『自治体の役職定年と再任用職が成功する方法』



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手島伸夫・広津栄三郎・手島俊夫
2023年3月20日・銀河書籍




メール:tejima@dab.hi-ho.ne.jp
携帯:090−1995−8730



          再任用職員研修実績 ・ 一般社団法人日本経営協会



 青森県、安房郡市町村圏事務組合、あきるの市、群馬県、郡山市、彩の国さいたま人つくり連合(埼玉県)、島田市、多賀城市 

 千葉県、土浦市、習志野市、日立市、平塚市、広島県自治総合研修センター、福山市、福島市、前橋市、水戸市、松戸市、

 三島市、北海道(札幌本庁、釧路、帯広、網走、函館、室蘭、旭川、岩見沢)




『自治体の役職定年と再任用職が成功する方法』


 私は、再任用職員の方々に対する研修を2010年2月からある県庁で担当しました。そこでは再任用された方々がスムーズに新しい管理職をサポートする位置へ変更できることや、業務のノウハウを効率的に継承するために必要な視点を習得していただきました。
 意識改革を基礎として、さらに積極的なチャレンジ意欲を持って楽しく職務に従事できることを目指したのです。この研修のモットーは、以下の5点としました。

 @
楽しい研修とする。
 A必要なコミュニケーション方法を体験的に習得する。
 B知識継承方法を参加者同士で意見交換をする場とする。
 C
マネジメント理論に沿った研修とする。
 D効果が高い3月31日までに、できるだけ研修する。

 このことは、ある程度成功したと思います。研修後アンケートでは「再任用職員としての心構えや職務遂行のポイントが見えた」「霧が晴れたようだ」といった、私にとっては涙が出るほど嬉しい声をいただきました。皆さん、悩んでいるのは同じような所だと感じます。

 しかし、最近の研修では、以前とは違う変化を感じます。コミュニケーションを楽しむ演習で消極的な受講者が出てきたのです。少数ですが、以前には見られなかったことです。

 気になった私は、その人たちに休み時間にも話しかけてみました。そこで感じたのは、不安感と不満が強いことです。この傾向は、年金の狭間から不本意に再任用職員を選択している人たちではないかと推測しました。

 表現を変えれば、
不本意再任用というものではないかと思います。
その特徴が、思春期の不安定さと共通する状態なので、私は「
再任用思春期症候」と名付けました。何かが変わりつつあるのです。
この調子では、迎い入れる現役職員のストレスが増加して、疲弊しかねないのです。

 ただし、多くの人が「単なる年上の部下問題」と「
役定・再任用職問題」とを混同しています。この2種類の職員問題は、含まれる内容が異なります。この対策について、役定・再任用職になる人と、迎い入れる側との共通の理解を作りたいと考え、この本を書きました。

 この本のT章は、役定・再任用職員になられる方の「入口側」の視点で書きましたが、同じことをU章で、役定・再任用職を「迎える側の内側」の視点で書きました。

 したがって、最終的に書いている内容は同じですから、ご自分の立場でT章かU章のどちらかを読んでいただければ十分です。両方読むと同じ話の表と裏になり、重複を感じる内容となりますので、その点はご容赦ください。そこが、普通の本と異なる点です。

 



 この本の「目次」                           .

   <プロローグ>「職場での言葉」が躓きの始まり

T 役定・再任用職に「なる人」が読む章

 1.大事なのは“最初のコミュニケーション”
  (1)「能力も意欲もある」あなたが躓く理由
  (2)自分の座標軸を見失う人々
  (3)お金に関する「心の問題」には先手を打つ
 2.役定・再任用職をめぐる環境変化
  (1)自治体と役定・再任用職を取り巻く環境変化
  (2)この50年間の時代変化
  (3)前例が通用しない時代
 3.役定・再任用職が感じる3つの問題
  (1)“失うと感じる体験”と座標軸の再構築問題
  (2)新しい仕事の問題
  (3)男性のジェンダー(社会的性差)問題
 4.役定・再任用職を取り巻く変化とチャレンジ
  (1)人生ゴムひも理論と活動
  (2)「祝還暦・再任用チャレンジ式」を自ら主催する
  (3)人生の役割変化・関係性自己と役定・再任用職
 5.変化する仕事と変化しない仕事
  (1)変化するべきものと、変化しないもの
  (2)「先輩の階段」と役定・再任用職
  (3)相手が困っていることが仕事になる
 6.求められるコミュニケーション方法の変革
  (1)魔法の言葉「ビジネス日本語」を使う
  (2)「能力と意欲」はフラットなコミュニケーションが基礎
  (3)「ビジネス日本語」はアサーティブな話し方
 7.元気に輝きはたらくために
  (1)ベテランとして楽に成功させる知恵
  (2)暗黙知と形式知による知識継承
  (3)役定・再任用職の役割と「知識創造型OJT」
 8.輝く人生に夢も語り続けよう
  (1)座標軸が行動を変える
  (2)弁証法という問題解決法
  (3)「言葉の裏」にある社会構造

U 役定・再任用職を「迎える側」が読む章

 1.役定・再任用職をめぐる環境変化
  (1)再任職員をめぐる変化とマネジメント
  (2)役定・再任用職を迎える側の心理
  (3)役定・再任用職側の心理を理解するアプローチ
 2.マネジメント理論の応用
  (1)マネジメントと「目標達成責任」
  (2)リーダーシップと「人間と業績」への関心
  (3)役定・再任用職の「能力と意欲」から指導方法を考える
 3.「目標による自己管理」の利用
  (1)働く中に喜びを持つ「目標による自己管理」
  (2)役定・再任用職と人事評価制度の面談の利用
  (3)コーチング的手法を利用する
 4.役定・再任用職とダイバシティ・マネジメント
  (1)時代の変化と普通のマネジメント
  (2)「ビジネス日本語」として考える
  (3)ダイバシティとワーク・ライフ・バランス
 5.役定・再任用職員の意欲を向上させる魔法
  (1)役定・再任用職員の心を動かす魔法
  (2)役定・再任用職員の方向性を見出す魔法
  (3)役定・再任用職員の意欲を向上させる面談活用

V 役職定年・再任用職の研修の成功ポイント

 1.予防注射(=研修)は病気になる前に打つ
  (1)傷つきやすい役定・再任用職の研修時期
  (2)小さな段差が大きな段差より危険
  (3)パソコン関係のOJTで躓かない方法
 2.人生100年時代と「場所的自己発見研修」
  (1)3ステージの人生の行き詰まり
  (2)360度評価を全社員向けに改定する
  (3)場所的自己発見研修と役定・再任用職
 3.説得ではなく「納得」の楽しい研修
  (1)研修の概要とポイント
  (2)自治体研修で初の「袋とじ式サブ・テキスト」を開発
  (3)『千と千尋の神隠し』から見た再任用職員のポイント

 ≪参考文献≫



 
 関係性自己 (関係的自己) とは

 
  自己認知には、「@自己概念、A自己評価、B関係性自己」という視点があります。

 @の自己概念とは、「私は、身長170cmの日本人男子で、カレーと野球が好きだ」という風に表現されます。

 Aの自己評価とは、「私は、数学が苦手だが、国語と社会は得意だ」という風に表現されます。

 Bの「
関係性自己」とは、接している相手に応じて、自分自身に対する捉え方が変化したり、ふるまいに
    異なった特徴が現れたりすることです。「関係的自己」とも表現する。

  たとえば、30歳の親は、10才の子供を叱るが、60才の親から叱られることもある。役職定年や再任用職は、
  「関係性自己」を混乱させるのです。

                                  
                    唐沢かおり編 『社会的認知』 ナカニシヤ出版 2020年 56頁参照


 知識創造型OJTとは

 
  従来、OJTの基本は、「@上司が部下に、A仕事のやり方を職場内で、B直接教える」ことでした。代表例をしては、「やって見せ、 言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」(山本五十六氏)です。これは「知識付与型OJT」です。簡単に言えば、 肉体労働に対する教え方です。答えは、上司が持っています。

  しかし、知識労働は、「やって見せ」をすることができないことがあります。例えば、「条例の作り方や、計画の作り方」など知識を使う 労働です。具体的に教えようとすると上司が自分でやった方が早くなります。上司が、一方的に「指示や指導」をできない「考える作業」は、 コーチング的」に相手の知識を引き出す教え方が必要です。

  また、問題発生が現場(窓口・顧客接点)で起きているので、上司が新しく発生している真の問題ポイントを知っているとは限らないのです。 いずれにせよ、自治体の仕事は、知識を使った仕事ですから、コーチングを含めた「知識創造型OJT」が求められています。なお、トヨタ自 動車では、ベルトコンベアの労働者にも、「なぜ・なぜ・なぜ」を考えさせて知識創造しているのは、衆知の通りです。

  従来、このOJT方法を「知創型OJT」と表現する場合もありますが、ここでは分かりやすく「知識創造型OJT」と表現しています。




ある自治体の研修室の「壁の全面がホワイトボード」で素晴らしい。 しかし、どこにでも書けるというのは、逆に戸惑いました (^^♪

                           

高知県の『県庁おもてなし課』を訪問、職員の方が撮ってくれました。さすが・・おもしろい!

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