3−1 就業規則の本社一括届制度について

【質問】

就業規則の本社一括届の場合の必要なことを教えてください。


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【回答】

就業規則の作成・届出は事業所単位で行う事が基本ですが、本社・営業所・工事事業所などの複数

の事業所を展開しているときは、下記の要件を満たしていることを条件に、本社で一括して届出る

ことができます。

1.

本社の諸葛労働基準所長に対する届け出の際には、本社および支店の数に対応した必要部数

の就業規則を提出すること

2.

各事業所の名称、所在地及び所轄労働基準所長名並びに労基法第89条各号に定める事項に

ついて当該本社で作成された
就業規則と各事業所の就業規則が同一のないようのものである旨が附記されていること
 @本社の就業規則と支社、営業所、現場作業所などの一括の対象となる事業所の就業規則が

同じであること
 A就業規則変更届の場合は、各事業所の就業規則は変更前及び変更後ともに本社と同一内

容であること

3.

意見書については、その正本が事業所との就業規則に添付されていること
  ⇒ 一括届出でも、本社でまとめて意見聴取することは認められません。これは、労基法の

適用範囲が、原則として事業所を単位としているためです。
  ⇒ ただし、同一労働基準監督署内に複数の事業所が圧場合には、単一労働組合であれば

「全事業所の過半数労働組合とも同意見である」旨を労働組合本部の意見書に記載して、

その写しを事業所の数だけ添付するすることでも、提出することができます。

 

 

 

3−2 建設現場の就業規則など「届出不要な規模」について

【質問】建設現場で届出が不要な規模について教えてください。

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【回答】

建設現場で作業を開始する前に労働基準監督署に届ける必要書類は下記の3つです。

 @適用事業報告

 A時間外・休日労働における協定届

 B就業規則届

しかし、「建設現場については、現場事務所があって、当該現場において労務管理が一体として行われている

場合を除き、直近上位の機構に一括して適用すること」として、労働基準法と労働安全衛生法は、法律の目的

を達成するためその考え方を拡大して「小規模工事」の手続きを簡易にしています。


【小規模な工事】とは、建設現場で常駐する事務員もおらず小規模な工事で日々の業務指示を行い具体的な

作業は現場作業員に任せているような場合は適用事業報告を届出る必要はありません。

 

 

 

3−3 就業規則の二重処罰について


【質問】

就業規則に次のような「懲戒」にしたいのですが、「二重処罰」になるでしょうか。

  

(懲戒の種類)

第00条 

懲戒は次の6種とし、このうち二種類を合わせて科することもできる。 

1.

譴責(けんせき)

始末書を取り将来を戒める。

2.

減給

給与の一部を減じる。ただし、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え総額が1給与支払い期間における給与総額の10分の1を超えない範囲とする。

3.

出勤停止

7日を超えない範囲で就業を禁止する。この期間の給与は支給しない。

(ただし、懲戒事項を調査する場合に必要な期間自宅待機させる場合は、懲戒としての出勤停止ではないので、平均賃金の100分の60を支払うものとする)

4.

降 格

役職等を降格する。

5.

諭旨解雇

説諭のうえ自発的に退職させる。

6.

懲戒解雇

労働基準監督署長の認定を得て予告期間を設けず、解雇予告手当てを支払うことなく即時解雇する。

 

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【回答】

この条文の「二種類を合わせて科すること」は、「併科」であって「二重処罰」ではありません。

たとえば「譴責(けんせき=始末書を書かせて提出させ戒める)の上、減給する」ことは、併科になります。

「二重処罰」というのは、憲法39条の「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為

については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問はれな

い。」という条文から「一事不再理(いちじふさいり)」、つまり、「ある刑事の裁判について確定した判決が

ある場合には、その事件について再度、実体審理をすることは許さない」とされる原則です。したがって、

「併科」を禁止している訳ではありません。

 例えば、「刑罰」とは、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料および付加刑としての没収(刑法9条)をいい

ますが、「租税法・証券取引法」関係では、「原則5年以下の懲役・500万円以下の罰金(任意的併科)」

などの「併科」の条文があります。

 したがって、「譴責」の上、「減給」することは通常行われているが、一度「譴責処分」にしてから、それでは

軽かったので、後日に改めて「減給」にすると二重処罰になります。しかしまた、退職金を少なくする目的で

「降格」して安い賃金体系にすると同時に「諭旨解雇」にするなどは、「客観的に合理的な理由を欠き、社会

通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして当該懲戒は、無効とする

(労働契約法15条)」から懲戒の目的から逸脱したものとして認められないでしょう。

 

<参考:平和自動車交通事件 東京地裁 平成10.2.6

懲戒処分は、使用者が労働者のした企業秩序違反行為に対してする一種の制裁罰であるから、憲法39

に定められた一時不再理の法理は就業規則の懲戒条項にも該当し、過去にある懲戒処分の対象となった

行為について、一度制裁罰が確定した後で、反省の態度が見受けられないことだけを理由として懲戒する

こともできない。

 

1)懲戒事項を調査する場合に必要な期間自宅待機させる場合は、「懲戒としての出勤停止」ではないので、

平均賃金の100分の60を支払う必要がある。

  2)「減給」は「労働基準法第91条」で、@1回の額が平均賃金の1日分の半額まで、かつ、A総額が一賃金

支払い期間における賃金総額の1割までと労働基準法第91条で制限されている。

    しかし、「降格」の結果、新しい賃金体系賃金が適用されることによって、賃金が低下するのは「減給」では

なく、「役職に不適格であるから格下げする」というものであるから、

賃金の低下はその労働者の職務の変更に伴う当然の結果であるから法第91条の制裁規定の制限に抵

触するものではない。