入れなければならない。一般に、低地で時間帯による鳥類群集の比較をした際にわかったように、早朝のほうが鳥の動きも活発で、声もよく出ている。代謝の割に体が小さいのですぐにお腹がすき、朝になると真っ先に餌を探し始めることがその理由である。


報告2 移行帯林と照葉樹林での生息密度の比較

結果は表1のようになった。
表1 移行帯林と照葉樹林での生息密度
種類 N 移行帯林での生息密度(/ha) N 照葉樹林での生息密度(/ha)
ヤマガラ 26 6.6 5 0.8
ヒヨドリ 0 0 12 1.9
ヒガラ 7 0 0 0
メジロ 5 1.3 6 0.9
コゲラ 2 0.5 4 0.6
キビタキ 1 0.3 1 0.2
ウグイス 1 0.3 0 0
カワガラス 1 0.3 0 0
ハシブトガラス 0 0 1 0.2
アオゲラ 1 0.3 0 0
カラスバト 1 0.3 0 0
アカショウビン 0 0 1 0.2
総計 45 9.9 30 4.8

 一方の林では1個体のみ確認していてもう一方では確認していない種は、いるかいないかの議論からは外して考えてみると、ヤマガラの生息密度は移行帯林では照葉樹林での9倍近くになっている。これはヤマガラの確認時間が移行帯林と照葉樹林では少しずれているために、移行帯林では活発に鳴き出したヤマガラの影響を受けているからかも知れない。また、照葉樹林に比較して移行帯林ではゆっくり歩かざるを得なかったことも考えられる。ヤマガラは昼間にはあまり鳴かない、もしくは暑い場所にあまりいないので、冷涼な環境での活動のしやすさがより多くのヤマガラの発見につながったのかも知れない。ヤマガラが移行帯林の方で多い理由として、ヤマガラに適した餌がより豊富である、巣の材料としてのコケが豊富である、移行帯林内の方がより開けていないためにヤマガラが活動しやすい、スギやツガ林のためにヤマガラの生息できる範囲が上方にも広く、結果として生息密度が広くなるなどのことが考えられるが、ヤマガラを1羽ずつ追跡したり、さらに上層部の鳥の分布を調べてみないとはっきりしたことは分からない。

 ヒヨドリは、照葉樹林では最優先種だが移行帯林では全く見られない。ヒヨドリの観察率の高さや、昼間に鳴く割合の高さからみて、移行帯林にヒヨドリが生息していない可能性は非常に高い。大川林道の標高1000m付近でもヒヨドリは見られないが、800m付近の一部スギが混じる照葉樹林帯では観察できたので、針葉樹林帯に移行していくことがヒヨドリの生息域に大きな制限を与えている可能性がある。一つにはヒヨドリの主食となる果実の絶対量の少なさと、その他採食する植物質や動物質の物の絶対量の少なさがヒヨドリの生息域を低地部に限定しているのかも知れない。ヒヨドリの食物となるサカキ、ヒサカキなどは生えているが、このことは移行帯林内では果実期が下部の照葉樹林帯のように連続していないことから今の時期にいないことが言えるかも知れない。この場合、果実が熟している時期には少しはいてもよいように思われるが、今回の調査だけではなんとも言えない。また、ヒヨドリは主に樹冠部で観察されたが、林内ではメジロのような小さい鳥やサルの方が移動しやすく中低木の果実を採りやすいためにヒヨドリが追い出されているのかも知れないが、同じようなものを食べるカラスバトは生息していることから単純に大きさだけの問題ではなく、歩き方なども関係するかも知れない。また、カラスバトはあまり群れていないが、ヒヨドリは少数を単位に行動していても行動圏どうしがかなりまとまっていて何らかの形で同じ場所にまとまって生活するように認識しているのかも知れず、食物の少なさで多数が同じ所に生活できないために移行帯林内にいないのかも知れない。さらに、ヒヨドリは樹冠部にいることが多いが、カラスバトは暗い林によく生息するので、ヒヨドリはカラスバトに比べて暗いところではよく目が見えず、食物の少ない林内ではいないのかも知れない。さらに、ヒヨドリは樹冠部によくいて、昼間も比較的活発に行動することから、暑いところを好む傾向があると思われる。この場合、移行帯林内にいないのは留鳥性のヒヨドリが飽和状態に達していないためと考えられる。ただ、温度条件は、この地域よりもより低い温度条件下にあると思われる落葉樹林帯でも夏にはヒヨドリは生息していることから、この場合は大きな制限要因ではないかも知れない。落葉樹林に住むヒヨドリと屋久島のヒヨドリの性質が異なることは考えられる。風条件も、調査域よりもさらに強い風が吹きそうな800m付近の尾根上でもヒヨドリは生息しており、また調査域には風のあまり吹きそうにない谷陰もあったので、これが制限要因になることは疑わしい。湿度条件は関係するかも知れないが、よくわからない。移行帯林と照葉樹林での食物の種類や量の違い、ヒヨドリの好み、ヒヨドリの行動、体の機能や心理、また九州や台湾の山麓のヒヨドリとの相似点や相違点を調べる必要がある。

 ヒガラは移行帯林には多いが照葉樹林では全く観察されなかった。このことは、大きさの近いヤマガラは照葉樹林でも見られたことから、ヒガラの針葉樹林に対する選択性によるものかも知れない。ヒガラの主食である昆虫が針葉樹にのみ生息するとか、ヒガラは果実は針葉樹の毬果しか食べないことが考えられる。ヤマガラが照葉樹林にも住めるのはヤマガラのみが食べられるエゴノキの実が豊富なこと、シイ類が生えていること、ヤマガラの食べる昆虫が生息していること、ヤマガラは種子を貯蔵する性質があるため食料的に悪い環境でも生息できることなどが考えられる。林内であるか林道であるかというのは、大川林道沿いでもスギやツガのあるところにはヒガラが観察されたことからそれほど関係ないと思われる。

 メジロは移行帯林と照葉樹林でどちらが多いのかはこの調査の精度では分かりにくいが、あまり変わらないと考えられる。メジロは朝には樹冠部に群れて止まっていることも観察されたが中層部に止まることも多く、両方で採食が観察された。何を食べていたのかは不明のことが多かったが、かなり広い範囲の木の高さで生活していることが伺え、虫や果実、蜜などの食物の種類もバリエーションが高く、従って両方の林内で生活できるのかも知れない。

 コゲラやキビタキも移行帯林と照葉樹林では大差がなかったが、これは食べられる虫が両方の樹林に質的に同じくらいあり、コゲラの場合は巣となる枯れ木が、キビタキの場合は採餌できる高木が同じようにあるからかも知れない。両者の生息密度が他の鳥より低いのは、食物を主に虫のみに頼っているからかも知れない。

 カワガラス、ハシブトガラス、アオゲラ、アカショウビンが共通して少ないのは、動物質のものの量に対するこれらの鳥の相対的な大きさによるものかも知れない。ウグイスが少ないのは、ブッシュがあまりないために巣が作れないことや、日当たりのよい地表近くの虫を食べるからかも知れない。カラスバトの少なさは、その大きさとヒヨドリほど食物のバリエーションが豊富でないためかも知れない。移行帯林でも照葉樹林でも生息密度がそれほど変わらないのは、共通の中低木の果実を食べているか、食べられる虫や果実の質が移行帯林と照葉樹林ではそれほど変わらないからかも知れない。また、移行帯林ではヒヨドリがいないために底上げされているからかも知れない。

 総生息数で考えてみると、生息密度は移行帯林の方が圧倒的に高い。時間帯によるずれを考慮して、移行帯林の往路と照葉樹林での復路のみで比較してもそれぞれ3/haと1.5/haとなり、移行帯林の方が生息密度は高い。ヤマガラやヒガラに対するヒヨドリやメジロの記録率の高さを考慮すると、その差はさらに開くかも知れない。移行帯林の方の生息密度が高くなってしまった理由として、一つには照葉樹林の林道の方では南の空に向って開けてしまっていて日当たりのよい場所が多く、ヤマガラなどの活動があまり活発ではなく記録できなかったからかも知れない。実際に、昼間の林道では谷間や北の斜面に記録点が集中する傾向が見られる。また、移行帯林内でも北の斜面の方が記録数は多い。移行帯林の方はセンサスのルート全てが谷間にあり、また涼しい林内を歩いていたために記録された個体がフルカウントに近くなったのかも知れない。この効果を除くためには、通るルートの地形的な性質を同じようにするか、もしくはさらに広い範囲や複数の場所に渡ってセンサスする必要がある。照葉樹林では朝の記録数は非常に多いので、実際の生息密度を考えるにはこちらの値を基準にして考えるのが妥当と思われる。ただ、鳥が実際に移動している可能性もある。ルートの入組み方の違いや観察半径の重なりが調査面積や記録に影響を与えていることや、移動速度の違いが記録率に影響していることも考えられる。





報告3 西部林道における、ラインセンサスで記録される鳥の時間帯による違い

 結果は図2のようになった。西部林道はヒヨドリ、ヤマガラ、メジロが優占している。またキビタキとヤマガラは幼鳥も確認されたので繁殖していると考えられる。早朝は11種64個体、日中(午前中)は7種30個体と、早朝の方が種類数も個体数も多い。また早朝にメジロがアカメガシワの種子を食べていたこと、早朝の方が日中より摂食しているのを多く目撃できたことにより、鳥は早朝に摂食していると思われる。アカショウビンは早朝より日中の方が生息密度が大きい。早朝、谷の方から地鳴きが聞こえてきたので、早朝は標高の低いところにいて、昼に高いところへ上がってくるのかもしれない。キビタキが止まっていた枝からチョウ目の幼虫(青虫)が落ちてきた。これは幼虫が鳥から逃げるために枝から落ちる防衛行動ではないかと考えられる。

報告4 アカメガシワ種子の利用

<目的>
アカメガシワの果実の裂開状況とその変化を調べ、食物資源としての価値を調べる。
調査日 7月25日

<方法>
 特定のアカメガシワの木(西部林道の標高180m付近で、ラインセンサスのコースの終点にある。)全体の花序数を観察できる3本の幹の花序数から予想し、そこからその木の全種子数を予測した。一つの花序にいくつのさく果がついているかは、採取した5つの果序から予測した。一つのさく果には3つの種子が入っていると仮定した。また、結実状況は花序によって大きく異なるので印象のみを記述した。
 さらに、18日後に京都に無事持ち帰れた花序の中からまだ開いていないさく果を数え、果実の熟する速さを考察した。
 
<結果>
 観察された3本の幹についていた花序数は、それぞれ71、49、33であった。一つの幹に平均して51の花序があるとして、全部で6本の同様な幹があるので、全部で306の花序があるとした。また、採取した5つの花序のさく果数は以下のようになった。
 地上2mから採取:さく果数23、全て熟していた
 地上4mの幹近くから採取:さく果数20と21、うち熟していたものは両方とも3
 地上4mの枝先から採取:さく果数19、全て熟していた
 木の叉に落下していたもの:さく果数23、全て熟していなかった

 これより、一つの花序に21のさく果があるとして、木全体で6,426のさく果があるとした。種子には矮小なものや脱落したものもあったが、一つのさく果に3つの種子がついているとして、木全体では約2万の種子が残っていると推測できた。
 結実状況は、印象としては地上4m付近の外に張り出している枝先では60%ほど、幹近くでは20%ほどだった。一方、京都まで持ち帰れたさく果81個のうち、まだ裂開していないものは6個だった。もともと105あったうちで裂開していたものは48あったので、
 81-6-48×81/105=37.0...
となる。これが18日の間に裂開したさく果とすれば、さく果が仮にこれと全く同じ速さで裂開するとすれば、81のさく果では一日におよそ2個のさく果が裂開し、木全体では1日におよそ150のさく果が裂開することになる。

<考察>
地上4mから採取した花序は、外の直射日光に当たる枝についていたものはかなり乾燥していて茶色に変色しており70%のさく果が裂開していたが、幹に近いさく果は15%しか裂開しておらず、まだ緑色のものが多かった。全体の印象でもこの傾向は見られたので、花序の日当たりの条件が果実の熟する時期やさく果が裂開する時期に関係することが伺えた。このことから、このアカメガシワの木でサルがわざわざ上部に上って採食していたのは、果実の熟している度合によるものかも知れない。ただ、地上2mから採取した花序は全てのさく果が裂開していたが、採食された形跡は全くなかった。この花序は幹から出ている新しい枝についていたもので、花序のなる位置によって果実の周りの油の成分などに何か違いが生まれるのかも知れない。また、サルの採食場所は社会的な理由で固定されているのかも知れない。メジロなどの鳥は枝先にとまって採食することが多いので、熟している果実を食べるのには適していると思われる。ただ、サルも上ってくるのでどの程度利用できるのか疑問が残る。

高層の花序の採食状況は確認できなかったが、低層では熟しているものがあるにも関らず食痕らしいものは見受けられなかった。よって、食べつくしという状況には達していなかったと思われる。果実の熟する速さがさく果の裂開する速さと同じぐらいなら、少なくとも3頭のサルがこの木で採食していたことから1頭は1日にだいたい150の種子が食べられることになる。ただ、サルのフン分析からはこれほど多くのアカメガシワの種子が出てきたことはなかったので、実際に食べる量はもっと少なく、食べられないものやメジロなどに採食されるもの、他のサルに採食されるものとなると思われる。

 また、アカメガシワの種子の木全体の量は、持ち帰った種子81個中28個は矮小なものだったことから、通常のものは半径2mmの球、矮小なものは半径1mmの球とすれば、200ほどになる。つまり、200gよりははるかに軽い重量である。このことから、たとえ実を全て食べたとしてもアカメガシワが量的に主要な栄養源になることは、特定の区域内に何本の木が生えているかは分からないが考えにくい。よって、質的に主要な栄養源となっているか、もしくは単なる嗜好品的な役割を果たしていると思われる。


報告5 アコウの木における観察

 実のたわわになったアコウの木にどんな鳥が来て、どのくらい食べ、どういう行動をするのかを知るために、7月25日の10:25-12:12の間、1本のアコウの木を観察した。

<結果>
10:25 キビタキ1
10:55 メジロ1
 キビタキとメジロがそれぞれ1羽1回ずつやってきたがどちらも一瞬だけ止まってすぐに飛んで行ってしまった。2時間弱の観察ではあまりにも時間が短いことがよくわかった。

 鳥はほとんど見ることができなかったが、そのかわりにサルはたくさん見られた。センサスを始めたとき、1匹のオトナオスがアコウに登って実を食べていた。15分間、2分おきぐらいに場所をかえながら食べつづけ、その後下りて行ってしまった(10:25-10:40)。その後、11:36にオトナオスが2頭、続けてもう1頭道路沿いにやってきて、アコウの木に登った。「グー」「ガッガッ」という声を出した。やがて「キャー」「グルルル」「クー」という声にかわった。そのうちオトナが8頭、コドモが5頭やってきて、樹上には12頭になった。2頭が隣のアカメガシワの実を食べに行った。下に落ちたものを食べているサルもいた。どのサルも食べるのに集中していて、グルーミングなど、他の行動は見られなかった。11:58、オトナのサルたちは下りていくものが多く、下のほうにいた。コドモたちは上で食べていた。下のほうのサルはセルフグルーミングを始めた。12:03、「グウ、グウ」と上り調子で鳴いた。移動し始めた。足を引きずったフルアダルトのメスもいた。道路を横断して行ってしまった。シカの姿もあった。12:09突然、観察しているすぐわきを通って崖から下りてきた別のヤングアダルトのオスがアコウの木に登り、食べ始めた。12:12観察終了。

 というわけでサルの1群れがやってきてアコウの実を食べ、行ってしまうまでの一連の様子を見ることができた。始めにオトナが来てしばらくして時間差でコドモが来て食べる。来たばかりの時は「グー」とか「ガッガッ」という声でお互いにあいさつまがいのことをし、同じ木で食べよう、と宣言をしているかのように思われた。あれだけの数のサルが同じ木で食べるのは、アコウの木のように資源が豊富で容量がある時だけらしい。12頭のサルが1本の木にいるという高密度は、普通考えればサルにとって相当なストレスになっているのではないかと思ったが、それをやわらげるためのグルーミングなどが見られないのが意外だった。おそらく、アコウの木に滞在する時間を縮め、食べることに集中することで他個体との接近にともなう緊張をより少なくしているのではないかと思った。また、「ガッガッ」という声も、何かその合図のようなものではないだろうか。

 移動する前には「グウ、グウ」と上り調子で鳴いていて、サルの声にもいろいろな種類があり、それぞれ、どういう認識をしているのだろうか、と思った。群れが、ほぼ引き上げた時に、他のところから現れて、アコウの木に登ったヤングアダルトのオスは、離れザルなのだろうか。離れザルも全く単独で行動しているわけではなく、濡れの様子をうかがいながら、その群れの状況(どんなメスがいるか)や、実のなった木がどこにあるか、などを探っているのかもしれない。

<注>
 以上の報告1〜5は参加者が分担してデータや意見をまとめたものである。討論する時間が十分になかったので不完全なものであるが、そのまま掲載した。

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