岩手県野田村の皆様へ


北海道の稲作の起源は、今から326年前、
南部の野田村から移住してきた作右衛門さんの強い決意にあります。

「米食への憧れ」と不屈の精神が、現在につながっているのです。
先人への感謝と敬意、誇りを忘れることはありません。

平成30年7月31日 thide



現在、北海道北斗市の文月地区に建つ「北海道水田発祥発祥之地」の記念碑と説明です。

元禄5年(1692年)、南部の野田村から渡島国文月村に移住してきた作右衛門がこの地で開田し、米を収穫したと記録が残っています。※@

野田村は江戸時代から村名が消えずに残っていたことも驚きです。ぜひとも一度、野田村を訪ねてみたくなりました。

その後、江戸時代の終わりごろには、大野村の高田万次郎が稲作で大成功を収めます。
そして明治4〜5年、高知県出身の中山久蔵が、大野村を訪ね、懇願の末に種もみを譲り受け、翌年(明治6年)、大変な苦労と工夫を重ねた結果、ついに寒地(北広島)で稲作に成功するのです。
さらに久蔵は稲作に挑戦しようとする多くの人たちに、無償で種もみを頒布し続け、全道各地に稲作が広まったというわけです。※B


昨年、この記念碑の建つそばにある川の向かい側に、かつて野田さんの家があったと聞きました。川の近くでなければ水田が作れないことも、恥ずかしながら知ったのでした。

現在は、この地から少し離れたところ、地蔵堂の隣に現在の「野田さん」の家があります。突然おじゃまをし、お話も聞かせていただくことができました。また、第11代野田作右衛門さんのお写真も拝見させていただきました。

野田家は現在、稲作を生業とはしていないそうですが、息子さんたちが函館市にお住まいで、第14代ともなるお孫さんは、もうすぐ小学校に上がるそうです。(今は襲名をしていないそうです。)

昨年は、野田作右衛門さんの思いを、勝手ながら「再話」という形で記録にしてみました。一度お目通しをいただければ幸甚でございます。

→ 「米食への強い憧れ」 (再話による自作資料)(PDF)


なお、北海道の各地には、51基もの同様の記念碑が存在しているそうです。※A

その地その地での稲作の発祥、水稲の発祥、水田の発祥等と、名前は少しずつ違うようですが、努力を重ねた先人に対する敬意を感じ取ることができます。

今年は「北海道命名150周年」という節目の年です。温故知新、先人の思いや願いに触れてみようと考える皆様も多いはずです。お立ち寄りスポットとして、おすすめいたします。


あとがき

 「歴史は勝者の記録」と言われています。今回の調査では、勝ち負けにこだわってはいませんが、あえて申し上げれば、中山久蔵翁、高田万次郎ともに大成功を収め、社会貢献の記録も多く残っています。勝ち組ですね。

 しかし、「野田作右衛門」については、なぜ記録が少ないのかと疑問に思いながら文献を探し、さらに現地で聞き込み?を続けてみました。
 その結果、文月神社(300年以上の歴史があります)と近くの地蔵堂の管理、お世話役を長年、代々にわたって携わっていたことがわかりました。特に、日 照りが続いた年には、お地蔵さんを抱き、近くのみんなと共に川に入って雨ごいをするなどの記録もあることから、この文月地区にしっかりと根付いた活動をし ていたことが浮かんできました。つまり、一時期は村の名主になったこともありましたが、大規模な開発や事業などはご近所の高田万次郎さんの家が代々活躍し ていたので、それはそちらにまかせて、作右衛門は外に目を向けるのではなく、常に自分の足元に目を向け、ご近所の皆さんと共にいて、真に地域に根差した生 き方をしていたと確信することができました。

 このように、歴史の表舞台にほとんど出てこない偉人たちは、決して少なくないのだということを考えさせられました。
 かつて北海道米は「やっかいどう米」と揶揄されていたようです。確かに自分も子供のころに食べていたお米は、そうだったように記憶しています。今では品 種改良が進み、、「ふっくりんこ」など、おいしい北海道米の評判も全国に広がり、うれしく思っています。 次世代を担う地域の子供たちには、北海道のお米 は、「野田作右衛門の赤毛種」がルーツであることを誇りに思い、農家の人たちの生き方から多くのことを学んでもらいたいと願ってやみません。

 なお、もう少し参考文献の中から、ぜひ皆様にもご紹介をさせていただきたいと思う部分もありますので、後日アップしようと考えています。

 最後にもう一度、今回の調査でたくさんの皆様にお話を聞かせていただいたことに感謝し、あらためて御礼申し上げます。

平成30年8月 thide

ご意見・ご感想もお待ちしております。



 ※ 参考文献等

@ 大野町史(昭和45年刊)
A 佐々木多喜雄著 「北海道水田発祥の地記念碑」(2002年、北海道出版記念センター)
B 川嶋康男著「北限の稲作にいどむ」”百万石を夢見た中山久蔵物語(2012年、農山漁村文化協会)
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