4−1

「1年単位の変形労働時間制度」のポイント

4−2

1年単位変形労働時間制」の途中退職者の賃金精算

4−3

割増賃金と振替休日

4−4

労働時間の端数の「切捨て・切り上げ」

4−7

月給制の割増賃金の計算方法

 

4−1 「1年単位の変形労働時間制度」のポイント

【回答】

1、採用には、労使協定を締結して、届出が必要です。

  @対象労働者、A対象期間(1ヵ月を超えて1年以内)、B特定期間(繁忙期)など

2、就業規則に、対象期間中の始業・終業時刻、休憩時間および休日を定めます。

3、特定期間(繁忙期)の連続労働日は、12日間可能です。それ以外は、連続6日以上労働させることはできません。特に、振替休日の場合に注意が必要です。

4、カレンダーは、30日前に作成が必要です。「1ヵ月前」では、2月分は違法になります。

5、労働時間が48時間を超える週の制限として、所定労働時間が48時間を超え52時間以内の週が、4週連続しないこと、また。3カ月以内に4週以上無いことが必要です。(一定の豪雪地域の建設業では、連続の週の数や3ヶ月に関係なく110時間、152時間を限度にできる)

6、年間労働日数では、対象期間が3カ月を超える場合には、年間の労働日数を280日以内にしなければなりません。

 

1日の所定労働時間×7日−40時間

必要な年間休日日数=――――――――――――――――― ×365日

              (切上げ計算)         1日の所定労働時間×7日

 

したがって、1日の所定労働日数を減らせば、下表のように年間に与えるべき休日日数も減ります。しかし、3カ月を超える場合は網掛けの部分280日を超えて違法となります。      

1日の所定労働時間

休日日数

労働日数

 

1日の所定労働時間

休日日数

労働日数

8時間00

105日

260日

 

7時間25分

84日

281日

7時間55分

102日

263日

 

7時間20分

81日

284日

7時間50分

99日

266日

 

7時間15分

78日

287日

7時間45分

96日

269日

 

7時間10分

74日

281日

7時間40分

93日

272日

 

7時間05分

71日

294日

7時間35分

90日

275日

 

7時間00分

68日

297日

7時間30分

87日

278日

 

3カ月を超えない場合は問題ありません↑

 

7、対象期間の長い変形労働時間制を採用する場合は、少なくとも隔週週休2日程度を確保しなければなりませんが、逆に表現すれば、完全週休2日の採用が困難な中小企業にとって便利な制度とも考えられます。

8、時間外労働の計算は下記の合計時間数となります。

@18時間を超える時間、A1週間40時間を超える時間で@で算定した時間を除く、

B対象期間の法定労働時間の総枠を超えた時間で、@とAで算定した時間を除きます。

 

 

4−2 1年単位変形労働時間制」の途中退職者の賃金精算

【回答】

1、繁忙期だけ働いて、途中で入社・退職した労働者は、そのままでは不利益にならないように計算をします。

2、しかし、平成11年までは、変形労働時間の対象から外して原則的な労働時間計算をやり直ししなければならず、大変な労力になっていました。

3、現在は、その労働者が勤務した対象期間の法定労働時間の総枠の時間数を超えている時間のみについて、割増賃金を支払えば良いことになりました。

4、したがって、ここでは「1日当り、または1週間当たり」の法定時間のオーバーを考える必要はなくなりました。(基準法32条4の2・参照)

 

 

4−3 割増賃金と振替休日

【質問】

「嘱託職員の時間外労働が1日分の労働時間になった時に、1日分の振り替え休日を付与しているが問題はないか」

 

【回答】

1、時間外労働時間を集計して、1日分の「振替休日」を与えるのは、違法です。

2、時間外労働分の割増賃金(25%以上)を支払っていません。

3、「代償休日」は、ご説明しましたように労働基準法上の制度ではなく慣習法ともいうべきものですが、これに近い方法を取る方法があるのではないでしょうか。つまり、時間外労働が1日分の労働時間になった時に、1日分の休日を付与するとともに、割増賃金分(25%以上)を、別途支払う方法です。つまり、代償休日に近い方法にするのです。

4、ただし、この方法は行政解釈上は確定していないようです。適用法律に裏付けられた方法ではありませんので、労働基準監督署の解釈も分かれているようなので、相談の上「問題がない」とされてから利用してください。「訳注労働基準法・下 634頁」

6、しかし、そもそも、時間外労働を使用者の指示命令の下に行われて、「残業命令書」のような形で残されているかも点検してください。

 

以上 2011/09

4−4 労働時間の端数の「切捨て・切り上げ」

【質問】

労働時間の端数の「切捨て・切り上げ」は許されますか。

 

【回答】

労働時間は分単位で計算して、基本的に、その日の「切捨て・切り上げ」は、許されていないのですが、時間外の1ヶ月の合計計算では、労働者に不利にならない形なら認める例外があります。
1、時間外労働は、使用者の命令で行うものですので、管理をきちっと行いやすい面があります。
2、これに対して、遅刻・早退の「欠勤控除の切捨て・切り上げ」をした場合には

  例えば、「15分までは遅れても同じだから・・・」とか「逆に、15分過ぎたら29分まで遅れていったほうが有利だから」という意識が生まれる危険性があります。

3、管理する者は、「欠勤控除は切上げて時間を多く計算」するほうの心理が動き やすいのにたいして、従業員は、「欠勤時間数と控除を少なく計算」するほうに心理が動きやすいので、特にトラブルが起きやすいのではないかと推測します。

以上 2009

4−7 月給制の割増賃金の計算方法

【回答】

月給制の場合の割増賃金の計算は、

=(通常の労働時間の賃金)÷(1ヵ月あたりの平均所定労働時間)

 

1、「通常の労働時間の賃金」には、次のものは除外できます。

  @家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われた賃金、F1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

2、「1ヵ月あたりの平均所定労働時間」は次のように計算します。

  =(年間所定労働日数)×(1日の所定労働時間)÷12カ月

 

以上