自治体の係長のマネジメント理論とOJT実践



.                     .
手島伸夫・廣津栄三郎・手島俊夫

2021年6月10日・流星書籍

ご購入はアマゾンからどうぞ!





『自治体の係長のマネジメント理論とOJT実践』


(前書き)より

全国の地方自治体数は約1,700になりましたが、多くの自治体に、係長の昇任試験制度があります。その昇任試験の勉強で学んだ「マネジメントの知識」や「法律知識、事例式行政判断、時事問題」は、就任後の業務で必ず役に立つでしょう。また、研修会などで議論をした仲間は、役所生活の貴重なネットワークとなります。

しかし、係長昇任試験の受験率が減少している現状があります。
ある自治体では「係長候補者研修」に、必ず首長が講演をして自治体の現状を説明した後に、「皆さん、係長試験を受けてくださいね」と受講者にお願いしていました。しかし、ある年度から「係長試験」がなくなり、誰でも指名されるようになりました。問題はその後に起きました。「係長候補者の研修」から「マネジメント理論」が無くなってしまったのです。

 これは問題です。希望しないで、係長の覚悟もない人が指名される状況で、「マネジメントという道具」を持たせていないのです。
 自治体の激務という荒野で、「地図もコンパスも」持たずに、目的地に向かえといっているようなものです。
 
この本は、「自治体の係長が使うと便利なマネジメントの道具をたくさんご紹介する入門書」です。それを「自分が実際に使っている道具」と「使ったことがないけど道具箱に入れておく道具」という風に確認しながら読んでください。

人間は、道具を使えば、楽に成功するのです。係長という職位を不安に思う前に、必要なマネジメント理論をザッとこの本でご確認ください。係長になる皆さんのお役に立てれば幸いです。

 



この本の「目 次」                           .


第1章 係長のマネジメントとその方法
 1.係長の不安を解消するマネジメント理論
 2.指示命令が係長の主要業務ではない
 3.マネジメントの発明と知識労働
 4.係長がマネジメントとしてやるべきこと
 5.自治体の係長と「経営」ということ

第2章 働き方改革とタイムマネジメント
 1.働き方改革と「5Sという道具」
 2.自治体の5Sの参考事例
 3.タイムマネジメントと改善方法
 4.成果(アウトカム)指標とタイムマネジメント
 5.「部下の困っていること」が係長の仕事

第3章 リーダーシップ論の発展とマネジメント
 1.リーダーシップの発展と3原則
 2.「人間への関心」と「業績への関心」
 3.部下の「能力と意欲」で指導法を変える
 4.係長の性格を変える必要はない
 5.マネジメントと「意思決定の道具」

第4章 係長の人材育成とOJTの重要性
 1.人材育成とOJTの重要性
 2.係長のOJT指導の進め方
 3.知識付与型OJTの改善
 4.知識創造型OJTとコーチングの利用
 5.「暗黙知と形式知」とOJT

第5章 係長のOJTの実践例
 1.部下の意欲と元気を引き出すOJT指導法
 2.報・連・相が少ない部下のOJT指導法
 3.仕事の進め方が不適切な部下へのOJT指導法
 4.悩みを聞いて元気を引き出すOJT指導法
 5.上手な叱り方
 6.上手なほめ方
 7.提案をしてきたときが指導の機会
 8.対外的な対応の仕方

第6章 係長の人事評価の利用法
 1.「目標による(自主)管理」と業績評価
 2.能力評価は「着眼点評価」
 3.「目標による自主管理」の背景にある理論

第7章 人事評価制度では面談が大切
 1.期首が最も重要な面談
 3.期首面談の実践例
 4.評価・育成面談の実践例
 5.面談の個人演習

第8章 再任用職員と年上部下のトリセツ
 1.再任用職員は何に苦労しているのか
 2.係長はコミュニケーションを止めない
 3.年上部下のトリセツ

第9章 係長としてメンタルヘルスケアを考える
 1.係長のストレス軽減のマネジメント
 2.自治体の職員数減少とうつ病の増加
 3.部下の悩みを吸い取る「積極的傾聴法」
 4.リラクゼーション技法を使う
 5.係長自身を守る「魔法の言葉」



 
 知識創造型OJTとは

 
  従来、OJTの基本は、「@上司が部下に、A仕事のやり方を職場内で、B直接教える」ことでした。代表例をしては、「やって見せ、 言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」(山本五十六氏)です。これは「知識付与型OJT」です。簡単に言えば、 肉体労働に対する教え方です。答えは、上司が持っています。

  しかし、知識労働は、「やって見せ」をすることができないことがあります。例えば、「条例の作り方や、計画の作り方」など知識を使う 労働です。具体的に教えようとすると上司が自分でやった方が早くなります。上司が、一方的に「指示や指導」をできない「考える作業」は、 コーチング的」に相手の知識を引き出す教え方が必要です。

  また、問題発生が現場(窓口・顧客接点)で起きているので、上司が新しく発生している真の問題ポイントを知っているとは限らないのです。 いずれにせよ、自治体の仕事は、知識を使った仕事ですから、コーチングを含めた「知識創造型OJT」が求められています。なお、トヨタ自 動車では、ベルトコンベアの労働者にも、「なぜ・なぜ・なぜ」を考えさせて知識創造しているのは、衆知の通りです。

  従来、このOJT方法を「知創型OJT」と表現する場合がありましたが、ここでは分かりやすく「知識創造型OJT」と表現しています。


トップ